リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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そろそろ本編も終盤


第10話『束の間の平和もありゃしない』

「……ソール、ごめん」

 

「いきなりどうした?迷惑掛けた件なら謝らなくても良い、やりたくてやったんだし」

 

「それは嬉しかったけど……私、本当はリュグナーに『ドラートを呼び戻してくる』って言って抜け出して来たから、あまり長くはいられないって事」

 

「……あー、なるほど。理解した」

 

 これで一件落着、家に帰ろうかという時にリーニエに呼び止められた……彼女は非常に申し訳なさそうな顔で俺と別れてからここまでの経緯を話してくれたが、どうやらリュグナーには適当な言い訳をして抜けてきていたらしい。

 こうなると共にはいられないか……いや、何なら今からリュグナーを討伐してしまえば良い。

 

「では参りましょう、貴方がアウラや同じ配下の魔族を裏切り私達を守ると言うなら完全に信頼も出来ると思うので」

 

「うっ……本当に行くのか?」

 

「はい。元より最初からその予定でしたから」

 

 ……フェルンはかなりの修羅場を切り抜けてきたのか、さっきもだがシュタルクとは違って淡々と魔族への躊躇無さを発言してるな。

 今回はその胆力がこっちの味方になるんだ、ラッキーだと思っておくとするか。

 

「リュグナーは俺達より強いと思う……それに伯爵のそばにはリュグナーたちがいるんだぜ。最悪戦闘になるぞ」

 

「勇者様御一行ならそれでも行きます」

 

「いざとなりゃ俺もリーニエもいる、戦力としては申し分無いはずだ。ドンと構えてろ」

 

「ん。アウラの事は分からないけどリュグナーとドラートの事なら観察してきたから分かる。任せて」

 

 若干青ざめるシュタルクだが……俺には分かる、コイツなら俺と共に修行もしてきたリーニエより間違いなく強いと。

 ただ単にこの少年は若過ぎる、戦闘経験が無いだけなのだと。

 だからこの恐怖心さえ飼い慣らせてしまえば……いつか俺の成長速度さえも超えられる超人になるだろうと感じる。

 

「そう……だよな。確かにこんなところでビビってたら師匠に合わせる顔がねえな。ありがとう」

 

 グッと手を握り締めるシュタルク。

 小さい頃の俺も、目の前の魔族に怯えるだけで、でもそれだけじゃ夢は叶えられない、それはダメだ、嫌だと踏み出してからここまで辿り着いたんだったなと懐古する。

 男はいつだって震える足で立ち上がり、大切な人達の前に立ちそれを守っていくのだ。

 

「んじゃ行きますか。この街を。……そして俺としてはリーニエを。本当の意味で助ける為の最後の一歩を」

 

 この5年、俺も本当はこの街を守りながら戦えたのかもしれない、もしかしたらとそう感じてしまうのは目の前のシュタルクを見ていたからだろうか。

 

 ふっ、と静かに笑みを浮かべもう一度俺達は街へと行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせてすまなかったな。捕らえた魔法使いが脱獄したんだ。衛兵を気絶させてな」

 

「それはお困りでしょう。捜索を手伝います」

 

「いや、結構だ。ところでお連れの方が1人いないようだが?」

 

「そこのドラートが野暮用で少し席を外していましてね、伯爵が来るのに揃っていないのは失礼だと彼女には探してきてもらったのですが……入れ違いになってしまったようでして。まあ彼女は魔力探知が得意ですからすぐに戻ってくるでしょう」

 

「……魔力探知が得意だと言う割には帰ってこないようだが?」

 

 ヒリついた空気が場を支配する。

 少し遅れてやってきた伯爵は一度謝罪をするや否や、疑いの目をリュグナーに向ける。

 それは和睦の使者に向けるものでは到底無かった。

 

「あの魔法使いが手だれであることくらい儂にも分かる。それが衛兵にあっさりと捕らわれたんだ。彼女は衛兵に手を出す事の罪の重さをよく知っている」

 

「……リュグナー殿、お聞きしたい。そこのドラート殿の『野暮用』とは一体なんであったのですか?」

 

 リュグナーはちらりとドラートを見やる……当の本人はどこ吹く風の如く、口笛を吹いてそっぽを向いていた。

 はぁ、とわざとらしい溜め息を吐きながらリュグナーは伯爵に向き直る……その目は既に狩人のものであった。

 

「……だから言ったのだ、早まるなと」

 

「ま、片付けちゃえば問題無いでしょ」

 

 リュグナーは自らの手を噛み、血を滴らせる……そう、これが彼の魔法である自らの血を操り攻撃とするものである。

 この彼の行動に伯爵含め衛兵達も誰一人反応出来ない。

 

 そして次の瞬間に衛兵達の首が飛ぶ――本来であればそうだった。

 

 

「悪いけどこれ以上犠牲は出させないぜ!」

 

 

 だがそれは、扉を強引にハンマーで破壊して突っ込んできた青年こと俺によって妨害された。

 あと一瞬でも遅れていれば全員の首が飛んでいたであろうそれは、全てハンマーによってなぎ倒されていた。

 

「なに?……貴様、何者だ」

 

「あっ!コイツ5年前の!」

 

「覚えててくれたのは光栄だねえ!さ、今の内に衛兵達は伯爵を安全な場所に!」

 

「す、すまない!」

 

 外には混乱に乗じて脱獄してきたフリーレン含む『3人』が待機している、チャチャッと安全なとこまで運んだらこっちに合流するらしい。

 

「ふむ……何処かで会っただろうか」

 

「ボケジジイがよ。お前の記憶力はニワトリか?」

 

「興味の無いものにはとことん興味が無いものでな……だが貴様の後ろにいるものには興味があるな――リーニエ。何故お前が『そっち』にいる」

 

「今なら見逃してやるから早くこっちに来いよ」

 

 さて、ここに来たのは俺ともう1人、リーニエもだ。

 フリーレンに鉢合わせるや否やゾルトラークぶっぱなし掛けたから取り敢えず『話は後で』って事でこっちに連れてきた。

 間違いなくこっちにいた方が安全なんでね。

 仲間のフリーレンの傍じゃなくて敵のリュグナーの方が安全とか意味分かんないけど。

 

「……私は、ソールの友達だから。そして何より、大切な人だから」

 

「リーニエ……」

 

「それが答えか、リーニエ」

 

「人間如きの友達?八ッ、そんな馬鹿げた理由で裏切るなんて……余程殺されたいみたいだな」

 

 最早後述のリュグナーとドラートの声は聞こえていなかった。

 リーニエが俺の事を『友人』だと、そしてそれ以上に『大切な人』だと言ってくれた、それが何よりも嬉しかった。

  何年も彼女の隣にいて、彼女が俺の事を友人やそれ以上の関係と思ってくれていそうな事は知っていた、何せ一番リーニエを見てきたのは俺なんだから。

 でも明確に口に出されたのは初めてだった。

 どれだけ心と心が通じ合っていても言葉に出された時の嬉しさというものに勝るものは無い。

 

 だから、とても嬉しかった。

 

「そもそもそいつは俺達と同じ魔族だ、魔族は人間を欺く為に言葉を使うって教わらなかったのか?」

 

「いいや知ってるさ、知っていて尚俺はこの子を信じると決めた。誰の言葉でも無い、この俺自身で」

 

「……詭弁だな。もう良い、やれドラート」

 

 通じるとは思ってなかったがここまで通じないと流石にこっちも分かってても溜め息も吐きたくなる。

 とはいえ今はそんな事をしている暇は無いな。

 

「5年前の事を覚えてるならその糸が通用しないのは知ってるはずだと思ったんだけどね」

 

「チッ……何なんだお前本当に……」

 

「……無能め。仕方あるまい、私も手を――」

 

「……私がいる事を忘れるな」

 

 ドラートとリュグナー同時対応は俺でも可能ではある。

 あるが、問題はそうなると攻撃頻度が下がってジリ貧になりかねないのが欠点だった……局地的な瞬発力は出せるが継続して出せない為色んな意味で範囲が狭い為だ。

 そこをリーニエがカバーしてくれた、これ程有り難い存在は無い。

 この子は5年間俺と共に色々遊ぶ間に修行も積んできた、魔法だけを磨き上げてきたリーニエに足りないフィジカルを鍛える為の特訓だって沢山してきた。

 だから少なくとも、リュグナーに拮抗する事は十全に可能だし『現状のシュタルクに対して殺されないようにするなら不可能では無い』レベルにはある。

 

「貴様は私よりも弱い、殺されたくなければそこを退け」

 

「退かない。それに私は、決めた。少なくとも貴方を倒すまではソールの隣に立つって。それが今私にやれる最大の恩返しだから」

 

 凡そ魔族らしくないそのリーニエの言葉に、俺はニコリと微笑む。

 1人なら難しくとも、2人ならやれるはずだ。

 

「それじゃ隣は任せたぜ、リーニエ」

 

「まかせて」

 

 彼女の顔は、今までに無いくらい。

 表情が表に出た、決意に満ちた顔だった――

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