リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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第12話『本当の決別』

 気合いを入れたは良いがシュタルク、フェルンがこちらの増援として戦ってくれるとなった為にシュタルクはドラート、フェルンがリュグナーを担当し俺達は殲滅戦担当となった。

 

「……どちらにせよ壮観だな、この不死の軍勢に魔族は」

 

 俺達は街を出て街入口近くの荒野で軍勢と対峙する。

 ザッと見て総勢100ちょいをけしかけて来た感じか……皮肉の一つ二つくらい言いたくもなるってものだ。

 そもそも俺のフィジカル能力は瞬間的な脚力と正確なコントロール、一発で仕留めるパワー。

 正しく一撃必殺、これがまだ10人程度だったらどうにかなるだろう。

 それこそ全盛期七崩賢と対峙したとしても相性次第では1人くらい道連れに出来るという確実な自信があるし全員に出迎えられたとしても時間稼ぎくらいは出来るレベルにはあるはずだ。

 

 だが、だからこそこの瞬間的な出力を出し続けるには限度がある。

 その為1番苦手としているのがこの殲滅戦。

 

 いいやしかし、だからこそ俺は殲滅戦をやろうと思った。

 これは俺の成長の為だ、これから俺は恐らくもっと強い敵と戦うだろうという予感があったから。

 

 2人共無事に生き残るなんざ訳無い、絶対に成功させてみせると心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……ふんっ」

 

「リーニエッ、大丈夫そうかッ!? どりゃあ!!」

 

「うん、へいき」

 

 四方八方から襲いかかって来る鎧やら魔族を迎え撃ちながらソールの声に答える。

 本当は少しキツいけれど心配させる訳にはいかない。

 隣で共に戦う為に背中を預けたのだから。

 

「俺の瞬発力もそこまで多用は出来ないってのに……これが多用さえ出来ればこんな軍勢イチコロにしてやるってのッ!」

 

 そもそも彼は、自身で『殲滅戦のような大人数相手は苦手』と話していたがそれでも自ら任せてほしいと、そして私には

 

「出来ればシュタルクとフェルンのとこで戦っててほしいんだけどね」

 

 と優しく言ってきた。

 わざわざ苦手なものを指名したのだから無理に付き合わせる事はしたくないのだと。

 でも私はその言葉に何故だか不機嫌になってしまっていた。

 私としても大人数相手の大立ち回りなんかした事は無かったけれど、一度は背中を、命を預けようと思った、そして大切なあの人の隣に立ちたいと願ったからだろうか。

 

 私のそんなワガママを、諦めたような笑顔で受け止めたソールと私はあの軍勢と対峙しそして今に至る。

 フリーレンのゾルトラークで半数の魔族は消滅、大半の不死の軍勢は押し流されたものの後者はアウラの支配から解き放たれるか原型を留めない程に破壊しない限りいつまでも動く。

 

「正直魔族は倒せば消滅してくれるから良いんだけどね……この鎧どうしよっかほんと」

 

 このままではジリ貧だ。

 それにこの鎧は不本意に傀儡にされた騎士達の肉体と魂だ、フリーレンもそれを分かっていて魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を放っているのを理解している。

 あくまでも彼女は騎士に敬意を払っている、だとしたら私達もそれに則るべきだろうと2人で話して敢えて壊さない対処法を探している。

 

 ……力押しだけではダメだ、何か方法を探さないと。

 

 私にやれる事……エアファーゼン、これは戦士の動きを模倣する為に生み出し研鑽してきた魔法だ。

 だけど、彼と関わった事で『戦士以外も模倣して良いのでは無いか』そう思ってきた。

 出来るのかどうかすら分かりはしない。

 だけど私の魔法の特徴は『魔力の流れを記憶して動きを模倣する』事だ。

 

 ――大きな賭けになる。

 

 何せ魔族は一つの魔法の研鑽こそが全て、それこそが生涯のイキモノ、それが当然であり誇りだった。

 この使い方は、エアファーゼンであると共に『他の魔法を使用する』という魔族にとって禁じ手とも言える行為になる。

 今日というこの日まで、心のどこかで魔族を捨てる覚悟が持てなかった、ここまでの100年弱ずっとその生き方しかして来なかったから。

 

 でも、決別すると決めた。

 

 私はバトルアックスを消し瞬時に記憶の中の『魔法』を模倣する。

 やれるか、やれないか、そうじゃない……私はソールの隣に立つと決めたんだ、ならば……『やるしかない』んだ。

 

自在に糸を操る魔法(ファーディアン)

 

 ……ドラートの魔法だ。

 アイツの魔法は強固な糸を操る魔法、切り裂く事や縛り上げる事に特化した汎用性に長けたものだ。

 ならばこの場に1番相応しいのはこれだと直感した、鎧を傷付けずに無力化する魔法……ただ問題があるとすれば私がどれだけ扱えるかだけれど……

 

「……い、ける……!」

 

「リーニエ……すっげえな!!天才だよ!魔法も模倣出来るなんて!」

 

「私も……今初めてやったから……!成功するかどうかは賭けだったよ……!」

 

 ぶっつけ本番、付け焼き刃にもならない試行回数0回でやったからドラートより強度はかなり低いけれど、それでも不死の軍勢……元は人間のフィジカル程度なら封じ込められると分かった。

 これなら……やれる、ソールの役に立てる。

 

「でも魔力消費とか大丈夫そうか!?魔法を使って魔法を模倣するんだろ!?」

 

「ん、へーき。模倣には変わりないから慣れてる……成功するかどうかだけが心配だったけど」

 

「なら良かった!んじゃ俺は魔族ハンマーで打ち上げながら鎧も放り投げるからリーニエは鎧の拘束頼んだ!」

 

「どんとこい」

 

 そこからの私とソールは早かった。

 やる事さえ明確になれば七崩賢クラスでも相性次第で相討ちまでいけるレベルのソールに憂いなくサポートが付くなら当たり前ではある事だと思うけど。

 

 今までの苦戦はなんだと言うくらい素早く終わらせる事が出来た……でも少しだけ違和感を覚えた。

 

『不死の軍勢ってこんなにあっさり倒されるものだっけ』……?

 確かに彼の前ではほぼほぼ無力だろうけれど……それにしても『騎士達の生前の強さにしてはあまりにも肩透かし』と言える。

 

 ……嫌な予感がする。

 

 少なくとも、この鎧達がなにかするという直感では無い。

 しかしもう少し違う違和感がある……喉元まで来てるこの正体、しかしあと一歩が分からない。

 

「よーし終わったぜ!ありがとうリーニエ!やっぱ俺達2人なら最強かもな!」

 

「……かも」

 

「そんじゃ一度シュタルクとフェルンの方見に行くぞ、万が一が無いとは言い切れないし」

 

 一旦飲み込むしかないと諦めて、街に引き返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい大丈夫そうかフェルン!」

 

「ええ、今終わりましたから」

 

 フリーレン曰く2人とも凄く強いと聞いたからそこまで心配はしていないが、だからといって万が一が無いとも言い切れない。

 そんな訳で見に来た訳だが……

 

「怪我してるけど大丈夫そうか?」

 

「問題ありません。そちらも終わったみたいですね」

 

「ああ、何せリーニエが天才の発想で色々と頑張ってくれたからな!」

 

「……成程、魔族でありながら逃げずにソール様の隣で戦う事を選んだ。ならば私からは言う事はありません……リーニエ、貴方は『ニンゲン』です。人の心を持つものはみなそう呼ばれて然るべきなのです」

 

「私は当然の事をしただけ。……でも、ありがとう」

 

 うん、ちょっと肩口を怪我してはいるがリュグナーはもう消えてるみたいだな、魔力も感じないし。

 

 ……んで、シュタルクな訳だが。

 

「俺からも礼を言うよ、ありがとう。……そういや、シュタルクは?」

 

「シュタルク様も勝ちましたよ。でも今は……少し落ち込んでるみたいなのであまり深く聞いてあげないでください」

 

「と、言うと……」

 

「あの戦った魔族、あの男と何かあったのでしょう。心の整理を付けるには時間が掛かるはずなのでここは無視してフリーレン様の元に向かいましょう」

 

 ドラートと何か、ね。

 あのクソ外道みたいな魔族の性質を抜きにすればシュタルクとシンパシーが合ってもおかしくは無い、か。

 魔族とは分かり合えずとも、何か通じてしまったんだろうな。

 普通の人間ならいざ知らずアイツも『英雄』になれる素質はあるからな……そういう事をしてても不思議じゃない。

 

 さて、そうだとするなら俺に出来る事は1つか。

 

「よっ、お疲れさん。……顔付きも大分男らしくなったな」

 

「……そうかよ」

 

「ああ。終わったら一杯サシでやろう。俺の奢りでな」

 

「奢りか……ありがとよ、ソール」

 

「良いって事よ。俺にしか理解出来ねえ事もあるだろうしな。さ、フリーレンのとこに行くか」

 

「だな」

 

 今はただ、そうして肩を組んで支えるのだった。




自在に糸を操る魔法《ファーディアン》
ファーデン(糸)とプロティアン(自在な)を合わせたドラートの魔法名
アウラ配下で唯一魔法名すら登場しなかった魔法なのでオリジナルで付けた

シュタルク
フェルンの見立て通りの理由で落ち込んでいる
なにがあったかはやるかもしれないしやらないかもしれない
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