リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結) 作:リーニエたんhshs
「……え?不死の軍勢から違和感を覚えたって?」
「うん」
私達4人はフリーレンがアウラと対峙しているであろう荒野へと向かっていた。
その道中、どうしても拭えなかった違和感を話さないと手遅れになる可能性があると思い向かいがてらで3人に聞いてもらう事にしたのだ。
「と、言うとどんな事でしょうか」
「……私達が戦った不死の軍勢は、対策を練れば思った以上に弱かった」
「弱かったなら良いんじゃねえの?」
「ん?……いや、待てよ?リーニエ、もしかしてだけど君が言いたいのは『熟練の騎士達を媒介にしてる割には弱過ぎた』そう言いたいんじゃないのか?」
「……!さすがソール、私の事なら以心伝心」
「やっぱりか。俺も手応え無さ過ぎるとは薄々感じてたからな」
ソールになら直ぐに伝わると思ったけれど予想以上、本当に何も言わずとも意味を完全に理解してくれる。
頼りになる私の相棒、ふんす。
「つまり……どういう事なんでしょう?分かりますか、シュタルク様?」
「うーん……あっ!つまりこういう事か!『アウラの魔法は生前の力をそのまま引き出す』、でも騎士達は思った以上に弱かった……なら『そもそもアウラがアウラで無いなにかである』可能性!?」
「そ。私もこの前姿を見たけど正直本物のアウラを知らないから分からなかった」
ソールは昔から存命している七崩賢の能力をフリーレンに叩き込まれていた、と話していた。
その中のアウラの能力は『魔力の高い側が対象の肉体と魂の絶対服従の支配権を得る』という能力の魔法。
つまり操られた彼らの鍛えた肉体と魂に刻み込まれた技術どちらも掌握する事になる。
アウラが支配するのはどれも一級の騎士だと言うのは昔から聞いていた、だからこそ私は初めて対峙してみて瞬間的にそれを察知出来た。
「正直な話だが。俺もその線を探っていたところはある。……不死の軍勢と対峙する前からな」
「と、言うと?」
「…………俺は『本物のアウラ』に会った事があるかも知れない。ただ、名前だけ同じ別人かも知れないと話してなかったが」
「それは、一体どこでですか?」
「旅の途中の村でな。あまりにも穏やかに暮らしていた上にフードを被っていたから人間だと思い込んでいたが……一度もフードを外した姿を見た事が無かった。それに『ずっと昔に亡くなった大切な人の墓』に毎日通っていたんだ、ここを離れる訳には行かないって言って。彼女は高く見積っても16、7にしか見えなかったから違和感を覚えたが」
「……まさか、アウラが改心してそんなとこに?」
「それは有り得ないはずです。普通の魔族ならリーニエのように人間と関わる機会すら無いはずなので。……しかし、今はそうとしか考えられないのも現状ですね」
「とにかく、ソールには顔を確認してもらう必要がある。その『アウラ』と顔が一致したなら偽物の可能性が高くなるはず」
素直に驚いた。
まさか私以外にも『こう言う魔族』がいる可能性があるなんて。
それも七崩賢、ソールの話には曖昧な点が多いけれどもしもそうならいくら強くてもフリーレンに見破れるかどうかは分からない。
「ああ。少なくともリーニエの上司である『アウラ』って10年前にはここにいたんだっけ。ずっと」
「うん。この街の周辺を離れた事は無いってリュグナーから聞いた」
「……なら顔だけ確認すれば良い。もしも俺の見た『アウラちゃん』なら確実に別人だから。何せ俺が見たのは5年前だ、しかもいくら飛行魔法があっても数日は掛かる距離に位置する。『一人二役するのは有り得ない』」
「頼りになる。さすが相棒」
「偶然とはいえ俺とリーニエの情報でここまで洗い出せると最強の2人って感じするよな!」
ソールとそっとハイタッチを交わす。
まだまだ表情を表に出すのは苦手だけれど、こう言うスキンシップなら人間と同じくらいに出来るようになった。
……ソール限定ではあるけど。
そう思うと少しだけ胸がドクンドクンと高鳴る。
「はいはい、2人とも盛り上がるのは全部終わってからですからね」
「っし!んじゃ緊張するけどそろそろ気引き締めるか!」
「だな。それと、もしも『そう』だったら俺は左腕だけを後ろで組む。それをハンドサインとしてくれ。ギャンブルにはなるが作戦がある」
でも今はそんな事をしてる場合じゃない。
彼の作戦が何かは分からないけど、万が一フリーレンが苦戦していた場合に備えて彼の作戦にも乗っておかないといけない。
そう思って足を早めるのだった。
「……おかしい。アゼリューゼは魔力の高い側に絶対のはず」
「ええ、そうね。それが何かしらフリーレン?」
「だとすればここまで偽装してた上で魔力量の多い私の方が勝てるのが道理。でもそれは『いつまでも平行になっている』。何をしても変わらない……どうなっているのかサッパリ分からないね」
「……それに『どうして魔法を解除する魔法を使っているのにその鎧達は動いているのか』も興味深いね。一本取られた」
その頃、フリーレンは存外な苦戦を強いられていた。
目の前のアウラから感じる魔力量は間違いなく彼女より低いもののはずだった、だからアゼリューゼを逆手に取って支配し自害させる算段で一瞬で蹴りを付ける予定だったのだ。
それが、いつまで経っても天秤は平行を保ったまま。
おかしいのだ、どうあっても魔力量が同じな訳が無い。
最初はそれこそアウラに天秤が傾いていなければ、そしてそこから徐々にこちらに傾かせて絶望させなければならないのに。
天秤は不動であった。
そして何より、魔法を解除する魔法を使用しても動き続ける鎧達。
『有り得なかった』。
支配されているのであればそれが効かない道理は無い、必ず効果がある、断言出来る事だ。
それが全く効果が無い、フリーレンは負ける事は無いだろうが取り逃がす可能性も高いだろうと僅かに焦りを感じていた……尤も、それを表に出す程経験が浅くなかったが。
「ふふふ、どうしてかしら。80年会わない間に貴方が腑抜けただけじゃないの?」
「……」
あくまでも挑発してくるアウラにも動じてはいない。
攻略法を何とかして生み出そうと冷静に思考に耽っているだけだ。
しかしその思考は思わぬところから遮られる。
「フリーレン!遅くなった!」
「ソール……それにフェルンとシュタルク……に、アンタもか。まあいるだろうとは思ったけど。みんな終わったんだ」
案の定だった。
私の見立て通りフリーレンはアゼリューゼの攻略に失敗している……否、そう思わされている別の魔法に惑わされていると直感した。
彼女はかつて4人パーティでグラオザームとベーゼに勝利している、そのポテンシャルを考えるなら80年で積んだ研鑽も相俟ってアウラへの相性は良いはずだ。
それこそ一瞬で天秤を傾かせ決着を付けててもおかしくない。
それが出来ていない時点で……そういう事だろうと察知した。
瞬時にソールの左手を見る。
「……」
彼の左腕は後ろに組まれていた、つまりアウラは『偽物』。
顔色1つ変えず不自然な事も何も無くフリーレンにすら見抜かれる事もなくやり遂げている。
ぞわりとした……彼に、嘘と真実を見抜く魔法を使役するソールに嘘や隠し事をさせるとこうも場を掌握するのかと。
事前に言われていなければ私でも気付けたか分からない。
シュタルクとフェルンも同じなのか、冷や汗をかいている。
「あら、餌が増えたわね」
「うわぁ……アウラちゃんの見た目と声で人の心無さそうな事言うと違和感しか覚えねえ……」
「何か言った?」
「いいや何も?それよりそのアゼリューゼは発動させないのか?」
「しなくてもそこの4人程度どうにでもなるわ。それとも服従したいのかしら?」
「んなもん願い下げだよ」
ソールは直前にこう話していた。
「良いか?俺の『真偽を見抜く魔法』はその名の通り『嘘』なら何でも見破る。それは幻影なんかでも俺がそれを『現実だと思わない限り』この魔法は発動可能だ。そして発動すれば嘘つきも、魔力偽装も、幻影も、そして姿が変化していたとしても……白日の元に晒す。フリーレンは対策してるのか全く効かないけど例外はそれだけ、相手がどれだけ強くても無条件に突破する」
「って事は……」
「もしも化けているなら、本当の姿を剥き出させる事が可能……という事ですね?」
「そうだ。だがこんな無敵っぽい魔法だが発動までに時間が掛かるからな。3人には悟られないように平常心でいてもらいたい。時間稼ぎは俺自身がやる」
「……分かった、ソールを信じる」
「だな。俺達が喋っても余計な事しか言わなさそうだし」
「それはシュタルク様だけです」
「え」
発動までは恐らくまだほんの少し時間が必要だろう。
私には何も出来ない……いや、信じる事は出来る。
この5年間見てきたソールなら、きっと。
私の信じるソールなら、大丈夫だ。
「――時は満ちたぜ」
村の子ども「あーちゃん!遊んで!」
アウラ「ご飯の下準備したら遊んであげるからちょっと待ちなさい。全く……この村の男連中は代々揃って貴方に似てるわね――ヒンメル」
という訳でソールが遭遇した村にいる『アウラちゃん』は『本物のアウラ』でした