リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結) 作:リーニエたんhshs
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「時は満ちたぜ」
「……?何の事かしら?」
「なあ、アウラ。お前本当にアゼリューゼは使わないのか?」
「ええ、何せフリーレン以外には使う必要が無いもの」
俺は最終確認と言わんばかりに偽物と断定したアウラへと言葉を投げ掛ける――この魔法は相手の全ての魔法を貫通して真実を白日の元へと晒す、攻撃力は0ながら通りはチート級の魔法だ。
それだけに発動には自身の精神状態が何よりも重視される……つまり、こういった時こそ平常心にならないとならない。
「成程な」
そしてこのたったの一言二言で俺の気持ちは固まった、平常心に戻る事が出来た……アウラなら少なくともフリーレンとリーニエ以外の俺達3人は傀儡にしてきた騎士より強く映り、且つ即傀儡に出来そうな存在のはず。
それなのに傀儡にしないというのは些か七崩賢時代の、フリーレンと対峙した時のアウラのエミュレートが足りていないな。
「……」
フリーレンも何かに気付いたのか、俺の意図を汲み取って察しているにも関わらず演技を続けている、有り難い限りだ。
これで躊躇しなくて済む。
「『
「――なっ!?」
俺は左腕をそっと偽アウラに向ける。
この魔法は普段は詠唱無しで使用するものだ、だが威力を最大出力まで上げて無条件貫通にする時のみ詠唱が必要になる。
だからタメが必要にもなり、一撃で嘘を暴けるものの魔力消費コスト的には良くないものになっている。
それはさておき、白い光が偽アウラを包み込む。
「うおっ、眩しっ」
夕暮れのちょっと暗くなってきた景色には刺激の強い光という事で割とフリーレンには迷惑がられているが気にしない、だって奥の手だもの。
これが無いと今回は何も攻略出来なさそうだから許してほしい。
そして光が晴れる、そこにいたのは――
「――私の魔法は完璧だったはず。何故バレた?」
「まさか……アンタが生きてるとはね……『グラオザーム』」
「おいおいマジかよ」
『奇跡のグラオザーム』、かつて勇者一行が倒したはずの七崩賢。
フリーレンを持ってして『倒した』そう断言した魔族が目の前にいる……これは今までのカラクリがなんとなく全部解けた気がするな。
「ええ、フリーレン……貴方のいた勇者パーティーに殺されかけ、間一髪魔法を使い欺き命からがら逃げ。そこから70年程は再起すら出来ずに隠れて過ごす程の重傷を負っていましたからね。約10年、この10年でようやく、ようやく私本来の力が戻ってきたんですよ」
「ふーん……そこの騎士達を操ってたのも、つまりはアンタの魔法の一部な訳だ」
「その通り。
「思わないね、そんな外道な魔法」
やはり、だ。
聞いていた魔法の主能力は『対象の願望を幻覚として見せる』。
つまり肉体が時間を巻き戻して動き出すのは『生物としての願望、本能』だからあの魔法の対象としてアゼリューゼのように動かせる。
残酷な事に一度切断したものは元には戻らないから頭を無くした騎士達をも再現出来るというドクサレ外道振りだ、恐ろしい奴だよ。
しかしお陰で10年間ずっとアウラと、部下含めて全員を欺けていたという訳か……
「あとソール、危ないから早いとこ戻ってきて。心臓に悪いよ」
「いやーそれは分かってるんだけどね」
ところで、だが。
俺はわざわざフリーレンより前に出て偽アウラ……グラオザームと対話していたのには意味がある。
「『どうやら逃げられなくなっちゃったみたいでさ』」
敢えてグラオザームの魔法に囚われる。
フリーレンにすら教えていない、というよりこの5年の間に習得した真の奥の手を完璧に発動させる為には相手の幻惑や幻想魔法を一度受ける必要があるのだ。
「私の正体を見破った事は賞賛に値しますが……所詮それだけ。眠りなさい――
みんなが、特にフリーレンとリーニエが何か言っているが微睡みに落ちる俺には聞こえない……悪い、説教は後で聞くから今はこの魔法と戦わせてほしい。だって事前に言っても止めるでしょ君達。
心の中で言い訳と謝罪をしながら俺の意識は落ちていくのだった。
「……はっ!?ここは……んなぁっ!?」
目を覚ます、俺はここが夢だと分かっている。
だが夢だと分かっていて囚われ犠牲になった人間は何人もいる、気を付けねば……と寝ていたベッドの隣を見て思わず叫ぶ。
「ん……おはよ、ソール」
着崩れたネグリジェに首にはキスマークが着いた、俺より見た目年齢5歳くらい若い、可愛い可愛い女の子。
……リーニエだ、リーニエが隣で寝ていた。
おいおいよりにもよって1番見たくない、見たい夢を見せてきやがったなグラオザームの奴。
「……おはよう。今日も可愛いよ」
「照れる。それに、昨日は沢山愛してもらえたし……ぽっ」
しかもリーニエの再現度高いな。
この子効果音たまに口に出すんだよな……『ふんす』とか『どやぁ』とか、めちゃくちゃ可愛くて好きなんだけどここでその再現されるとまるで現実に見えて嫌になってくる。
現実だったら良いのに現実じゃないもんなここ。
しかもキスマーク付きに気崩れたネグリジェ、沢山愛してもらったって言葉から察するにそういう事だよなこれ。
『エッチな事したんですね!?その可憐で幼気な魔族の女の子とエッチな事、したんですね!?』
俺の脳内に突然響く紫ターバンのオッサン勇者ボイス。
違う確かにシチュエーション的には事後だろうけど俺自身は何も、ナニも出来てないんだよ……!!
したいのは山々なのになんで本番シーンが無いんだグラオザーム、おのれグラオザーム許すまじ。せめて見せろそれくらい。
「今日は俺が朝ごはん作るよ。多分足腰ちょっと疲れてるでしょ」
「私なら平気だよ。でもソールのご飯好きだから甘える」
「了解、それじゃ作るまで寝てても良いから」
「はーい」
……まあ、今すぐ帰っても本当は良いんだけど。
夢の中でとはいえリーニエを蔑ろにはしたくなかったからな、朝ごはん食べたら本当の事を話して帰ろう。
甘美な夢だけれど、夢は夢だから。
「どう、美味い?」
「やっぱりいつ食べても世界一美味しいよ」
「そりゃどーも」
幸せだ――覚めたくない程に。
ああ、そうか。
グラオザームの夢は『夢か現実か曖昧にする』のではない、アイツの本当に厄介な根本的な事は『夢と分かっていても覚めたくないような夢を見せる』事にあるのか。
対人間に関しては最強格の1人だと言わざるを得ないだろうな。
「ねえ……このままずっと一緒に、私と一緒に暮らそう?フリーレンやシュタルク、フェルンも遊びに来てくれるし……あの人だってたまに来てくれる。これ以上私は何も要らない。これが私にとっての幸せなんだよ」
「……なあ、リーニエ」
本当に……本当に、惜しい夢だ。
このまま抱き締めたくなる、愛を囁きたい、ずっと共に暮らしていたくなる、現実ではこの後フリーレンに認めてもらえるかどうかも分からない、それ以前にグラオザームに勝たなきゃならない。
そんな事もここでは無い、全てから解放される。
「なに?」
「俺は……」
でも。
でもダメなんだ。
どれだけ幸せでも。
どれだけリーニエが愛してくれていても。
どれだけリーニエが好きでも。
――いや、リーニエが好きだからこそ、大好きだからこそ、愛しているからこそ。
「俺は、この夢からおさらばしないと行けないんだ。だから、今君に甘える訳にはいかない」
「……」
リーニエは、笑う。
きっと、その言葉を待っていたと、信じていたと言わんばかりに。
「ソールなら。そう言うと思ってた……『私の事、幸せにしてね』」
「ああ、任せておけ。絶対、何があっても……幸せにするから」
リーニエは斧を生成する。
夢から覚める方法は、この夢の世界からリタイアすれば良い。たったそれだけの事だ。
「『行ってきます』」
「『行ってらっしゃい』」
ただ、1つだけ言いたい。
「……自分の首が飛ぶ瞬間ってのは、どうあっても二度と体験したくないや」
カチリ、と音がした。
それは『俺の真の奥の手』が発動した音だった。
「なっ――何故だ」
「何故『私の魔法が発動出来ない』……!?」
「――かつて北の三大騎士と言われた彼に敬意を……真実には特定の時などない」
「『
『真偽を見抜く魔法《ヴェリテール》』
ソールのオリジナル魔法
フリーレンを除いた全ての存在に対して無条件で発動可能。全ての真偽を見抜く
殺傷能力は0だがアインザームやグラオザームと言った幻影や幻覚、擬態を得意とする魔物、魔族に対してその全てを無効にする
1番タチが悪い相手に対して逆に1番タチの悪い魔法
『真実はどんな時代にも真実である《ヴァールハイト》』
フランス人哲学者、アルベルト・シュバイツァーの名言
ソールが発した『真実には特定の時などない』を前に付けたものが正式な名言である
人でありながら七崩賢に1人で立ち向かいそのまま帰らなかった北の三大騎士ヴァールハイトの勇気に敬意を払って名付けられた
あとがき
実は2話執筆段階から偽アウラはグラオザームだったんですがね、117話来るまでは「コイツどう扱おう…一応今作本編最後の敵なんだけど…」ってなってました、はい(1話執筆途中までの段階でのみアウラがそのままラスボス予定だった)
ありがとう117話、グラオザームの能力開示してくれてありがとう
お陰で応用に関しても辻褄合わせられたし話し方も知れたよ
きっとアイツめちゃくちゃ魅力的な敵キャラになるからみんなも今から原作読もうな