リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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第15話『終焉』

「かつて北の三大騎士と言われた彼に敬意を……真実には特定の時などない――『真実はどんな時代にも真実である(ヴァールハイト)』」

 

 俺の奥の手『真実はどんな時代にも真実である(ヴァールハイト)』。

 コイツの使い方は中々にヤンキーというか、非常に捨て身過ぎて今まで自分以外の誰にも明かした事が無かった――尤も、完成してから話せるような相手はリーニエだけだったが。

 勿論手紙にもフリーレンに一切悟られないように徹底していたからバレなかったし、バレなかったから大慌てされてたけど。

 

 閑話休題。

 

 使い方だが『相手の嘘を司る魔法を受け、そこから脱出してくる』という圧倒的シンプル且つ命懸けなものである。

 つまりは技の全てを身を持って体感し破る事でその構造を理解し魔法式を破壊し俺の魔力が底を尽きるまで封印し機能停止させるという聞いている限り最も脳筋な魔法だ、確かにこれが1番手っ取り早いと言われたら否定出来ないのだから笑えない話だが。

 

 これをするに当たってアインザームが100匹くらい犠牲になったが尊い犠牲だったと思っておこう。

 だって見せてくる幻全部リーニエだったからつい……

 そのお陰で心構えは出来てたし耐性もある程度出来ていたのか、冷静に死ねたから無駄な死にはなってないだろ、多分。

 

 しかしそんなショッキングだろう光景をリーニエ達は見せられた訳で、これをしてる間多分リーニエとフリーレンがバチくそグラオザームにキレてたのは想像に易い。

 ビックリしてる中にちょっと潤んでる瞳が見えたし、2人分。

 どっちも俺の事そこまで好きだったんだなあとちょっと場違いにニヤニヤしたくなるのを抑える。

 

「俺の魔法はどうだったかな、グラオザームくん?」

 

「……私に何をした?何故戻って来れた?」

 

「オイオイ勘違いするなよ、お前自身には何もしてないんだから。俺がした事は1つ。わざと魔法を受ける事で直接魔法の術式を読み取り術式を破壊しただけ、つまり何かしたのは魔法に、なんだよ」

 

「魔法を直接破壊した……そんな芸当が可能なのか……?」

 

「ああ、可能だぞ。実際やったんだから」

 

 しかし理論上相性次第で七崩賢にも相討ちレベルに持ち込めるくらいの実力は付けたと思ったが、ここまで有利に立ち回れる相手がいるとはな。

 マハトやアウラちゃんには間違いなく勝てないのは言わずとも分かってるし、こうして飄々と言っているが相手は相性が良いとはいえ七崩賢、あのまま取り込まれる可能性もあったから割と命懸けだった。

 

「…………ソール」

 

「後でお説教だからね」

 

「…………ぁぃ」

 

 自慢げに語ってドヤ顔していたが後ろから両肩をポンと叩かれる……言わずもがなリーニエとフリーレンだ。

 振り返ると涙目で更に力を込めて来たので全てを察して青ざめながら返事をするより他無かった。

 だってヒンメル達でも化かされたって言うなら封印するしか方法が無いじゃないか……俺は悪くないぞ……

 

 いや、まあ謝るけどさ。

 

「……やっと力を取り戻したというのに。生き残ったというのに。終わるのか、私は」

 

 そんなやり取りを聞きながら、バタバタと倒れていく鎧達には目も暮れずにこちらを見つめるグラオザーム。

 茫然自失といった感じか、そりゃ数百年懸けて研鑽してきた魔法を封じ込められれば誰でもこうなると言われたらそうだろうが。

 

「多分お前は俺が居なければフリーレンからまた逃げられてただろうな。こればっかりは俺がいた事を恨むと良いさ」

 

「説教は後でするけど、それはそれとして良くやった。後は任せて良いから」

 

「ま、俺だとここからでも相討ちが精々だろうしな」

 

 フリーレンが前に出て、俺はそっと下がる。

 後は何もしなくても良いだろう……魔力切れさえ起こさなければそれで。

 引き締めていた気をフッと抜き、安心させるような笑顔でリーニエの頭をそっと撫でる……彼女にはかなり心配掛けさせただろうからな。

 

「心配掛けたね……ごめん」

 

「後でお説教する」

 

「うん、そうだね。いくらでも聞くよ。……フェルンとシュタルクも、悪かったな」

 

「ったく、ビビらせんなよなぁ……」

 

「……流石になにか一言言ってくれないと分かりませんよ」

 

「ははは……」

 

 仕方ない、何時間でも説教は受けよう。

 後ろで物凄い爆発音が響き渡る(フリーレンが瞬殺する)のをBGMにしながらそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、長かった……」

 

 もう夜も更け、深夜に差しかかるかと言う段階でようやく俺は解放されていた……ここまで都合5時間程、ずっと説教やら何やらを受け続けていた。

 仕方ない、説明してなきゃ死んだと思われていたような行為だったからこればかりは甘んじて受けておかなければ多分殺される勢いだ。

 ブルブルと震えながら鬼の形相でガミガミ言ってきていた2人を思い出す。

 

「てか2人共息ぴったりだったじゃないか……どうなってるんだよ、フリーレン……」

 

 認めてもらえるかどうかって話だったはずなんだがどうしてそんな事微塵も気にせず話してきていたのか全く分からない。

 だってあのエルフ初対面で問答無用の殺人ビーム放ち掛けてたんだぞ、そこからどうやったらあそこまで仲良く……仲良く?なったのか俺には理解が遠く及ばない。

 

「……ソール?起きてる?」

 

「リーニエか、まだ寝てなかったんだ」

 

「うん。貴方に伝えたい事があったから」

 

 そうしてうんうんと唸っているとリーニエが部屋までやってきた。

 なおこの日は伯爵の用意した宿に泊まっている。

 

 それはさておきこんな夜遅くまで起きてるとは……伝えたい事があったと言ったが何かあったっけか。

 多過ぎて特定出来そうに無いなこれ。

 

「伝えたい事……そっか、俺何かしたっけ?」

 

「したよ。……凄く沢山、してくれた。5年前からずっと」

 

「それはその、俺がしたいからした事だしさ」

 

 5年前からのお礼か、確かに色々とあったな。

 とはいえしたと言えばしたがそれは俺がしたいと思ってした事、改めて礼を言われる程のものでは無い。

 それでも嬉しいものは嬉しいが。

 

「ありがとう、私に沢山人間を教えてくれて」

 

「そう言ってもらえるなら何よりだよ」

 

「お陰で私は……魔族が本来持ち得ない心を知れた。人間に近付きたいという想いが、私を収斂進化へと導いたのかも知れないってフリーレンは言ってたから」

 

「成程、想いが進化を早めた、ね……世の中分からない事だらけだな」

 

 俺としても魔族は分からない事だらけだが、彼らは想いさえ持つ切っ掛けがあれば進化するのも早い可能性があるのだと頭の片隅にでも置いておこう。

 少なくともリーニエはそうだしな。

 

「そうだね、分からない事だらけ。……ねえ、ソール」

 

「どうした?」

 

「私のこの、分からない気持ちも伝えて良い?」

 

「……ああ」

 

 何を伝えてくれるのか、分かるような分からないような。

 そんな曖昧な気分になり、緊張してしまう。

 

「もう、3年くらい前から。ソールを見ると胸が高鳴って、顔が熱くなって、とても心地良い気持ちになる。とても安心する気持ちになる。フリーレンに聞いたら『恋かも知れないけど自分もした事無いから分からない』って言っていて。恋は……本で見たから分かる。だから、この答えを知りたい。恋か、そうじゃないのかを」

 

「ま、マジでか」

 

 それは予想外のような、想定内のような。

 ドキリと胸が跳ねる、ここは答えを間違えられない……この子の為もそうだが俺自身の為でもある。

 

「……俺がもしも他の女の子を好きと言ったら?」

 

「………………」

 

 一発で確定だった。

 その質問をするや否やものすごくしゅんとした顔になった、こんなの見せられては俺としてもこんな焦れったい事すぐにでも投げ出したいくらいだ。

 

「そっか。そこまで俺の事好きだったんだ」

 

「今ので分かるの?」

 

「ああ、バッチリ。――なあ、リーニエ」

 

「……うん」

 

「ずっと一緒に暮らそう。まだまだ旅は続けるけれど、ここを離れるけれど、ずっと俺に着いてきてほしい。俺の隣にいて、笑っていてほしい。大切な、たった1人の女の子として」

 

「うん……!」

 

 もう、彼女が何かに縛られる事は無い。

 この街に縛られる必要も無い。

 そうだ、ここから先は俺と共に歩む人生が待っている。

 

「大好きだよ、リーニエ」

 

「沢山愛を教えてほしい。私も、まだ分からない事だらけだけど、がんばる」

 

 そっと唇を重ねる。

 ここは1つのゴールだろう。

 彼女の心が人間になれたという意味で、そうだろう。

 だが、ここはスタートだ。

 彼女の人間としての生涯がここから始まる。

 

「ソール……だいすき」

 

 その声に、微笑みながら。

 これからの人生を馳せる。

 

 きっと、この未来が幸せなものだと信じて。




次回最終話です
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