リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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これにて本編終了となります


最終話『たとえいつか死がふたりを分かつのだとしても』

 ああ、私は幸せだ。

 魔族として生きているだけでは感じられなかった事だ。

 ソールの胸の中で私は眠っている。

 温かい、人の温もりがこんなにも心地良いという事も、5年前までは全く知らなかった事だ。

 

 私は、告白した。

 そして、告白された。

 人という生き物は『好き』という気持ちを相手に言う事で人生の伴侶にして生涯を添い遂げるらしい。

 きっと、私もソールと共に生涯を添い遂げるのだろう。

 

「……まさかフリーレンに認めてもらえるとは思わなかった」

 

 思い返すのはソールがグラオザームの魔法に飲まれた時、そして説教が終わった直後。

 グラオザームに眠らされた後、私はソールの前に立ちはだかった。

 無防備な彼を何としてでも守り抜く為に。

 その光景を見ていた彼女が正確に何を思ったのかは分からない。

 

 でも。

 

 

 

 

「ねえ……リーニエ、だっけ」

 

「……なに?」

 

「どうしてキミはソールの前に立ったの?魔族は生存本能の塊だからそんな事しないはずだけど」

 

「ソールを守りたかった。私の大切な人だから。私に人間という生き物を教えてくれた。色んな感情を教えてくれた。人間と共に生きていく為の術を教えてくれた。そして……彼の隣にいると、とても心地良い気持ちになるから。守りたかった。こんな気持ちになったのは彼が初めて」

 

「ふーん……はぁ、分かったよ。ソールが気に入るのも無理無いな……リーニエ」

 

「うん」

 

「私はキミを信じる。ソールの魔法とソールがあそこまで信じたんだから、信じられなきゃ息子を信じられないのと同じじゃん」

 

「……あり、がとう」

 

 彼女は認めてくれた。

 半ば諦めたような顔でもあったけれど、殺される可能性まで考えていた私は上手く言葉が出てこなかった。

 それくらい、信じられなった。

 

「あー……後、ついでにだけどさ。もしかしてリーニエってソールの事好き……恋愛感情あるの?」

 

 そして間髪入れずにそんな事を聞いてきた。

 私は正確に恋愛感情を理解出来ていない、でも……恋愛を勉強はしてきた、どんな感情が恋愛に近いものか、沢山調べてきた。

 ……本人には何故だか聞きたくなかったけれど、彼女になら。

 今の、認めてくれたフリーレンになら聞いても良いかもしれない、そう思った。

 

「恋愛感情……ずっと隣にいたい、胸に抱かれていたい、近くにいると心地良い気持ちになる、胸が高鳴る……そういうのが人間で言う恋愛感情に近いものだとは聞いた事がある。全部当てはまるけど……そう、なのかな?」

 

「……正直、私も恋愛ってした事無いから正確な事は分からないんだけどさ。それは多分、恋愛感情だね」

 

「これが……」

 

「伝えてきなよ、本人に」

 

「良い……のかな」

 

「良いでしょ、ソールもキミの事は目に見えてラブなんだから」

 

 そう言って背中を押してくれた。

 彼女は本来、こういう優しい性格なのだと理解出来た。

 魔族に関してだけどうしても譲れない感情があるだけで、私の事も信じてくれた。

 心が温かくなるのを感じた。

 

 

 

 

「起きたらお礼言わないと」

 

 そうして私は今に至る。

 彼女に背中を押されたから、幸せになれた――でも。

 

 

『でも、覚悟しとかないといけない事があるよ。……魔族は長命だ、何百年も、それこそ生きようとすれば1000年以上だって生きられるんだ。人間は、精々長く生きられても100年と少し。キミは、確実に100年先でソールがいない人生を送るんだ。それでもキミは――先に置いて行かれたとしても、共に生きたいんだね?』

 

 

 同時にその時追加で言われた言葉が脳内を巡る。

 確かに分かっている、魔族と人間では生きる時間が違い過ぎる。

 所詮人間は100年、それに比べ魔族は殺されない限りエルフに次ぐ寿命を持っていると聞いた事がある。

 人間を襲うから殺されるだけで理論上1000年を生きられると。

 

 ……私はこの世に生を受けて100年程度だ。

 

 なら、理論上800年以上をソールのいない時間を過ごす。

 

「……こわいなぁ、それは」

 

 とても、とても怖かった。

 大好きな人が隣にいない、孤独。

 魔族は生まれながらにして孤独だ。

 人間と違い親という存在が居ない、だから孤独は当たり前に享受されたもののはずだった。

 

 だが、私は変わってしまった。

 人の温もりを、ソールの温もりを知ってしまった。

 そして愛を知ってしまった。

 だから、孤独が怖くなってしまった。

 

 そんな事を考え続けてしまえば、きっと押し潰されてしまう。

 それを誤魔化す為にソールにギュッと抱き着いて、眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、リーニエ」

 

「……うん、おはよ」

 

「どうした?元気無い?疲れてる?」

 

「だいじょぶ」

 

「そ、そう?」

 

 結局、上手く眠る事が出来なかった。

 夢見が悪かった……正確に言えば、ソールのいない未来を夢に見てしまっていた。

 重症だなあ、と自己嫌悪に陥る。

 心配させたくなかったのに。

 

「おはよう」

 

「うわぁフリーレンが早起きしてるゥ!?」

 

「……どうしてフェルンもシュタルクもソールも似たような反応になるのかな」

 

「当たり前です、フリーレン様が早起きするのは年に数回もありませんから」

 

「そうだなあ」

 

「ぐぬぬ……」

 

 一旦それは見せないように顔を引き締めておこう。

 ところで彼女はしっかりしていると思っていたが存外ズボラらしく、私と似通っている部分があると勝手にシンパシーを感じてしまう場面を昨日から少しずつ見つけている。

 

「あ、リーニエ。おはよう……何か悩んでる事ある?」

 

 だが、やはり本質はこっちだ。

 フリーレンは人の気持ちに寄り添える、それでいて良く気付ける存在だ……恋愛を除けば、にはなりそうだけど。

 だから隠していても私の不調に気付いたし、まどろっこしい事が苦手ともソールから聞いていたストレートさもその通りだと実感してしまう。

 

「ん……昨日言われた事、ちょっとだけ」

 

「そう。……まあ、ソールにも話しておく事だし朝ごはん待ちながらちょっと話そうか」

 

「あー……じゃあ俺はフェルンの手伝いでもしてくる」

 

「気が利くね」

 

「そうですね、折角ですからシュタルク様にも料理の勉強をしてもらいましょうか」

 

「え」

 

 フェルンとシュタルクはそれとなく席を外してくれているのが分かった、これは3人で話すものだと理解しているのだろう。

 人間はそういった気の回し方が上手い、私も見習っていかないといけない。

 

「話って改めてなんだよ。つーか2人共仲良くね?もう認めてもらったのか?」

 

「ん。フリーレンは優しかった」

 

「この子信じられないとソールを信じない事になりそうだから折れただけだよ。で、話だけど……ソール、この子は確かに心は人間に近付いてると思う。だけど身体はそのままだっていうのは理解してるよね?」

 

「そりゃな」

 

「じゃあ……寿命の事も、理解してる?」

 

 ソールはその質問に一瞬目を見開いたが、諦めたように瞑り、ふぅと息を大きく吐き出す。

 次に目を開けた時には困ったような笑顔をしていた。

 

「……まあ、目を反らせない話だよな」

 

 本当はもう少し先延ばしにしたかったのだと察する事が出来た。

 彼は優しい、だからこそいつ、どうやって話そうかと言うのを悩んでいたのかもしれない。

 

「ソール、キミは人間だ。私のような半永久を生きるエルフでも、それに次ぐ寿命を持つ魔族でも無い。長くてもたった100年を生きる事しか出来ない種族だ。ソールはこの子を置いて死んでしまう事を分かってて告白した?」

 

「……ああ。俺は、たとえ時間の流れが違ったとしても、1人にさせてしまうと分かっていても、それでも愛したいと思っている。少ししかいられないからと諦めたくない。先に逝って寂しい想いをさせてしまうというなら沢山の形ある思い出を遺す。少しでも寂しくないように、いつも近くに俺を感じられるものを遺すさ」

 

「ソール……」

 

 ソールの言葉を聞いて、私は強く心を打たれるのを感じた。

 生きる時間が違うのだとしても、彼は全力で寂しくないように努力をしてくれる……そう分かっただけでとても、とても、嬉しく、心が温まる感覚になった。

 

「それにさ。俺が先に逝っちまった時は……フリーレン……母さんがいるだろ?2人で旅してさ、もう一度魂の眠る地に来てよ。そこに多分俺はいるから……」

 

「……そこまで考えてたんだ」

 

「まあね。何せ母さんが旅してる理由が『魂の眠る地まで、ヒンメルに会いにいく』だろ?だったらこれだってありだろうってね」

 

「それなら……それなら、多分。さみしくないよ、私」

 

「そっか。そう言ってもらえると俺の不安も無くなるよ」

 

「私が魔族の子と旅ね……不思議な事もあるもんだ。でも、この子となら悪くない」

 

 不思議と、ソールの話を聞いていると不安が拭われる感じがした。

 何故だかは分からないけど、きっとそれは彼が本気で私とフリーレンの事を想って言ってくれているからだと思った。

 

 

 

「よし、じゃあ改めて……俺はリーニエ、君を愛している。きっと俺は君より先に死んでしまうけれど、ずっとずっと、たとえ死んだとしても、魂だけになっても、永遠に一途に君だけを愛する事を誓うよ」

 

「私も……ソールの事がだいすき。愛してる……の意味は、全部は理解出来ないけど。私も愛してる。だから……ずっと離さないよ。ソールとずっとずっと、一緒だから」

 

 隣にいるソールの指に指を絡ませてそっと彼の肩に身体を預ける。

 こうして彼の温もりを確かめる事が何より私の安らぎになるのだと気付いたら、もう抜け出せないのだ。

 

「……シュタルク、フェルン、ご飯出来てるなら言ってくれれば良いのに」

 

「え!?いや、ははは……言いに行こうと思ったら良い雰囲気だったから言い出せなくて……なぁ?」

 

「空気を読みました」

 

「……う、恥ずかしい」

 

 ……そう言えば2人の存在を忘れていた。

 とても恥ずかしい、顔がこんなにも赤くなったのは生まれて初めて、間違いなく。

 

 ああ、でも。

 でも、凄く幸せだ。

 こんななんでも無いような日常が、愛おしく思う。

 

「の、割にはニヤニヤしてるな?」

 

「……だって、幸せだから」

 

「へへ、嬉しい事言ってくれちゃってさ。……俺も、幸せだよ」

 

「うんっ」

 

 ソール、愛してるよ……と、見せつけるようにそっと口付けをするのだった。

 

 

 

-完-




これにて完結です、ありがとうございました!
最後のシーンのフリーレン、シュタルク、フェルンの反応は各々読者様で妄想していただければ幸いです

さて番外編ですが
『全部やれ』が他の合算得票数すら上回る勢いなので予定としては全てやらせていただきます
番外編1話の投稿目処が付き次第アンケートを締め切り完全決定とします、投票ありがとうございました

また、感想や評価投票等もしてもらえればその数だけ作者の喜びや勉強になりますのでよろしかったら是非お願いします!
まずは一旦!ここまでお読みいただきありがとうございました!
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