リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結) 作:リーニエたんhshs
本編小噺
ソール
・自分が本当のところ何歳なのか気にした事が無い。元よりもっと気にしてないフリーレンと共にいた為である(推定19〜20歳)
・死にかけの設定であるが元々女好きでありナンパ癖があった、がリーニエと出会ってからは一度もしていない(主に死に設定なのはそのせい)
・幼少期からフリーレンの世話をしていたせいで家事万能
リーニエ
・魔族としての性格的特性がほぼ無くなった
・人間としての彼女は『表情筋の動きが少ない』『寝るのが好き』『面倒臭がり屋』『魔法収集オタク』
・何かと性格がフリーレンと似通ってる為気が合う
・自分の魔法を鍛える為に無限に魔法を模倣しまくっていくスタイルになり魔導書を収集するようになった
「何の本を読んでるんだい?」
「秘密よ秘密。……ところでアンタ、好きな食べ物とかあるの?」
「僕かい?僕はルフオムレツが好きなんだ、昔からずっとアレが一番さ」
「ふーん……」
「アウラは何か好きな食べ物は出来た?」
「……まあ、蛇串焼きは悪くないわ」
「だろだろ!」
……私がヒンメルに負けて服従させられてから半月が経った。
今までは1年、いや10年ですら大した時間では無かったのにこの半月はとてもとても長い時間のように感じられた。
ただでさえ慣れない人間の社会、文化を学ばないとまともに生きていけないようにされてしまったが故に不本意に不本意を重ねて学ぶしか無いとしたくも無い勉強をしていたのが大体の原因だろう、しかしお陰で後々の数十年は多少楽に暮らせるようになると思えば断腸の思いで我慢出来た。
それにあの蛇の串焼きは悪くない、この慣れない社会で暮らしていく上で食事が癒しの一時になるとは思いもよらなかった。
「アンタは能天気で良いわね、私は人間社会に適応する為に様々な事を覚えなきゃならないってのに」
「でもそうして覚えていってくれるだけでも僕としては嬉しいよ」
「仕方なくよ。アゼリューゼを使われている以上私に生き方を選ぶ権利は残されていないもの、ならその環境下で生きていける術を見付けるのは必然ってワケ」
「まあ……その、それはごめんね?」
「……謝ってんじゃないわよ。個人的には不本意で不満ではあるけれどそれがアンタのやるべき事だったんでしょ?それなら謝るのはアンタ自身の格を落とす事になるわよ。私は勝手に不満を言うだけだから気にしなきゃ良いのよ」
自分でも驚くくらい自分らしくない言葉が出たと思ってしまった。
こんな奴の事フォローする必要なんて全くもって無かったと言うのに、何故だか自然とそんな事を口走っていた。
案の定、ヒンメルも驚いていたし。
これはこの後が大変そうだと溜め息を吐きたくなる。
「アウラ……ありがとう。確かにそうだよね、大切な事を忘れるところだった」
「ふん、らしくない事言ったわ。忘れてちょうだい」
「いーや忘れないね!僕の脳内に永遠に保存しておくよ!アウラと仲良くなれたって分かった最初の言葉なんだよ!忘れられる訳が無いじゃないか!」
「あーもう引っ付いてくんじゃないよ!言わなきゃ良かった!」
「友達とのスキンシップくらい許してくれても良いじゃないか……」
「あのねえ、私は魔族と言えど一応女なワケなんだけどその辺分かってやってるんでしょうね……」
「……あ、いや、その……ごめん」
「いや今更赤くなるならやんじゃないわよ本当に!!ウブか!?ウブなのアンタ!?」
もうほら、言わんこっちゃないんだから。
この半月だけ過ごしただけなのに何となくコイツの習性が分かってきてしまっている事に悲しみを覚える。
とにかくコイツは単純で馬鹿なのだ、どこまでもストレートな表現しか出来ない上に異性と意識してないとスキンシップが激しい。
今までもそんな事が多々あった為にこの際で突っ込んだのだが本当に意識していなかったと分かると頭を抱えたくなる。
しかも異性への耐性全く無いという衝撃の事実も判明してしまった。
コイツもしかして……
「ぼ、僕とした事が……」
「ねえ、ヒンメル」
「な、なんだい?」
「もしかしてアンタって童――」
「それ以上言わないで!?事実だけど言われるとそれはそれで僕へのダメージが甚大だから!」
「ああそう……」
案の定だった。
ウブであるとはいえまさかそんな事はと思っていたがあまりにも案の定で最早虚無になってしまう。
確かコイツ16の時に旅に出て10年で魔王様を倒したって勝手に喋ってた事あったけれど、そうなると今は26……この半月で学んだ事だが人間社会では10代の内に経験する事も多く20も後半ではかなり遅いと聞いた。
……大丈夫なのかしら、これ。
いや私がわざわざコイツの心配をするのには理由がある。
何せ残り私の勘では50年をこの男と共に過ごさねばならないと感じている、ともすれば私の隣に50年立つのもまたコイツだ。
つまり、だ。
せめて自分の隣にいても恥ずかしくないような人間であってもらわないとこちらの威厳やらプライドに関わるという訳だった。
少し私に抱き着いただけで顔を真っ赤に染め上げるような勇者、万が一にもハニートラップにでも掛かったらそれこそやってられないんだから。
「ぼ、僕はフリーレン一筋だからね!未経験でも気にしないのさ!」
「アンタも健気ねえ……あっちは欠片も気付いてないんでしょうに」
「まあ、気付かれても一緒にはなれなかっただろうし……良いけれどね」
「なんにせよ少しは経験したら?下手なハニートラップに掛かっても困るのだけど」
「そこは大丈夫さ!何とかなる!」
「本当に?」
「気合いで!」
「……はぁ」
ダメだコイツとやはりまた溜め息だ。
こういう奴が一番そういったものに引っかかるのだと私は知っている。
何せ何人かそうやって誘き寄せて食べた事もあるのだから、仕掛ける側になった経験のある私に分からないはずが無い。
だから敢えて断定するがコイツは間違いなくハニートラップに弱い、あまりにも貧弱だ。
フリーレンの事を一途に好きだのなんだの語っていたから謀略されるという事は無いと思うが、問題は耐性の無さだ。
狼狽えている内に攻撃を喰らって致命傷になって死にました、なんて笑い話にすらならない。
私を使役する人間の末路がそんなバカバカしいものであって良いはずがない。
仕方ない、こうなったらプライドの為だ。
「ヒンメル」
「は、はい」
「私を抱きなさい」
「はいいいいいいいい!?」
「あのね、一応私を使役してる立場なんだからたかだかハニートラップに引っかかってもらうと困るのよ。だから耐性は私で付けなさい、良いわね?」
「ま、待って待って待って!?どうしてそうなるんだ!?」
「そういう反応になるからよ」
「意味が分からないよ!?」
確かにヒンメルからしてみれば好きでも無い女を抱くなんて不本意だと思うが、そこは我慢してもらうしかない。
私のプライドの為だ、何がなんでもコイツには女耐性を付けてもらわないと気が済まないのだ。
「確かに好きでも無い女を抱くのは不本意でしょうけれど、ハニートラップで醜態を晒される方が嫌なのよ」
「そ、そういう意味じゃないよ!だって君は女の子じゃないか!もっと自分を大切にしてほしいって思うよ……」
「……魔族相手にそれ言うの?」
「魔族だろうがなんだろうが今は僕の友達だ。それに友達じゃなかったとしても何もしてない子を傷付けるのは本意じゃないんだ。魔族は何かしてからじゃ遅いから仕方なく討伐してるけど」
「ほんっとお人好しが服着て歩いてるってのが合うわねアンタは」
「いくらでも言ってくれ。とにかく僕は君を抱かない。それは君に魅力が無いとか嫌いだとかそういう事じゃない、寧ろ女性としての魅力はこの半月で分かったしちゃんと好意的に見れるようにもなってきたからね!」
……本当にコイツはなんなのだろうか。
冷静に考えてみれば口説き文句として捉えられるような事を口走っている事に気が付いているのだろうか……いや、この馬鹿は気付いている訳が無いわね。
「良いかい?身体を重ねて良いのは愛し合っている者同士でだけなんだ」
「私に愛なんて語られても分からないから困るのだけど。あとそんなに語るならフリーレンとすれば良かったじゃない」
「気持ちを伝えられないのに出来る訳無いじゃないかぁ……」
「そもそも、寿命の差とか何とか言ってたかしら?そんなのそんなに気にする事なのかしら」
私は分からなかった、寿命差が躊躇う理由になると言う事が。
そもそも恋も愛も魔族には分からないのだから当たり前だけれど。
「……そうさ。僕はフリーレンより先に逝ってしまう。それなのに気持ちを伝えても、きっとそれはフリーレンの為にならないからね」
ただ、その言葉だけがはっきりと頭の中に残るのだった。
「……ヒンメル。今ならアンタの言ってた事、少しだけ分かる気がするわよ」
「隣にアンタがいないだけで、こんなにも世界がつまらなくなるなんて思わなかった」
「それに、置いて行かれた側の気持ちにも少しだけ気付けたわよ……何処かのバカに置いて行かれたせいでね」
「ま、良いわよ。私は……私は、貴方の遺言通りありったけを生き続けてあげるから」
「ねえ……そしたら、精一杯生き切ったら。私のこの気持ちの答えを教えてくれるのかしら」
『……僕のワガママだけどさ、君はどうか、ありったけ、沢山、生きてくれ。したいと思う生き方をどうかしてくれ。……大丈夫、今の君なら間違えないって僕が断言出来るから』
『うん。そうだね……この人生楽しかったよ。ありがとう……僕の大切な大切な親友……』