リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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その出会いは、どうあっても――


episode12『宿命I』

「アウラ様、お客様が見えました」

 

「……分かったわ。勧告は出してあるわね?」

 

「はい、村人達には極力外には出るなと言ってあります」

 

「ありがとう。そしたらアンタ達も万が一に備えて避難しときなさい、いくら『あの』フリーレンだとしても何がどうなって被害が出るか分からないもの」

 

「ですが……」

 

 フリーレンが来た、と聞いて大きく息を吐き出し村の警備隊の1人と話す。この警備隊の男は昔から良く私の事を気遣っては話し掛けて来てくれた一族の1人だ。

 こうして残ろうとしてくれているのもまた、一族の血なのだろう。

 とはいえ万に一つでも私とフリーレンが矛を交えるのであればせめて屋内にいてもらいたい、そうでもしないと私の方が心配で気が気で無くなってしまう。

 

「フリーレンとしても私としても村に被害が出るのは本意ではないの。それにこれはフリーレンと私の問題、それに巻き込む訳にはいかないわよ……そんな事したら受け入れてくれたあの人達(80年前の村人達)に顔向け出来ない。……勿論貴方の先祖にもね」

 

「……分かりました。ですが絶対無事で帰ってきてください、アウラ様。貴方はこの村の大切な仲間であり、家族なんですから」

 

「ええ、分かってるわ。尤もアイツがそんな手荒な真似をするとは思っていないのだけれど」

 

 この村に来る前の私であるならば、フリーレンの事なんて微塵も理解していなかっただろう。習性も性格も、魔力制限なんかも知る由もない事だったのは明白。

 でも、人間をある程度理解し、ヒンメルを理解し、その過程で知ったフリーレンというエルフを紐解くのであれば。

 人間を理解はしていないが勇者パーティのメンバーらしく人間に被害を出さない方法で魔族を駆逐してくるのは確実だ。

 

 だから、ある意味では信頼している……尤も、それはフリーレン自身というよりもヒンメルがあそこまで惚れ込んだフリーレンを信じている、という構図にはなるけども。

 

 これで不安要素は全部無くなったはずだ。

 

「これで警備隊も含めて全員退避したかしら」

 

「姉御、やはり私は着いて行きますよ」

 

「……アンタは言っても着いてくるって分かってたわよ」

 

 ランスを除いては。

 コイツは最早テコでも動かないのなんて分かりきっていた。

 最初会った時は騙しやすそうなガキとしか思わなかった、だけどいつからかランスは一度決めた事は何を言われてもやり通すような男になっていた。

 私の側近のような存在として動くようになった時も、最後まで着いていくと宣言していたのをよく覚えている。

 だからこうなる事は覚悟していた。

 

 ……全く、誰に似たのかしらね。

 

「あの方なら、そうしたでしょうから。姉御を助ける為に、傍にいたでしょうから」

 

「……一つだけ、約束して」

 

「なんでしょう」

 

「何があっても死ぬんじゃないわよ、私の傍にいるってならね」

 

「勿論ですとも」

 

 一瞬、青髪のナルシスト勇者がランスと重なって見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………まさか、本当にいるとは思わなかった」

 

「私こそ、まさかフリーレン自らここを訪ねてくるなんて思いもしなかったわよ」

 

「そこに関しては本当に申し訳ないと思ってる」

 

「今更良いわよ、ソール。元々フリーレンの知り合いだってならいつかこうなる未来は避けられないもの」

 

 思ったより人数が多い、まず最初にそう感じた。

 フリーレンとソールに加え人間3人……いや、1人は同じ魔族の匂いがするから人間は恐らく2人。

 どういう経緯でフリーレンに認められたのかは知らないけれど、恐らくソール絡みなのだろうと言うのは察しが付く、ここに滞在していた時も熱心に分かり合える魔族がいないかという事に付いて語っていたのを今でも覚えている。

 

 ……とはいえ、敵意を向けているのはフリーレンだけに見える。

 ソールと魔族は比較的こちらの気持ちを汲み取ろうとしている、他の2人は態度を決めかねている雰囲気。

 

 さてどうしたものか。

 

「ソール、私が話したから知ってると思うけどアイツは数百年もの間人間を殺し続けていた魔族だよ。それも大魔族、七崩賢、断頭台のアウラとしてね」

 

「随分と事細かに聞かされたよ、七崩賢については。だからこそあの日会ったアウラちゃんと七崩賢のアウラが同一人物とは思えない」

 

「お生憎、その七崩賢……断頭台のアウラで合ってるわよ……尤も、もう80年くらい前にはその看板は降ろしたけれども」

 

 七崩賢……確かにかつての私はその内の1人だった、間違いなく。

 だけどもそれももう80年前の話、とっくの昔に、ヒンメルに服従させられたあの日に強制的に降ろされている。

 

「こっちが本物のアウラなんだ……」

 

「……本物?」

 

「ううん、こっちの話」

 

 魔族の子は何やら意味深な事を呟いていたけど今は一旦置いておく。

 何にせよフリーレンからダダ漏れの殺意をどうにかしないとならない。

 

「お前が穏やかに過ごしている、なんて正直私は信じられないのだけど。その隣にいる人間だって人質なんじゃないの?」

 

「……いくら本物のフリーレン様とて、それは聞き捨てなりませんな。私と姉御は80年来の付き合い、昔は良くスカートを捲っては追い回されていた仲ですぞ」

 

「それは自慢する事じゃないわよエロガキ」

 

「す、スカ……捲……?」

 

「ああほら、アイツ脳みそ一瞬でバカになってるじゃない」

 

 どうにかしないととは言ったがその斜め下からの援護射撃は余計場が混乱するってのにこのバカランスは……昔からスカート捲りの事になるとすぐ自慢し出すんだからジジイになってもずっとエロガキとしか言えない。

 

「あ、ちゃんとあの頃のアウラちゃんだ」

 

「そりゃ同一人物だもの」

 

「……うーん、どうしても俺には今悪さをしてる魔族には見えないんだよな。フェルンはどうだ?」

 

「私は……正直対応を決めかねてます。おじいさんの反応を見ると関係性は確か……だとは思いますが……」

 

 この際ソールが肩を持ってくれそうと言うだけで救われる。

 これで全員あっち側だったら終わってたわよ。

 

「ゴホン……それに、ここの村人はアウラの所業を分かってて受け入れてるの?そいつは何百年もの間、数千、数万に及ぶ人間を殺してるんだよ?」

 

 ただ、どれだけ『今』が平和だとしても『過去』の罪は消えない。

 私が殺してきた命があるのは例えどれだけ精算しようとしても精算なんて一生不可能だ。

 

「全員が把握しておりますとも。村に来たあの日からずっと」

 

「……それでいて受け入れたの?理解出来ないね。それに何の理由も無しにコイツが大人しく村にいようと思うなんて不自然にも程がある」

 

「確かに。確かに、最初は理解するのに時間の掛かった村人もいました。恐ろしい魔族だと言うのは知っていましたから。でも」

 

「でも……あの方が手を差し伸べたから。だから我々も、信じてみようと思えた。まあ、私は当時何も知らない子どもだったので、しっかりと理解出来たのは何年も後からですが」

 

『罪悪感』それが自分の心にあるのかは分からない。

 今でもそう言った人間の気持ちを理解しきる事は出来ていない、それこそこの村に来てからそういう事をしてしまったら生まれるかもしれないけど。そんな事はしないのだからきっと分からない感情だ。

 だから私が殺してきた人間に対して、命の重さは理解せどその辺は形として『罪』を理解しているだけに過ぎない。

 

 ただ、そんな私の『罪』を知って、それでも受け入れてくれているここの村人の気持ちだけは知っているから。

 

 だから『嬉しかった』。

 

 そして

 

「あの方……?」

 

「あーアウラちゃん、もしかしてそれって……あの墓と何か関係あったりする?」

 

「…………そうね、御明答よ。私が毎日通ってるあの墓は、私がここで暮らす原因になったバカの墓よ」

 

 だから、分かっていてあの墓に案内する事を決めた。

 

「……やっぱり分からない」

 

「何がよ」

 

「さっきからおかしいと感じるんだ。お前は魔族だ、それも言わずと知れた七崩賢の中でも一番の自信過剰振りがあった。ならどうして『そんなに魔力が小さい』?何よりもさっきから表情も話し方も『点で魔族らしいと感じられない』。何もかもおかしいんだ、今のお前は」

 

 元より、そうでもしなければフリーレンは納得しないだろうし、納得しないのであれば戦いは避けられないのだから。

 

「その全ての理由が、アウラちゃんが通ってる墓に眠る人と言う事だと?」

 

「ええ、その通りです。――私が案内を務めます、着いてきてください」

 

 ……今だけ、ほんの少しだけアンタから力を借りるわよ。

 

 

 人間の言葉で言う『勇気』ってやつをね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は理解が出来なかった。

 魔力も、不死の軍勢も、ひけらかすようにして挑発してきて、まるで楽しむように殺しをしていたアウラはそこにはいなかった。

 魔力は全盛期のアウラに比べ微量しか感じられず、穏やかで、まるで人間のようなその姿に気持ち悪さすら覚えた。

 

 だからその原因を作ったという人間の墓には興味があった。

 どんな言い訳を並べてアウラがこの村で生きているのか、それを論破して殺してやろうと画策していた。

 

「――ここになります」

 

「名前が無いね。誰の墓なの?」

 

 しかしそれは

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇者ヒンメル、その人の墓です」

 

 その一言で崩れ去った。




さてと、これどっちがヒロインなんだっけ……


ランス
『昼行灯のアウラ』主要キャラの1人
アウラヒロインモノだと99%の確率で出てくる村のスカート捲りが得意なエロガキポジションキャラ
90歳を迎えたがまだ現役で農作業したりアウラとバカ言い合えるくらいにはピンピンしている化け物ジジイと化した
『あの日』を知っている最後の生き残りでありアウラとは文字通り姉弟のような関係性
数年前までは村長でもあり、ソールを迎え入れたのもランス

グラオベ
『昼行灯のアウラ episode6『赤いポインセチア』』に登場するサブキャラ
ランスの父親であり『あの日』村長だった聡明で豪胆、信心深い男性
「ヒンメル様の事を信じられず何が信じられるのか」と言う決意の元村にアウラ共々招き入れた影のMVP
名前の由来はドイツ語で『信仰』を意味するグラオベから
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