リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結) 作:リーニエたんhshs
本来ならリュグナーの忠実な部下として活動し、シュタルクに討伐されるだけのロリ魔族
詳しい事が書かれてないからって考察に基づいた強引な設定を捩じ込まれて魔改造された今作ヒロインにして実質主人公
5年後の現代ではすっかりソールの影響で釣りが趣味になっている
『魔族らしくない』という自覚は持っている
私は色んな知識を得た。
どういった事をすれば人間の害になってしまうのか、逆にどういった事をすれば人間に益を与えるのか、ソールから学んだり街を観察したり本を読んだり、様々な事柄から吸収していった。
本来なら飽きたらそれで終わりの関係性で良いと考えていたけれどそんな事が起きる事も無く、2年の月日が流れた。
相も変わらずソールはあの廃村に住みながら一人鍛錬をしている。
そして私はほぼ毎日のようにそこに通い、話したり釣りをしたり……後は特に料理を学んだりと言う事を行っている。
いつかリュグナーの下を離れた後にどうなるかは分からないけれど、もしも1人で生きていくならソール並に料理が上手くないと満足出来なくなってしまっていたからだ。
すっかりこの2年で料理の魅力を知ってしまったが故に今後生きていく為に必要不可欠だと感じ教わっている。
「む……まだまだソールには追い付けないね」
「でもかなり上達したんじゃないか?全く知識……というより料理という概念すらほぼ意味を知らなかった子がここまでやれてるなら上等だよ」
「そう?……でも、いつか1人で生きていく時に料理が出来ないと不便」
「そうなの?」
「そうしたのは貴方のせい。貴方の料理で舌が肥えたから味にうるさくなった」
「ははは、そうかそうか。そりゃ沢山覚えねえとな」
そしてその副産物か、様々な事を彼から教わる傍らで仲を無自覚に深めてしまったのか、いつの間にか私は言葉を、人間を騙す為の手段として使うのではなくいつしかソールと話したい事を話す為に使う事が主になっていた。
そしてもう一つ、副産物として覚えた事があった。
「ふぅ……」
「最近溜め息多いな、どうかしたのか?」
「……ソールと関わるようになってから、次第にリュグナー達と過ごす時間が窮屈になってきた。ソールと出会う前はそれが当たり前で、人間を見下したり人間を騙す事にも抵抗は無かった。でも気が付けば私はそういった事をするのが苦手になっていた。
魔族としてどうなのかと思うと共に、人間と共存出来る土台が出来てきている証拠なのかとも思ってるけれど……うん。私の生き方ではきっと、その内同じように魔族の中では生きにくくなっていたのかも知れない」
「そうか……俺にもっと力があれば街の人達を守りながら君を救う為に戦えるんだがな……」
ソールは目を伏せてそう語る。
でも結局のところ、私は魔族なのだから帰る場所はあそこか、どこにも無いかの二択だと思っている。
もう一つの副産物である、話し方が人間っぽくなってきた事も含め段々と人間を知れて来た事は確か。
そうだとしても、私に社会的感情を持ち合わせる事は出来ない。
本質的に人間社会で生きていく事は不可能、だとするならソールがそこまで考え込む事も無いと思うのにと感じてしまう。
だから、気持ちは分からなくても巧みに言葉を使ってきた私だから少しでも笑顔になってもらいたいと言葉を紡ぐ。
「貴方とこうして話せていると言っても私は魔族。だとするなら本来過ごすべきはあっちなのだから問題無い。気にする事無い」
「うーん……そっか。でもやっぱりさ、種族関係無く良い関係を築けたなら気にしちゃうもんさ。助けになってあげたいと思うんだよ。人間ってばそういうイキモノだから」
笑顔……に、なってくれたのかどうかは曖昧だった。
少なくともいつもの笑顔でない事は確かだったから。
何かを失敗してしまったのかと考えるけれど、無い知恵を絞って考えても分からないのでやめる。
取り敢えず言葉通りに受け取っておくことにした、そう思い至ったのはこの2年過ごして彼は嘘をつくのが下手なのが唯一にして最大の欠点だと分かったのが大きい。
「そうだ!仲良くなった友人が出来たら見せたいものがあったんだよ!リーニエ、来てくれるか?」
「……私?」
「そう!だって俺にとってリーニエはもう大切な友達なんだからさ!」
「そう。……分かった、着いてく」
しかし彼はパッと顔を上げると何かを思い出したようにそう言っていつもの笑顔で私の手を引く。
良く分からないけれど、いつものソールに戻ってくれたのならまあ良いだろうと納得して着いていく。
彼の提案で面白くなかった事は今まで一度も無かったし今度も何か面白いものを見せてくれるのだろうと探究心を持ちながら。
「これは……花畑?」
「そそ、フリーレンに教えてもらった魔法。仲良くなった友人が出来たら見せようと思ってたんだ。君とは……リーニエとは2年間こうして付き合いが出来てるだろ?種族なんて気にしないとは言ってたけど、君がどう思ってるかは正直確信は持てなかった……でもこうして、悩みを打ち明けてくれた事で俺も決心したんだよ」
見せてくれたのは花畑だった。
それは真っ赤な花が埋め尽くす花畑、元は何も無い場所だったのだろう事が見て取れる少し荒れた花畑に隣接する地帯を見ると本当に花畑を生み出す魔法を使ったのだろう事が読み取れる。
「これを……私に?」
「ああ。花の種類はその人となりを見てから決めようと思ったんだけど……君にはこれが良いと思ってな、花言葉的に」
「花言葉?」
「うん。人間ってのは花に想いを込めて誰かに捧げる事があるんだ。それに倣って俺もリーニエに花を贈ろうと思ったんだけど……折角なら沢山の花を見てもらいたかったからな。ちなみにこれはポインセチアって花なんだ」
「花言葉はなに?」
「『幸運を祈る』。君の悩みを聞いて、俺がどう綺麗事を並べてもやっぱり人間と魔族の間にある壁を取り払う事は出来ないと感じてしまった。それでもせめて、君個人だけでも、俺の大切な友達だけでも幸せになってもらいたいから。だから君のこれからに、未来に、せめて幸運を祈らせてほしい」
ソールはそう言っていつもの笑顔ではなく、落ち込んでいる顔でもなく、恐らく人間で言う『真剣な顔付き』でそう答えた。
それを言われた瞬間、何故か私の胸がほんの僅かに、気の所為かと思うくらい一瞬ドクンと跳ねた気がした。
だがこんな感覚は初めてだ、気の所為では無いだろうとも思えた。
何故私の胸が跳ねたのか、それは皆目見当もつかない。
でも、『幸運を祈らせてほしい』そう言われて不快にはならなかった。
もしも私がこの先、人間の社会で生きていける日が来るのであれば……そんな有り得ないはずの事を真剣に祈る彼の姿はどこか見ていたくなるそんな気持ちにもさせられる。
……そんな日が来るのであれば。
私は、1人では暮らさないのだろうと。
ソールと花畑を見ながら思うのだった。
「……暇ね」
ソールのいる村から遙か遠い地にて。
山近くにある村にそうボヤいて陽の光を見つめる女がいた。
彼女の頭には二本の角がある、それは間違いようも無く彼女が魔族たらしめる証拠に他ならなかった。
「あーちゃんおはよー」
「あーちゃん言うな」
だがこの村の住人は誰1人とて彼女がここに住んでいる事に疑念を抱いていなかった、それどころかまるで彼女を人間とほぼ同等のように接していた。
「おはよう。丁度ウチの畑で野菜が取れたんだが少し貰ってくか?」
「あら良いの?それじゃ貰うわ」
「ねーちゃんねーちゃん、後であそぼー!」
「はいはい分かったわよ」
彼女は村の人気者だった。
人の感情を完全には理解していないものの、彼女は既に80年弱この村に住み着いておりその過程でとある経緯のせいでではあるが人間を観察する機会に恵まれた。
そして『とある人間』と過ごす内、彼女は次第に人間を理解していった、かつて自発的に人間を理解しようとした魔族よりも遥かに深く深く。
だからなのかは分からないが、彼女は魔族であるにも関わらず人間を80年弱襲う事無く共存している。
「全く……今日もバカみたいに平和ねここは……」
「ま、そうじゃないと『アンタ』と交わした約束が果たせないから良いんだけど」
「だってそうでしょう?この大魔族の私が、人間の貴方とわざわざ約束してあげた事だもの。それくらい守れなくて七崩賢なんか名乗れないでしょ」
「ふふ……今は『昼行灯』だけれどね」
「それで良い……きっと。アンタの想いは、私は人間じゃないけど、50年も一緒にいたんだもの。……『心』は分からずとも『理解』は出来るわ、聡明なこの私なら」
「だからアンタは静かに寝てなさい。いつか、何百年か何千年か先にまた会えればそれで良いのだから」
墓前で語る彼女の顔は、果たしてどんな顔をしていたか。
それは誰にも分かる事は無い。
「そうでしょ、『ナルシストの勇者』さん?」
そう言って彼女は肌身離さず着けている右腕のブレスレットを弄る。
そのブレスレットには、真っ赤なポインセチアの花が意匠されていた。
リュグナー
知的な話し方をする狡猾で実力派な魔族
なお平時は部下の行動もほぼ気にしてない為すっかりリーニエが人間と親密にしている事は露知らず
ドラート
リュグナーの部下なので取り敢えずゲスト出演した
遠い村の七崩賢魔族ちゃん
多分誰か察しが一瞬で付いてる読者しかいないと思う
今の二つ名は自称『昼行灯』
ナルシストの勇者
青い髪のナルシスト勇者
25〜30年くらい前に死没している