リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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フリーレン
ソールの親代わり
自身は「親なんて柄じゃないよ」と語っているがめちゃくちゃ親である
内心息子の事をいつも心配している
15歳までは息子の魔力を探知して誕生日(=引き取った日)には必ず『偶然を装って』遭遇して1日を共に過ごしていた


第6話『親という存在』

「だから、私をそうしたのは貴方のせい。責任取って」

 

「なんて強引な繋げ方を!?」

 

 今日も私はソールの膝の上から彼を見上げて雑談に興じる。

 彼との雑談は何故だか胸の奥が暖かくなる、この現象は一体なんなのか分からないけれどリュグナー達といる時と比べてとても居心地が良い。

 そもそも私は、様々な事を教えてくれて、あまつさえ魔族の私を友人と言った彼に嫌われたくないから人間を襲ってこなかったが最近それも少しずつ変わり始めている。

 相も変わらず他の人間相手に何かしらの感情を抱く事は不可能だけれど、代わりに嫌悪感や不快感も抱かなくなった。

 そして彼は平和で誰もが穏やかに過ごせる空間が好きだと言っていた。

 だからそんな場所に住まう人間を、ソールが好んでいる街を守る事で彼の笑顔が見られるなら守りたいと思う。

 

 しかし、もうすっかり思考が人間に寄ってしまって、本来の性質である魔族らしい魔族に擬態するのも疲れてしまうと本末転倒な事を考えてしまう。

 彼には「笑顔が増えてきた」なんて言われている、それは感情を覚えて使う事が出来ている証拠でもあり好ましくはある。

 だけれど、同じ魔族の前でそれを出せば不審がられる。

 彼と過ごす時間の方が何倍にも膨れ上がった影響でどうにも『そっち』の方が『普段の私』になってしまっていたらしい。

 

 それもこれも、全てソールが私を変えてしまったのが悪い。

 

「……やっぱり」

 

「うん?」

 

「貴方の膝の上は、何だか落ち着く。……落ち着く、落ち着かないなんて感情自体が貴方と出会ってから芽生えたものだけど」

 

「それは何より。しかしリーニエも良く笑うようになったよな」

 

「そう?」

 

「そう。俺と出会ってから感情が芽生えた……なんて言ってくれてるけど、そう思ってもらえるのってすごく光栄な事なんだよ。だってそれだけ人間を理解して真似していってくれてる証拠なんだから」

 

 だから私は『責任を取って』と言う。

 いつだったか、人間の話で「女が男にそう言うのがお決まり」なのだと聞き耳を立てた話の中にあった。

 いつ、どこで、どうやって使うかまでは分からなかったけれどきっとこういう使い方であってるのだと思う。

 

 ……何故だかいつも彼は顔を赤くして目を背けるけど。

 

 でも、悪い感情にはなってないはず。

 だって彼はその後いつも饒舌に、笑顔で私に話し掛けてくるのだから。

 

 だけれど……

 

「でも、魔族には難しい事が沢山ある。知りたくても解決出来ない事もある」

 

「お、何か悩み事?俺に言ってみてくれても良いんだぞ?」

 

「……何となく、これはソールに話さない方が良いって本能が言ってる気がした」

 

「え!?そんな事ある!?」

 

「分からない。だけどそう感じた」

 

 やはり知りたいと思った。

 彼の笑顔を見たいと思った時、見れた時、彼の膝の上にいる時、胸に顔を埋めている時、手料理を食べている時、私が彼に手料理を作っている時、様々な時に胸の内が暖かくなるこの現象を。

 彼と共にいる時にだけ感じるこの違和感の答えを。

 

 しかしそれを、何故だか本人に聞きたいとは思えなかった。

 まるで本能が『それは違う』 と言っているように。

 これは他の誰かと探すべきだろう、と。

 

 ……いつか、私にもソール以外の友人が出来るのだろうか。

 

 ガックリ肩を落とす彼の頭を何となく撫でながら、そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ、手紙?」

 

「ああ。フリーレン……俺の育ての親からのね」

 

 翌日、彼は朝早くから鳩と戯れていた……訳ではなく伝書鳩から手紙を受け取っていた。

 それも手慣れたように受け取っているからきっと何回も受け取っているのだろうそれは、ソールの話に良く出てくる『フリーレン』という彼の『親』という存在からの手紙だった。

 

 

 

「『親』ってなあに、ソール?」

 

 いつだったか、フリーレンの話が出た時にそう聞いた事がある。

 人間にはあって魔族には無い存在、今までは気にも留めていなかったのに彼と話していると細かいところまで気になってきてしまう。

 

「……なんだろうね。俺も分かんないんだよ、俺を生んだはずの親は物心付く前には何故だかもういなくて、拾われた先でもモノ同然に扱われて、そんで全く関係無かったはずのフリーレンと旅をしていく内に、彼女が俺を育ててくれたから『親』だって、そう思ったのかもね」

 

「育ててくれた人が親?」

 

「簡単に言えばそうかな。色んな事を、生きていく為の術や世界を教えてくれるのが親なんだろうね」

 

「そうなんだ……じゃあ私にとってソールは親?」

 

「そう言われると微妙に否定しにくい……!」

 

 

 

 親とは、生きていく為の術を教えたり直接的に子を育てていく存在らしい。

 ともすれば彼と出会ったのは間接的にそのフリーレンという存在のお陰でもあるのだろう、私は何となく会えたら感謝を伝えたいと漠然と思った。

 私の世界が変わったのは間違いなく彼と出会ったから、なのだから。

 

「手紙には何が書かれてたの?」

 

「3〜5日後くらいに君のいるグラナト伯爵領にフリーレンが来るらしい。俺のいる廃村はすぐ近くだから会いに来いって事なんだろうね。もう5年会ってないし久々に顔見たいし行くけど……いやそれまで毎年旅の途中で何故か出会ってた方が不思議だったんだけどさ」

 

「そうなんだ。でもソールってリュグナーやドラートと鉢合わせたくないからって極力こっちには来ないよね」

 

「戦いたくないのは勿論なんだけど、それ以上にここが見つかったらリーニエと会えなくなるからそれだけは絶対に嫌だったんだよ」

 

「そっか……ありが……とう?」

 

 手紙の内容はその親が近々私のいる街に来るという事だった。

 かつて勇者ヒンメル達と旅をしていたというエルフ……魔族の事を心の底から憎んでいるらしく私の事をどう見るのか分からないけれど、もしも私という存在を許してくれるのであれば話をしたり間近で動きを見たりしてみたいと思ってしまう。

 

 後者は純粋に私の模倣する魔法の勉強として見てみたいから、だけど……前者は違う。

 私という存在が文字通りこの世界を興味深く様々な事を学べているのはソールのお陰だから、その事についてお礼を言いたいと思っている。

 彼女がいなければソールと私が出会う事は無かったのだから。

 

「……フリーレンにリーニエの事、紹介したいんだけどなあ」

 

「やっぱり、難しそう?」

 

「そうだね……あの人の昔話によると、自分の故郷を魔族に滅ぼされたって聞いたから。仕方ないのも、許せないのも分かるんだ。俺はフリーレンに物凄く感謝してるし大好きだと思ってるけどそこは相容れられないんだって理解してる。……してはいるんだけどね、リーニエだけは違うんだよ、この子は凄く良い子なんだよって紹介したい。俺の大切な人だから特に」

 

「私も、色んな話を聞いてみたいと思ってる。でも魔族は元々人間から嫌われてるから無理ならそれは仕方ない事。何度も言っている通り私はそういった感情を持たないから気にしなくて良いの」

 

「……ごめん、そう言わせちゃって」

 

 それは本当に思っていた事だった。

 私は元より嫌われるべき存在、人間を観察していてこの5年で嫌という程実感した事だから。

 

 でも、何故だろう。

 

 ソールの今の言葉に自分の体温が上がった気がするのは。

 ソールの落ち込む表情に胸がチクリと痛んだのは。

 ソールを、笑顔にしたいと思ったのは。

 

 これは一体、なんなのだろう。

 ただの身体の異常とも違う……これが人間の言う、人間しか持たない感情なのだろうか。

 だとしたらこれの名前はなんなのだろうか、何故こうなるのか、とても気になる。

 

 きっと私は、これを知る必要があると直感している。

 彼を元気にしたい、笑顔にしたい、そう思うから。

 

 だから願わくば、彼女が私の事を許してくれますように。

 私らしくもなく、魔族らしくもなく、不器用にそう願うのだった。

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