リーニエ「私が人間に絆される訳が無い……多分」(本編完結)   作:リーニエたんhshs

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第8話『再会』

「いやまさか5年振りの再会が塀の向こう側とか普通思わねえじゃん」

 

「ソール、大きくなったね」

 

「まあアンタに貰ったハンマーに見合うだけの男にもなりたかったしな。フリーレンの言葉だけ聞けば感動の再会なのにどうしてこうなった」

 

「さあ?」

 

「どう考えてもアンタ自身に責任あるよ!?胸に手を当てて考えてみたら!?」

 

 牢屋でボーッとする当の本人に久々……5年振りのキレツッコミを入れながらこんな状況でも『懐かしいな』と感じてしまうのはもう俺の感性も麻痺して来てるんだろうなと感じる。

 ほんとさこの人……魔族が絡まなきゃただの優秀な自堕落ロリババアエルフなのに……本人に言うとババアの部分で泣かれるから言わないけど。

 

「フリーレン、この人に会いに行くのが主目的なら最初からそう言えよな」

 

「そうです。一言言ってくださればソール様へのお土産も何かしら用意出来たんですよ」

 

「ごめん、それに関しては普通に忘れてた」

 

「一応俺アンタの息子代わりで良いんだよね?扱い雑じゃない?」

 

「雑じゃないよ、現に5年前まではちゃんと誕生日に会いに来たじゃん」

 

「アレ偶然って言ってなかったっけ」

 

「……さてなんの事やら」

 

 おい雑なのか息子想いなのかはっきりしてくれアンタは。

 いやわざわざ会いに来てくれていたのは嬉しいけども、相当、自分が思ってた以上に嬉しいけども。

 

「仲が良いんですね、お2人は」

 

「話聞く限り一番長く旅してた勇者パーティーの次に長く一緒に旅してたんじゃない?なあフリーレン?」

 

「んー……そうかもね。そもそも身内以外で年単位の旅したのも両手で数えるくらいだと思うし。7年くらいだっけ?」

 

「そそ、俺が推定6歳くらいの時に拾われてるから6、7年ってところ」

 

「いやこんな殺伐としたところで懐かしまれてもどう反応したら良いか分からないんだけど」

 

「……はっ!?俺もついフリーレンのノリに馴染んでしまったか……」

 

 しまった、ついつい久々のツッコミに力が入り過ぎてここが地下牢なの忘れてたわ。

 しかしどうするかねこの状況、あんな事したら数日ってレベルじゃない懲役課されると思うんだけど。

 

「あー……そう言えばなんだけど。2、3年は反省しろってさ」

 

「思ってたより短いね、後で魔導書の差し入れ持ってきて」

 

「フリーレン様……」

 

「人間の2年は重たいぞ、俺見て何も思わなかったとは言わせないんだからなポンコツエルフ」

 

 案の定かよ。

 しかもこの女どこ吹く風で飄々としてるけど人間の数年は相当な時間を消費してるんだぞ。

 ここの世界だと平均寿命は70歳だから2年でも1/35なの分かってるのかよと問いたい。

 

「……まあ、確かにさっきも言った通りソールは見違えるくらい大きくなったよね。それに大人にもなった。もうすっかり一人前の顔付きだね」

 

「この5年は近くの廃村で鍛えまくってたからな。昔はでっかく見えてたこのハンマーも今となっちゃ身体の一部みたいなもんさ」

 

「そう言われるとあげた側からしたら嬉しいよね」

 

 この得物は俺が旅をして最初の誕生日……つまりは旅に着いて行った日から丁度1年後に貰った。

 恐らく2mはあるかと思われる名も無きハンマー、俺の最初の目標はコイツを自力で背負えるまでになる事だった。

 最初はそれまでに覚えた魔力操作がてら覚えた重力魔法で背負っていたが半年経つ頃には重力操作は添え物程度となり、1年が経つ頃には既に素で背負って歩いていた。

 その歳で軽々と背負えるのは流石に驚いたと言われたしそこから数ヶ月経たない頃には既に実戦に駆り出されていもしていたか。

 ただ、今でもコイツに見合った戦士になれているかどうかは不明瞭だが。

 

「感傷に浸りたいのにこの鉄の格子が現実に引き戻してくるんだよね……もう少し何とかならなかったのかねアンタは」

 

「本当です。フリーレン様は本当に時間を無駄にするのが好きですね」

 

「私だっていたくてここにいるわけじゃないよ」

 

 過去を回想してるのにこの冷たい鉄の格子はいつだって現実に引き戻してくる。

 まあ悪いのはフリーレンの目の前にノコノコと出てきたリュグナーだから大目に見ておくか。

 

 ……それよりも気になる事があるし。

 

「で、魔族が和睦の使者ってどういうことなの?」

 

「ソール様の買い出しのお手伝いついでに調べてきました。断頭台のアウラは知っていますよね?」

 

 俺は既にリーニエから聞かされていた事だ――七崩賢の名前以外は。

 リーニエ自身直接顔を合わせた事は無い上に名前も知らないと言っていたが、この街を治めるグラナト伯爵自体は知っていた為情報収集は容易だった。

 リーニエは恐らく単に無関心だっただけだろう、何せ一日の大半を俺の隣で過ごしてるからな。

 

 ……しかしアウラか。

 

 ……ん?んんん?

 

 確かフリーレンと別れてすぐの村にいた……少し仲良くなった、気の強かった女の子もアウラって言ってたような気がするが……

 まさか気のせいだよな。

 だっていつもフード被ってたけどまさか魔族なのを隠す為とかそんな訳じゃないよねアレ、だとしたら俺脳みそバグっちゃうけど?

 あんなめちゃくちゃ平和そうに過ごしてて大切な人の墓で結構な時間を過ごすのが毎日のライフワークだったっぽい穏やかな笑みを浮かべてたちょっと未亡人気味な雰囲気すらあった、だけど年齢的に15、6歳くらいのはずのアウラちゃんがここにいたら取り敢えず偽者を疑おうそうしよう。

 そもそも名前だけ一緒の別人って可能性の方が高いし……顔が同じな訳ないし考えすぎだよな……うん、きっとそうだそうって事にしておこう。

 

「魔王直下の大魔族七崩賢の1人でしょ。私たちとの戦いで配下のほとんどを失って消息不明のはずだけど。最近何かあったの?」

 

「アウラは10年程前に力を取り戻しています。この街はその軍勢と長い間戦ってきたようなのですが、無益な殺し合いに疲弊したアウラ側が和睦の申し出をしてきたそうです」

 

「それで使者を受け入れたのか。悪手だね。魔族との対話なんて無駄な行為だ」

 

「無駄ってことはねぇだろ。言葉があるんだ。話し合いで解決するならそれに越したことはねえじゃねぇか」

 

「……ソールも『分かり合える魔族がいるかどうか知る為に旅に出る』って言って私の元を離れたけど、離れたけど!やっぱりそんな存在はいないと私は思ってる。アイツらは総じて人を騙し殺すだけの怪物だよ」

 

 そんな思考をしてる間に話が進んでいた。

 一旦俺への言及は後回しにして、10年前か……もしもあの村にいたアウラちゃんが『そう』であるならだけど完全に矛盾してるし顔次第では偽者本線として入れておくか。

 

 ……で、俺への言及についても思考するがフリーレンってば未だに恨み言兼ねて言ってきてるなこれ。

 確かに正論だけどそこまで強調しなくても良くない? こういう時無表情がちなこの人が目をクワッとさせてるのが怨念の強さを感じさせて苦笑いしてしまう。

 

「俺は今でも自分の言葉を信じてるからね。それはそれとして一般的な魔族は話し合いなんて欠片も通用しない、贖罪、後悔、罪悪感なんて感情が欠落してるのが魔族の特性なんだよ。……確か、ヒンメルと旅をした時もそういう事があったんだったよな?」

 

「……まあ、ソールはちゃんと魔族の特性を捉えてるしちゃんと殺せるから最低限許してるけど。あんまり聞かせる話じゃないけどシュタルクとフェルンにも話しておこうかな」

 

 あの話は聞いていて辛いものがあった。

 正直思い出したくもないくらい残酷な話、俺にとって一番突き付けられたくない話だったから。

 

 ……それでも俺は諦めない、旅に出ると決めた。

 

 確かに地獄のような話だったけれど、それで歩みを止めたくないと何故だか感じてしまったから。

 

 それともう一つ。

 

 俺には『どこか分からない世界での記憶がある』と言ったが、そこには一つだけ不明瞭な点がある。

 記憶の中の映像で見た『葬送のフリーレン』とは違う『良く似た何か』が記憶に混ざっているのだ。

 明らかにあの世界の映像とは違うのは分かる、だが間違いなくこの世界の記憶だ……映像に出てきた訳でも無ければフリーレンに教えられるまでもなく知っていた七崩賢や側近の名前……『黄金郷のマハト』『全知のシュラハト』『幻影のシャッテン』断片的だが名前を識っていた。

 

 何故この記憶があるのか、どこの、誰の記憶か分からない。

 

 だが、この記憶の持ち主が言っている気がした『諦めるな』と。

 

 だから踏み出そうと決めた、そしてだからリーニエと出会えた。

 

 ……ここで怖気付く訳には行かない、まずはこの2人に話しておく必要があるだろう。

 フリーレンの悲しい悲しい物語を聞きながらそう決意するのだった。




幻影のシャッテン
この作品オリジナルで名付けた名前不明七崩賢の1人
南の勇者が語られた際の回想に出てきた七崩賢+シュラハト集結の中で南の勇者から見てアウラの右隣にいたお下げの女魔族
シャッテンはドイツ語で『影』を意味する言葉

ソールとアウラちゃん
ソールがフリーレンの元を離れて初めて長期滞在した村(2ヶ月)
そこで出会った紫の髪をした推定15〜6歳の少女(ソール見立て)
とても大切な人が眠る墓に毎日通ってる彼女を見ていて未亡人と一瞬錯覚してしまったが自分と同じくらいの年齢の女の子にそんなのある訳無いか、とソールは考えている
気が強くいつもフードを被っているアウラちゃんとは花の話で文字通り花を咲かせていたそうな
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