超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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シールドゴブリン

 しばらく進むと、通路の奥から緑色の皮膚をした二足歩行のモンスターが現れた。

 

 何だっけあれ。テレビのダンジョン特集か何かで見たような……ああ、思い出した。

 

 “ゴブリン”とかいうやつだ。

 テレビでは探索者に瞬殺されていたが、実際に見るとそこそこ不気味だ。武器は持ってないが、爪とか結構鋭そう。

 

『ギャキャッ!』

 

「うわっ!?」

 

 駆け寄ってきて爪で引っ掻こうとしてくるゴブリンから慌てて逃げる。

 

 その際に腕を少しだけ引っ掻かれたが、痛みはない。魔力体は生身と違って痛覚がない、とは受付嬢の言。

 もっともダメージを受けすぎれば魔力体を維持できなくなり、強制的にダンジョンの外に飛ばされてしまうらしいんだが。

 

『ギャキャキャッ』

 

 逃げ回る俺を追いかけてくるゴブリン。反撃しないとやられてしまう!

 事前に確認したステータスによれば、俺の職業(クラス)は魔術師。

 遠距離攻撃を得意とする後衛職だ。

 ゴブリンから逃げ回りながら、必死に魔術欄に書かれていた内容を思い出す。確か――

 

「――氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて」

 

 唱えると、俺の手に冷気が集まってくるのがわかる。

 

「【アイスショット】!」

 

『ギャアッ!?』

 

 直径二十センチの氷の弾丸がゴブリンを襲う。

 

『ギャウッ……』

 

 一発じゃ倒せないか。

 しかしゴブリンは反撃されたことに怯んだのか、向かってくる様子はない。隙だらけだったので、もう一発【アイスショット】を打ち込む。

 

『ギャアアア!』

 

 二発目の氷の弾丸を受けたゴブリンは肉体を崩壊させ、黒い魔力ガスとなって霧散していった。

 

「おおっ、勝てた!」

 

 思わずその場でジャンプして喜んでしまう。緊張感があっただけに、勝った時の嬉しさも大きい。

 

 

「見ろよ、あの子」

 

「初々しいな」

 

「初めての戦闘だったのか? 微笑ましいな」

 

 

 ……何か見られてるんだが?

 くっ、はしゃいでいたところが見られていたと思うと妙に恥ずかしい。通りすがりの探索者たちの目が、初めて遊園地に来た子供を見ている時のそれだった。

 

 

<レベルが上昇しました>

 

 

 脳内に声が響く。

 あー、魔力体って能力に変化があった時に知らせる機能があるんだっけか。

 

「【ステータスオープン】」

 

 ステータスカードを手に持ち、受付嬢に聞いた通りの呪文を唱える。

 

 

――――――

 

白川雪姫

▶レベル:2

▶クラス:魔術師(氷)

▶ステータス

力:2

耐久:2

敏捷:3

魔力:36

▶魔術

【アイスショット】:氷属性。氷の弾丸を飛ばす。詠唱「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて」

▶スキル

【オーバーブースト】:三十秒間全能力値を倍にする。一日一回のみ。

【クラス補正倍化】:レベルアップ時のクラス補正を倍にする。

 

――――――

 

 

 虚空に半透明の板が浮かび上がった。

 

 この“ステータスボード”は俺以外の人間には見えない。

 

「えっと……」

 

 名前が偽名になっているのは、協会に提出した書類がもとになっているためだ。やたら魔力に偏った能力値に加え、魔術が一つと特殊能力(スキル)が二つあるのも特徴だろうか。

 登録時にもらった冊子によると……

 

 

職業(クラス)は覚える魔術やスキル、レベルアップ時の能力値上昇に影響する。

・魔術は詠唱を介して異能を使うもの。

・スキルは詠唱なしで使える特殊能力。

 

 

 各項目の定義はこんなところ。

 クラスは魔術師以外にも色々あるらしいが、魔力体の適性によって勝手に決まってしまうようだ。

 ……正直このピーキーな能力値は不安でしかないが、変えられないのでこのままやるしかない。

 

「能力値は上がってるけど、魔術やスキルはレベル1の時のままか」

 

 スキルはダンジョン内での行動や戦果によって増えるらしい。もっとも取得条件を満たしても手に入るかはランダムらしいが。

 少し期待したんだが、まあそう簡単にはいかないよな。

 

 それにしても……思っていたよりダンジョン探索が楽しい。

 

 薄暗い洞窟。

 急に襲い掛かってくるモンスター。

 スリル溢れる戦闘を潜り抜ければ、レベルが上がって強くなる。

 

 ダンジョン探索が人気だっていうのも納得できる。今まで勉強と家事ばかりであまり触れてこなかったが、ちょっと興味が出てきた。

 

 呑気にそんなことを考えながら神保町ダンジョン一層をうろうろしていると。

 

 それは現れた。

 

『ギキャッ』

 

「……盾を持ったゴブリン?」

 

 道を塞ぐように現れたのは、またもやゴブリン。しかし先ほど遭遇したものと違い、体とほぼ同じサイズの巨大な石の盾を持っている。……よし、今日はこいつを倒して帰ろう。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて――【アイスショット】!」

 

 ガンッ!

 

「って、効いてない!?」

 

 ゴブリンは掲げた盾に身を隠し、氷の弾丸を防いでのけた。ただのゴブリンとは違うってわけか。ゴブリンは盾の陰からニタニタと笑っている。

 

 こっちに向かってくる様子はないから、簡単に逃げられそうではあるが……せっかくだし、スキルも試してみるか。

 

「【オーバーブースト】!」

 

 スキル使用の意思を持って言うと、俺の体から金色のオーラが立ち上る。

 

 いかにも「本気出してます」って感じだ。心なしか盾持ちゴブリンも怯んでいるような気がする。

 

 初期スキルの一つ【オーバーブースト】。

 一日一回の使用制限があるこのスキルは、三十秒間に限り全能力値を倍にする効果がある。魔力の数値も上がるので、これによって魔術も強力になることだろう。

 

 近づいて撃った方が威力が高くなるだろうという考えで、盾持ちゴブリンにダッシュで近づく。三十秒しかないので急げ急げ。大きな盾を持っているだけあって、相手の動きは遅い。簡単に接近することができた。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて!」

 

 詠唱を行うと、手にさっきまでとは比べ物にならない冷気が集まってくる。

 

「【アイス――」

 

 氷の弾丸が手の平数センチの位置に現れる。サイズは先ほどのものの二倍以上。

 それを維持したまま、【オーバーブースト】で強化された力や走った勢いを乗せて放つ。

 

「――ショット】ぉっ!」

 

 直後。

 

 

 バゴンッッ! という音とともに掲げられた大盾が割れ、その奥のゴブリンを吹っ飛ばした。

 

 

『ギャァ……ア……』

 

 盾持ちゴブリンは息絶え、魔力ガスとなって霧散する。

 

「よし、勝てた!」

 

 思わずガッツポーズしていると……

 

 

<レベルが上昇しました>

<新しいスキルを獲得しました>

 

 

 またステータスが上がったらしい。確認してみる。

 レベル上昇によって能力値が上がっている他、新しいスキルもゲットしていた。

 

 

【一撃必殺】:耐久が自分の十倍以上の相手と戦う時、まれに魔力が十倍になる。

 

 

「耐久が自分の十倍より高い相手と戦う時……? うーん、あんまり使う機会なさそうなスキルだなあ」

 

 俺の耐久は低いが、そもそも能力値が十倍の相手とかそうそう戦うタイミングはないような気がしてならない。逃げるだろ、そんな相手なら普通。

 さっきの盾ゴブリンみたいな特殊な相手にしか使えなさそうだ。

 

 多分弱いスキルなんだろうな。よく知らんけど。

 

「ふわぁ……何か眠くなってきた。魔術って使いすぎると眠くなるんだな」

 

 急に集中力が切れたような感じだ。水泳が終わった直後の歴史の授業ぐらい眠い。

 

 まあ、これだけ動ければ“ダンジョンで問題なく活動できる”と言っていいだろう。

 目的は達成したことだし、撤収するとしよう。

 

 ……で、結局月音の考えって何なんだろうか。




【一撃必殺】取得条件
1、耐久の数値が自分の十倍以上の相手を一撃で倒すこと。
2、1を独力で達成すること。
※超威力が出る確率は十パーセントで固定。
※攻撃する際に用いられる数値が“力”の場合は力が上昇、“魔力”であれば魔力が上昇。

一応壊れスキル。
ダンジョンのガーディアンボス相手に一定確率で超ダメージを与えられる&精神力(魔術や一部スキルを使うためのリソース)を使わないので実は後衛アタッカーには垂涎もの。

それを知った時の主人公の反応
「ガーディアンボスって何?」
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