超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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掲示板/初コラボ配信

有望な新人ダンジョン配信者について語るスレ224

 

 

18:名無しの探索者

【URL】

これヤバくね?

 

19:名無しの探索者

まーた我らが姫がやらかしておられる

 

20:名無しの探索者

・森を更地に

・リコーダー雪姫ちゃん

・ユニーク装備お披露目

・高耐久で知られるキーボスをワンパン

こんなに撮れ高あったのに、まさか最後に全部吹き飛ばすような爆弾が控えてるとは思いませんて……

 

21:名無しの探索者

妖精が喋ってるのなんて初めて見た

しかも雪姫ちゃんをモンスターから庇ってたぞ

 

22:名無しの探索者

普通妖精って喋らないもんなの?

 

23:名無しの探索者

自分で調べろ

 

24:名無しの探索者

優しくして♡

 

25:名無しの探索者

は?

・妖精は喋らない

・そもそも人間見たら即逃げするから会話の機会もない

・倒すと能力値がアップする

・特定のダンジョンにしか現れない。自然系のダンジョンで目撃情報多数

こんなもん調べればすぐわかるだろ

 

26:名無しの探索者

キレながらちゃんと教えてあげるの草

 

27:名無しの探索者

真面目にこれどういうことなんだ?

妖精とコミュニケーション取った探索者なんて世界中探しても他にいないだろ

 

28:名無しの探索者

そりゃ妖精はモンスターの一種だと思われてたし……

 

29:名無しの探索者

配信リアタイしてたけど、コメント欄ものすごいことになってたな

あの瞬間は流れ速すぎてマジでコメント読めなかった

 

30:名無しの探索者

雪姫ちゃんも結局あの後すぐに配信切ってたしな

 

31:名無しの探索者

「で、では、【アイシクル】の検証も終わったのでこれで配信を終わります(メオヨギー)」

はさすがに怪しすぎるのよ

 

32:名無しの探索者

今見てきたけどМチューブのコメント欄怒涛の質問ラッシュでわろた

 

33:名無しの探索者

まあ妖精については謎が多いからしゃーないけどな……

もし妖精大量湧きスポットとか見つかろうものならダンジョン探索に革命起きるレベルだし

みんな必死こいてレベル上げする必要なくなる

 

34:名無しの探索者

もしかして雪姫ちゃんの馬鹿魔力は今まで秘密のスポットで妖精を虐殺しまくってたからとか……?

 

35:名無しの探索者

それにしては妖精の態度が友好的じゃなかったか? モンスターから庇ってたくらいだし

 

36:名無しの探索者

雪姫ちゃんはそもそも妖精と知り合いだったっぽい?

 

37:名無しの探索者

一個前の配信で妖精をツリースネークから助けてたからそれ関連かもしれん

でも配信見返したけど、助けた妖精と今回出てきた妖精は外見違うんだよなあ

前の妖精の友達とか、そんな感じなんだろうか……

 

38:名無しの探索者

雪姫ちゃん、妖精に名前呼ばれてたよな

他にも妖精の協力者とか何とか。あれ何?

 

39:名無しの探索者

わっかんね

 

40:名無しの探索者

雪姫ちゃんが教えてくれないとわからんな~~~~

 

41:名無しの探索者

でも言いたくない気持ちもわかる。妖精絡みの重大情報なんて握ってたら、情報寄越せって山ほど人に詰めかけられるだろうし。

他の探索者だの、探索者協会だの、研究者だの、盛り上がり方によってはマスコミに粘着されるかもしれない

 

42:名無しの探索者

あー……

 

43:名無しの探索者

妖精狩り放題スポットなんてものが仮にあるなら、協会も無視できないよなあ……

探索効率に直結するわけだし

 

44:名無しの探索者

あの金髪の妖精、やっぱ特別な気がするんだよなあ

名乗ってたし、魔術使ってたぞ

 

45:名無しの探索者

【バリア】と【ストレングス】だよなあれ? ってことは神官クラス?

実はあの子妖精の姿になった探索者だったり……?

 

46:名無しの探索者

さすがにそれは……と言いたいけど、雪姫ちゃんも友達の体が変化しちゃってるらしいしなあ。ダンジョンが絡むと何が起きてもおかしくないというか

 

47:名無しの探索者

マジで人間まだまだダンジョンのこと知らないんだなって感じするわ

 

48:名無しの探索者

みんな

雪姫ちゃんのTwister

みて

 

49:名無しの探索者

ん?

 

50:名無しの探索者

うおっ

 

51:名無しの探索者

マジかこれ!? めちゃくちゃ気になるんだが!?

 

52:名無しの探索者

というか最後の【】内の言葉が気になる件

 

 

【雑談】妖精についてお話します【ゲストもいらっしゃいます】

 

 

 

 

「……本当にいいんですか?」

 

「ええ、構いません」

 

 場所はフェアリーガーデンの四阿(あずまや)。テーブルをはさんで俺の向かいに座っているのはここの主たるリーテルシア様だ。前回と違い、俺とリーテルシア様の両方を映す位置で撮影可能な状態の配信用ドローンが待機している。

 

 リーテルシア様は冷ややかな声を発した。

 

「――私の愚かな娘が考えもなくユキヒメの配信に映り込み、あまつさえ私たちの関係について口外したのです。ユキヒメの身の安全を守るため、私が責任を取らなくては。そうですよね、ガーベラ?」

 

「ははは、はい! すみませんでした! 愚かな娘でごめんなさいお母様!」

 

 ガタガタ震えながらテーブルの上に正座しているのは、俺の配信に乱入した例の金髪妖精だ。ガーベラという名前らしい彼女は、他の妖精と同じく十五センチ程度の体格で、勝気な大きな瞳と頭の左右でくくった長い金髪が特徴である。一体どんな罰が下されたのか、配信に現れた時とは打って変わって顔面蒼白となっている。

 

「あなたが謝る相手は私ではないでしょう? ユキヒメのもとには連日妖精について尋ねる連絡が山ほど届いて困っているそうですよ」

 

「で、でもぉ……人間に謝るのは私の妖精としての尊厳的にちょっとぉ……」

 

「は?」

 

「ごめんなさいユキヒメ! 悪気はなかったの! お詫びに何でもします!」

 

 手のひら返しが凄い。本当に一体どんな折檻を受けたんだろう。

 リーテルシア様は溜め息を吐いた。

 

「……まあ、この子が私とユキヒメとの通話を盗み聞きしていたことに気付かなかった私にも非があります。ですから、構いません。ユキヒメ、始めてください」

 

「……わかりました」

 

 俺は緊張しながら頷き、配信用ドローンに視線を向ける。

 

〔待機〕

〔待機中〕

〔配信開始まだかなー〕

〔雪姫ちゃんに会いに来た〕

〔今回サムネ可愛くね?〕

〔姫はいつも可愛いだろブチ殺すぞ〕

〔過激派で草〕

〔コラボだわっしょい!〕

〔初コラボ!〕

〔相手誰なんだ?〕

〔ゲストって誰?〕

〔妖精のこと教えて雪姫ちゃん!〕

〔妖精について情報が出ると聞いて飛んできました〕

……

…………

 

 流れる大量のコメントに顔が引きつる。同時接続者数はなんと二十万人を超えている。外国語のコメントも多数。事前に予想していたとはいえとんでもない注目度だな……

 

 俺はリーテルシア様に最終確認的な目配せをし、頷きをもらってから意を決して配信用ドローンを操作した。カメラがこちらを映し配信が始まる。

 

「みなさんこんにちは、ダンジョン配信者の雪姫です」

 

〔キタ!〕

〔姫ぇええええええええ〕

〔姫はやっぱり可愛いよ!〕

〔妖精について何か情報を握っているんですか? ぜひ教えていただきたいです〕

〔っていうかここどこだ? ダンジョンの中?〕

〔Eランク以下のダンジョンにこんな場所あったか……?〕

〔優雅なお茶会が開催されておる〕

〔っていうか隣にド美少女おるが!? どちらさま!?〕

〔羽生えてない? え? 人間だよね? もしかして違う?〕

 

「まず、ここはダンジョンの中ではありません。今日は先日私の配信に映った妖精について、ある方を交えてお話します」

 

 視線を送ると、リーテルシア様は落ち着いた声で応じた。

 

「――はじめまして、ユキヒメの同胞たち。私の名はリーテルシア。妖精たちの母にして女王です。これから私たち妖精の“恩人”であるユキヒメとの関係について説明します」

 

 そんな感じで俺のチャンネル史上初のコラボ配信が始まった。配信開始の呟きをTwisterに投稿したせいか、瞬く間に同接が二十五万ほどまで伸びる。

 

 おそろしいまでの注目度から意識を逸らすため、俺は半ば無意識にこんな状況になった経緯を思い返していた。

 

 

 

 

 

「――本当にすみませんでした」

 

 ガーベラが乱入したことで配信に収拾がつかなくなった俺は、半ば無理やり配信を終了し、ガーベラを捕まえてフェアリーガーデンに向かった。以前は妖精が開けてくれた入口にお邪魔する形だったが、【妖精女王の祝福】を得た今では俺は自由に出入りできる。周囲に人影がないことを入念に確認してから、第一森林エリアの一角にある木を入口としてフェアリーガーデンに入った。

 

 手の中でガーベラがぎゃんぎゃん喚くのを無視してフェアリーガーデンの周囲をうかがっていると、配信を見ていたらしいリーテルシア様のほうからやってきてくれた。そして真っ先に俺に対して頭を下げたのだ。

 

「まさかガーベラがユキヒメの配信に入り込むなど……本当に申し訳ありません」

 

 リーテルシア様の悄然とした様子を見てガーベラが目を見開く。

 

「おっ、お母様!? やめてください、人間に頭を下げるなんて!」

 

「ガーベラ。ユキヒメは私たちの協力者です。信頼のもと、お互いの利益のために関係を持っている。それなのに今回、私たちは一方的にユキヒメに迷惑をかけた。謝罪はしなくてはなりません」

 

「そ、そんな」

 

「あなたもユキヒメに謝罪を。謝って済む話ではありませんが、謝らねば何も始められません」

 

「……わ、わかりましたよぉ……ごめんなさい、ユキヒメ……」

 

「あ、いや……」

 

 大したことない、と言いたい気もするが、咄嗟に言葉が出てこない。

 ひとまず俺は気になっていたことを尋ねた。

 

「それよりリーテルシア様、この妖精は一体?」

 

「彼女はガーベラ。私の……そうですね、後継ぎのようなものです」

 

「後継ぎ?」

 

「彼女には他の子どもたちと違い、私の魂の一部を継承させています。高い知能を持ち、魔術を操ることもできます。いつか私に代わって妖精たちを統率する存在です」

 

 妖精女王ならぬ、妖精王女という感じだろうか?

 確かに他の妖精と違うのはわかる。リーテルシア様以外だと喋っているのを見たのはこのガーベラだけだ。だが……

 

「…………知能が高い……?」

 

「あぁ~ん? ちょっと小娘、どうして疑わしげな視線を向けてるのかしらぁ?」

 

「ガーベラ、誰があなたに口を開いていいと言いましたか? 反省が足りないようですね」

 

「……スミマセン」

 

 声ちっちゃ。

 

「おそらく私とユキヒメの通話を聞き、仲間が足りないなら自分が、と短絡的に考えたのでしょう。配信に乱入するのが最後になったのは……ユキヒメがピンチになるのを待っていた、というところでしょうか」

 

「……」

 

 視線を逸らすガーベラ。何てわかりやすい妖精なんだ。

 

「まあ、この考えなしの娘のことは後で二度とこんなことをしないよう教育を施すとして」

 

「お、お母様! 違うのこれには私なりの考えが」

 

「それより、今後のことを考えるべきです」

 

 リーテルシア様はガーベラの悲鳴をばっさり無視して話を進めにかかる。俺は「そうですね」と頷いた。正直ガーベラへの罰よりこれからどうするかのほうが重要だ。

 

 前提として、妖精の情報はほとんど出回っていない。

 出回らな過ぎてモンスターの一種だと扱われており、意思疎通の試みはほとんどされていないらしい。だが妖精は探索者にとって“倒すと能力値を引き上げてくれる存在”だ。もし妖精について詳しい情報を持っている者がいれば、多くのダンジョン関係者が押し寄せるに違いない。

 

 俺が質問責めに会うだけならともかく、このフェアリーガーデンについて気取られたらとんでもないことになる。世界中のダンジョンに移動し放題なんてバレたら、あらゆる勢力がその力を求めるだろう。

 中には俺を痛めつけてでも情報を聞き出そうとする者がいないとも限らない。

 何か手を打たないと。

 

「先に一つ確認です、ユキヒメ。ここで私たちと関係を絶てば、最悪の状況を回避できますか?」

 

「……難しいと思います。すでにおれ――じゃなくて私と妖精には何か関係がある、と知られてしまいましたし」

 

 一応ガーベラがいるのでTSについてバレないように一人称を修正。こいつ、口軽そうだからな……

 TS解除にあたってはリーテルシア様の協力が必要だ。関係解消なんて選択肢にない。

 

「では、私に一つ考えがあります」

 

「え?」

 

「ユキヒメは私たちとの関係が他の人間に知られたら困るのですよね?」

 

「……はい。特に、フェアリーガーデンを介せば世界中のダンジョンに瞬間移動できる、というのは知られたくありません」

 

「では、それ以外をある程度明かすのはどうでしょうか」

 

「……はい?」

 

 リーテルシア様はどうやったのか、カバーの柄が変わっている複製スマホを軽く掲げる。

 

「ユキヒメの言った通り、ガーベラが姿を見せてしまった以上、私たちとユキヒメの関係は隠しきれません。ならばいっそ、こちらから情報を提示するのです」

 

「フェアリーガーデンから他のダンジョンに移動できる、という部分以外をですか?」

 

「はい。それに加え、疑問を解消する場を設ければユキヒメに群がる人間は減らせるでしょう。完全ではないかもしれませんが……効果は大きいはずです」

 

 ダンジョン関係者が情報を聞き出しに来る前に、こちらから知られても痛くない情報を選んで差し出す。この状況ならそれが最善だろう。

 

「わかりました。では、家に戻り次第Twisterで情報を公開します。リーテルシア様にも出す情報を選ぶのを手伝ってほしいんですが」

 

「それは構いませんが、まだ不十分でしょう」

 

「どういうことですか?」

 

「仮にユキヒメが妖精に関する情報を公開するとします。しかし欲深な他の人間が簡単に満足するとは思えません。情報公開後もユキヒメのもとに質問が届き続けることでしょう。そんな状況ではユキヒメの体を元に戻すことも、フィリアの魂を回収することも満足にできません」

 

「それは……そうかもしれませんけど」

 

 妖精に関する情報の価値を考えれば、Twisterの投稿程度でダンジョン関係者たちが満足するかは怪しい。不十分だと向こうが感じれば、結局俺の元には人が押し寄せてくる。

 そうなれば俺は身動きがとりにくくなり、ダンジョン配信にも、フィリア様捜索にも支障が出る。

 

「なので、矛先をずらしましょう」

 

「矛先をずらす、ですか?」

 

「情報の公開には私も立ち会います。そしてその後に寄せられる質問は、すべて私が対応できるよう状況を整えます――これを使って」

 

「……あ」

 

 リーテルシア様が複製スマホを操作し俺に画面を見せてくる。そこに映ったものを見て俺はリーテルシア様の考えを理解した。

 

「確かにそれなら、私が質問責めになることはなくなると思いますけど……そのぶんリーテルシア様が大変なことになるような」

 

「娘のガーベラがしたことですから、私が責任を取るのは当然です。フェアリーガーデンを人間に見せるのは望ましくありませんが……こればかりは仕方ありません。私はここから離れられませんし、まさかフェアリーガーデンの外で、ガーベラに私の代理をさせるわけにはいきませんから」

 

「へ? 私?」

 

 急に名前を呼ばれてきょとんとした顔をするガーベラ。

 確かにガーベラは余計なことまで喋りそうな気がする。出会ったばかりだが不思議と確信できる。

 

「詳しい話は、一度ユキヒメが家に戻った後に。ツキネを交えて話し合いましょう」

 

「わかりました」

 

 そんなやり取りを最後に俺はフェアリーガーデンを後にした。

 

 軽く騒ぎになっている探索者協会を何とか抜け出し、家に戻って月音に事情を説明する。リーテルシア様の案についても話し、月音も同意。俺、月音、リーテルシア様の三人で通話しながら段取りを決め、もろもろの準備を整えるのに数日。その間各種勢力から色々連絡があったが配信で話しますからと黙秘を貫いた。

 

 そして現在、リーテルシア様と俺は雑談配信という体で妖精絡みの情報を流しているのである。

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