超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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【コラボ回】トーコお姉さんと直接会ってお話します【雪姫】

「はーいみなさんこんにちは、今日はお酒飲んでない全年齢版のトーコですよ」

 

〔始まった!〕

〔うおおおおおおおお〕

〔昼からトーコ姐さんが配信してるのは珍しい〕

〔心なしかいつもより部屋綺麗じゃね?〕

 

「今日はゲストさんがいるから酒はなし。清楚でいきます。君たちも余計なことは言わないように、わかったね?? さて、今日はある配信者さんとオフコラボします。誰かなー誰だろうなー? それでは自己紹介お願いします!」

 

「ええと、はじめまして。新人ダンジョン配信者の雪姫です。今日はよろしくお願いします」

 

〔キタァアアアアアアアアアアア!〕

〔マジで雪姫ちゃんじゃねーか!〕

〔可愛い可愛い可愛い〕

〔右の子が可愛すぎて目がつぶれる〕

〔トーコネキと並ぶとマジでちっちゃいのがわかって大変かわいい〕

〔ぎゃんわいいいいいい〕

 

「こ、コメントの数が……! というか開幕から赤ゴルチャばっかり飛ばすのはどうなんですか!? 私たちまだ何もしていませんよ!」

 

「雪姫ちゃん可愛いから存在だけで感謝なんだよねえ……でへへ。右隣りに座る雪姫ちゃんだけ可愛い発言はさすがのトーコさんも普段なら泣いてたけど、今日は許そう」

 

「トーコさんは可愛いというよりは綺麗という感じだからじゃないですか?」

 

「ア゛ッ」

 

「!?」

 

〔トーコネキぃいいいいいいいい!〕

〔まあ推しに褒められたら死ぬよね〕

〔おかしい人を亡くした〕

〔配信お疲れさまでした!〕

 

「お、終わりませんよ!? まだ始まったばかりなのに! というか今日は配信のために用意したものもあるんですから、まだ続けます! トーコさんも起きてください!」

 

「毎朝雪姫ちゃんに起こしてほしいなあ……」

 

「トーコさん、朝弱いんですか? たまになら、朝電話をかけて起こすくらい構いませんよ」

 

「ア゛ッ」

 

「何なんですかさっきから! トーコさんが進めてくれないと困ります!」

 

 なんせここ、刀子さんの家だからな。機材の操作も今回は刀子さん任せだ。

 

 現在突発的に決まったオフコラボの最中である。<アンブロシアの実>のお礼に何かできることはないかと聞いたら、一緒に配信してくれと言われたのだ。ありがたいことに、刀子さんは俺の配信をよく見てくれているんだとか。

 

 俺からすれば国内トップの配信者とコラボできるのは新規視聴者を得るチャンスなので、遠慮なく受けることにした。

 

 設備の関係で場所は刀子さんの自宅。

 セキュリティばっちりのタワーマンションである。

 水鏡さんに車で送ってもらい、配信用だという部屋でこうして喋っている。

 ちなみに水鏡さんは「何かあってからでは遅いので」とこの部屋の扉のすぐ外で待っている。

 

 一体水鏡さんは何をそんなに警戒しているんだろう。刀子さんはこんなに話しやすくて面白い人なのに。

 

「ハァハァ……最高の日だよ……」

 

「ふふ、刀子さんは楽しい方ですね。みなさんが好きになるのもわかる気がします」

 

 きっと意図してリアクションを大きくしているんだろう。こういったエンタメ感あふれる振る舞いは俺には真似できないだろうな。

 

「――」

 

 嘘だろ、白目剥いてるこの人。

 

 演技……だよな……? 寝不足とは言っていたが、相当体調が悪い可能性が出てきたな。

 

「仕方ありません、トーコさんが起きるまで私が進行をします。まず今日のコラボに至った経緯ですが、実はトーコさんと私は今朝会ったばかりなんです。詳細は省きますが、トーコさんは私の――じゃなくて、私の友人の体を治すのに有用そうな素材アイテムを持ってきてくださったんです。その時に誘ってもらい、こうしてオフコラボすることになりました」

 

〔あー、なるほど〕

〔トーコ姐さん、いいところあるじゃん……〕

〔トーコリスナー的には邪心を感じないでもないけど〕

〔まあ善意ではあるから……〕

 

「コラボの内容ですが、ただ話すだけというのも味気ないのでこんなものを用意しました。……といっても、実際に作業してくれたのは私のお姉ちゃんと刀子さんなんですけどね」

 

 我ながらぎこちない手つきで機材を操作し、事前に用意されていた画面を切り替える。

 

 左上に大きな枠、右下に俺と刀子さんが映る画面。右上には縦長のコメント欄があり、左下には今回の配信タイトル――『オフでダンジョンシミュしながら雑談』と表示された。

 

「というわけで、今回は有名な“ダンジョンシミュレーター”をプレイしながらトーコさんとお話していきます!」

 

 ダンジョンシミュレーター。

 

 これは実際のダンジョンをモデルにした地形に挑むアクションゲームだ。

 綺麗なグラフィックや本物の人間のような3Dモデルにより、実際のダンジョン攻略のような迫力ある戦いが楽しめる。

 

 もともと探索者協会が“デスペナルティを気にせずダンジョン攻略の経験を積んでほしい”と作ったゲームを、大手メーカーが協力して質を上げた代物らしい。

 

 今では探索者以外にも爆売れしシリーズ化、探索者という職業の認知度を上げるのに一役買っているんだとか。

 

 月音はこれの大ファンであり、「ダンジョン適正がない人間の最後の希望なんだよ!」と熱弁していた。

 

 刀子さんもこれを持っていたので、俺は月音からハード(携帯できる)と別売りのコントローラーを借りて通信機能で遊びながら雑談することにしたのだ。

 

「とりあえずキャラメイクですね。私はこれをやるの初めてなので、つき――じゃなくて、お姉ちゃんのデータとは別にアカウントを作って……ってパーツ多いですね!?」

 

 顔の形や目の形だけでそれぞれ五十近いパターンがある。

 とんでもないバリエーションだな。

 

〔ダンシミュは世界的にめっちゃ売れてるからなあ〕

〔協会が全面協力してるから、リアリティすごいしな。メーカーも気合入ってる〕

 

「そうなんですね。うーん、どうしましょうか。いっそランダムにするという手も」

「雪姫ちゃんなら顔は204番、目の形は6番、髪型は16番、髪色は352番、肌は92番がいいと思うよ。目の色はカラーサークルの位置が微妙だから私がやろうか?」

 

「あ、トーコさん。目を覚ましたんですね」

 

「うん。ちょっと危なかったけどね!」

 

「危ない……? あ、トーコさんに言われた通りに作ったら私に似た外見になりました!」

 

 画面に表示されたのは今の俺にそっくりな少女だ。

 こんなにピッタリな外見にできるとは思わなかったな。

 

「トーコさん、このゲームをものすごくやりこんでいるんですね」

 

「え? いや、そんなにだよ」

 

「え? でも今私の体を作れるようにスラスラと……え?」

 

 何だ? 俺がおかしいのか……?

 

〔やりこんでいないゲームで雪姫ちゃんを作るパーツ番号を暗記している……? 妙だな……?〕

〔うん……〕

〔ごめんね雪姫ちゃん……トーコ姐さんがごめんね……〕

〔トーコリスナーに聞きたいんだけど、この再生リストにある“雪○ちゃん似のアバターで触手モンスター討伐、ぬるぬるはロマン”っていう動画は一体〕

〔流れが怪しくなってきたな……〕

 

 なぜだろう。この話題には深く踏み込まない方がいい気がしてきた。

 と、とにかくゲームに戻ろう!

 

「あ、これクラスは自由に選べるんですね。せっかくだから前衛もやってみたいですね」

 

「雪姫ちゃん、魔術師じゃなくていいの?」

 

「はい。みなさん私のことを可愛い可愛いと言ってくるので、ここらで凛々しく格好いいところを見せたいと思いまして!」

 

 魔術師という動きの少ないポジションだから大人しく見えるだけで、俺の勇ましさは前衛になればきちんと伝わるはず!

 

〔雪姫リスナー、彼女は何を言ってるの?〕

〔あの可愛さで、格好いい……?〕

〔気にしないでトーコリスナー。雪姫ちゃんは現実が見えてないんだ〕

〔少年が特撮ヒーローに憧れるみたいなものだと思ってもらえれば〕

〔もしくはロリがディ○ニープリンセスを夢見てるみたいな〕

 

 酷い言われようだ。

 

 まあいい、ゲームが始まればきっとその評価も覆るはず。

 アバターもせっかくだから動きやすそうなポニーテールにして「…………雪姫ちゃんのうなじ最高……今日死んでもいい……」おこう。クラスは剣士にして、と。

 

「チュートリアルは配信前にトーコさんのデータを少し触らせてもらったのでスルーして、と……それじゃあゲームをやっていきましょう。協力モードでいいんですよね?」

 

「うんうん。あ、私もそこまでやりこんでないから気楽にね!」

 

「ありがとうございます」

 

 共通拠点となる探索者協会で刀子さんと合流。

 確かに刀子さんのアバターは俺と大差ない装備に身を固めていた。まるで本命のデータは他にあるかのようだ。とにかく、アバターの強さに差があり過ぎないのなら丁度いい。

 

 いざダンジョンへ。

 

 実在する世界中のダンジョンが選べるようで、せっかくなので海外のダンジョンを選択する。ローマダンジョンとか、実際に行く未来が見えないし。

 

『――』

 

「ゴーレム、ですか。手ごわそうですね……」

 

 現れたのはずんぐりした石製の人型モンスター。いかにも防御力が高そうだ。

 

「ひとまず雪姫ちゃん、戦ってみる? 危なくなったらフォローするから」

 

「わかりました。それじゃ――たあっ!」

 

 ガキン!

 

 剣が弾かれる。

 

『――』

 

「うぁっ」

 

 殴られた! 攻撃力は大したことないみたいで、ヒットポイントの減少は大したことない。が、問題は俺の技量だ。

 

 ぶっちゃけリアルタイムで戦うゲームには不慣れなんだよな……

 いや、弱気になったら負ける。ここは果敢に攻めるべきだ。

 画面の中で俺そっくりのアバターが剣を構えて突撃する。

 

「はっ! たぁっ!」

 

『――』

 

 ガキン!

 

 また剣が弾かれる。ダメージが通ってないわけじゃなさそうだが、問題なのは相手に弾かれるとこっちの攻撃モーションが中断されてしまうことだ。

 

 しかも相手は攻撃されても怯まないせいで、ちょうどタイミングが重なっていた向こうの攻撃をこっちがもろに受けてしまう。

 

 ガッ! ゴッ! ドガッ!

 

「やっ、あっ……うぁ」

 

『――』

 

「…………」

 

「んんっ! つ、強いっ……」

 

「………………」

 

『――』

 

「だ、だめ! それはだめっ」

 

「………………、」

 

「何でそこばっかりっ、私(壁際に)行きたくないのにぃっ……! んぅっ!」

 

 ヤバい、逃げ場のない壁のそばに追い込まれた! 敵に弾かれまくっているせいで大変なことに!

 

「すみませんトーコさん、フォローをお願いできませんか!?」

 

 トーコさんのアバターは俺と違って魔術師クラス。

 おそらくこのゴーレムは物理攻撃に高い耐性がある。

 なら逆に魔術なら普通より効く可能性が――

 

「任せて雪姫ちゃん! 私がちゃんとするからね(ダラダラダラ)」

 

「どうしてトーコさんはそんなに鼻血を出しているんですか!?」

 

 隣でコントローラーを握っているトーコさんは勢いよく鼻から赤い液体を垂れ流していた。なぜ!? 普通に座ってただけだよな!?

 

「何でもないよ。ただ、ちょっと目を閉じて意識を集中していただけで」

 

「画面も見ずに一体何に集中を……?」

 

 とにかくティッシュだ。早く刀子さんの鼻血を止めないと。

 

〔これどっちが悪い?〕

〔8:2ってとこじゃないか?〕

〔トーコ姐さんもアレだが雪姫ちゃんちょっと危険すぎるな〕

〔切り抜いてほしい気持ちと切り抜かないでほしい気持ちが入り混じってる〕

〔声までこんな可愛いとか……〕

〔ロリコンじゃなくてもあんな可愛い声を隣で聞かされて動揺せんやつおらんやろ〕

〔雪姫ちゃん、ボイス出さない? わりとマジで〕

〔甘えたがりな娘ボイスがいい〕

〔俺はむしろ反抗期に入った雪姫ちゃんに雑に扱われたい〕

〔監禁されて罵られたい〕

 

「視聴者の皆さんも少しはトーコさんの心配をしてください! というか全然関係ないコメントも混ざってますよね!?」

 

 その後もたびたび鼻血を流したり呼吸を荒くしたりする刀子さんをなだめつつ、どうにか協力しながらローマダンジョンはクリア。しかし時間が相当かかってしまったためにそこで終了することとなった。

 

 これはもしかして放送事故というやつなのでは?

 刀子さんや、帰ってから感想を聞いた月音からは大成功だと言われたが、本当だろうか。

 迷惑になってなければいいんだが……

 

 

 

 

 ……余談だが、その日“(使える)雪姫ちゃんボイス集”という動画がアップされ、すさまじい勢いでバズっていた。月音から絶対見るなと言われたので見なかったし、翌日にはなぜか削除されていたので内容は知らないんだが。

 

 一体何だったんだ、あれ。

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