超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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横浜中華街ダンジョン攻略配信2

「【アイスショット】!」

 

『ギャアアアアアアア!』

 

 氷の弾丸が小型肉食恐竜っぽい見た目のモンスター、“リトルラプトル”を吹き飛ばした。

 タワーサウルスとニアミスして以降、それが呼び水となったように立て続けに恐竜型モンスターに襲われた。

 恐竜型モンスターと戦った感想だが……

 

「なんか妙に強く感じます……足が速いうえに攻撃力も高いですし」

 

〔ぶっちゃけそれが特徴ともいえる〕

〔シンプルに能力値が高いんだよな、恐竜型モンスターって〕

〔代わりに変な能力はあんまり持ってなかったりするけどな〕

 

「やっぱりそうですよね。氷属性魔術の効き目が強いみたいなので、そこはありがたいんですけど」

 

 恐竜型モンスターだが、すばしっこいうえに一発一発が強い。普通に戦えば相当厄介だろう。一方で氷属性が弱点のようで、<初心の杖>の【アイスショット】でも当てれば簡単に倒せることが多い。

 

 【氷の視線】の成功率も高いし、相手の強さほどには苦戦しないで済んでいる。

 この調子ならキーボスまでいけるかもしれないな。

 

 バキッ! ドガッ! グシャッ!

 

「……何だか嫌な音が聞こえるんですが」

 

 木をへし折るような音だ。

 しかもどんどんこっちに近付いてきている。

 

『グルアアアアアアアア!』

 

 木をへし折って現れたのは、大きく頑丈そうな頭部を持つ二足歩行の恐竜型モンスターだった。何らかの能力を使っているのか、頭部が銀色に輝いている。

 

〔ぎゃああああああああああああ〕

〔暴走ハゲサウルスだああああああああ!!!!〕

〔メタルヘッドラプトルって名前があるダルルォ!?〕

〔最悪の引きで草〕

〔雪姫ちゃんダッシュ! 逃げて早く!〕

 

 え? 何? このモンスターやばいの?

 

『シャアッ!』

 

 勢いよく後ろ脚で地面を蹴ってモンスター……メタルヘッドラプトルが突っ込んでくる。

 

「【氷の視線】!」

 

「ゥグッ……」

 

 【氷の視線】で相手の動きを止めにかかる。

 メタルヘッドラプトルは一瞬だけ動きを止めるが――バチィッ! という音を立てて自由を取り戻す。拘束が振り払われたのだ。

 

『グルァアア!』

 

「効き目が薄い……!?」

 

 バゴン!

 

 俺が横っ飛びして突進を避けると、メタルヘッドラプトルはさっきまで俺がいた場所の直線状にある木を頭突きでへし折った。向こうが振りむくタイミングに合わせてもう一度【氷の視線】を使おうとするが、やはり弾かれる。

 

〔雪姫ちゃん、もしかして例の魔眼っぽいの使ってる?〕

〔今回それに期待しないほうがいいかも〕

〔メタルヘッドラプトルは頭光ってる間、デバフ耐性バカ上がるから気を付けて!〕

 

 デバフ耐性が上がる……それで【氷の視線】の効き目が悪いのか。ならこっちだ。

 

「【アイスショット】!」

 

『フンッ!』

 

 ガギン!

 

 頭で弾かれた!? 嘘だろ!?

 

〔こいつの頭、めっちゃ硬いんだよなあ……〕

〔光ってる時はほぼ鋼鉄だしな〕

〔しかも無機物扱いになるから頭は弱点も消えるという〕

 

 どうやらあの頭部は相当な防御力を誇るようだ。【氷の視線】と【アイスショット】がどっちもほとんど効かないって相当やばくないか?

 

『グルアアアアアアアア!』

 

「ひえええええ」

 

 バゴン! ドゴッ! バキバキ!

 

 障害物を利用して逃げ回ってみるが、向こうは木をへし折って進む突進力があるので全然引き離せない。何ならこっちがまっすぐ進めないのに対して向こうは一直線に進んでくるせいで距離は詰められる一方だ。

 

 というかこいつ、まっすぐ突っ込んでくるばかりだな。それだけ自分の突進力に自信があるということだろうか。

 とにかく、逃げられないなら倒すしかない。

 

「【氷の視線】」

 

『ギィッ……!』

 

「【アイスショット】、【アイスショット】、【アイスショット】!」

 

『――!?』

 

 一瞬だけ【氷の視線】でメタルヘッドラプトルの動きを止め、さらに氷の弾丸を相手の進行方向に置いて簡易バリケードを作る。もちろんこんなもので相手の自由を完全に奪うことはできないが、時間を稼げれば十分だ。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは影落とす氷の盾!」

 

 メタルヘッドラプトルが【アイスショット】の簡易バリケードを蹴散らし突進してくる。

 俺は逃げずに<初心の杖>を構えた。

 

「【アイスシールド】!」

 

 ズオッ――ドガン!

 

『グルゥ!?』

 

 目の前に現れた分厚い氷の盾がメタルヘッドラプトルの突進を阻む。

 

〔止めた!?〕

〔盾でっか! 二メートル超えてるだろ!〕

〔一般的なEランク魔術師の【アイスシールド】の倍くらいあって草ァ!〕

 

『グルゥオオオオオオオオオオ!』

 

 ズガガガガガガッ!

 

 メタルヘッドラプトルは意地でも直進以外はしないとばかりに盾を削りながら突っ込んでくる。ゆっくりと、けれど確実に盾を壊しながら突き進んでくる。

 

 やがて氷の盾にヒビが入り、突破される。

 

『オオオオオオオオオオオ!』

 

 メタルヘッドラプトルが達成感に満ちた咆哮を上げる。

 自分は強いと。圧倒的なまでの力を持つと。

 それを証明できたことへの歓喜が打ちあがる。

 

 その勢いのまま俺に狙いを定めるメタルヘッドラプトルに、俺は……

 

「【オーバーブースト】、からの――氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは影落とす氷の盾、【アイスシールド】」

 

 ズオオオオオオ!!

 

 さっきの倍頑丈な盾を用意して待ち構えてみた。

 

『…………ギャウ……?』

 

 氷の盾があるせいで見えないが、盾の向こうから悲しそうな声が聞こえた気がする。

 

〔あっ〕

〔こ れ は ひ ど い〕

〔頑丈な盾を破壊して進んだ先には、さらに頑丈な盾が待っていました……〕

 

『……………………、グ、グルウ、グルウアアアアアアアアアアアアア!』

 

 メタルヘッドラプトルはさらに突っ込んでくるが、最初の【アイスシールド】を砕いたことで疲弊していたのか途中で力尽きてしまったようだ。

 

 【アイスシールド】を回り込んでみると、メタルヘッドラプトルが仰向けにひっくり返って目を回していた。

 メタルヘッドラプトルの頭部の光が消える。酷使しすぎたのかもしれない。

 

 ダンジョンのモンスターには戦い方に何らかの傾向を持つものがいる。

 確信があったわけじゃないが、メタルヘッドラプトルの攻撃はすべて一直線に突っ込んでくるというものだった。多分そういう習性があるんだろう。だからこそ進行方向に盾を出して待ち構える、というやり方が成立したわけだ。

 

「私の勝ちですね。【アイスショット】」

 

 胴体を狙って【アイスショット】を撃ち込むと、メタルヘッドラプトルは魔力ガスとなって消滅した。

 

 

<レベルが上昇しました>

<新しいスキルを獲得しました>

 

 

「勝てました!」

 

〔8888888888〕

〔相性最悪の敵を正面から叩き潰すのマジ?〕

〔メタルヘッドラプトルって本当はバフかけまくった盾役(タンク)が頭突きを止めて、横から殴るしかないはずなんですがねえ……〕

〔雪姫ちゃんも盾使ってたから(震え声)〕

〔なんで魔術の盾でタンク並の防御力が発揮できるんだよ! タンククラスの立場ないだろ!?〕

〔これは王族の風格〕

〔姫殿下万歳! 姫殿下万歳!〕

 

 月音が軽率に雪姫なんて名前をつけたせいで王族扱いをされ始めた。まごうことなき一般家庭出身なんだが。

 

 ガサガサッ。

 

「――っ、またモンスターですか!」

 

 警戒する俺。

 茂みからトコトコと現れたのは、アルマジロみたいな小型のモンスターだった。

 俺を見ると、しっぽをぶんぶん振って威嚇してくる。

 ……

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは敵を穿ち削る氷槍、【アイシクル】」

 

 ドガン!

 

『きゅうー!?』

 

 一発で簡単に倒せた。どうやら厄介な特殊能力も何も持っていなかったようだ。多少防御力は高そうだったが、動きものろかったし。

 

 ……このダンジョン、本当にモンスターの強さがごちゃ混ぜだなあ。

 

 今までにない雰囲気だ。

 き、緊張感を持っていいのか楽にしていいのかわからないからそわそわする……!

 

 とりあえずまだ余裕もあるし、先に進むか。




恐竜型モンスター(ほぼCランク)、獣型(ほぼEランク)で平均取ったらDランクだよね、みたいなダンジョン。
メタルヘッドラプトルは恐竜の中でもやや強め。
なおブラキオサウルスは……

水鏡は「主人公、もうちょいトラブル慣れした方がいいんじゃね?」みたいなことを思ってこのダンジョンを勧めました。イレギュラーが多いため。
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