超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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【コラボ配信】魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略します【ヒバナちゃんと】3

「炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは形なき爆ぜる籠手! 【ボムガントレット】!」

 

 ヒバナの両手に炎が宿る。目の前のモンスターを殴ると爆発が起こり敵を吹き飛ばした。

 

『グルゥ……!?』

 

 殴られたメタルヘッドラプトルとヒバナとの間に距離ができる。

 

「雪姫ちゃん、今だよ!」

 

「はい! 氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは疾く駆ける氷の矢、【アイスアロー】!」

 

 ズガッ!

 

『ギャウ!?』

 

 氷の矢を胴体に受けたメタルヘッドラプトルは魔力ガスとなり消滅した。

 

 

<レベルが上昇しました>

 

 

 お、レベルが上がったみたいだな。

 

「雪姫ちゃんナイスショット!」

 

「ヒバナさんこそ、完璧でした」

 

 走って戻ってきたヒバナとハイタッチ。思い付きで試している連携だけど形になってるな。

 

〔8888888888〕

〔スムーズすぎて草ァ!〕

〔メタルヘッドラプトル君、雪姫ちゃんだけだとけっこう苦労してたのにな〕

〔爆発で敵をぶっ飛ばして矢でドーン作戦、シンプルだけど最適解感がある〕

 

 俺が立てた作戦は簡単で、まずヒバナが爆発で敵を吹っ飛ばして距離を作り、攻撃範囲の狭い俺の【アイスアロー】で仕留めるというものだ。このやり方ならヒバナを巻き込むことなく俺の火力を活かせる。

 

「敵が一体ならこれでいいけど、複数だとちょっと困るかも?」

 

「その時はさっきみたいに上に逃げてくれたら【アイスショット】で敵を減らしますよ。ある程度敵を引き付けてもらう必要はありますが……」

 

「<初心の杖>って初期魔術を無詠唱で撃てるんだっけ? いいねいいね、それでいこう!」

 

 実戦で試しながら連携を詰めていく。

 何度かやってみて思ったが、俺とヒバナは結構戦闘面での相性がいいらしい。

 

 正直盾と鎧でガチガチに固めた前衛より、爆発で敵の位置をコントロールしてくれるヒバナのほうが俺からするとありがたいんだよな。多分重武装でも俺の魔術に巻き込まれたら無事じゃ済まないだろうし……【援護射撃】で魔術の命中精度が上がっているとはいえ、射線上に誰もいないほうがいい。

 

「あと、あたしのことはあんまり気にせず魔術撃っていいからね」

 

「さ、さすがにそれは」

 

「あ、ごめん言い方よくなかったかも。【アイスアロー】とか【アイスショット】みたいな威力低めの魔術だけね。……あたし、実は氷属性に耐性つけるスキル持ってるんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。しかも六月から八月は効果が強くなるみたい」

 

「期間限定で効果が変わるんですか? 不思議なスキルですね」

 

「未登録スキルだから珍しいみたい」

 

「そ、それバラしていいんですか?」

 

「大丈夫大丈夫。うちのリスナーさんみんな知ってるしね」

 

 あっさりそう言うヒバナ。俺の【一撃必殺】みたいに公然の秘密扱いなのかもしれない。

 氷属性への耐性か……

 

「ありがたいですけど、場合によっては大惨事になりかねないですね……シールドサウルスの時みたいにうっかり私のスキルが発動したら、いくら耐性があっても無傷では済まないかもしれませんし……」

 

 ヒバナがわざとらしく声を上げる。

 

「あ、雪姫ちゃんもスキルのこと言った~。バラしたらだめなんだよ」

 

「ヒバナさんもさっき言ってたじゃないですか……」

 

「まあね! お揃いだね~」

 

「何なんですか、もう」

 

「えへへ~雪姫ちゃんと一緒~」

 

 八重歯を見せて嬉しそうに笑うヒバナ。

 何だか浮かれているような雰囲気だ。ヒバナはパーティを組んだことはあまりないと言っていたから、誰かと一緒にダンジョン攻略をするのが楽しいのかもしれない。

 

〔ウッ……〕

〔ヤバい泣きそうだ……ばなちゃんが友達と話してる……〕

〔雪姫ちゃんも楽しそうで可愛い〕

〔口角が上がり過ぎて天井壊れた〕

〔マジでこの二人毎日一緒に配信してくれないかな。見てるだけでなんかすげー癒されるんだけど〕

 

 視聴者も楽しんでくれているようだ。やはりコラボ配信というのは需要があるんだな。

 というわけで戦闘面では順調なわけだが……

 

「あいたっ」

 

「ヒバナさん!?」

 

 急に何もないところで転ぶヒバナ。

 

「大丈夫ですか……?」

 

「へ、平気平気。ちょっとよそ見してただけだから」

 

「モンスターでもいたんですか?」

 

「ほ、本当に何でもないからっ」

 

 やっぱりヒバナの様子がちょっとおかしいんだよなあ。

 緊張してる……というより何かを警戒しているような雰囲気だ。ダッシュイーターやらタワーサウルスやらの強敵がいきなり出てくるのがこのダンジョンなので、周囲を気にするのは理解できなくもないが……何かそういう雰囲気でもないっぽい。

 

〔ばなちゃん今日ちょっとそわそわしてる……?〕

〔コラボ久しぶりすぎて緊張してるんじゃね? ところで普段元気いっぱいな子が緊張してるのって超かわいいと思うんだけど〕

〔ギャップ師匠! ギャップ師匠じゃないですか!〕

 

 視聴者の中には違和感を覚えている人もいるようだ。配信事故になるようなレベルじゃないから、スルーしてもいいといえばいいんだが。

 

 そんなことを考えていると、視界の端になんか妙なものがあった。

 

「……岩?」

 

 何だこれ? モンスターの擬態か?

 

「あ、採掘スポット! 森の中にあるなんて珍しい~」

 

「採掘スポット……っていうと鉱石系の素材アイテムがドロップするっていう?」

 

「そうそう、その採掘スポット! 普通は火山の近くにしか出ないんだけど、たま~に森にも出るんだよね」

 

 採掘スポットというのはその名の通り、鉱石系素材アイテムを採掘できる場所だ。見た目は三角形の岩だが、独特な模様が入っているのですぐにわかる。

 

 専用のマジックアイテムを使うことで決まったプールの中から抽選で素材アイテムを手に入れられるそうだ。

 ちなみに入手アイテムだけでなく採掘回数にもランダム要素が絡むらしい。

 

「雪姫ちゃん、採掘したことないの? よかったらやってみない?」

 

 ヒバナが拡張機能のあるレッグホルスターからツルハシを取り出した。

 これが採掘に必要だっていうマジックアイテムか。

 

「いいんですか?」

 

「いいよ~。あたしは何度もやってるし、雪姫ちゃんが見つけたんだし」

 

「それじゃあお言葉に甘えて……これって普通にツルハシで叩くだけでいいんですか?」

 

「そうそう。細かい技術も必要ないし、思いっきりガーンッとやっちゃえばいいんだよ!」

 

 ツルハシを受け取り採掘スポットの前に立つ。

 とりあえずやってみよう。せえのっ。

 

 ガンッ!

 

「あ、何か落ちました」

 

「<火石>だね。爆薬系のマジックアイテムになるんだよ。採掘スポットが消えるまで何度でも採掘できるからどんどんやっちゃってね」

 

「何度でもですか」

 

「最高で十回だったかな。でも多分そんなにいかないと思うよ。あたしも毎回二、三回で止まっちゃうし。一番いい時でも五回くらいだったかな。連続採取の成功率、すっごい低いんだよね~」

 

「そうなんですか。じゃあ、目指せ五回ですね!」

 

 俺はツルハシを振り上げ――

 

 カンッ <火石>

 カンッ <火石>

 カンッ <炎石>

 

「す、すごいね雪姫ちゃん! もう四回だよっ」

 

「あはは、そうですね。それじゃあ続けますね」

 

「これなら六回……いや七回目まで狙えちゃうかもしれないね!」

 

 カンッ <火石>

 カンッ <ひび割れた鉄鉱石>

 カンッ <紅蓮石の欠片>

 

「ほ、本当に七回目まできちゃった! しかもまだ採掘スポットが消えてないよ!」

 

「……そ、そうですね~……いやー、今日の私は運がいいですね……」

 

「でもさすがにこれ以上は厳しいかもしれないね……八回目からはさらに確率が下がるって噂もあるし……」

 

 カンッ <火石>

 カンッ <ひび割れた鉄鉱石>

 

「雪姫……ちゃん……?」

 

 何かヤバいものを見るかのような表情のヒバナ。

 薄々こうなる気はしていた。運要素が絡むと聞いた時からこの展開は予想していた。

 

〔もう九回終わってるのにスポットが消えてないってマジ?〕

〔雪姫ちゃんリアルラックやばすぎる……ええ……〕

〔これどのくらいの確率?〕

〔確か30%の八乗だからざっくり一万五千回に一回とかじゃね?〕

〔八回目以降は確率下がるって話だからさらに低確率だゾ〕

〔なるほどそのくらいなら一発で引き当ててもおかしくないな!〕

〔しっかりしろ! 目を覚ませ!〕

〔神様まで可愛さでオトしてるのかな??〕

〔神様まで虜にするとはさすが俺たちの姫だな!〕

 

「と、とりあえず最後の一回ですね」

 

 カァンッ!

 

 最後にドロップしたのは今まで一つも落ちなかったものだった。大き目の石で、赤いガラスのような見た目だ。よく見ると透けた鉱石の奥で炎のようなものが揺らいでいる。

 

「これ……<灼火水晶>!?」

 

「ヒバナさん、知ってるんですか?」

 

「う、うん。ものすごいレアな鉱石だよ。横浜中華街ダンジョンの採掘スポットから落ちるアイテムの中では一番貴重なんじゃないかな。売ったら十万DPにはなると思う」

 

 DP=協会で金の代わりに使えるポイントだ。俺の年齢だと換金はできないが、装備やアイテムと交換できる。

 

〔採掘十回に加えて<灼火水晶>て〕

〔やってることすげぇな……人によっては暴動が起こるぞ〕

〔これ雪姫ちゃん、幸運の数値高いんじゃね? 偶然で片付けられないだろ〕

〔出た、隠し能力値理論〕

 

「幸運の数値? そんな項目はステータスボードになかったような……」

 

〔生命力とか精神力みたいな感じで、ステータスカードでは見えないけど存在する数値みたいなもん。都市伝説みたいな扱いだけど〕

〔幸運は錬金炉とか採掘スポットとか、スキルの取得確率にも影響してるんじゃねって話〕

〔幸運は今までの人生で“稀少な体験”をしてる回数が多いほど高くなるとかなんとか〕

 

「稀少な経験……」

 

 つまりは他の人がしていないような人生経験、ということだろうか。それがあると幸運なる隠し能力値が高くなりやすいと。

 

 そうはいっても稀少な体験なんて果たして俺の人生の中で――

 

 

 

 

『雪人見ろ! ダンジョンで拾った妖刀を加工して包丁にしたんだが、宙に浮いて切りかかってくるんだ! 料理する時は気を付けるようにな!』

 

『あ、雪人! 庭に植えてる花には絶対に近付くなよ! 幻覚を見させられて二度と目が覚めなくなるからな! でもご近所さんのほうに根を伸ばし始めたら適当に切っといてくれ! 通報されちまうからな! ガハハ!』

 

『悪い雪人、しばらく入院するわ! ダンジョンで拾った果物を食べたら心臓が三つになっちまった! ポーションで治療しないと三十分で死ぬらしい! 戸棚に入れっぱなしだから処分よろしくな! 触ると指が爛れるから必ず鉄のトングを使うんだぞ!』

 

 

 

 

「…………………………クソ親父が……」

 

「雪姫ちゃんどうしたの? すっごい怖い顔してるよ!?」

 

「何でもありません。ただちょっと、私には絶対に【アイシクル】を四、五十発叩き込まなければならない存在がいることを思い出しただけで」

 

「本当にどうしたの雪姫ちゃん!? そんなことしたらその人絶対に無事じゃ済まないよ!」

 

 思い当たる節が多すぎる。隠し能力値とやら、本当に存在するのかもしれない。

 確かに錬金炉やらスキル取得確率やら、人より上振れしてる気はしてたんだよな……仮に事実だったとしても元凶には感謝するつもりはないが。

 

「雪姫ちゃん、その……」

 

「どうかしましたか、ヒバナさん」

 

 何やら言いにくそうに視線をさまよわせていたヒバナは、やがて意を決したように勢いよく頭を下げてこう言った。

 

「この<灼火水晶>、あたしに譲ってもらえないかな!?」

 

「<灼火水晶>を?」

 

「うん。あたし、実はずっとこのアイテムを探してて……でも、何回採掘しても手に入らなくて……DPはまだ足りないけど、絶対ちゃんと返すから、だから……!」

 

「ヒバナさん……」

 

 そういえばヒバナの最近の配信は全部このダンジョンでのものだった。配信タイトルも確か素材集めになっていたような……

 それはもしかしてこの<灼火水晶>を求めていたからなのかもしれない。

 

「まだ財布を拾ってもらったお礼もちゃんとできてないのに、虫がいいのはわかってるけけど……どうしても必要なの。夏が終わるまでに……!」

 

 夏が終わるまでに……? 何か事情があるのだろうか。まあ、どっちみち俺の答えは決まっている。

 俺は<灼火水晶>を差し出した。

 

「どうぞ、ヒバナさん」

 

「え、い、いいの?」

 

「はい。ツルハシを貸してくれたのはヒバナさんですから」

 

「……本当にいいの? それ、すっごく貴重なんだよ?」

 

 自分で言っておいて信じられないというような顔をするヒバナ。この言い方だけでヒバナがいい子であることがよくわかる。そんな相手が必死にお願いしてきたんだから、彼女にとって相当重要なアイテムなのは間違いないだろう。

 

 というか別に<灼火水晶>、俺には必要ないしな……DPでは<完全回帰薬>の素材集めの資金にならないし。

 

「ただし一つだけ条件が」

 

「うん。何でも言って」

 

「この配信中、キョロキョロするの禁止です」

 

「え?」

 

「ヒバナさん、ずっと何か気にしてますよね。それをやめましょう。せっかく配信を楽しんでくれている方がいるんですから、集中したほうがいいと思います」

 

「う……ごめん、そうだよね」

 

 自覚はあったのかヒバナが視線を落とす。

 しかし俺は説教がしたいわけじゃない。

 

「せっかく一緒に配信できるんですから、楽しみましょう。私、ヒバナさんと一緒に配信していると楽しいですよ」

 

「雪姫ちゃん……!」

 

 ヒバナは目を見開くと、ぱんっと両手で自分の頬を叩いた。

 

「そうだね、せっかく一緒に配信してるんだもんね……楽しまないのはよくないよねっ」

 

「はい。思いっきり楽しみましょう」

 

「わかった! ……えへへ」

 

「何ですか?」

 

「雪姫ちゃん、お姉ちゃんみたい。あたし一人っ子だからなんか新鮮だな~」

 

 どこか嬉しそうに言うヒバナ。

 …………姉とか言われるとぞわぞわするな……いやまあ本当は年上だし、今は女の子だから変なことではないんだろうが……

 

〔可愛い〕

〔はい可愛い〕

〔ちょっとこの二人可愛すぎるな……〕

〔仕事が終わった時にこの二人が待ってるかと思うと頑張れる〕

〔仕事帰りにシュークリームとケーキを買っていこう〕

〔しっかりしろ! いくら可愛くてもこの二人はお前らの娘じゃないぞ!〕

〔姉妹だし魔法少女コンビだし組み合わせ最高すぎん?〕

〔戦闘以外の面で相性が良すぎる。ガーベラちゃんが戻ってきた時嫉妬しかねないぞこれ〕

〔なんか想像できるなww〕

〔雪姫ちゃんは罪な女すぎる〕

 

 コメント欄が生温かくなってきた。

 この連中は俺たちの一体何なんだよ。誰が娘だ。

 

 とりあえずヒバナの気分が晴れたようでよかった。




昨日サイトに接続できなかったのでぬるっと更新
ハーメルンとカクヨムが両方つながらなかった時はけっこう血の気引いたぜ……
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