超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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【コラボ配信】ガーディアンボス戦! 魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略するよ~!【雪姫ちゃんと】4

 山頂付近の開けた岩場に着いた。

 

 火山を上る際、休憩場所としてよく使われる場所だ。

 ヒバナの人外ショートカットのおかげでわりとあっさりたどり着けたな。

 

「ヒバナさん、ガーディアンボスとの戦いの前にここで準備を整えていきましょう」

「わかった!」

 

〔めっちゃ早かったな〕

〔まあばなちゃんの人外ショートカットもあったし、モンスターは大体全部雪姫ちゃんがワンパンしちゃうから……〕

 

 手近な岩に並んで座り、精神回復薬などで魔力体のコンディションを万全に戻していく。

 

「それじゃあ作戦の確認を」

 

「ねえねえ雪姫ちゃん、作戦会議は卵を抱っこしながらにしようよ。抱いて温めたほうが孵るの早くなるらしいし!」

 

「あ、そうですね」

 

 従魔の卵――<ウイングラプトルの卵>は俺が預かっている。マジックポーチから卵を取り出してヒバナに預けると、ヒバナはそれを膝に乗せて撫で始めた。隙を見て温めておくのはいいことだ。

 

〔今更なんだけど、この卵の扱いってどうなるんだ?〕

〔二人がコンビ解散したらどっちについていくかとか決めてる?〕

 

「コンビを解散したら……全然考えてなかったですね」

 

「言われてみればそうだね」

 

 従魔は一体。俺とヒバナがもとのソロ探索者に戻れば、どう扱うか困りそうだ。

 

 協会で預かってもらって、必要に応じて俺とヒバナが連れていくとか? でも別のダンジョンに挑戦する時にいちいち預け先の協会支部に行くのは大変だよなあ。そもそもそんなことが協会に許されるのかもわからん。

 

 いっそヒバナを固定パーティに誘ってみるか? でも俺の事情に巻き込んだら洒落にならないしなあ……

 

 色々考えていると、ヒバナが横から俺の服をそっと掴んだ。

 

「あたし……雪姫ちゃんと別れるのやだな……」

 

「ひ、ヒバナさん……」

 

「……せっかく友達になれたのに」

 

 その時のことを想像したのか、しゅんと落ち込んだ声でヒバナが呟く。

 

 ……何でそんな可愛いこと言う?

 

〔ごふっ〕

〔ばなちゃんが可愛くて死にそう!〕

〔大好きなお姉ちゃんが遠くに進学する時の妹かな?〕

〔もうガーディアンボスとかどうでもいいからこの二人の会話を一生聞いていたい〕

〔ガーベラちゃんみってるー?〕

〔↑やめてさしあげろ!〕

〔言っていいことと悪いことがあるだろ!?〕

 

 ガーベラねえ。

 

 仮にヒバナと固定パーティを組む場合はガーベラとの相性も問題になる。

 

 が、別にそこは心配してない。二人とも明るくて元気がいいし、きっと仲良くなれるはず。

 

 それはそうとしてヒバナに何か言わなくては。

 俺が言葉に迷っていると――

 

 

 ゴゴゴゴゴ……という音とともに、岩場の真ん中に巨大な採掘スポットが出現した。

 

 

 何だあれ?

 

「あっ! あれ……」

 

「ヒバナさん、あれが何かわかるんですか?」

 

「レア鉱石が確定でドロップする採掘スポットだよ! 必ず十回叩けて、最後は<白銀魔鉱>っていう<灼火結晶>と同じくらいレアなアイテムが落ちるの!」

 

 そんなのがあるのか。

 

「こんなところで出るなんて……! でも、でも今かぁ~……!」

 

 てっきりすぐにでも採掘しに行くかと思ったら、何やら葛藤し始めるヒバナ。どうしたんだ?

 

〔レア採掘スポットか……〕

〔よりによって今かよ! 新規ガーディアンボス戦前だぞ!?〕

〔ハイリスクハイリターンだからなあ、あれ〕

〔叩くとレア鉱石確定、代わりに周囲からモンスターを呼び寄せまくるアラームトラップでもあるという〕

〔あれやる時は最低でもタンク二人はいないとなあ……〕

 

 あ、あれトラップなのか!

 

 俺はまだ見たことはないが、ダンジョンにはこの手の仕掛けが結構あるらしい。地形そのものが探索者を苦しめるというやつだ。

 

 コメントを見る限り、レア採掘スポットを叩くと周囲からモンスターが寄ってくると。

 

「ゆ、雪姫ちゃん。ガーディアンボス対策の作戦会議だよね。作戦会議しよう」

 

「レア採掘スポットはいいんですか?」

 

「いいのっ! 今はガーディアンボス戦が優先だからいいっ!」

 

 ヤケになったように叫んでレア採掘スポットから視線を逸らすヒバナ。この様子からすると、相当頑張って意志を制御してないか? 確定ドロップするというレア鉱石が必要だったりするんだろうか。

 

「ヒバナさん、正直に答えてください。<白銀魔鉱>というのが必要なんですか?」

 

「……うん。必要。夏が終わるまでに……絶対いる」

 

 真剣な表情で言うヒバナ。

 

〔例の告知のあれか?〕

〔そういえばリストの中で<白銀魔鉱>だけまだ集まってなかったな〕

〔ばなちゃんの個人配信でそういう流れなんだっけ? 鉱石いっぱい集めて、目標数溜まったら重大告知みたいな〕

 

 告知……? 何のことだろう。

 とりあえず、何か事情がありそうなのはわかった。

 

「わかりました。採りましょう。ヒバナさんが採掘する間、私が守ります」

 

「で、でも」

 

「大丈夫です。ここでレア鉱石を採らないことでガーディアンボスとの戦いで集中できなくても困りますし……大事なものなんですよね? だったらやるだけやってみましょう」

 

「……いいの?」

 

「はい」

 

 一応奥の手もあるしな。【アイシクルハザード】ではなく。

 

 ガーディアンボス戦が終わってから採掘するという手もなくはないが、すでに配信で映してしまった以上は難しいだろう。

 

 今日は俺たちが負けた時に備えて、初回攻略特典目当ての探索者がこのダンジョンに集まっているはず。彼らが全員、レア鉱石が確定ドロップするというこの採掘スポットを見逃すとは思えない。

 

「大丈夫です。任せてください」

 

「……うん! ありがと、雪姫ちゃん」

 

 そうと決まればさっそく準備だ。

 

「【コンバート】!」

 

 従魔の卵をヒバナから回収してマジックポーチに戻し、装備品を道中装備から薄氷シリーズに変更。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは影落とす氷の盾、【アイスシールド】。氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは影落とす氷の盾、【アイスシールド】――」

 

 レア採掘スポットの四方を【アイスシールド】で囲む。

 

〔マジでやるのか〕

〔いけるかぁ……?〕

〔頼む、うまくいってくれ!〕

 

「ヒバナさん、採掘を始めてください!」

 

「う、うん……! 行くよ! せえのっ――」

 

 ヒバナが採掘アイテムのツルハシを振るう。カァン! という音に次いで、りいいいいいん! という甲高い音が周囲に響いた。

 

 直後、激しい足音とともに地面が揺れ始める。

 

 モンスターが近づいてきているようだ。

 

〔始まった……〕

〔足音やばくね!? 何体来てる!?〕

〔こええええええええ!!〕

 

 ヒバナがツルハシを振るうたびに足元に鉱石アイテムが落ちる。だがすぐに呼び寄せられたモンスターが【アイスシールド】を攻撃し始めた。数は今のところ十体程度。

 

 【アイスシールド】もしばらくはもつだろうが、どのみち採掘が終わったあとは集まったモンスターを一掃しなくてはならない。ヒバナが躊躇うわけだな。

 

 カァァン!

 

 ヒバナが叫ぶ。

 

「出た! <白銀魔鉱>! でも――」

 

『グルオオオオオオオオオオオオオオオ!』

 

 氷の盾の一つが割れ、大型恐竜のようなモンスターが目の前にやってきた。

 

「【氷の視線】」

 

『――!』

 

「【アイスショット】!」

 

『ゲボァ!?』

 

『『『ギャアアアア!?』』』

 

 【氷の視線】で動きを止め、無詠唱の【アイスショット】で吹き飛ばす。大型恐竜モンスターは後ろのモンスターを巻き込んで昏倒した。

 

 恐竜型モンスターは氷属性の魔術に弱いので、無理に高威力の魔術を使う必要はない。

 

 だが問題は数だ。

 残り三枚の氷の盾もヒビが入っており、あと数秒で全方位からモンスターがなだれ込んでくるだろう。

 

〔やばいやばいやばい〕

〔ダッシュで逃げて!〕

〔三十体くらい集まってるううううううううううううう〕

 

「雪姫ちゃん、逃げないと!」

 

「大丈夫です」

 

「へ!?」

 

「それより動かないでくださいね、ヒバナさん! 巻き込んでしまいますから!」

 

 新装備の効果を披露する時だ。

 残りの氷の壁がほぼ同時に割れた。

 普段なら魔術の詠唱が間に合わないだろうが――

 

「【アイスニードル】!」

 

 詠唱を飛ばして俺は魔術を発動させた。

 

 俺の手元で<スノータイトの封唱杖>が輝く。

 

 ドガガガガガガガガガッッ!! という激しい音とともに地面から大量の氷の針が生えた。スキル【孤軍奮闘】の効果で、俺は群れと戦う時に範囲魔術の威力が上がる。そのせいで氷の針は普段より太く多い。

 

『『『――――!?』』』

 

 集まっていた恐竜型モンスターたちは残らず串刺しになり、魔力ガスと化す。

 

 

<レベルが上昇しました>

<新しいスキルを獲得しました>

 

 

 敵、三十体くらいいたか? こんなにモンスターを集めるなんて悪質なトラップだな。

 

「何とかなりましたね」

 

「雪姫ちゃんすごぉ――――!?」

 

 ヒバナが目を丸くして叫んだ。

 

〔ファ――――ww〕

〔ちょっと待って……待って……?〕

〔意味がわからないことが起きてる〕

〔相性のいい氷属性魔術とはいえ、スペックの高い恐竜型モンスター三十体くらいを一撃で殲滅って何……?〕

〔っていうか【アイスニードル】を無詠唱で使ってなかった!? これはどう考えてもおかしくね!?〕

 

「簡単に言うと装備品の効果です。事前に杖に封じた魔術を、無詠唱で使うことができます。今日は事前に【アイスニードル】を封じてきたので、それを発動させました」

 

 杖の能力を協会の資料で調べればわかることなので、俺は特に隠さなかった。

 

 <スノータイトの封唱杖>。

 このアイテムは事前に魔術を一つだけ杖の中にストックできる。ストックした魔術は一度使うとなくなるが、無詠唱かつ威力減少なしで使うことができる。

 

 まあストック用の魔術は倍の精神力消費が必要だったり、ストック中は少しずつ精神力が減少したり、同系統の武器は一つしか持てなかったりと使用条件は色々あるが……それでも強力な効果だと思う。

 

 今の状況なんかは特に<スノータイトの封唱杖>なしには切り抜けられなかっただろう。

 

 このアイテムを教えてくれた南波さんに感謝だな。

 

 ちなみに強力な魔術を封じるには、より上位の“封唱”武器が必要になるらしい。

 

〔封唱系の武器!?〕

〔おい誰だあんなもの雪姫ちゃんに持たせたの!〕

〔今後は不意打ちでも雪姫ちゃんの超火力魔術で即反撃される可能性があるのか……モンスターに同情を禁じ得ない〕

 

「これで心置きなくガーディアンボスに挑めますよね、ヒバナさん」

 

「うん……うん! ありがとう雪姫ちゃん。これで必要なものは全部揃った……! すっごい心が軽くなったよ! 絶対勝つぞー!」

 

 瞳を燃やすヒバナ。

 

 いや、一応今日は偵察が目的なんだが……そのことを忘れてないか心配だ。

 

 とはいえやる気があるのはいいことだな。

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