超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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ストックがYABAI


初配信3

「それでは、少しだけ配信を延長して、この先に進んでみようと思います」

 

〔うおおおおおお!〕

〔まだ雪姫ちゃんと一緒にいられるのか!〕

〔盛 り 上 が っ て ま い り ま し た〕

 

 加速するコメント欄。

 一方で冷静な意見もある。

 

〔でも壁どうするんだ?〕

〔さすがに雪姫ちゃんでも通るスペースなくね?〕

〔魔術で掘るとか……〕

〔さすがに精神力持たないでしょ〕

 

「少し試したいことがあるので、とりあえずそれをやってみます!」

 

 俺は壁から数歩下がって杖を構えた。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて、【アイスショット】!」

 

 ガンッ!

 

 壁の亀裂が少し広がったものの、通れるだけのスペースはない。

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて、【アイスショット】! ……氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて、【アイスショット】! 氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて、【アイスショット】……」

 

 ガンッ、ガンッ、ガンッ!

 

 やはり壁はびくともしない。

 

〔雨だれ石を穿つ作戦?〕

〔さすがに無理じゃない?〕

〔もういい……! もう……休んでくれっ……雪姫ちゃん……!〕

 

 心配するコメント欄だったが――

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて、【アイスショット】――あ、来ました!」

 

 突如氷の弾丸のサイズが十倍に膨れ上がった。

 

〔ファッ!?〕

〔何が起こった!?〕

〔でかすぎwwww〕

〔何これ!?〕

 

「行っけえええええ!」

 

 バゴンッ――ガラガラガラ!

 

 壁が崩れ、見踏破エリアに続く道ができた。

 一仕事終えた笑みを浮かべて配信用ドローンに向き直る俺。

 

「うまくいきました!」

 

〔いやいやいや〕

〔うまくいったとかいう次元じゃない件〕

〔ダンジョンの壁が吹き飛んだぞ……〕

〔雪姫ちゃんの火力どうなっとる!?〕

 

 俺が壁を壊せたのは【一撃必殺】のスキルのおかげだ。

 ダンジョンの壁はどう考えても俺の十倍以上の耐久――頑丈さを誇るので、【一撃必殺】の対象だと予想できた。

 

 魔術の威力が十倍になるかはランダムなので何発か無駄撃ちこそしたが、うまいこと壁を壊すことに成功したというわけだ。

 

〔……俺分かったかも〕

〔やっぱあのスキル持ってるのか……?〕

〔耐久度が自分の十倍以上あれば魔力や力が十倍になる某レアスキルさん……〕

 

 やべ。

 

「す、スキルですか? な、何のことかわかりません」

 

〔あっ(察し)〕

〔これ以上はあかん〕

〔いやほら、スキルを隠そうとしてるだけいいんじゃないかな〕

〔目が泳ぎまくってて草〕

〔というかまーた未登録スキルですか〕

〔初心者の定義が壊れる〕

 

「と、とにかく、先に進みますよ!」

 

 どうもスキルについては一部の視聴者にはバレているようだが、先輩ダンジョン配信者のトーコ氏や視聴者のアドバイス通り触れずに進行することにした。

 

「……と、その前に。何があるかわかりませんからね」

 

 鞄から<精神回復薬(弱)>を取り出し、一気飲みする。

 すると魔術の使いすぎで疲れた脳がすっきりしていく。

 なるほど、これが精神力回復アイテムの効果か。これでまた魔術を使えそうだ。

 瓶はきっちり鞄の中にしまい、崩れた壁の奥へ。

 

〔うおー、わくわくしてきた〕

〔宝箱あるかな?〕

〔最近のダンジョン配信の中で一番興奮してるかも〕

〔わかる〕

〔それ〕

 

 盛り上がっていくコメント欄。

 

〔今更だけど、現地に視聴者が突撃とかされたらやばくね?〕

〔あー……〕

〔確かに。雪姫ちゃん可愛いからなあ〕

〔私が現地にいるので問題ない。雪姫様には指一本触れさせん(レベル208)〕

〔アッハイ〕

〔レベル高いな! 下手したらBランクくらいの実力者じゃないのか!?〕

〔先ほども、マイクロビキニを持って雪姫様に駆け寄ろうとする変態を捕らえて連行した。警備は万全だ〕

〔やばいやつがやばいやつに捕まってて草〕

 

 全然気づかなかった……近くに視聴者来てるのか? 割り込んできたりしないでくれるのはありがたいな。

 

 なお、“マイクロビキニ”という単語は聞かなかったことにした。

 嫌な思い出がよみがえるからだ。

 さて、未踏破エリアを移動していると――

 

『キキッ』

 

「あれ、見たことのないモンスターですね」

 

 コウモリのような羽を生やした、小さな人型のモンスターが現れた。

 

〔インプか〕

〔ん? インプって一層に出なくね?〕

〔二層からだったはず。ってことは二層に近付いてんのかな〕

 

 どうやらこのモンスターは“インプ”というらしい。

 

『キシシシシシッ!』

 

 素早い動きで飛び回るインプ。かなり敏捷が高そうだ。

 ヒュンッ、ヒュンッ、と暗い通路の中を飛び回るインプ。

 うわ、【氷の視線】を使う暇がない!

 トレジャーゴブリンほどスピードがあるわけではないが、羽のせいで三次元に動かれて目が追いつかない。焦りながら足を不用意に動かした結果……

 

「わぁっ!?」

 

 小石を踏んで思いっきりこけた。

 魔力体なので痛みはないが、鈍い衝撃が後頭部を襲う。

 

『キキッ』

 

「こ、この……!」

 

 嘲笑うように鳴くインプ。間違いなく馬鹿にされてる!

 一万人以上が見ている中で思いっきり転んだのだから赤っ恥もいいところだ。

 

〔大丈夫か雪姫ちゃん!〕

〔おのれインプ、俺たちの雪姫ちゃんに!〕

〔ってかショートパンツでよかったなw〕

〔確かに〕

〔スカートだったら絶対見えてたぞ……くそっ!〕

〔悔しがるなww〕

 

「ふっ!」

 

 自分で踏んで転んだ石をインプに投げつける。

 命中こそしなかったが、石に驚いて硬直したインプを【氷の視線】で拘束。詠唱を省略した魔術を放つ。

 

「【アイスショット】!」

 

『ギャアアア!』

 

 見た目通り耐久は低いようで、インプは魔力ガスとなって霧散した。

 

〔おおー、倒せた〕

〔ナイスショット!〕

〔インプって素早いから魔術師一人だとキツいはずなんですけどねぇ……〕

 

「最初はびっくりしましたけど……トレジャーゴブリンよりは動きが速くなかったので、何とかなりましたね」

 

〔そ、そうだな!〕

〔普通トレゴブも魔術師は倒せないんだよなあ〕

〔発言が強すぎるww〕

 

 

<新しいスキルを獲得しました>

 

 

 視聴者のコメントを拾っていると、脳内に声が響いた。

 

「あ、新しいスキルを獲得したみたいです」

 

〔おおー、おめでとう!〕

〔マジか〕

〔キラー系?〕

〔でもインプまだ一体目だろ。あれって同じ系統のモンスターを狩りまくらないと手に入らなかったような〕

 

「ありがとうございます! 少しだけ確認しますね」

 

〔了解!〕

〔ゆっくりでいいよ〕

〔スキル確認めちゃめちゃ大事だからな〕

 

 配信用ドローンを操作し、月音が作ってくれた画像素材その二の『ステータス確認中……』を画面に表示してから、ステータスを確認する。

 

「【ステータスオープン】」

 

 

――――――

 

白川雪姫

▶レベル:7

▶クラス:魔術師(氷)

▶ステータス

力:3

耐久:7

敏捷:7

魔力:86

▶魔術

【アイスショット】:氷属性。氷の弾丸を飛ばす。詠唱「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むはひとかけらの氷のつぶて」

【フロスト】:氷属性。冷気によって範囲内の相手の敏捷を下げる。詠唱「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは冷ややかなる霜の吐息」

▶スキル

【オーバーブースト】:三十秒間全能力値を倍にする。一日一回のみ。

【クラス補正倍化】:レベルアップ時のクラス補正を倍にする。

【一撃必殺】:耐久が自分の十倍以上の相手と戦う時、まれに魔力が十倍になる。

【氷の視線】:目を合わせた相手を確率で“拘束”状態にし、氷耐性を弱める。

【氷結好き】:氷属性の魔術を少し強める。氷属性以外の魔術を使うとスキル消失。

【魔術好き】:魔力を少し強める。魔術以外で敵にダメージを与えるとスキル消失。

New!【冷酷非道】:拘束状態にある敵へのダメージを増加させる。

 

――――――

 

 

 追加されているスキルは、【冷酷非道】というもの。

 動きを止めた相手により強いダメージを与えられるらしい。

 【氷の視線】を使いまくっていたことが影響したようだ。

 

 というか、また攻撃力が上がるのか……正直過剰な気がするんだけどなあ。

 これだとよっぽど強い敵と出くわさない限りは特に意味はなさそうだ。

 それでも新しいスキルが手に入るのが嬉しくはあるが。

 

 ちなみになんか魔術も増えてるが、これは一つ前のレベルで習得したものだ。まだ使っていないので使用感はわからない。

 

「それじゃあ、先に進みますね」

 

 『ステータス確認中……』の表示を外して探索を再開する。

 その後も洞窟の中を進んでいく。

 時折出てくるインプを倒しつつ、坂道を下ったり、かと思えば塀くらいの高さの壁をのぼったり、子供がぎりぎり入れるサイズの通路を四つん這いで進んだり――

 

「つ、疲れてきました……」

 

〔がんばれ雪姫ちゃん〕

〔つっても、そろそろキツいだろ。もう二時間以上さまよってるぞ〕

〔でもまだ正規ルートに出てないっぽいんだよなあ〕

〔神保町ダンジョン、あんま開拓進んでなかったのか?〕

〔まあ協会もダンジョン適性ある人がいっぱいいるわけでもないししゃーない〕

〔雪姫ちゃん、無理しないでね!〕

 

 心配するコメントが多い中。

 俺の目の前に、大きな扉が出現した。

 

「何でしょうか、これ?」

 

 両開きの大きな扉だ。通路の行き止まりのような場所で、他に行けそうな場所はない。

 扉には鍵のようなマークが彫られている。

 

〔キーボスの部屋キタァアアアアアアアアアアアア!?〕

〔こんなところにあったか!?〕

〔神保町ダンジョンのキー部屋は全部正規ルートにつながってたはず〕

〔ってことは未確認のキーボスがいる……!?〕

〔すげえww雪姫ちゃん神に愛されすぎてるww〕

〔マジか〕

〔うおおおおおおおおおおおおお!?〕

 

 コメント欄が今日一番の加速を見せた。

 

 ……え? 何だ? これ何か大変なことが起こってたりするのか?




【冷酷非道】取得条件
1、拘束状態で与えたダメージのみで敵を倒すこと
2、1の際に探索者はダメージを受けないこと
3、上記で得た経験値のみでレベルアップ
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