超火力TSダンジョン配信者【雪姫】の軌跡   作:山田センチュリー

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花火大会狂騒曲2

「あれを防ぐか」

 

 中央火山の頂上付近で、ナイトバナードの狙撃手――ジョーがぼやく。

 

(吹場座虎也は彼女が来ないように対策をすると言っていたが……どうやら不発に終わったようだな。まあ、どうあれ俺のやることは変わらないが)

 

 ジョーが座虎也から任された仕事は三つ。

 

 火山に陣取り、警備員であるエルテックの探索者たちを排除する。

 湖に特別性の銃弾を撃ち込み、渦亀(ボルテクスアーケロン)を叩き起こす。

 その他座虎也の計画を邪魔する者があれば対処する。

 

 ライフルのスコープをややずらし、湖のほうを確認する。

 

『――――――、』

 

 スコープの向こうで渦亀が吠えた。

 

 その全身に変化が訪れる。

 結晶に覆われた全身を暴れさせ、狂ったように咆哮を上げる。

 

「<妖精の鱗粉>に加えて<狂化薬>……もはやあのモンスターは通常時とは別物と化した」

 

 渦亀を起こすのに使った弾丸には空間拡張効果があり、内部に複数のマジックアイテムを詰め込むことができる。それは弾丸を受けた相手に作用する。

 

 弾丸に詰め込んだマジックアイテムの一つは、<妖精の鱗粉>。

 座虎也が探索者協会に潜り込ませた手下を使って手に入れたものだ。

 

 そしてもう一つは<狂化薬>。

 吹場組が独自に作らせた違法マジックアイテム。

 モンスターを強制的に“狂化”状態にする。

 本来ダンジョン内で他の探索者を間接的に攻撃するために使われる。

 

 今の渦亀は通常時の何倍も強化されている。普段は使えないような特殊能力さえ備えているだろう。

 

 ジョーの見立てでは、その強さはAランクダンジョンのキーボスに相当する。

 あの状態の渦亀を放置すれば花火大会はめちゃくちゃになる。

 

「……さて、どう動く」

 

 彼が意識しているのは榊水鏡ただ一人だ。彼女だけが警戒対象たりえる。

 

 渦亀を倒すならその隙に撃つ。

 自分のもとに向かってくるなら、やはり撃つ。

 

 世間一般から見ればくだらない計画だとは重々承知しながら、それでも彼は自らの目的のために与えられた役割を遂行する。

 

 

 

 

「落ち着いて! 避難してください! 湖のそばから離れれば――がっ!?」

 

 避難誘導をしようとしたエルテックの警備員が狙撃され、魔力ガスとなって消滅した。

 くそ、水鏡さんの手が届かないところを狙ってるな……

 

 狙撃手は俺やヒバナを狙うことで水鏡さんをこの場に縛りつけ、そのうえでエルテックの警備員ばかりを的確に打ち抜いている。

 エルテックの警備員はすでに全滅間近だ。

 

「きゃああああああああ!?」

 

「撃たれてる!? どこから!?」

 

「何が起こってるんだよ、わけわかんねえ!」

 

 探索者たちの間に悲鳴と動揺が広がっている。今のところ撃たれたのはエルテックの警備員ばかりらしいが、そのうち花火大会の観客にも被害が及ぶかもしれない。

 

〔おい、何か攻撃されてないか!?〕

〔魔術……じゃないよな。撃たれてたっぽい気がする〕

〔事故ってない? エルテックの人死にまくってたぞ〕

〔ライバル企業の妨害とか?〕

 

 転写用ドローンのコメント欄には戸惑うようなものが多い。

 畳みかけるように、湖の真ん中にいる渦亀に変化が起こった。

 

『――ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 咆哮。

 そして、ビキバキビシッッ! という硬質な音が連続して響く。

 って今の音……聞いたことあるぞ!?

 

「おいっ、なんか変だぞ!?」

 

「結晶化……!? 見たことある! あれ、雪姫ちゃんが新宿ダンジョンのガーディアンボスと戦った時と同じじゃないか!?」

 

 周囲の探索者から声が上がる。

 渦亀の全身を暗い色の結晶が覆う。体は一回り大きくなり、威圧感が増す。

 

 <妖精の鱗粉>の効果?

 どういうことだ……? あれを持っている人間はほとんどいない。

 探索者協会にリーテルシア様が多少渡した程度。だが探索者協会がこのタイミングで使う理由がない!

 

 ゴボ、という音が湖のあちこちで鳴る。

 

「――湖から距離を取りなさい!」

 

 水鏡さんが鋭く叫んだ。俺をはじめ探索者たちが慌てて湖から離れる。

 

 直後、湖のあちこちから大量の水の柱が出現した。

 巨木の幹のようなそれは、螺旋状に外周で水が回転し続けている。大量の水で作ったドリルのようだ。

 

〔渦槍!?〕

〔数多いな!?〕

〔いやなんかおかしいぞ! あれ、生命力をぎりぎりまで減らさないと使わないはずじゃなかったのか!?〕

 

 転写用ドローンのコメントが勢いよく流れる。

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「「「うわぁああああああああああ!?」」」

 

 渦の槍が解放された。湖の周辺を無差別に突き刺し、地面が抉れ、悲鳴が上がる。

 

 水辺にいた探索者が何人か巻き込まれたようだ。

 って、やばい!

 

「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは影落とす氷の盾――【アイスシールド】!」

 

 ドガッ――バキバキバキッッ!

 

 花火の打ち上げ装置に当たりそうだった渦の槍の一つを氷の盾で防ぐ。

 相当強力なようで、防ぐことはできたが氷の盾が一撃で割れた。

 その場にとどまって【不動】のスキルで盾を強化したんだが、それでもこの結果か。

 打ち上げ装置のそばに立ち尽くすヒバナのもとに駆け寄る。

 

「ヒバナさん、大丈夫ですか?」

 

「う、うん……ありがと、雪姫ちゃん。打ち上げ装置を守ってくれて……」

 

「いえ……しかしこれは一体どういうことなんでしょう」

 

「わかんない……わかんないよ……何でこんなことになるの? こんな……辻さんも、他のエルテックの人もやられちゃって……意味わかんないよ……」

 

 ヒバナは目の前の状況についていけず、混乱しているようだ。無理もない。

 

「すみません、雪姫様。助かりました」

 

「いえ、水鏡さん。このくらいは。というかこれ、どういう状況なんでしょう?」

 

「わかりません。確かなのは何者かに狙撃され続けていることと……」

 

 ギンッ!

 

 水鏡さんは小太刀を鋭く振るい、しつこく襲ってくる銃弾を弾く。

 

「……おそらく何者かの悪意によって、渦亀が起こされたこと。さらに渦亀が何らかの要因で強化されているということです。この両者を排除しなくては花火大会どころではないでしょう」

 

「……ッ」

 

 ヒバナが肩を震わせる。

 とはいえ水鏡さんの言うことは正しいだろう。

 

「こんなことをした理由は、狙撃手を捕まえて聞くしかない……ですかね」

 

「そうですね。ただし相手はAランク探索者の辻様を一撃で倒してのけました。さらに先ほどから受けている弾丸の感覚からして、おそらくはSランク以上の実力者でしょう。簡単なことではありません」

 

「Sランク……」

 

 薄々思っていたが、やっぱりそうなのか。

 何でそんな大物が花火大会の邪魔をする?

 まさか花火大会を成功させたくない、エルテックのライバル企業が雇った刺客とかだったりするんだろうか。

 

 辻さんたちが戻ってくれば状況も変わるかもしれないが、魔力体破壊によってダンジョンの外に飛ばされた以上、どんなに急いでも三十分以上かかる。

 その間狙撃手や渦亀を野放しにしたら、花火大会の会場がめちゃくちゃになってしまう。

 

エルテック公式〔花火大会においでくださった皆様、エルテック企画部の吉田です。現在花火大会の開催地であった湖付近はボルテクスアーケロンの原因不明の暴走、さらに何者かによる狙撃によって危険となっております。急いで避難してください〕

エルテック公式〔このようなことになってしまい大変申し訳ございません〕

エルテック公式〔警備担当の者が現場に急行しておりますので、皆様はご自身の安全のことを第一にお考え下さい〕

 

 転写用ドローンがエルテック公式からのコメントを映し出す。

 現地の探索者たちがそれを見て、悲鳴を上げながら湖から距離を取った。

 

「ヒバナさん、私たちも一度離れた方が……」

 

「……雪姫ちゃんと水鏡さんは行って」

 

「ヒバナさん」

 

「打ち上げ装置が壊されたら、花火大会が延期に――ううん、中止になっちゃうかもしれない! これ、まだこの一台しかできてないってエルテックの人が言ってた。だからどうしても守らなくちゃいけないの!」

 

 ヒバナが打ち上げ装置のそばを離れようとしない。

 打ち上げ装置はかなり大きく、またすでに組み立てられているため分解して移動させることも難しい。下手にいじれば壊してしまうかもしれない。

 

 くそ、どうする。

 いくら水鏡さんがいても、狙撃を避けながら渦亀と戦うなんて無理だ。

 今は俺とヒバナが同じ場所に固まって、動かないから何とかなっているのだ。

 

「――困っているみたいだなぁ?」

 

 足音が聞こえた。

 やってきたのは数人の男たち。

 堅気ではなさそうな男と、大柄な男。それから若いチンピラっぽいのが数人。

 

 チンピラっぽいのは一人だけ見たことが、あるようなないような……ダッシュイーターに食われてたやつじゃないか? まあ名前も知らないが。

 

 一方、水鏡さんとヒバナが揃って反応した。

 

「……吹場座虎也。そして魚見坂(うおみざか)文太(ぶんた)……酒呑会ですか」

 

「――スカイフォックス!? 何でここに!?」

 

 うわ、どっちも聞き覚えがある。

 

 酒呑会はヤクザである吹場組とかかわりがあるとされている大ギルド。

 そしてスカイフォックスはダンジョン内でヒバナに負け、それを逆恨みして地上で危害を加えようとしていた探索者パーティだ。

 

「あの亀が暴れて花火大会が台無しになりそうになってるんだろ? なら簡単だ、手伝ってやるよ」

 

 吹場座虎也と呼ばれていた男が(名前からして吹場組と関係がありそうだ)軽薄に笑う。

 

「お前ら、やってやれ!」

 

「「「はい!」」」

 

 スカイフォックスのメンバーが手に持った杖型のマジックアイテムを構えた。杖の先端に取り付けられた石が輝き始める。それらから炎の塊が生まれ、湖のほうに向かってまっすぐ飛んだ。

 

 湖と彼らの中間には……ああ、そうか! こいつらの狙いは――!

 

「駄目――――ッ!」

 

 ヒバナが叫びながら、火球から花火の打ち上げ装置を庇う。

 

 爆発音が響き、ヒバナの小さな体が吹き飛ばされた。

 

〔ばなちゃん!?〕

〔あいつら今の絶対わざとだろ!?〕

〔打ち上げ装置を巻き込む軌道で魔術撃ちやがった!〕

 

 俺は慌ててヒバナに駆け寄った。マジックポーチから生命回復薬を取り出す。

 

「ヒバナさん! 回復を!」

 

「う、うん……」

 

「あーあーあー、悪いなぁ! うっかり打ち上げ装置に誤射しかけちまった! でも仕方ねえよな? 俺たちはただ渦亀を倒そうとしただけなんだからなぁ!」

 

 吹場座虎也が白々しく言う。

 

 あの野郎……!

 

 

 

 

(最高の気分だぜ! 俺の計画は完璧だ! はははははははははははっ!)

 

 雪姫、ヒバナ、水鏡と向き合う中、吹場座虎也は内心で笑いが止まらなかった。

 

 ナイトバナードの青年の狙撃によって渦亀を叩き起こす。

 弾丸の中に込められた<妖精の鱗粉>と<狂化薬>によって渦亀が暴れはじめたことで大義名分ができた。

 

 “渦亀を倒すため”に遠距離攻撃のマジックアイテムで攻撃し、忌々しい雪姫を巻き込んでいたぶる。

 ついでに花火の打ち上げ装置も壊してスカイフォックスも満足させてやる。

 

 実力が足りず、形だけのギルドマスターと化している座虎也に動かせる駒は少ない。

 

 だからこそスカイフォックスのような弱者でも構わず使う。

 そして自分は暴れ狂う渦亀を鮮やかに倒すのだ。

 

 今はエルテックがこの様子を全世界に配信している。

 だから自分が圧倒的な力で渦亀を倒せば、その姿は大勢に目撃されるだろう。

 

(周りがうるせぇが、ダンジョン内のモンスターは誰のものでもねえ。だから俺たちにだって渦亀と戦う権利は当然ある。そう主張すりゃあ全員黙るだろうよ)

 

 酒呑会というギルドはアウトロー集団だ。

 この手のいさかいにも、言い訳にも慣れている。

 

(俺は酒呑会のギルドマスターだ……どいつもこいつも俺を“お飾り”とか言いやがる。だが、そんな屈辱にはもううんざりだ。ここで俺の力を見せつけてやる!) 

 

 座虎也は自分の輝かしい未来を想像して、極限まで笑みを深くした。

 

 

 

 

 吹場座虎也を睨みながら俺は大声を上げた。

 

「今のはわざとでしょう!? どこからでも狙えるのに、打ち上げ装置を巻き込む位置から攻撃するなんて!」

 

「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよガキ。俺たちは渦亀を倒してやるつもりなんだぜ? たまたま打ち上げ装置にぶつけそうになっただけだよ。なぁに、次はうまくやってやるよ」

 

 ニヤニヤと笑いながらスカイフォックスの連中が再度杖を構える。

 

 さっきの火球はあの杖の効果だろう。

 スカイフォックスのメンバー全員が魔術師クラスというのは考えにくい。

 ……あんなものを用意してるってことは、今回のことを予想してたってことか?

 それどころか――

 

「まさか、全部あなたたちが仕組んだんですか? 渦亀を暴れさせたのも、辻さんたちエルテックの探索者を狙撃したのも……」

 

「狙撃ぃ? おいおいそれが俺たちと関係あるって証拠でもあんのか?」

 

「それは……」

 

 証拠なんてあるわけがない。俺たちは狙撃手の顔すら見ていないんだから。

 

「それにヒバナとか行ったか、そっちのガキ」

 

 吹場座虎也はヒバナのほうに視線を向けると――

 

「お前昔、スカイフォックスの連中に言ったよなぁ。『ダンジョンのモンスターは誰のものでもない、人の戦いを邪魔するのはルール違反だ』って。ならお前らも邪魔すんなよ。俺たちは純粋に、あそこで暴れてる渦亀を倒そうとしてるだけなんだからなぁ~」

 

 こ、こいつ……!

 

〔うぜぇえええええええええ!〕

〔明らかに今のはわざとだろ!?〕

〔てめーよくもばなちゃんを! 許せん!!〕

〔誰か協会に通報した?〕

〔ほんま酒呑会はクソ〕

〔そんなんだから白竜の牙に勝てないんだよ〕

〔そもそもなんでスカイフォックスに酒呑会が肩入れするんだ? 意味不明〕

〔どう見ても狙撃手とグルです本当にありがとうございました〕

 

 怒りで転写用ドローンが映すコメント欄が加速する。

 

 今回ばかりは俺も同意見だ。ふざけるにもほどがある!

 

 自分たちは暴れているモンスターを倒そうとしているだけで、ヒバナを巻き込んだのはあくまでただの偶然――吹場座虎也のそんな横暴な主張を聞いた探索者たちがこんなことを言い出す。

 

「なあ、そういうことなら俺たちがあの渦亀を倒せばいいんじゃねえか!?」

 

「そ、そうだな。そうすれば連中も大義名分がなくなって手出しできなくなる!」

 

 その声を聞きつけて、吹場座虎也がすかさず怒鳴り声を上げる。

 

「――おい、横取りするつもりか!? あの渦亀は俺たち酒呑会とスカイフォックスの獲物だ! しゃしゃり出てくるやつは俺たちと全面戦争する覚悟があるんだろうなぁ!?」

 

「「「――!?」」」

 

 湖に向かいかけた探索者たちはびくりと震えて足を止める。

 無理もない。

 酒呑会は暴力団とつながりがあると噂される大ギルド。そんな相手に全面戦争を仕掛けるなんて脅されてためらわないやつがいるわけがない。

 

エルテック公式〔湖のそばは危険ですからただちに避難してください〕

エルテック公式〔また、打ち上げ装置は弊社の所有物です。これを故意に破壊することはダンジョン法で禁じられています〕

 

 転写用ドローンがエルテック公式からの言葉を映し出す。

 基本的にダンジョン内に落ちているアイテムは所有者が明確な場合、奪ったり壊したりといったことは禁止されている。

 

 しかし吹場座虎也は肩をすくめた。

 

「おいおい、誤解は勘弁してほしいもんだ。たまたま巻き込んだくらいで怒るなよ」

 

エルテック公式〔このまま破壊行為を続けるのであれば、酒呑会に対して弊社から厳重に抗議をすることになります〕

 

「はっ、もとはと言えばお前らんとこの探索者がまともに警備もできねーから悪いんだろ!? ()()()()()()()()()()()()()()()()()、狙撃手にバカスカ撃たれてやられたそうじゃねえか! その尻ぬぐいをしてやろうってんだからむしろ感謝してほしいぜ!」

 

 駄目だ、話が通じない。

 

 渦亀を狙える場所なんていくらでもあるんだから、わざわざ打ち上げ装置を巻き込む位置取りにこだわってる時点で悪意は明確だ。

 配信に映像だって残っている。

 

 罰せられるのは間違いなく酒呑会側。

 それなのにここまで強気なのは……考えなしなのか、それともこういった対立をやり過ごすノウハウでもあるからなのか。

 

 吹場座虎也が酒呑会の名前まで使って脅しをかけている今、動ける人員は限られる。

 

 準構成員とはいえ白竜の牙に所属している俺とヒバナ。Sランク探索者の水鏡さん。たった三人しかいない。

 

 ……一応、考えはある。

 

 酒呑会とスカイフォックスを黙らせ、狙撃によるリスクをある程度減らし、さらに花火大会を中止にさせないどころか、むしろ盛り上がるであろう考えが。

 

 俺が炎上する危険もあるので正直あんまりやりたくないんだが……

 

「水鏡さん、あの連中をまとめて抑えてもらうことはできますか?」

 

「……難しいですね」

 

 ガギンッ!

 

 もう何度目かもわからない、水鏡さんが銃弾を弾く音が聞こえる。

 

「吹場座虎也のそばに控えている男――魚見坂はSランク探索者の一人です。狙撃を防ぎつつ、あの男を抑えるのは至難です」

 

 ……げ、マジでか。

 あの大男もSランク探索者なのか。

 

 これまで一言も発していないから何者かと思っていたが、それは確かにまずい。同じSランク探索者同士の戦いで水鏡さんが負けるなんて思いたくないが、戦っている間に狙撃手に狙われたら、いくら水鏡さんでもまずそうだ。

 

 これじゃあ俺の考えは実行できない。

 

 というか、きっついなこれ!

 敵が多い上に強い! 何で平和な花火大会がこんなことになってるんだ!

 

「雪姫ちゃん、それに水鏡さん。打ち上げ装置を守ってくれませんか? あたし、何とかして渦亀を倒します。そうすれば……」

 

「無茶ですよ! 水鏡さんから離れたら、ヒバナさんが狙撃されてしまいます!」

 

「でも、このままじゃ花火大会がめちゃくちゃになっちゃうよ! あたし、それだけは……」

 

 ヒバナが声を震わせる。

 今日まで必死に準備し続けてきたのだ。ヒバナの気持ちは理解できる。

 だが手が足りない。

 

「さあ、もう一発ぶち込んでやれ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

 吹場座虎也の号令に従い、嬉々としてスカイフォックスが再度杖を構える。火球が出現し、こっちに押し寄せてくる。

 ひとまずこれを防がないと――ん?

 

 

 ザンッッ!

 唐突に現れた誰かが、剣の一振りで火球を消し飛ばした。

 

 

 白のサーコートを着た青年が俺たちを庇ったのだ。

 その立ち姿はあまりにも堂々としていた。まるで物語に出てくる騎士のようだ。

 

「――配信を見ていたからおおよその事情はわかっているつもりだよ。雪姫さん、ヒバナさん、それに榊さん。助太刀させてもらう」

 

「「高峰さん!?」」

 

「………………高峰北斗……!」

 

 俺とヒバナは声を揃え、なぜか水鏡さんだけは苦虫を嚙み潰したような声を出す。

 

「何でこうなるのかしらね、本当に……いや、まあ兄さんらしいけどね……」

 

「南波さんも!?」

 

 もしかしてこの二人も花火大会に遊びに来ていたのか!? 

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