グオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!
子供から「レッドマン」と呼ばれた赤い巨人に向かって大きな声で吠えるヘルベロス。その表情から強烈な敵意が読み取れる口からは火が溢れており、角と腕の刃には電気が流れている。臨戦態勢ではないかと思わせる状態だ。
それを見たレッドマンは親子から少し離れるように歩いていき、親子とヘルベロスの中間辺りに来ると一旦止まり、仁王立ちのような姿勢で止まる。
そして、レッドマンは腕を構えてこう叫んだ。
レッドファイト!
グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
ヘルベロスは大きな咆哮を都市に響き渡らせる。腕に付いている刃に電流を更に流し、刃の放電が更に増幅されていく。そして、腕を大きく降ると大きな赤い電撃のカッター、ヘルスラッシュを放った。都市で暴れていた時に放ったものとは大きく、破壊力がありそうな攻撃だ。しかも2発も放っている。
親子はその様子を見てまずいと思った。電撃の刃が直撃したらいくら巨人であるレッドマンといえども一溜りも無いだろう。
だが、レッドマンは狼狽える様子は無い。
近付いて来る2つのヘルスラッシュを、
手で払う動作によりあっさりと破壊した。
「なっ!?」
グォォッ!?
まさかあっさりと破壊されるとは思わなかったためヘルベロスは驚愕の鳴き声を放つ。父親も簡単に破壊するとは驚いてしまい、呆然としている。息子の方は驚きのあまり口をあんぐりと開けている。
レッドマンはヘルスラッシュを破壊すると、ヘルベロスに向かって走り出した。あれだけの巨体故に足を地に着く度に轟音と揺れを生じさせ、周りの建物や電線を大きく揺らし、路上の車は一瞬跳ねる。
ムゥン!
レッドマンは掛け声を出すと共にヘルベロスに向けてチョップを仕掛けた。ヘルスラッシュを破壊された事で一瞬放心していたためヘルベロスはレッドマンのチョップをまともに受けてしまった。それで我に返ったヘルベロスは即座にレッドマンに頭突きを喰らわせる。
頭の角が刺さりかけるがレッドマンは腕でヘルベロスの側頭部を抑える事で何とか刺されるのを防いだ。頭突きを抑えた事でやや後退すると、ヘルベロスは頭を上げてレッドマンの手を振りほどく。手が上に向けられてしまった隙に即座にヘルベロスは側頭部による頭突きで更にレッドマンを後退させた。
レッドマンと大分距離が開くと同時にヘルベロスは尻尾を振りかざしてレッドマンに当てようとする。尾の先端に刃がレッドマンに迫る。しかしレッドマンは落ち着いた様子で上半身を逸らして回避。ヘルベロスの尾は宙を切るだけに終わった。
ヘルベロスは攻撃が当たらなかった事に腹を立て、今度は背中からヘルエッジサンダーを大量に放った。数十本という光弾の矢がレッドマンに向かって降り注ごうとしている。その様子を見てもレッドマンは動じず、手を前に出してこう叫んだ。
レッドサンダー!
手の先端から光線を出した。
その光線は空中を飛んでいるヘルエッジサンダーを次々と正確に打ち抜いていく。一本一本漏らす事無く打ち抜いている事から、レッドマンは高い射撃能力を持っている事が窺える。
グウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
必殺技を防がれた怒りにより、ヘルベロスは更に大きな咆哮を上げる。声からして怒っているのは人でも薄っすらと分かる。ヘルベロスは腕の刃に電撃を流すと、そのままレッドマンに接近してきた。どうやら電流が流れている刃でレッドマンを切りつけようとしているようだ。
だが、レッドマンは焦っていない。手を懐に移動させて、ある物を取り出した。
レッドナイフ!
それは、短剣のように見えるナイフだった。
グオオオオオオオォォォォ!
ヘルベロスの腕の刃がレッドマンを切り裂こうとするが、レッドナイフでそれを防いだ。電流が流れているが、レッドマンが痺れている様子は無い。腕を大きく振ってヘルベロスの刃を弾くと、今度はもう片方の手の刃でレッドマンを切りつけようとするが、それもレッドナイフで防がれ、また払われた。
グウウウゥゥゥ……!
全て防がれた事もあって苛立ったのか、今度は両手で切り裂こうとする。刃は相変わらず電流が流れており、怒りの影響なのか先程よりも電流が強く流れているように見える。だが、その様子を見てもレッドマンは慌てていない。何か、この状況をどうにかする方法があるというのだろうか?
レッドマンはレッドナイフを持っていない手を腰に当てると、何かを取り出した。それは、細長い針のように見える武器だ。
レッドアロー!
レッドアローと呼んだ武器を掴み、レッドナイフと合わせて二刀流のように構えた。そして、ヘルベロスの両腕の刃をレッドナイフとレッドアローで見事に防いだのだ。
グオォォッ!
だが、ヘルベロスは動揺している様子は無い。寧ろ何処か余裕の表情を浮かべているような、不気味な笑みを浮かべているようにも見える。
ヘルベロスの口の中から炎が溢れ出した。
レッドマンはそれを見た瞬間、ヘルベロスの意図が分かった。
「パパっ!」
「もしかして……!」
親子はヘルベロスが何をしようとしているのか分かった。ヘルベロスは口から火球を吐いて破壊活動をしていた。その時は必ず口から火が溢れていた事を。
ヘルベロスの口からレッドマンに向けて火球を発射した。
レッドマンとは距離がかなり近い。これでは反応に間に合わず直撃を受けてしまう。1秒程度でレッドマンはヘルベロスの火球の直撃を受けて大ダメージを受けてしまうだろう。
だが、レッドマンは
直ぐに顔を後方に倒して回避した。
グオォッ!?
まさか避けられるとは思わなかったのか、ヘルベロスは驚愕の表情を浮かべた。至近距離からの不意打ち気味の攻撃。必ず当たると思っていた分、信じられないような表情で驚愕している。
レッドマンはその隙を見逃さなかった。
レッドマンは両手を大きく振り上げ、ヘルベロスの両手を大きく振りほどいた。その一瞬は大きな隙となった。レッドマンはその隙に両手の武器をしまい、両手をヘルベロスに向けてからレッドサンダーを放った。
グオオォォォ!?
もろに直撃を受けた事でヘルベロスは大きなダメージを受けた。至近距離からの攻撃。痛くない訳が無い。それを証明するかのようにヘルベロスの咆哮には痛みに耐えているような声も聞こえる。
レッドマンはその隙を見逃さなかった。
すかさずレッドマンは飛び蹴りをヘルベロスの腹に当てた。
レッドキック!
強力なキックだったためヘルベロスは背中を地面に接して倒れ、そのまま後方に煙を上げながら吹き飛ばされた。ズゴゴゴゴという大きな地響きが鳴り響き、小さな瓦礫も何個か飛散している。
グググ……!
ヘルベロスは立ち上がりレッドマンを苛ついたような目つきで睨む。だがレッドマンはそれでも動じずヘルベロスを見つめている。ヘルベロスはレッドマンに有効的な攻撃を未だに当てていない。レッドマンはそれだけ戦闘の経験を積んでいるのであろうか、ヘルベロスのどの攻撃を華麗に躱している。ヘルベロスは苛立ちを徐々に募らせているのであった。
「すごい……」
「あの怪獣を圧倒してる……」
あの親子は現在他の人達と同じく安全な場所に避難していた。大きな巨体であるレッドマンとヘルベロスが近くで戦っていたら巻き込まれる可能性があるからだ。彼らの戦いが繰り広げられている途中で安全な場所に避難したのだ。
「レッドマンならあの怪獣を倒してくれるよ!」
息子はあの赤い巨人、レッドマンを応援している。それはそうだろう。何せ町を破壊している怪獣と戦っているのだ。子供の目からはそのように見えているのだ。悪い怪獣と戦っているヒーローだと思っているのだ。
だが、大人達から見れば本当にそうなのか疑問に思っている。その一番の理由は、あのレッドマンという巨人が何者か分からない事だ。人は未知の物に対して様々な想像を働かせる。正体は何なのか、目的は何なのか、人類に害は無いのかなど…… 分からないからこそ不安になるのだ。『未知』というもの程不安な物は無いだろう。
「あの巨人…… 何のために戦ってるんだろう?」
「きっと僕達を守ってるんだよ!」
息子は迷い無い瞳で答えている。だが避難している大人達はまだあの巨人が味方かどうか分からず、迷いの瞳を巨人に向けている。父親の方は息子の言う事を信じたいがために他の大人達よりも信じているようだが、それでもまだ不安がある。
あの巨人、レッドマンは自身達の敵なのだろうか、味方なのだろうかと。
レッドマンはヘルベロスを圧倒し、戦いを優位に進めていた。ヘルベロスの動きに少しだけ疲労の様子が見て取れる。このままレッドマンが戦闘を続ければヘルベロスを倒す事が出来るかもしれない。
レッドマンがヘルベロスに向かって攻撃を放とうとした。
その時だった。
空から謎の光線が降り注いだ。
それらの光線は全てレッドマンに向かって降ってきた。
っ!?
光線に気付いたレッドマンは直ぐに回避。光線は都市の道路に直撃し大爆発を引き起こした。道路の破片が高く舞っている事と、爆発音の大きさからその威力が窺い知れる。一体この攻撃は何なのか? 自衛隊の秘密兵器か? だったらレッドマンを狙う理由は何なのだろうか? ヘルベロスと戦っているのだから兵器を使う相手はヘルベロスだと思われるが……
光線を放った者の正体は、直ぐに現れた。
白い雲を割って現れたのは、
巨大な黒いUFOだった。
「何だあれ!?」
「UFOだ!」
「でかいぞ! どうやって浮いてるんだ!?」
避難している人々が次々にUFOに釘付けになる。プロペラもジェットエンジンも付いていない、まるで反重力で浮いているようなUFOを見て驚くのも無理は無いだろう。それ故に多くの人がこう思った。
あのUFOは、宇宙人の乗り物ではないのかと。
その予想は的中した。
UFOから大きな声が聞こえてきた。まるで拡声器を使っているような声だ。
「はっはっはっ! 地球人の諸君! 初めましてだな!」
その声は何処か尊大そうな、半ば見下しているような感じの口調だ。物理的にUFOは上空にいるので、避難した市民を見下ろすという意味では、あながち間違ってはいないかもしれない。
「一体誰なんだ……?」
「もしかして、秘密結社やテロ組織の秘密兵器か!?」
「私はそんなものではない! 私はドルズ星から来たドルズ星人だ!」
「「「ドルズ星人?」」」
避難している人々はドルズ星という言葉を聞いて、星の名前のように聞こえる人が多いようだ。もしもそうなら、この声の主は宇宙人という事になる。現代の人にとって宇宙人と言うのは創作作品しか登場しない筈なのでは? そう思う者が殆どだ。
「何だ? 信じないのか? ならばこれを見せれば分かるか?」
次にUFOの下部から何やら映像のような物が映し出される。どうやら立体映像のようだ。その映像に映し出された姿は、明らかに地球人とは思えない姿だった。
赤い脳のような襞と白い目・二本の牙を生やす、異形とも言える姿だ。宇宙人と言われても納得いくような姿だ。
「はっはっはっ! 分かったかね? 私はこの地球にドルズ星人の帝国を築くためにやって来たのだよ!」
帝国を築く……!?
それは侵略という事か!?
その言葉に人々は驚きを隠せない。それはそうだろう。宇宙人が地球を侵略に来るなんて、創作作品しかありえない事なのだから。だが巨大生物・班重力の如く浮遊するUFO・宇宙人というトリプルコンボを知った人達からすれば信憑性が増して信じてしまうだろう。
何せ、それらが目の前に存在するのだから。
「さぁ、ヘルベロス! レッドマンを倒す為にそいつらを攻撃するのだ!」
ドルズ星人は凶悪そうな怪獣、ヘルベロスに指示を出す。レッドマンと言うのは文脈からしてあの赤い巨人の事で間違い無い。だが、『そいつら』というのは一体? 「ら」と付いているので複数の相手である事が分かる。だが、レッドマンは一人。一体……
人々は思考の末にある“可能性”を思い浮かんだ。いや、まさか…… それは最悪の可能性。だが、「十分に有り得る」からこそ、人々は恐怖で青ざめていく。
「ま、まさか…………」
「どうしたの?」
父親も同じ予想をしたのだろう。顔が青くなり始めている。息子の方は分からないらしく、頭に疑問符を浮かべている。
多くの人々が否定したいと思っていく中、ドルズ星人はそれを知ってか知らずか、人々が思い浮かべる“最悪の可能性”を口に出した。
「避難している地球人を攻撃するのだ!!」
攻撃対象は、避難している“自分達”だ。
「ま、まずい!」
「逃げろ!!」
市民達は今直ぐ此処から離れようと動き始めた。当然だ。もう直ぐ此処が攻撃されるのだから。そうなったら自分達の命が危ない。人々がざわつき始め、悲鳴を上げながら足を速めて移動しようとする。これ程の勢いでは転んだ人が踏まれたり、群衆雪崩が発生する恐れがある。
だが、その様子を見ながらもヘルベロスは背中と肘の刃を光らせ、口内から炎が溢れ始めている。もう直ぐ攻撃する気だ。このままでは市民がヘルベロスの攻撃により焼かれ、電撃を浴びて致命傷を負ってしまうだろう。
っ! ムゥン!
だが、その様子を見て黙っているレッドマンではない。
ヘルベロスを止めようとレッドナイフとレッドアローを取り出してヘルベロスに向かって走り始めた。
だが、それを阻止しようとする者がいた。
ドルズ星人のUFOのパラボラアンテナのような部分から光線が放たれた。その光線がレッドマンに直撃しかけるが、レッドナイフで防いだ。
「はっはっはっ! 敵はヘルベロスだけではないのだよ!」
UFOの攻撃は未だに続いている。先程は一本の光線を放出していたが、今度は他のパラボラアンテナのような部分から2本、3本と次々と放たれていく。
レッドマンは次々と降りかかる光線を防ぐのに精一杯な状態。レッドナイフとレッドアローを常に携帯しそれを振り回す事でギリギリ光線を防いでいる。だが、そのせいで市民の方に駆け付ける事が出来ない状態だ。
(レッドマン…… 大丈夫かな…………)
子供はUFOからの攻撃により身動きが取れないレッドマンを心配している。子供が見ても苦戦していると分かる程、押されている。このままでは……
「何してるんだ! 早く逃げないと……」
父親が息子を連れて逃げようとしている。それは当然だろう。子を守るのが親の役目なのだから。息子を抱いてこの場から離れようとしている。
だが、ヘルベロスはその様子を見て嘲笑うかのような目つきをしている。もう直ぐ消し飛ばしてやると言いたげな表情だ。
背中と刃の電撃の光が一層光り、口内の炎が大量に溢れ出した瞬間、
市民達に向けてそれらの一斉攻撃が放たれた。
「っ……!」
「パパっ!」
ヘルスラッシュ・ヘルエッジサンダー・火球が此方に向かってくる。かなり広範囲に攻撃を分散している為、避けようがない。木や建物を盾にしても無意味だ。攻撃の速度からしても避けられない。
人々が無意識に手で頭を守ろうとする。攻撃の威力を考えると無意味だ。
だがそれでも、何もしないよりは……
人々は覚悟した。これでお終いだと。
間も無くヘルベロスの攻撃による熱・痛覚・電撃が襲い掛かるだろう。建物を破壊する程の威力だ。喰らえば命は無い。
誰もが、死を覚悟した。
目を閉じ、痛みが来るのを怯えながら…………
そして、
轟音が響いた。
外食に行く時は行った事無い店に入る事が多いですけど、焼き肉屋に関しては上手く焼ける自信が無いため入るのを戸惑う……
次回は2023年11月17日21時00分に投稿予定です。