正義のヒーロー、レッドマン   作:青色好き

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3話で決着って早い気がするが、作者の技術不足である。


第3話:決着

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も来ない。

 

 

 

 

 

 一体どういう事だろうか。

 

 まさか外れたのだろうか?

 

 いや、あれだけの数の攻撃を外すとは有り得ない。見た所かなりの広範囲だったのだから。

 

 人々は恐る恐る目を見開いた。

 

 

 

 

 

 そこには、

 

 

 

 

 

 自身達の盾となり、攻撃を防いだレッドマンがいた。

 

 

 

 

 

「まさか……」

 

「俺達を…… 守ったのか…………?」

 

 レッドマンは背中でヘルベロスの攻撃を受け止めたのだ。その姿勢のため、市民達からすればレッドマンの顔が良く見える。顔は無表情なのだが、何処か…… 優しさを感じさせるような、そのような雰囲気を出している。まるで、「守れて良かった」と言っているような……

 

「もしかして、僕達を守ってくれたの……?」

 

 息子はレッドマンに問いかける。レッドマンは声を出さないが静かに、ゆっくりと顔を頷いた。その様子を見ている父親は薄っすらと確信した。

 レッドマンは自分達を守るために盾になったのだと。

 

 人々がそう思っていた瞬間、

 

 

 

 

 

 グオオォォォ!

 

 

 

 

 

 ヘルベロスの刃がレッドマンを切りつけた。

 

 

 

 

 

 グゥッ!

 

 レッドマンが悲鳴を上げる。背中を切りつけられたのだ。痛くない訳が無い。血は出ていないようだが、刃物で切り付けられたのであれば切り傷が付いてもおかしくない。

 

「レッドマン!」

 

 息子が悲痛な叫びをあげた。

 目の前で自分達を救った巨人が攻撃されているのだ。悲鳴を上げない訳が無い。息子の悲鳴を皮切りに、大人達避難民もレッドマンがヘルベロスの攻撃を受けている事に悲鳴を上げる。刃物で切り裂かれているのだから当然だ。多くの人々が止めて欲しいと心から願った。

 

 だがヘルベロスはそんな事知ったこっちゃ無いと言わんばかりに次々と攻撃を繰り出す。全てレッドマンに一撃も漏らさず攻撃し続ける。レッドマンが悲鳴を上げる度に手応えアリと感じているのか、ヘルスラッシュや火球も放ち始める。

 

 グ……、ぅ…………!

 

 レッドマンはそれらを全て自身の体で受けている。このまま攻撃を受け続ければ何れ力尽きてもおかしくない。

 

「はっはっはっは! レッドマン! そこまでして地球人を守りたいのか!」

 

 レッドマンが攻撃を受け続ける理由。

 それは多くの人々が予想していた通り、避難している市民を守るためだ。

 

 あれだけの攻撃を防ぐとなれば自らが盾になるしかない。そう思ったのだろう。レッドマンはドルズ星人の攻撃を受けながらも市民達の盾になったのだ。結果として大勢の市民を守る事が出来た。

 しかし、ヘルベロスが市民を攻撃しようと次々と隙を見せずに必殺技を繰り出している。そのせいでレッドマンは態勢を変える事が出来ず、その場で盾として居続けるしかないのだ。

 

「まずい! 俺達が移動しないと……」

 

「あの巨人は怪物の攻撃を受け続ける事になる!」

 

 市民達もそれを理解した。

 今直ぐ此処から離れようと動き始めた。この場から離れればレッドマンは盾になり続ける必要は無くなり、少しは移動して態勢を立て直す好機が来るかもしれない。そう考えたからだ。

 

「早く此処から離れよう!」

 

「うん!」

 

父親もそれを理解したため、息子を連れて此処から離れようとする。父親からすればレッドマンは自身達を守ってくれた恩人とも言うべき巨人だ。彼の邪魔をするような事をしたくない。それ故に速足で此処を離れようとした。

 

 だが、

 

「おっと! そうはさせぬよ!」

 

 ドルズ星人の円盤から光線が放たれた。

 

 その光線は市民が逃げようとしていた方向の道路に直撃。爆発位置は最先端の市民の10メートル程先の場所。大きな爆発音と共に道路の路面が粉々に砕け散り、破片が宙を舞って埃を巻き上げる。突然の攻撃に逃げようとしていた市民達は足を止めた。もしも逃げるのが速かったら、光線の直撃を受けて大怪我どころか命を失うところだった。直撃を受けなくても、爆発の衝撃を受ければ無事では済まなかっただろう。

 

「お前達はレッドマンの保護対象なんだろう? だったらその場に居座り続けた方が安全だろ? まぁ、レッドマンがどこまで持ち堪えるかに依るがなぁ!」

 

 ドルズ星人の高らかな声により、市民達は彼の意図が分かった。

 

 市民達を此処に無理矢理止まらせることで、レッドマンの身動きを封じようとしているのだ。そうなると、レッドマンはヘルベロスの攻撃を受け続ける事になる。当然レッドマンが攻撃を受け続ければ流石に命は無いだろう。ドルズ星人はこの方法によりレッドマンを倒そうとしているのだ。

 

 市民達がこの場から離れようとすればドルズ星人の攻撃を受ける危険があり、レッドマンが無理にでも動けばヘルベロスの攻撃が市民に当たる。何方にしても悲惨な結果になってしまう。何と言う卑劣な罠なのだ。

 

「卑怯だぞ! 俺達を利用してあの巨人を倒そうだなんて……!」

 

「ふん! 戦略と言ってもらいたいものだな! どんな手を使おうが勝てば良いのだよ!」

 

 市民の非難を聞いてもドルズ星人は一切罪悪感を感じていないどころか、自信満々で言っている。何という外道なのだろうか。これ程外道な性格は地球人でもそうそういないだろう。

 このままではレッドマンはドルズ星人の卑劣な作戦とヘルベロスの攻撃によって命を落としてしまう。どうすればこの状況を打破出来るのだろうか?

 

「どうしよう……」

 

「どうすれば良いんだ……!」

 

 人々はどうにかこの状況を打開しようと考えている。だが、市民達は怪獣と比べたら弱い存在だ。大勢がいたとしてもヘルベロスに踏み潰されるか、ドルズ星人のUFOの攻撃で蹴散らされるだけだ。

 何も思い浮かばない。状況を変える方法が思いつかない。

 このままでは…………

 市民達はこの状況を打破出来ないのか。そう思っていた。

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

「……がん、ばれ…………」

 

 何か…… 小さな声がした気がした。

 

 

 

 

 

「がんばれえええぇぇぇぇぇー!」

 

 息子が大声で応援を始めた。その声は子供とは思えない程大きく、周りに広く響いている。それだけ大きな声が息子から出ているのだ。

 

「んん? 何やっているんだ? あの地球人の子供は?」

 

 ドルズ星人は大声で応援する少年を不思議そうに見ている。その目つきは軽蔑するような目つきである。見下している。ドルズ星人は少年の応援を見下しているのだ。

 

「レッドマンは絶対に勝つもん!」

 

「んん~? 何の根拠があってそう言っているのだ?」

 

「根拠はあるもん!」

 

 根拠。

 レッドマンがヘルベロスに勝てる根拠。

 それは一体何なのか。

 

「目を見れば分かるもん! レッドマンはまだ諦めてない! だから! 絶対に負けないもん!」

 

 息子は自信を持って言った。

 

 根拠となるレッドマンの目は人の目と違って殆ど表情の変化が無いように見える。だが、不思議とまだ諦めていないように見える。無表情だが諦めていないように見える瞳の奥には、熱い闘志と熱意が籠っているように感じる。

 

 息子にも、レッドマンにも、彼らの目に曇りは無い。息子は必ずレッドマンは勝つと信じていて、レッドマンはまだ諦めていない。

 

「そうだ…… そうだな…… お前の言う通りだ」

 

 次にこの場で発言したのは父親だ。その瞳には、何かを信じるという“想い”が宿っている。子供を信じる、というのもあるがそれ以外の“何か”を信じようとしているように見える。

 

「身を挺してまで俺達を守っているんだ。それ程固い意志を持ってる人が、簡単にあきらめる筈が無い!」

 

 父親もはっきりと断言した。息子と同じくその目に迷いは無い。彼もレッドマンがまだヘルベロスを止める事を諦めていない事を。

 

「ふん! 何も出来ないくせに偉そうに語るな!」

 

「違うもん! 応援で強くなれるもん!」

 

 応援。

 相手を励ましたり奮起させる言葉を言う事。

 

「僕達はレッドマンに何も出来ないけど、せめて…… 応援だけでも良いから力を与えたいんだ!」

 

「あぁ。応援すれば自然と力が湧いて来るんだ。皆知ってる事だ。運動会や落ち込んでいる時に応援されると不思議と力が湧いてくるんだ。レッドマンだってあの怪獣を倒せる位力が湧いてくる筈だ!」

 

 息子も父親もはっきりと、恐れる事無くドルズ星人の円盤に向かってそう言った。

 多くの人は「頑張れ」と言われると奮起する、という経験を一度はしているだろう。現代では「出来ない事を強要されている」と考えてしまう事例があるためあまり言ってはいけない風潮があるが、元々は人に力を与える言葉なのだ。

 

「そうだ…… そうだな…………」

 

「このまま何もしないなんて…… 嫌!」

 

「私、応援する!」

 

 周りにいる人々は次々とレッドマンを応援する気になっていく。大人も、老人も、子供も、男も、女も。老若男女関係無くレッドマンを応援していく。その熱気はスポーツ観戦よりも遥か上だ。

 

「頑張れー! レッドマン!」

 

「負けるなー!!」

 

「頑張ってえええぇぇぇぇぇ!!」

 

「レッドマーン!!」

 

 強烈な熱気がレッドマンに降りかかっていく。全てはレッドマンを応援し、励ましている内容だ。

 

「頑張れえええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「絶対に勝てる! レッドマン!!」

 

 当然息子と父親もレッドマンに応援する。レッドマンに助けられたのだから応援するのは当然だろう。

 レッドマンは表情を変えていない。元々表情が変化しない顔なのだが、不思議と自身達の応援と熱意に応えようとしているように見えた。

 

「えぇい! 五月蠅い連中め! ヘルベロスよ! 止めを刺してしまえ!」

 

 市民達の応援に苛立ちを感じ、ドルズ星人はヘルベロスにレッドマン止めを刺すよう指示を出した。最早レッドマンはかなり攻撃を喰らっている。そろそろ渾身の一撃を与えれば倒せると判断したんだろう。

 

 ヘルベロスはドルズ星人の指示を受けた事で一瞬だけドルズ星人の方を振り向き、指示を聞くと肘の刃にエネルギーが光始めた。しかもその光はかなりの眩しさだ。相当エネルギーが溜まっているように見える。これ程の強力な攻撃が当たったらレッドマンは……

 

「終わりだ! やれっ!」

 

「っ!!」

 

「レッドマン!!」

 

 グオオォォォ!!

 

 ヘルベロスの肘の刃の光が一層輝き、特大のヘルスラッシュが放たれようとしている。只でさえ多数の攻撃を受けて疲弊しているレッドマンに当たれば一溜りも無いだろう。重傷は間違い無い。最悪レッドマンの命は……

 

 市民の誰もが悲鳴を上げようとした。

 自身達を助けようとしているレッドマンの最期を見てしまうかもしれない事に恐怖しているから。

 

 ドルズ星人は笑いを上げようとした。

 地球を支配するのに邪魔なレッドマンを消せると確信したから。

 

 ヘルベロスは勝鬨の咆哮を上げようとした。

 もう直ぐ目の前にいる邪魔な敵を排除できると思ったから。

 

 様々な考えの中、止めを刺さんとするヘルスラッシュが放たれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドショット!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘルベロスの肘の刃が、大きな爆発と共に粉々に破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グオオオオォォォォォ!?

 

「な、何だとぉ!?」

 

「「「「っ!!」」」」

 

 ヘルベロスは肘の刃が砕け散り、驚いて混乱しているがその隙をついてレッドマンはすかさず片腕の肘の刃もレッドショットで破壊した。

 

 レッドショット!!

 

 グオオオォォォォォォ!?

 

 レッドショット。

 レッドナイフの先端から弾丸を発射する技。この技を使う事でヘルベロスの肘の刃を砕いたのだ。レッドサンダーを使っても良いかもしれないが、一度使っている事から何かしら対策されるかもしれないと思い、この戦闘でまだ未使用だったレッドショットを使ったのだ。

 

「レッドマン!!」

 

「レッドマン……!」

 

 レッドマンが再起した事で息子と父親を含む多くの市民が喜びの声を上がった。助かって欲しい者が立ち上がった事・自身達を守る者が復活したのだ。喜ぶのも無理は無いだろう。喜びの余りガッツポーズをする人もいる。

 

「おのれレッドマン! ヘルベロスよ! 攻撃しろ!」

 

 グオオォォォ!!

 

 再び立ち上がったレッドマンに苛立ちを募らせたドルズ星人はヘルベロスに攻撃命令を下す。ヘルベロスも肘の刃を壊された事に怒っているのか、かなり敵意を増幅させている。甲高い鳴き声を響かせ、体の動きもやや大振りかつ力強い様子から読み取れる。

 

 レッドマンは立ち上がりながらその様子を見ているが、動揺していない。真っすぐヘルベロスを見つめているだけだ。まるで怯えておらず、全く臆していないように見える。その様子がヘルベロスとドルズ星人を更に苛つかせた。

 

 グウウウぅゥゥゥ!!

 

「やれやれやれええぇぇぇ!!」

 

 ヘルベロスの背中が大きく光り出した。間違い無い、ヘルエッジサンダーだ。しかも光の量は少し前の時よりも光っている。相当な光量を放っている。

 ヘルベロスは背中からレッドマンに向けてヘルエッジサンダーを放った。その量は少し前の2倍はあるだろう。空を覆い尽くすのではと思わん程の量に、市民達は恐怖を感じてもおかしくないだろう。

 

 だが、その恐怖も直ぐに無くなった。

 

 レッドマンがいるから。

 

 レッドサンダー!!

 

 レッドマンがレッドサンダーを放った。ヘルベロスとの戦いでも使用していたが、光線の厚さと幅は以前よりも増しているように見える。そして、レッドサンダーの輝きも。

 手を薙ぐように動かしてレッドサンダーを横に薙ぐと、空を覆い尽くすような量のヘルエッジサンダーは一瞬で全て爆砕した。

 

 グオォッ!?

 

「な、何!?」

 

 大量の弾幕のような攻撃が一瞬で破壊された事にヘルベロスとドルズ星人は動揺してしまう。あれだけの量なら確実に仕留められると思っていたのだろう。まさか一瞬で阻止されるとは予想外だったようだ。

 

 デュッ!

 

 グオオォォッ!?

 

 更にまだレッドサンダーを照射し続けており、それでヘルエッジサンダーを一掃した後直ぐにヘルベロスにレッドサンダーを当てた。攻撃が全て破壊された事に動揺していたので直ぐに対応出来ず防御する間も無いままヘルベロスは腹に直撃を受けてしまい大きく仰け反って倒れてしまった。

 

「なっ!? 何をしている!! 早く起き上がってレッドマンを倒せ!!」

 

 グ……、オォ!

 

 ドルズ星人は半ば怒るような口調でヘルベロスに命令する。いや、怒ると言うより苛立っていると言った方が正しいだろう。ヘルベロスがレッドマンを倒せていない事に苛立ちを募らせているのだろう。

 ヘルベロスもレッドマンに圧倒されて苛立ちを覚えているようだ。レッドマンを憎らしげに見ているが、レッドマンは全く動揺していない。

 

 グオオォォォ!!

 

 ヘルベロスはレッドマンを焼き尽くそうと考え、口から火球を吐き出した。それは一発や二発ではない。三発、四発、五発…… どんどん数を増やしていく。それらがレッドマンに向かっていく。

 

「レッドマン!」

 

 子供や大人達が心配するが、レッドマンは迷う事無く手を前に突き出した。このままではレッドマンの手がヘルべロスの火球に当たって火傷してしまう。皆がそう思った。だが

怪我をするのならそのような事をしないのでは?

 つまり、レッドマンがやろうとしている事は……

 

 レッドマンの掌に火球が直撃した。

 

 火球は先述したように一発だけではない。

 二発、三発、四発、五発…… 次々と火球がレッドマンの手に直撃する。それと同時に爆発音と煙が次々と上がっていく。これ程の攻撃を喰らったらレッドマンは只では済まないだろう……

 

 だが、煙が晴れていくと……

 

 堂々と立っているレッドマンがいた。

 

「す、凄い……!」

 

「な…… 何故だっ!? さっきまであんなにボロボロだったのに、何処にそんな体力が!?」

 

 レッドマンが少し前までの疲弊が嘘のように、ヘルベロスの火球を手だけで受け止めた事に市民達とドルズ星人は驚いた。先程までヘルベロスの猛攻を受けていたのだ。かなり体力を消耗して防御力はかなり失われていると思われていたからだ。

 

 グ、オォ……!?

 

 攻撃していた当のヘルベロスもレッドマンが健在である事に驚きを隠せていない。

 

「もしかして…… 僕達の応援のおかげでレッドマンは元気になったのかな……?」

 

「な、何だとぉ!? そんなふざけた事で回復する訳が……!」

 

「いや、有り得るさ! 人は応援されると不思議と元気とやる気が出てくるんだ! 学校の運動会や会社の仕事…… 疲れていたり挫けそうになった時でも応援されると疲れは吹っ飛ぶんだ!」

 

「そうだよ! レッドマンだって同じ筈だよ!」

 

「えぇい! 何を言うか!!」

 

 応援で頑張れる?

 馬鹿馬鹿しい!

 

 ドルズ星人からすればおかしな理屈や綺麗事に聞こえる。しかし、レッドマンは現にこうして強くなったように見える。まさか本当に……

 

「そんな訳無い! さっさと倒すのだ!」

 

 オオォ!!

 

 ドルズ星人はヘルベロスに再び命令する。応援で奮い立たせるなど幻聴だと。教えてやらねば気が済まない。地球を植民地化するにはあの地球人の心をへし折らねば。ドルズ星人の脳内はレッドマンを倒す事だけでなく、市民の心を折る事も加わった。

 

 ヘルベロスはドルズ星人の命令に苛立ちを覚えるが、レッドマンを倒したい気持ちは同じなので再びレッドマンと相対する。レッドマンは相変わらずヘルベロスを見つめるだけだ。

 

 グオオオオオオォォォォォォォ!!

 

 ヘルベロスは火球だけでなく、ヘルサンダーとヘルエッジサンダーも同時に放った。火球の時は素手だけで防いでいたが、今度は電撃や雷状の矢も防がねばならない。量だけでなく多種の技を防ぐのは難しい。

 

 だが、レッドマンは全く怯えていない。

 

「レッドマン……?」

 

 息子は心配そうに呟く。

 レッドマンは息子の呟きに応答するように市民達の方を振り向く。その目は「大丈夫」と優しく語るような、穏やかな視線のように感じた。

 

 レッドマンは降り注がんとする雷の矢・自身に向かって来る電撃と火球に向き合い、両手を頭のランプにかざしてこう叫んだ。

 

 レッドレーザー!

 

 頭部のランプからレーザー光線が発射された。そのレーザー光線は次々と火球とヘルエッジサンダーを破壊していき、ヘルホーンサンダーを相殺した。

 

 グオォ!?

 

 ムゥン!!

 

 相殺して互角と思いきや、一瞬でレッドレーザーはヘルホーンサンダーを押し返し、ヘルベロスの角に到達した。レッドサンダーが角に当たった瞬間、ヘルベロスの角は大爆発を起こし、爆ぜた角は地面に落下した。角の断面図からは煙が上がっており、少し溶けているように見える。レッドレーザーの威力の高さが窺える。

 

 オオオオォォォォ…………!

 

 イヤァ!

 

 角が破壊された事にヘルベロスは驚くものの、その隙を突いてレッドマンは直ぐにヘルベロスの懐に移動する。そしてヘルベロスに強力なパンチをお見舞いする。

 

 グウゥ!

 

 強力なパンチを受けた事でヘルベロスは大ダメージを受けてよろめく。そしてレッドマンはヘルベロスを両手で高く持ち上げた。ヘルベロスは藻搔くものの、レッドマンは大きな声でこう叫んだ。

 

 レッドフォール!!

 

 レッドマンはヘルベロスを大きく投げ飛ばした。投げ飛ばした場所は市の大きな交差点の辺りであるため潰された建物は無かった。地面に当たるとヘルベロスは大きなダメージを負った事で悶えている。

 

 グオオォォォ……!

 

 ここまでレッドマンとのダメージを追い続けて遂にヘルベロスは満身創痍となった。

 

 グウゥ……

 

 ヘルベロスはまだ戦うつもりのようだ。だが、レッドマンはその様子を見ても戦いの構えを取ろうとしない。何故か?

 

 

 

 

 

 それは簡単だった。

 

 

 

 

 

 ヘルベロスの背中に無数の爆発が起きた。

 

 

 

 

 

「な、何っ!?」

 

 

 

 

 

 ヘルベロスの背後には、

 

 

 

 

 

 自衛隊が攻撃していた。

 

 

 

 

 

 まだ辛うじて使える戦車と戦闘機が一斉にヘルベロスに向かって攻撃しているのだ。本調子のヘルベロスであればこの程度の攻撃は何ともないのだが、満身創痍の状態の今であれば、これでもかなり効く。

 レッドマンは自衛隊の様子を見て、確信したのだろう。自衛隊が攻撃しようとしているのを。それでヘルベロスを倒せると。

 

 グ、オォ…………!

 

 疲弊しているヘルベロスにとっては先程の攻撃が決め手となったようだ。

 ヘルベロスが力を失ったかのように轟音と煙を上げて倒れた。倒れた後は腕や足をヒクヒクと動かしている。もう戦う事は出来ないだろう。

 

「なっ!? 何をしているのだ! ヘルベロス!! だらしがなさす……!」

 

 レッドマンと自衛隊の攻撃に負けてしまったヘルベロスを見てドルズ星人は相当憤慨している。その様子はヘルベロスの様子を心配する気は一切無い。負けた事を唯々責めているだけのように見える。

 

 宇宙船の画面に映るヘルベロスを責めている事に夢中であったため、気付くのが遅れてしまった。

 

「折角オークションで売れ残っていたから安い金で買ってやった恩を仇で………… っ!!」

 

 

 

 

 

 レッドマンが此方を見ている事を。

 

 

 

 

 

「に、逃げ……!!」

 

 ドルズ星人は今直ぐ宇宙船を操作して逃げようとした。いくらレッドマンと言えども宇宙空間まで宇宙船を移動出来れば逃げられる筈。そう考えているようだ。

 

 だが、敵を逃がす程レッドマンは甘くない。

 

 レッドマンが大ジャンプし、宇宙船を思いっ切り掴んだ。

 

「ひいいぃぃぃ!!?」

 

 宇宙船は大きく揺れる。あまりの揺れにドルズ星人は何度も転び、ゴロゴロと転がってしまう。宇宙船の端の壁に思いっきりぶつかってようやく止まった。

 

「ぐ……、おのれ、レッドマ……!?」

 

 転がりの軽い酔いから醒めたドルズ星人は何とか宇宙船を動かして離脱しようと考えた。だが、宇宙船のモニターにはある異常が検出して、サイレンが鳴っていた。

 

 エンジン破損。今直ぐ脱出して下さい。

 

「なななな…… まさか…………」

 

 エンジンが破損。

 これでは空を飛ぶ事が出来なくなる。レッドマンはこれを狙った……?

 

「な、ならば小型脱出艇を使って……!」

 

 小型脱出艇。

 緊急時に宇宙船が故障した時・宇宙怪獣などの襲撃時に使用する、緊急用の宇宙船だ。これを使えば直ぐに宇宙船から脱する事が出来る。小型であるため狭いし、簡単な操作と簡易的な食料位しかないが今の危機を切り抜けるには十分だ。

 

「よしっ! 確か此処に……」

 

 ドルズ星人は近くに小型脱出艇の入り口を見つけた。幸い近くにあった。早く此処からおさらばしなければ。ヘルベロスは放っておくようだ。ドルズ星人からすれば敵を倒せなかった役立たずと見做している。

 脱出艇の入り口に入ろうとしたその時だった。

 

 轟音と共に脱出艇が「壊された」。

 

「へ………… ぇ……………………?」

 

 ドルズ星人の目の前にあった脱出艇は何かに押し潰されたように圧縮されてしまった。金属の部品は折れ曲がっており、中の座席も見る影も無い状態だ。所々火花が散っている事からもう使えない事は明らかだ。

 

「ま、ま………… さ、か……………………」

 

 状況を理解しようと脳を全力で稼働させる。しかし、目の前の状況は小型脱出艇が壊されたという事実だけを理解出来た程度。そして少しずつ頭脳が落ち着きを取り戻していき、今の状況を正確に理解出来るようになった。

 

 小型脱出艇が飛ぶ通路の脱出口には、本来見える筈の青空ではなく、

 

 

 

 

 

 レッドマンの顔が映っていた。

 

 

 

 

 

「れれれ、レッド………… マ…………!」

 

 レッドマンが自身を覗いている状況に置かれていると、ドルズ星人は理解した。この場から逃げたいのだが、ヘルベロスは戦闘不能、宇宙船は壊されて、非常用の小型脱出艇も壊された。完全に詰みだ。

 レッドマンの表情は全く変わっていないが、何処か「怒って」いるように見える。

 

「まままま、待て……! 交渉を……」

 

 交渉をしよう。

 そう言おうとした。何とか口八丁手八丁でレッドマンを騙そうとした。そうすれば危機を脱する好機が産まれるかもしれない。そう考えた。

 

 だが、台詞を言い切る前に、

 

 レッドショット光線!

 

「って、わあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 レッドマンの光線を喰らって、倒された。




ドルズ星人の後味の悪さはウルトラシリーズでも随一だと思う。

次回は2023年11月24日21時00分に投稿予定です。
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