戦いは終わった。
町では復興のための自衛隊車両が多数集まっており、被害に遭った街を元に戻そうとしているのだ。だが、その作業はまだ始まっていない。何故なら、
グウゥゥ……
レッドマンがヘルベロスを治療しているからである。
戦いが終わった後、レッドマンは戦意を失ったヘルベロスを保護したのだ。当のヘルベロスはレッドマンに負けた事に加えて、上司に見捨てられたショックもあって抵抗する気を無くしていた。最初に暴れていた時とは思えない程落ち着いており、声も小さめだ。
ドルズ星人の方は大分黒焦げだが、四肢はキチンと動いている為生きているようだ。だが大分火傷している為逃げる事は出来ないだろう。
「どうしてレッドマンはあの怪獣をやっつけなかったんだろう?」
多くの市民が抱いている疑問。
ヘルベロスとドルズ星人は町を破壊したため、正義の名の下に裁かれてもおかしくは無いだろう。怪獣と宇宙人を裁く法は無いが、怪獣と宇宙人を止めようとした様子からして、倒そうとしても不自然ではない。
息子の疑問は町の人々の頭の中で疑問符を浮かべさせている。一体何故レッドマンはヘルベロスとドルズ星人を生かしたのか?
「罪を憎んで人を憎まず…… って事じゃないか?」
「あ~…… テレビで聞いた事ある!」
その疑問に皆が考える中、推測を挙げたのは父親だった。
罪を憎んで人を憎まず。犯した罪を憎んで罰しても、罪を犯した人を憎んではならないという諺。実際にやろうとするとそれは難しいかもしれない。だが、人を憎めばまた新たな罪を犯しかねない。だからこそ、この諺は重要だ。
……ウンッ!
グオォ……
ヘルベロスの治療が終わり、レッドマンはヘルベロスの背中を軽く叩いている。優しい感じに叩かれた事が無いせいか、ヘルベロスは少し困惑気味だ。
ウン!
オォ……
レッドマンはヘルベロの背中を抑えながら歩き始めた。黒焦げのドルズ星人は何やらシールドのようなもので覆って逃げられないように閉じ込めている。まぁ、彼自身かなりボロボロなのでシールドが無くても逃げられないだろうが。
「もしかして、宇宙に連れて帰るのかな?」
「警察みたいな所に送る…… ように見えるな」
警察みたいな治安維持組織に送る…… ように見える。
ヘルベロスは負けてしまったため少し落ち込んでいるようだ。戦いの時の表情からして好戦的な性格らしい。その分負けたショックが大きいのかもしれない。
息子は少し前に出た。何かを言うつもりらしい。
「もう悪い事はしないでねー!」
手を振りながら言った。元気そうな表情で。
それを見たヘルベロスは小さく「グオォ」と鳴いた。その声色から敵意は不思議と読み取れない。もしかすると「こんな目に遭う位ならもうしないよ」と言っているのだろうか。きちんと罪を償って今度は皆と仲良く暮らす未来が来るかもしれない。
レッドマンもその様子を見ている。表情には表れていないが、何だか微笑ましく思っているように見えた。レッドマンはヘルベロスが改心する事を望んでいるのだろう。
「レッドマーーン!!」
息子は大声でレッドマンに声をかけた。どうやらまだ何か話したい事があるようだ。
「僕も、レッドマンみたいに強くなるよーー!!」
その声は不安や迷いの無い、純粋な声だ。決意を表す、曇り無き輝き。
それを見たレッドマンは、片手で親指だけを上げるサムズアップで返した。
そして、レッドマンはヘルベロスとシールドに囲まれたドルズ星人を連れて、空を飛んだ。この町を救ったレッドマンは空へと消えていった。
「僕もレッドマンみたいに強くなるぞ!」
「なら、食べ物の好き嫌いしない事が大事だな!」
「は、は~い…………」
親子の睦まじい会話を、周辺の市民達は微笑ましく見守っていた。
此処は地球から遠く離れた宇宙。
黒い空間が広がる中に宇宙ステーションが浮遊している。地球の技術で此処まで離れた場所に宇宙ステーションを送り込む事は出来ない。では誰の宇宙ステーションなのか。簡単だ。異星人の宇宙ステーションだ。
その宇宙ステーションの中に、レッドマンに似た姿の巨人が何人か並んでいる。その巨人達は銀と赤の体色、そして光を放ちそうなランプが胸の辺りに付いている。
彼らの名は「ウルトラマン」。
M78星雲「光の国」に住んでいる巨人達だ。
「そうか。地球でドルズ星人がヘルベロスを使って襲撃を……」
「済まないな、レッドマン。今回もまた頼んでしまって……」
レッドマンは複数のウルトラマン達と話をしていた。どうやら今回レッドマンが地球に来たのは、ウルトラマンからの頼みによるものだった。
実はレッドマンは別世界の地球で多くの怪獣と宇宙人を倒した実績がある。それ故に今回の騒動の対処を依頼されたのだ。
「ドルズ星人は今牢獄だ。後に処罰が下るだろう。ヘルベロスも同様だが、改心の予知があれば刑が減刑されるだろう」
「今はアブソリューティアンといった勢力との戦いに備えなければならない。もしかしたら、君の力が必要になる時が来るかもしれない」
「その時は、協力してくれるだろうか?」
ウルトラマン達の問いに、レッドマンは静かに頷いた。答えは考えるまでも無かったようだ。
「そうか…… その時はよろしく頼む」
レッドマンにお礼を言い、ウルトラマン達はその場を後にした。
レッドマンはこれから起こるであろう戦いに備えて、覚悟を決めるのであった。
後書きは2023年12月1日21時00分に投稿予定です。