《華焔の魔女》は憑依転生者   作:紅ヶ霞 夢涯

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十話

〈side天霧綾斗〉

 

 純星煌武武装、《黒炉の魔剣(セル・ベレスタ)》の適合試験に通った日の夜。

 

 クローディアの自室に呼び出された俺は、彼女からユリスを取り巻く現状の話を聞いた。以前から鳳凰祭に出場予定だった学生が襲撃されたこと、この一件に他の学園が絡んでいる可能性が高いということ。そして出来るだけユリスの側で、今後の襲撃に備えて欲しいという頼み事を引き受けたこと。

 

 ………………………クローディアのバスタオル姿やバスローブ姿、それらで誘惑を受けた記憶を頭から振り払う。

 

「そ、それにしても………情報量が凄いなぁ」

 

 入学してきたばかりの俺に任せるべき内容ではないと思う。けど、知ったからには知らない振りなんて出来ない。

 

 やれる事をやろう。俺よりも長くユリスとの付き合いがある筈の紗夜やクローディアでさえ、友人でないときっぱり言い切るのだからユリスの悪癖………信条は筋金入りだ。あの噴水の一件の後、紗夜が泣きそうになっていたのは記憶に新しい。

 

 息を吐いて、空を見上げる。広がる星空に思い浮かべるのは、何年も見ていない姉の瞳。続けてユリスの顔も思い浮かべてみれば、その二つは違和感なく重なった。姉さんもユリスも、瞳の中に強い決意を秘めている。

 

「ーーーおい、こら。そこで何をしている?」

 

 頭上からの声に、思わず肩を震わせた。ユリスから聞いた下着泥棒の末路を思い出す。マズイ、何か上手い言い訳をしないと。

 

「あ、いや、えっと………これは」

 

「なんだ?聞こえんぞ」

 

 窓際からユリスが飛び降りてくる。彼女の部屋は高い位置にあったというのに、その着地は軽やかだ。既に夜も更けているせいか、随分とラフな格好をしている。オーバーサイズのTシャツとショートパンツって………クローディア程じゃないけど、ちょっと目のやり場に困る。

 

「まさかとは思うけど、普段からそうやっているの?」

 

「馬鹿を言え。いつぞやの下着泥棒の時と、お前にだけだ。やってみたら意外と便利でな」

 

 そう言うユリスの手には今時は珍しい、何枚かの紙の束が握られていた。注視すると、照れたようにユリスはそれを背中に隠す。

 

「手紙かい?」

 

「………そうだ。で、お前はまた女子寮の近くに来て何をしていた?」

 

「さ、散歩だよっ。夜空を見るっていうのも好きでさ」

 

「老人のような趣味だな」

 

 見苦しい言い訳だけど流石に老人は酷くない?

 

「まぁ、いい。天霧綾斗、明日は特に何か予定はないな?」

 

「別にないけど」

 

「ならば、丁度いい。明日は学園の外………街を案内してやる。九時には正門前の広場で集合だ」

 

「いいの?」

 

「借りがあるからな」

 

 正直、有り難い。ユリスの休日を貰うのは少し申し訳ない気もするけど、彼女がそう言ってくれるなら甘えるとしよう………紗夜に案内は頼めないし、クローディアからユリスの事を頼まれてもいるし。

 

 そして、翌日。

 

 女性を待たせる訳にはと、十分前には集合場所の正門前に足を運ぶ。休日ということもあって、まだ朝も早い方の時間帯なのに沢山の人で賑わっている。

 

「ねぇ、ちょっと」

 

「あ、はい。俺に何か用ですか?」

 

 見知らぬ女性に声を掛けられた。

 

 薄い色素の入ったサングラスの向こうに透けて見える瞳は赤。短い黒いワンピースを着ていて、腰より少し上に巻かれたベルトのせいでスラリとした脚が強調されていて目を引く。シンプルな黒も白のラインで構成された帽子も、少し踵の高い黒ブーツも相まってお洒落に気を使っていると分かる。

 

「呆れた。今日、外を案内するって言ったじゃない。ひょっとして、忘れた?」

 

「えっ?????」

 

 左右に分かれて結ばれた長いピンクの髪と、その台詞で目の前の女性が誰かを悟る。けど、あまりにも彼女のイメージと一致しない。

 

「集合時間前に来たのは褒めてあげる。けど、待ち合わせ相手が異性なのに服を褒めないのは減点ね」

 

 普段………と言える程に彼女との付き合いは長くない。けれど口調のせいで、分かっているのに別人としてしまいそうになる。

 

「何、寝不足?アイスコーヒーなら買ってるけど、これでいい?」




FGO剣メドゥーサの第一霊基から。
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