「………気づいていたんだ」
「私はな。あの単細胞は気づいていないだろうが………入学初日とは思えんくらい、熱心な私のストーカーになったものだな、?」
「違うよ!?」
いや、違うとは言うけども………朝からの遭遇率が尋常じゃない。この広い学園で偶然にも放課後に私とピンポイントで出会えるものか?まぁ、本当に偶然なのだろうが。
「そんなに怒鳴るな、冗談だ。何か用か?」
「あ、いや。一瞬だけど今の人に絡まれてるように見えてさ………まぁ、勘違いだったみたいだけど」
「いや、絡まれてはいたぞ」
前と比べて少しマシになっただけだ。雑談というか揶揄えるような間柄にはなったが、相変わらず猪みたいに決闘を挑んでくるし面倒な部分もある。
………何で天霧綾斗はそんなに驚いているんだ?
「絡まれてた…?いや、でも普通に仲良さそうだったけど?さっきの………えっと」
「レスター・マクフェイル。見た目通りのパワーゴリラだが、あんなのでもウチの序列九位だ」
思わずため息が出る。私ほどではないにしろ、彼も彼で有名人ではあるのだが。
「お前な、流石に入学する所の《
「そうだね。その内、時間がある時にそうするよ」
………こういう「行けたら行く」という類の発言は信用ならん。
「話のついでだ、天霧綾斗。一つ答えていけ………今朝、私の炎を斬っただろう。
「あ、流星闘技じゃないことは分かるんだ」
分かるというか、知っていたというか………あるいは、出来ると言うべきか。
「俺はそもそも、流星闘技が苦手でさ。相性が悪いというか………実体の方が使い安くて。今朝のあれはただの剣技。一応、うちは古流剣術の道場だから多少はね」
「ただの剣技であれか。随分と腕が立つようだな」
「偶々だよ」
「さて、いつまでそんなとぼけた顔が続くかな。そう甘い場所ではないぞ、この街は」
「甘く見ているつもりは全然ないんだけどなぁ………そういうユリスは、何でこの街で戦ってるの?正真正銘のお姫様って聞いたけど?」
私が戦う理由、か。何はともあれ金が必要なのは間違いないのだが………それではない。そんな単純な理由ではない。
「贖罪だ」
もっと早くに思い出していれば、何か一つでも未来を変えられたかもしれない。思い出してからも私に力がなかったせいで、取り零したものが幾つもある。数え切れない。
「私は
贖罪と表現したことについては、天霧綾斗は深く聞いてこなかった。その程度の分別はあるらしい。
「あぁ、それでパートナーを探しているんだ」
「まぁな。友人が一人もいないことも原因の一つだろうが、私の基準に達する者がいなくてな」
チラリと天霧綾斗の顔を見ると、何か温かな目が向けられていた。絶対に失礼なことを考えている。友達がいないことは認めるんだ、とか。どうせそんな辺りだろ。
「へぇ。ちなみに基準って?」
「色々とあるぞ。頭の回転が速く機転も効いて、清廉潔白であり強い意志と高潔な精神を持つ騎士の如き人物………というのが最低限の理想だな。しかし大前提の条件にさえ当て嵌まれば、まぁ他は割りとどうでもいい」
「大前提?」
「お前、この街がどういう所かまだ分からないのか?決まっているだろう」
彼と視線を合わせる。今はまだ隠されている彼の力を見据えるように目を細め、こう言った。
「ーーー