翌日の朝。
昨日は眠くて二度寝したら、そのまま布団の中で気づけば一日を過ごしていたと宣う友人………友人、か?まぁ、その他大勢と比べれば近しい関係ではあるかもしれんが。
そんな彼女、水色の髪を短く切り揃えた人形のように表情の乏しい少女。沙々宮紗夜を彼女の自室から引っ張り出した私は、沙々宮の寝癖を整え三つ編みに結んでいた。
「おい、沙々宮。いい加減に起きろ」
「………あと五分だけ」
「そう言って五分で済んだ試しがないな?一限目までには起きるようにしろ」
私が沙々宮に対してこんな風に接するようになっあのは、いつの事だったか。最初は原作開始まで関わるつもりなどなかったのだが、そうすると知らぬ間に野垂れ死んでしまいそうな予感を覚えたのだ。
「ふふっ」
レスターのそれとはまた違う、気ままな子猫に向けるような愛着が沸いて仕方ない。
沙々宮の髪を整えたタイミングで丁度、天霧綾斗が教室に入ってきた。そして私に声を掛ける。
「おはよう、ユリス」
「あぁ、おはよう。お前の方から言い出したのだから、放課後は空けているな?」
「勿論。よろしくお願いするよ」
沙々宮やレスターなどを除いて、クラスメイトとほとんど交流してないせいだろう。教室の中の喧騒がピタリと止む。
「お、おい今の聞いたか?」「あのお姫様が挨拶を返した、だと!?」「聞き間違いじゃないよね………?」「あの転入生、どんな魔法を使ったんだ!」「いや待て、そもそもあのお姫様は本物なのか!!?」
しかし、静寂は僅か一瞬。すぐに好き放題に口を開いてクラスメイトらが騒ぎ出す。………見世物扱いは嫌いだと、とっくに知っている筈なのだが。
「ーーーあ゛?」
短く言葉を発して軽く威圧する。それだけで簡単に黙るのだから楽なものだ。
「………そういうのは、ちょっと良くないと思うけどな」
「喧しい。お前は自分の事を気にして、隣の沙々宮とでも交友関係を気づいておけ」
「まぁ、一先ずはそうさせて………え、今誰って?」
「沙々宮、起きろ。昨日、面白い奴が転入してきてな」
私の声に応じて眠そうに顔を上げる沙々宮。彼女と視線を合わせた天霧綾斗は、とても驚いていた。
それに目を付けたのか、夜吹英士郎が天霧綾斗に絡む。仮にも新聞部とかいう、面白おかしく情報を流す立場の奴に軽々しく喋り過ぎだろうが………まぁ、今の段階で気にする必要はない。
天霧綾斗と沙々宮とが顔を合わせるのは、ざっと六年振りになるらしい。二人は私の存在を忘れたかのように、昔話に花を咲かせる。
その様子を見て私は思わず、変わり果てた一人の友人の姿を思い浮かべてしまった。