そして放課後。天霧綾斗との決闘で出来た借りを返すため、学園内を案内することになった私は化粧室で軽く身嗜みを整え教室に戻る。
すると天霧綾斗と沙々宮紗夜とが談笑していた。まぁ、長く会っていない幼馴染みとの邂逅だ。話しの種はしばらく尽きないだろう。
(こんな光景が目の前にあると………流石にな)
今は別の学園にいる友人との、あり得たかもしれないIFが瞼の裏に浮かぶ。その光景を頭を振って掻き消した。
「随分と天霧綾斗と仲がいいんだな、沙々宮。お前に幼馴染みがいたとは驚いたぞ」
「私もリースフェルトが私以外と喋ることに驚き………それも綾斗となんて。世の中は不思議で溢れている」
「ま、私はお前の世話係が増えるようで安心もしたがな………さて、約束だからな。そろそろ学園を案内してやるとしよう」
「うん。よろしく頼むね」
「………………………約束って?」
沙々宮紗夜の問いに天霧綾斗が軽く答える。そうなった経緯を彼女は気になったようだが、それまで答えようとした彼に一つ睨みを効かせる。私の口からならともかく、他の所から広まってたまるか。
僅かに眉を寄せる沙々宮紗夜を置いて、天霧綾斗と教室を出ようとした時だった。
「待って。それなら私が綾斗を案内する」
思わぬ宣言に足を止めて振り返る。流石にその自殺行為は見逃せない。しかし、どう説得すれば納得するのだろうか………こうなったら彼女は頑固だぞ。
「あー、沙々宮?申し出は有り難いし、久方ぶりに会った幼なじみと喋り足りないのは察するが………そうだな。私は中等部から在籍しているし、ここは私に譲った方が無難だと思うが」
「問題ない。私だって案内くらいできる」
それが本当なら必死に頭を回して上手く丸め込める理由を探したりしないんだよな。しかも、何だか面倒な奴も近寄ってきたし。
「あらあら、お二人が揉めるようでしたら私が綾斗を案内しましょうか?ユリスの理屈なら、私が一番の適任でしょうし」
するりと背後から天霧綾斗に近づいたクローディアが、彼の背中に思い切りたわわに実った胸を押し付ける。
「おい、それくらいにしておけクローディア。沙々宮の視線が洒落にならん」
貧乳キャラの巨乳への嫉妬は割とガチだと思っている。
「ふふっ、そうですね。それでは要件を済ませるとしましょう」
クローディアは天霧綾斗に純星煌武武装の適合試験に関する書類を手渡す。かなりの枚数があるな。こんなの、普通は生徒か担任にでも任せればいいだろうに。
「ところでさ、気になってたんだけどユリスとクローディアって友達なの?」
「はい、そうですよ」
「違う。私が友人と見ているのは、後にも先にも一人だけだ」
「そんな悲しいことを言わないで下さい。私、泣いてしまいますよ?」
わざとらしく泣き真似をするクローディアを追い払う。全く………友人でないにしろ近い枠組みに入り込まれているからか、彼女の前だと口が滑るからよろしくない。天霧綾斗に手を振って去っていく彼女を無言で見送る。
「仕方ない。沙々宮、どうせ案内すると言っても未だに学園の地図を覚えきれてないのだろう?復習がてら、一緒に来い」
「………………………………………………了承」
そう呟いた彼女の表情が、どこか傷ついたように見えた気がした。