どうも、ワイやで。
禪院家「炳」筆頭、特別一級術師の禪院直哉くんや。今日も真希ちゃんとお話し中やで。
「ところで、一億あったら女子高生って口説いてええと思う?」
「いびきだけかいてろよカス」
「寝てると思ってた? 寝言判定なんか?」
禪院家の定例会議が無駄に長引いてるせいで、何日かは本家におりそうなんやよな。つまり、ワイにとっては地獄ってことや。
「何がそんなに憂鬱なんだよ。次期当主だろ?」
「まあ待ってくれや……こう見えてもワイは、同僚とは仕事上の付き合いしかしないタイプなんや」
「こう見えても何も。見た目通りだけど」
「そして家族の前ではこうして気さくなワイを見せる……
「
これは由々しき問題なんや。マッマ相手には可愛らしい息子として接した後に、同僚相手にビジネスライクな会話をする……こんなんを続けてると、いつか同僚にも今みたいなノリで接してしまいそうで怖いんや。
うっかり職場の人にニッチなネット用語を使ってしまった時の感覚を想像して欲しいで。 上司とご飯食べてるときに「これクソ美味いンゴねぇ…」なんて言ったら失職するわ!
「母親、中学の担任、小・中・高時代のクラスメイトそれぞれ一人ずつのメンバーでシェアハウスしてるようなもんや! どのキャラで行けばいいか分からんくなるやろ? 」
「童貞キャラだろ」
「ワイの
ほんまにはよ終わって欲しいわ。なんやワイが知らん人事問題で揉めとるらしいけど、はよ解決して欲しいな。
「話を戻すけど、婚活市場においてお金は絶対的正義やん? だとしたら持ってる側は選べる立場……一億あれば挑戦権くらいはないんか?」
「一億あっても性格がダメ」
「お金があっても幸せになれない好例の男やね?」
しかし、ワイというモンスターを生んだのはお前たち社会やで……? ダース・ベイダーの闇堕ちみたいな話や。大魔王誕生やね。
「ロリコン」
「はあ……勘違いせんといて欲しいねんけど、男が女子高生を好きなのはロリコンとかそういう話ちゃうで。小学生の頃から女子高生が好きやねん。子供の頃に好きだったものを、今でもずっと好きでい続けてるだけなんや。これを純愛と言わず何と言うんや?」
「犯罪」
「社会のマークは厳しくなる一方やね……」
いくつになっても男はから揚げが好きなのと同じ理屈やね。年を取ってナスやみょうがの旨さに気付いたとしても、それはそれとしてから揚げは好きなまんまなんや。たとえ年を取って
「学生服でのプレイにあこがれるのは学生時代に恋愛経験が無かったことへの反動やね……辛かった青春へのコンプレックスを解消しようとしてるんや」
「ふーん……ちなみにお前の高校時代は?」
「【無】やね」
「ずいぶん辛かったみたいだな」
学生時代の話は闇しか生まんで。 子供の頃は純粋にラブコメを楽しめてたんやけど、大人になってから読むと楽しさの裏に一抹の痛みがあるんや。
「最近はラブコメを読んでも胸がキュっとなるんよね……」
「不整脈じゃん」
「しかし女子高生と恋愛すれば、あの灰色の青春を取り戻すことが出来る……! 男にとって女子高生はタイムマシンなんや!」
「時空犯罪は条例で禁じられてるんだわ」
ここはタイムパトロールが介入した後の世界線やったんか……?
「どうやらワイの戦うべき敵は……"裏"におったようやね……」
「一生自分の尻尾と追いかけっこしてる犬みてえだな」
「くぅん……」
「お、負け犬の遠吠え」
もう呪霊と戦うだけの人生は飽きたんや! 呪術師は慢性的に人手不足&未だに戦闘力=偉さの鎌倉武士みたいな価値観から抜け出せてないせいで、ほんまやったら一生キャバクラ通いで生きていきたいワイも任務という肉体労働に駆り出されるんや。今後呪霊一体に対しスケベ女一人くらいのレートがないとやってられんで。
「でもちょお待ってくれや! ワイ、何だかんだで悪くない顔してへん!? 風呂上がりに見るワイとか、新田真剣佑に勝るとも劣らへんで!」
「それは風呂上がりの人みんながそうなんだよ。歪んだ鏡を見すぎて自己認識も歪み始めたか?」
「ぐう……!」
「ぐうの音はギリギリ出る程度のダメージ受けてんじゃねえよ。もっと傷つけ」
車のウィンドウとか、服屋の鏡で見る自分はやけにイケメンに見える現象、あれ一体何なんやろね……。特殊な電磁波とか出とるんか?
「そんな言うんやったら真希ちゃんがワイを採点してくれや。 ワイがモテへん理由を教えてもらうまでは引き下がれへんで!」
「いいけど……本当にいいのか?」
「あれ、これ弁護士を立ててから聞くべきやつか?」
今からワイは名誉を傷つけられるんとちゃう? 誹謗中傷フォームに訴え出るべきか?
「ちょっと待ちや、その前にワイの前髪をセットしてから」
「女殴りそうな顔してる、性欲強い、長男、禪院家、話してるときに人の眼を見ない、童貞特有の謎に高い貞操観念―――」
「これ以上は法廷で語り合う事になるで!」
大半が最早どうにもならん事なのは悲しい事やね。生まれ持ったカードで勝負するしかないってスヌーピーはんも言ってはったで。
「女殴りそうってなんやねんな、ワイは真希ちゃんとの組み手の時もフェザータッチでギリ触らんようにしてるのに……」
「そういう所だろ」
「女性相手は胸・尻・顔と触ったらいけんデッドゾーンが多くて不利やで。ドッジボールかてセーフなのは顔面だけやっちゅうのに」
組み手中にワイがどれだけ神経つかっとると思ってるねん。触れたらアカン場所が多すぎてほぼ肩パン縛りで戦ってるねんぞ。天与呪縛なってまうわ。
「ひょっとしてこういう気にし過ぎなところもキモいんか!?」
「いや、別にそこは良いと思うけど……」
「いくら真希ちゃんでも、直哉菌の話をし始めたらもう戦争しか残ってへんで……!?」
「してないけど、過去何があったかだけは伝わって来たわ」
消しゴムを拾っただけで泣かれ、席で隣になっただけで泣かれ……泣かせた女は数知れずやで。
一回見栄はって「あいつワイの彼女」って嘘ついて泣かれた小学生の頃からワイの童貞は始まっていたんかもしれんねなあ……。
「なんでワイの筆おろしをしてくれるスケベな女性は現れへんのやろなぁ……」
「まーた始まったよ」
「弘法筆を選ばず……そういう女性が近くにおらんもんか……」
「その弘法は筆を誤るタイプの弘法だろうな……」
なんでワイはモテへんのやろなぁああんンンン……(鳴き声)。
と、向こうの扉が開いて人がゾロゾロ出てきた。なんや会議が終わったみたいやね。ワイも次期当主やからほんまはあっちに行かなあかんかったんやけど、ずっとダラダラ煮え切らへん議論をしてるだけやから今回はパスさせてもろたんや。懐のひろいパッパに感謝やで。
「あかんあかん、ほなワイもあっちいかな。何喋ったかくらいは把握しとかへんと後から怖いからな」
「おう……じゃあな」
なんやっけ、宿儺の受肉体が現れたんやっけ? ちゃうわ、宿儺の指に適合した少年がおったんか。
その少年には悪いとは思うけど、まあほぼ死刑決定やろなあ……。万が一の被害がヤバすぎるし、そんな爆弾を上層部がうかうか見逃すとも思わへん。可哀想とは思うけど、
ただあんまり楽しい話題やないから、こうして真希ちゃんと楽しくお喋りしてたわけやね。
最近は呪詛師の百鬼夜行テロやったりなんやったりで、暗いニュースが多くて困るわ。世界はもっとスケベかつ単純でええと思うんやけどねえ。
どうも、ワイやで。
任務で全国回っとるせいで必然的にホテル暮らし、禪院直哉くんや。
毎日お風呂にも入っとるし、ホテルの人が洗濯もしてくれてるから服も綺麗。これでワイに世の女性が言う清潔感とやらが宿らへんのは何でなんやろね? この言葉の裏には
「え、死刑延期なん?」
「うむ。宿儺の指を全て集めるまで、虎杖悠仁の死刑執行は無期限に延期だ」
「はえー……」
なんやそれ?
いや、勿論理屈は分かるんやで? リスクとリターンを天秤にかけて、『宿儺の完全消滅』っていうリターンを取ったんやろ? ただ、ちょっと保守的な上層部らしくないというか……。
「五条悟だ」
「あー……その言葉で全部説明付いたわ。嫌やねぇ、何でもかんでもゴリ押ししてほんま」
「俺もそう思ったが、実際それで何とかしてしまったのだから仕方ない」
「やからイケメンは嫌なんや……顔の良い男はそれだけで"悪"やで……」
「偏った思想」
「五条悟も甚爾くんも嫌いやで。 でもそれは、ワイは『あっち側』に行けへんという憎しみが反転した感情でもあるんやね……」
五条悟。禪院甚爾。この2人は性格も終わっとるし女も殴る、人望も無いカスやのに、しかし何故か女にはモテる。
顔だけで人生得しとる、世間の常識を超えた規格外のモテ男……道理を踏み越えた人間なんや。いつかワイが法規制をかけるべき人間やね。こいつらみたいな顔面資本家のせいでブサイクが割りを食っとるんとちゃうんか?
「甚爾くんの『あらゆる因果に縛られない』って、クズでも何やかんやでモテるって意味やったんか?」
「違うわ」
しかし、五条くんの動きはちょっと意外やね。自分以外どうでも良いエゴイストやと思っとったんやけど、わざわざ横車押してまで一般人助けようとするなんて。ええとこあるやんけ!
でも顔がイイ男が性格まで良かったら終わりやから、やっぱりカスのままでいてくれや!
「ククッ、ここからが面白い所だがな……今回の横暴には、いい加減上層部も腹に据えかねたらしい。虎杖悠仁を排除するために、特級案件をぶつけて事故死させるそうだ」
「……? はあ? 頭お花畑なんか? そんなんして何の意味があんねん」
五条悟と敵対して何の意味があるん?
極端な話、あのクソ男 VS. ワイら全員でも負けるやん。アホなん? ダイの大冒険のバランを追放した王国はそのあと消滅したんやで。
アイツをまともに相手しても何の得もないねん。本人に特に大事なものが無いから交渉も出来ないし、殺しても特に利益が無い、呪術界にこびりつく頑固な汚れみたいな男なんやから……。何かこう、ふわっと利害が一致するときだけ利用する感じの、自然災害と同じ扱いするしかないんやね。
やからワイら禪院家だって、伏黒くんを通じて何とかゴマをすろうと両手をもみもみしとるっちゅうんに……。
「あー……いや、分かったわ。ほんの一部のアホが暴走しとるんやね? 何がおもろい話やねんって思ったけど、五条悟をナメとるアホが勝手に突っ走って死にそうやから皆でなかよく分けましょうねって話か」
「そういう事だ。虎杖悠仁の殺害が成功しようがしまいが、現代最強の術師に睨まれて無事な家などない。ならば如何に利用するかが頭の働かせどころよ」
「成功したら万々歳、失敗してもそいつの席は空くからまあ万歳って訳やね。そこまで来ると、そのアホもほんまに暴走なんか疑わしくなってくるなあ。なんか吹き込まれたんちゃう?」
「クハハ! さあ、分からんなあ? 五条の眼がどこまで届くか分からん、俺は努めて頭を突っ込まんようにしたからな。……だが一つ言えるのは、都合のいい情報に踊らされる阿呆など、どうせ遅かれ早かれ死ぬという事だ!」
「アホくさ……」
上層部の中でも頭が軽い奴に「宿儺は危険」やら「始末する算段が」やら適当言って、五条悟と敵対させる。ほんで向こうがキレたらそれを理由にそのアホを潰して、こっちは知らんぷりって訳か。
この分やと、既に暴走した家の財産をどう分配するかまで裏で話が付いてそうやな。どの家が主導したかは分からんけど、中々ええ二枚舌つかうやんけ。
それにしても、権謀術数が渦巻く呪術界はほんまにめんどい所やわ。千年以上続く名家ばかりやから、謀殺するノウハウだけが無駄に蓄積されとる。
「まあつまり、暫くの間虎杖悠仁には関わるなという事だ! あの小僧を中心に、木っ端どもが足りん頭を巡らせておる。俺達が動くべきは、その木っ端どもを美味しく平らげた後よ!」
「ふうん……なるほどね。了解やで」
確かあの子を助けたんは伏黒くんで、更には真希ちゃんがおる呪術高専に入学するんやっけ? ほんなら座ってたって情報は入ってくる。ほんやったら動くのは情報アドバンテージを擦りたおした後でも十分って訳やね。
「嫌やねえほんま、どこもかしこもドロドロしてて」
「ガハハ! それがこの世界だ、悩むより楽しんだ方が楽だぞ!」
「営業の先輩みたいなこと言うやん……」