日間ランキング一位になってました。感想で疾風迅雷やねってコメントを見て、「まさか先に言われるとはね」と感心しきりでした。
お気に入り登録に評価、本当にありがとうございます。感想も、全て楽しく拝読しております。
どうも、ワイやで。
イキって金髪に染めたわりにはいまいちイキれへんでおなじみ、禪院直哉くんや。
「独身って最高やない!?!?!?!?!?」
「は?」
「独身って最高やない!?!?!?!?!?!?!?!?」
「別に聞き取れなかったわけじゃねえのよ。なんだ、また季節のやつか?」
「季節は関係ないやろ!」
本日は処変わって、東京の呪術高専からお送りするやで。仕事ついでに真希ちゃんと雑談や。
ほんで、季節のやつってなんやねん。ワイの"気づき"を無下にすると後悔するで……?
「だってお前、モテたいって言うのと諦めたって言うのを永遠に繰り返してるじゃん」
「今はシーズンオフって事か?」
「思春期から数えて、直哉暦12年目ってところか。
どうせしばらく後には『なんでワイはモテへんのやろなぁあアン』って鳴いてるんだろ?」
「ワイの事を鈴虫と同列に扱わんといてくれや!」
ワイの言動で季節の変わり目に気付くのやめてくれへん? 涙で濡れる雨季と心が乾く乾季を繰り返し乗り越えながらここまで生きてきたんやで。
「いや、それやったら今回の直哉暦は長くなりそうや……」
「はよ終わってくれよ」
「むしろ、記念すべき新直哉暦の始まりなのかもしれん! ただの直哉暦やない……ド級の直哉暦、ド直哉暦や!」
「不当表示」
何と言われてもワイはめげへんで! 心の強さでもう一丁や!
「独身が最高っつっても、例えばじゃあどういう所だよ」
「よう聴いてくれたわ。まずな、結婚すると家庭に責任を持たなアカンやん? でも独身やと気楽やん!? 最高やんけ!」
「うわあ……」
「なんやねん、なんか言いたそうな顔して」
「いや、よくそんな手垢のついた説を擦れるなって思って」
「真理は常に普遍的なもんやで!」
そもそもワイみたいなもんは、世間様から一歩後ろにズレてるもんやんか。同級生が恋愛に勤しむ頃ワイはゲームを楽しみ、同級生が結婚する頃にワイは恋愛を意識し始め、同級生が出産して子育てする頃にやっと婚活を始める。こういうサイクルが完成しとるんやね。
ポジティブに考えると、同級生が死んだ頃にワイはやっと終活を始める事になる訳やね。
出来るだけ生にしがみつくで!
「お金も自分の為だけに使えるやろ? 好きな時にラーメン食べて好きな時にゲームできるやろ? 気楽で最高やんけ!」
「それが今更というか……結局それも今まで通りだけど、気楽で最高だったか?」
「今まで最高に……苦しかったで……」
「ほれ見ろ」
なかなかええとこ突いてくるやんけ……。
「でもその苦しさは、一生独身で生きる"覚悟"が決まってなかったからや……! これからの人生は"覚悟"と共に歩むで!」
「気楽さどこ行ったんだよ。それも結局いつものサイクルだろ?」
「今回は絶対にちゃうんや!!」
「声のデカさで押し通ろうとすんな。野党か?」
人間"覚悟"が大事なんや! 暗闇の荒野に進むべき道を切り拓くやで!
「まあちょっと聞いてくれや……これは単なる強がりだけじゃなくて、ワイなりの気づきもあるんやね」
「気づき?」
「まずな、モテない人間が恋人を作るためには多大な努力が必要やん? 皆が人生の片手間でやっとることをワイは全力出さなできひん訳やん?」
「全力出せば出来るのか?」
「理論上は可能やね……」
「実用化には程遠いってことか?」
やかましいわ!
実際、恐ろしい話やで。みんな勉強して友達と遊んで部活やって楽しい学生生活を送りながら、そのうえ更に彼女まで作っとるわけやろ? タイムスケジュールどないなっとるねん。影武者でも雇っとるんか? ワイは学生生活ですらいっぱいいっぱいやったで?
「とにかく、モテるための努力のレート換算が不利すぎるんやね。皆が100円で買っとる物を、ワイだけ1万ふっかけられとる気分になるんや! だったらその金で別のもん買うやん!?」
「……まあ、それも直哉の人生だよな。私は止めねえよ」
「やんわりとした否定やめてくれや! オブラートの隙間から
年取ってから『宇宙飛行士目指す』って言い始めた人への反応やんけ。諦めんかったら宇宙にも行けるかもしれへんやろ!
「浮いた分を使ってやね、まずは気ままな一人旅にでも行こうと思うで」
「お、まあそれは素直にいいんじゃねえか?」
「あんまり……興味もないけど……」
「強がって無理してない?」
別に……今も任務であちこち行っとるから行きたい場所なんてないけど……。
「やけど、折角なら独身ならではの事しときたいやん!? 奴らに一矢報いたいねん!」
「一番今回の本質が出た発言だな」
既婚者に「羨ましいよな独身は~」って言わせたいやん!? こっちの不利は分かってるからこそ、数少ない強みを押し付けていくで!
「……でもそれ、実際に言われたらすげえ悲しくならないか?」
「…………」
『羨ましいなー、独身は。それに比べてウチは嫁と子供がさー』
『家族サービスで休日は忙しいよ。この前も家族と遊園地行ってさー』
ワイは静かに泣いた。
「覚悟はどこ行ったんだよ」
「胸の内に秘めすぎてちょっと行方不明やね……」
おかしいやね……昨日深夜に『禪院直哉くん100のやりたい事リスト』を埋めとった時はあんなに楽しかったのに……。やっぱ深夜に考える事なんて碌なこと無いんやね。
「一生独身を覚悟したらなんやエネルギーが湧いてくる気がしてたんやけど、深夜でハイになってた錯覚やったんやね……」
「早く寝な?」
「めったに無い真希ちゃんの優しさが沁みるで……」
直哉暦に早くも改暦の兆しやね。
そのままワイのやりたい事リストについて色々雑談する。
バンジージャンプとか入れてたんやけど、たぶんワイってこれ命綱なしでやっても平気なんよね。呪術師は上の方に行くとゴリラしかおらんから困るやね。呪術って名前に偽りありとちゃう? もっとこう、遠距離から祟って呪い殺すみたいな奴がおってもいいと思うんやけどね。
話題が上野動物園の話から、呪術高専におるパンダに移ったところで、ふとワイは先週の交流戦の事を思い出した。
「あ、せやせや。交流戦おめでとう。勝ったんやって?」
「あ? ああ、まあな……」
「おめでとうな。真依ちゃんも喜んどったんちゃう?」
「まあな。直接話してないのか?」
「……真希ちゃんは、ほんまに優しい子やね……」
「は?」
「ワイが直接真依ちゃんと話せる訳ないのに、気を遣ってくれたんやね……ほんまええ子やで……」
「ヤバ~~~~~~」
真希ちゃんと真依ちゃんは双子の姉妹で、禪院家とは折り合いがつかへんかったから
ほんで真依ちゃんはこう、スクールカーストでイキイキしてそうなキツい女の子で……ワイみたいな闇色童貞は、話しかける前にキョドってまうんやね。
「なんや色々あったらしいから、二人とも怪我無くて良かったでほんま」
死んだはずの虎杖くんが実は生きとったり、特級呪霊が現れたりでワヤワヤしとったんやろ? 高専保管の特級呪物も盗まれたらしいし……最近はどうもキナ臭くて困るなあ。ここまで滅茶苦茶やっとる相手の裏が読めへんってのは、正直イカれとるで。
「どこもちょい浮ついてるけど、特にウチのパッパがウキウキしとって困るわ。前は様子見一択言っとったのに」
「なんだ、わざわざ高専まで来たのはそれが理由か?」
「まあそんなとこやねえ。呪術高専と協調姿勢を取ってなんやかんや言うとったで」
まあ、パッパは気質的に攻めるのが好きなタイプの人やからな。前に『様子見や』言うとったのもほんまは不本意やったんやろ。ガンガン動いてイニシアチブ取るのが性に合ってるんやね。
「ふーん……」
「ひょっとしたらワイと高専生が共同任務に出る時があるかもしれんで。そん時は顔つなぎよろしゅう頼むわ」
「はあ? そこまで行けるのかよ」
「パッパの口車次第やねえ……よっぽど上手く食い込めたらそういうのもアリって事や」
呪術界の
友好関係のアピールとして、
そんでその場合、たぶん任務に出る顔役となるのは次期当主が内定しとるワイや。ティーンエイジャーと任務とかヤバすぎるで。
「やから……ほんまに、ほんまに顔つなぎ頼むで……!」
「ウケる」
「ウケんといてくれや! 禪院家滅亡の危機やで!」
……いや、冗談やなしに。
パッパが勝負所と見たからにはそれなりの勝算があるんやろうけど……五条悟といい他の御三家の眼といい、結構な
御三家の中で、一人だけ突出しようとする禪院家を他の二つはどう思う? 職場である高専に手を出された五条悟はどう出てくる? ここをちゃんと押さえな、何やってもおじゃんになるで。
その辺りの懸念をちゃんとパッパには伝えたんやけど……結果この通りや。リターンはデカいのも確かやから、止められへんかった。
パッパはいったい、
……それは例えば、今回の呪術高専襲撃と関係あったりするんか?
「はあ……憂鬱やでほんま」
万が一があったら、そん時は呪術界から逃げ出して真希ちゃんのペットにでもしてもらおかな。
かわいいスコスコティッシュフォールドの直哉くんやで。顎と鼠径部を重点的に撫でてくれや!
「死ね」
「モノローグへのツッコミは無法すぎるから無しにしてくれへん? ワイってそんなに顔に出るタイプ?」
「被害者は三人。死因は全て、自宅マンションのエントランスで呪霊による刺殺。直前に『オートロックがおかしい』と苦情を入れてたことを確認済みっす」
「日付も場所もバラバラ……これ、本当に同じ呪霊の仕業ですか?」
「残穢による特定は不可能でしたが……共通点を探した所、三人とも同じ中学に二年間在籍していたっす」
「ふーん……ってことは、昔三人が同じ呪いを受けて、時が経ってそれが発動したって感じ?」
「おおー! 釘崎、あったまいい!」
「それが濃厚っす。で、今からその中学と三人の被害者の共通の知人に話を聞くんで、
バカでかいリムジンの中で、3人の高専生が仲良くおしゃべりしとる。
元気そうなのが虎杖くん、クールなのが伏黒くん、紅一点で気の強そうなのが釘崎ちゃんやね。車を運転しとるのは補助監督の新田ちゃんや。
元気なのはええことやわ。子供は未来の宝やからね。それを生み出せへん事がそろそろ濃厚になりつつあるワイとしては、宝をつくるための行為だけは何とか卒業したいと思っとるで。
……なんで、ワイはこんなところにおるんやろなあ?
「えっと……それで大丈夫そうっすか? いえ、大丈夫でしょうか!?」
新田ちゃんが、気配を消しとったワイにビクビクしながらお伺いを立ててくる。やめてや、ワイに話しかけんとってくれ。
「【特別一級術師】、禪院直哉
「スウーッ……ァア…ア、大丈夫やと思うで……思います……」
真希ちゃん!!!
真希ちゃん、真希ちゃん、真希ちゃん!!!!!!!!!!!!!!
顔つなぎの約束はどないなったんや!?!?!?!?!?!?
ワイを裏切ったんか!?!?!?!?
「(……この人誰?)」
「(禪院直哉特別一級術師……真希さんの従兄妹だ。俺たちの監督役)」
「(顔は悪くないけど、なんか暗い男ね)」
さ、寒い……。体に、力が入らへん……。血が、こんなに出とる……(出てない)。
ワ、ワイは死ぬんか? こんなところで!? まだ、やりたいこと、いっぱいあったのに……!
ざけんなや
味方がおらん
ドブカスが 直哉 辞世の句
真希ちゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
早く、早くワイを助けに来てくれ!!!!!!!! 手遅れになっても知らんで!!!!!!
次回、起首雷同+1。