直哉「疾風迅雷やね」   作:成間饅頭(旧なりまんじゅう)

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第六話

 

 どうも、ワイやで。

 最近性癖がギャルに寄って来たでおなじみ、禪院直哉くんや。

 

 前は清楚:ギャルの割合が7:3くらいやったんやけど、今は5:5……時々4:6くらいになっとるかもしれん。栄養(清楚系)も喰らう(黒ギャル)も喰らう……両方を共に喰らい、血肉に変える度量こそが男には必要なんやね。

 

 もちろん、何が栄養で何が毒かは人によると思うで!

 昔は酸素も猛毒やったって知っとった? 約三十億年前、バクテリアが吐き散らかした酸素という猛毒に適応した結果が今のワイらなんや。性癖の進化に通じるものがあると思わへん? 今の性癖の多種多様さと言ったら、ワイごときでは及びもつかん深淵(アビス)まで進んどるもんな……。

 ワイは箱化とケーキ化あたりで探求を断念したで。アビスの探窟家たちに敬礼や。

 

 

 

「そういやお前、この前野薔薇と一緒に任務行ったんだって?」

直哉ガールズ二号の事やね?」

「殺して欲しいなら素直にそう言いな?」

 

 九相図兄弟を捕獲(ゲット)した後始末やらなんやらで呪術高専に寄った後、ワイは待ち時間に真希ちゃんとお喋りしとった。

 

「随分助けられたみたいだな。『任務だったらまた行きたい』って言ってたぜ」

ワイは結婚したいと伝えろ

「大統領でも人質に取ったのかってくらい強気な交渉だな。任務以外だと嫌だって事だぞ」

 

 くぅん……。

 

「何てことない二級任務のはずやったんやけどね。宿儺の指を取り込んだ呪霊の相手させてもうて、あらほんま悪いことしたわ」

 

 あの三人はホンマに偉いで。特級相手に逃げれただけでも偉いのに、更に祓っとる訳やからね。

 しかも、あの一戦で随分成長したらしいな。伏黒くんは領域展開のキッカケ掴んで、他二人も黒閃キメたんやろ? 高専一年としては破格の実力やで。 ピンチの時に覚醒するって、なんや漫画の主人公みたいやね。 

 呪術師擦れもしてへんええ子たちやったし……いや、最初はホンマ殺されると思ったけど……。

 

「そうや、そういやあの時の借りがまだ清算されてへんで……! 一人で高校生(捕食者)三人に囲まれたワイが、どれだけ心細かったか……」

読み方(ルビ)おかしくなかった?」

「そんぐらい辛かったんやで!」

 

 最後ちょっとだけ打ち解けられたかな? と思ったけど、あの後家に帰ったら『なんであの時ワイはあんな事言ってしまったんやろなぁ』が大量に発生して地獄やったわ。 お布団の中でする一人感想戦には人を殺すだけのパワーがあるんやで。

 

「ワイが頼れるのは真希ちゃんだけなんやから……ほんま、次は殺生せんとってな……」

「ガキかよ。はいはい、よちよちよちよち」

ママ~~~~~ッ!!(ボヘミアン・ラプソディ)

 

 Just killed a man……

 

 いきなり赤ちゃん扱いか? 悪くないやんけ……。

 それにしても、ほんま初対面の人と任務に行くのはメンタルにキツイわ。ワイとしてはこう……腹話術で話す魔王軍幹部キャラみたく、肩に乗った真希ちゃんが全部お喋りしてくれれば最高やと思うんやけど。残念ながら技術が追い付いてへんわ。

 

「そういや、虎杖くんって弟なん?」

「は? たしか一人っ子だったと思うけど……なんで?」

「いや、東堂くんに死ぬほど絡まれてやね……」

「………あー……」

 

『禪院一級術師。超親友(ブラザー)の様子はどうだった?』

超親友(ブラザー)は元気にしていたか?』

『もし風邪でもひいていたら、俺特製のおかゆを差し入れてはもらえないだろうか』

超親友(ブラザー)の写真は無いのか?』

『……そこ! 今の、超親友(ブラザー)が呪霊の領域に入った所をもう一度詳しく語ってくれ』

『なぜ写真を撮らなかったんだ?』

超親友(ブラザー)の動画は撮ってないのか?』

『録音は?』

 

「……え、あれ、兄弟じゃないん?」

「……うん」

「兄弟でもギリギリのキモさやったと思うんやけど」

「知らん。アイツからなんかフェロモンでも出てるんだろ」

 

 「好きな女のタイプは?」と聞かれて、「とびきりスケベ!! やけどワイに一途!!!」と答えてから、東堂くんとはずっと疎遠やったんやけどね。任務の話をどっから聞きつけたんか知らんけど、怒涛の勢いで迫ってきてホンマに怖かったわ。

 

「……やっぱ、一級術師ってロクな奴がいねえな」

特別一級術師(ワイ)を除いて?」

「含めて」

 

 ……?

 数学の難しい問題の話しとる?

 

「自分で言うのもなんやけど、ワイ、結構良識派やで?」

「おう、今回の任務でどうだったかよく思い返してからもっかい言ってみろよ」

「………………」

 

 沈黙! それが正しい答えなんやね……。

 過去を振り返っても虚しいだけやと思わへん? 大切なものは常に未来にあるやで。

 

「……真希ちゃん、一級術師の推薦受けたんやって? おめでとう。はよ一級になってな……」

「あ? ……まあ、おう」

「ほんでワイと一緒に任務受けてくれな……ワイはもう、初対面の人と話したくないんや……」

「推薦蹴るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪術高専からの帰り道。

 今日は店員さん以外と話せて頑張ったやねと思うワイの前に、銀髪の目隠し男が立っとった。

 

「よっ」

「あ゛?」

 

 あー、最悪や……。そら呪術高専に来たらワンチャン遭遇するとは思っとったけど、コイツ任務中のはずやったやんけ。もう終わらせてきたん? そんなんアリ?

 

「ほなさいなら……」

「まーまーまー。折角だし、どっか食べにでも行こうよ。悠仁たちと任務行ったんでしょ?」

「いや……ちょっと、塾とかあるんで……」

「何の塾だよ」

 

 目隠しアホ男、五条悟。

 現代最強の術師で、ワイの事を音の出るオモチャか何かと思っとるカス野郎や。ワイはコイツを倫理観の天与呪縛やないかと疑っとる。

 

「ほら、あの……ワイ、マッマのご飯食べへんと力出えへんから……」

「君ホテル暮らしだろ。あ、綺麗なお姉さんがいる所は? 直哉好きでしょ、童貞なんだし」

「ワイは二度とお前とキャバクラには行かん……!!!」

 

 奢ったるという言葉を真に受けたワイが一体どんな目にあったか。ダイソンの吸引機かってくらい女の子がコイツに吸い込まれてて、もう一周回って清々しかったわ。逆にコイツは何処まで吸い込めるんや? と、新型掃除機の技術発表会でワクワクしとる気持ちになったやね。

 

「あの……ほら、この後予定あるし……」

「まあまあまあまあ」

「何かお腹の調子も良くなくてやね……」

「まあまあまあまあ」

「コイツ、全ての言葉をこれで乗り切るつもりか……!?」

 

 無敵の定型やん。近いはずなのに無限の距離を感じるんやけど。そういう術式やっけ?

 

「五条家の当主の要請をさー、禪院家の人間が断るってどうー? 仲悪くなっちゃうなー。仲悪くなっちゃうなぁー!!」

「暴君の見本のような男やね」

 

 権力を与えてはいけない男No.1ちゃう?

 

「……まあええわ。お店選びくらいは任せてええんやろね?」

「え、めんどい。そういうのって後輩の仕事じゃない?」

「カス……!」

 

 一歳年上なだけでこんな言える奴おる? 先輩旋風(せんぱいかぜ)の吹かし方が台風レベルなんよ。

 

 

 

 

 

「それで、用は何やねんな。何か話したい事でもあったんとちゃうんか?」

 

 店選んだら選んだで「え、安っぽい」だの「センス無さすぎない? だから童貞なんでしょ」だのグチグチ言うカスを引き連れて、ワイたちはお高い料亭に訪れた。このカスは何だかんだで金持っとるから舌が肥えとるんやね……。哀れな生命やで。

 

「え、別に」

「は?」

「早めに任務終わっちゃったから、僕も暇でさー。丁度いい所に直哉(玩具)がいたから」

「出来るだけ早く死んでな? 寿命で」

 

 これでもまだマシになった方やと思うと恐ろしいで。

 10代の頃のコイツとかもう……ほんま……。世の中の汚泥を全部煮詰めたような男やった。

 

「あ、じゃあ悠仁たちの話とか聞かせてよ。一緒に任務行ったんでしょ?」

「完全に今思いついたな……行ったけども」

 

 コイツが一年の担任でホンマに高専は回っとるんか?

 生徒の奮闘でご飯を美味しく頂こうとしとるやんけ。任務の話って大概血とか出るグロ話やけどええの? それでご飯進んだら、もうこれ以上下がらへんはずのお前の株が限界を突破すんねんけど。

 

「言うてもなあ、結局ワイは三人が戦っとるところとは遭遇してへんし……特級相当を祓ったんやから、相当な実力があるってのは分かるけども」

「えー、つまんな」

「わがままなヤツやなホンマに……」

 

 にしても、あの任務はほんま等級詐欺やったな。二級案件やと思ったら、特級相当は出て来るし呪胎九相図は来るし……。等級が当てにならんのはいつものことやけど、あのレベルはまあまあ稀ちゃう?

 

「もっとさぁ、『あの立ち振る舞い……出来る!!』みたいな事言ってよねー。直哉が剣術やってんのってその一発ギャグの為でしょ?」

「全方位に喧嘩売るのやめよな? あともしそうだとしたら、ワイ笑いに魂売りすぎやろ」

 

 戦闘中でもない、普段の呪力操作だけで実力なんか分かるかい。六眼持ちのお前だけや。

 

「一般人への態度とかは滅茶苦茶良かったで。丁寧に話聞いて、不安なっとる所には寄り添おうとして……ああいうのはホンマ、生まれ持った素質が出るからなあ」

「直哉が言うと説得力が違うね」

「喧嘩するか? ワイが負けるから止めとくけども」

 

 いや、でもこれは大したことやで。呪術師は特権意識がある分、そこら辺ないがしろにしがちやからな。ワイもまあ……それとは別の理由でそういうの苦手やし。

 

「良い呪術師になれるんちゃう? 知らんけど」

「ふーん」

「お前から振っといて興味ないんかい。ちゃんと教職の方々に申し訳ないって罪の意識持ちや?」

 

 お前ひとりで教師の平均点を大きく引き下げとるからな。

 いや、このカスが曲がりなりにも教師になっとる分確かに成長しとるんやけど……。

 

 その後、「湯引きがダメ」だの「素材が悪い」だの抜かすカスと一通りの料理を食べ終わり。

 

 本題の方を、ワイの方から切り出す事にした。

 

「そんで、呪胎九相図の方はどないなっとんねん。尋問は進んどるんか?」

「あー、その話? アハハ、だから今回は素直についてきたんだ」

「コイツほんま……」

 

 自分一人で何とかなるから、全般的に舐め腐っとるなコイツ……。

 

 宿儺の指を回収しに現れた、呪胎九相図の兄弟。

 あの二人の身柄は現在五条家……つまり、五条悟のもとに置かれとる。

 

 禪院家のワイが捕まえた大手柄や。それがぬけぬけと五条家に行っとるなんざ、本当は有り得へん。……逆に言うと、そこまで横車を押さなアカン理由があったって事やね。

 

「『僕たちじゃ守り切れないかもしれないから、最強の五条悟さんにお任せしますー♡』ってか? ウケるーwww、ザーコw」

「やかましわ。こっちは非戦闘員もようけ抱えとるんじゃ」

「はー? そんな事言ったらうちもですけどー?」

「お前相手に襲ってくる相手はおらん」 

 

 ……情けない話ではあるから、言うてて楽しい話では無いけどな。

 

 五条家の下へ兄弟が引き渡された理由はたった一つ。

 向こうが逆撃を仕掛けてきた時、禪院家(ウチ)やとワンチャン負けるかもしれへんからや。

 ……はい、盛りました。ウチは報告に有った火山頭が襲ってきた場合9割死にます。

 

「ワイもなー……もうちょい成長したらワンチャンあると思うんやけど……」

「雑魚乙w」

「くたばりや。お前唯一の長所(最強)を有効活用したっとるワイにむしろ感謝を述べえ」

 

 Q.敵に味方が捕らえられました。情報が抜かれそうです。どうしますか?

 A.今すぐブチ殺しに行きます。

 

 ほんで火山頭がドーン! 家グチャッ! 人質グチャッ! 口封じヨシ!

 

 これや。この最悪のシナリオがワンチャンあるって判断した時点で、ワイは五条悟にこの案件をぶん投げる事を決めた。こっから襲ってきた奴を何とか倒したとしても、こっちの人間が殺されてる時点でもう勝ちではない。負けや。

 ほんやったら、五条家に移しといた方が百倍マシやっちゅう訳やね。ココ相手に襲ってくるようやったら、それはもう自殺志願者と変わらん。自ら身投げしに行くようなもんや。

 

 九相図兄弟の感知能力がカスほど厄介やねんなー……。あれさえなかったら、まだ本家と遠く離れた秘匿庫とかに隠しても良かったんやけど。

 

「そんくらいウチは相手を警戒しとるって事や。お前も知っとるやろ? 上層部のキナ臭い動き」

 

 八十八橋の任務の前に、パッパと話した事を思い出す。

 

 ――――――――――――――――

 

 

「直哉。以前話した、虎杖悠仁を謀殺しようとした上層部の事は覚えているか?」

「あん? ああ、どこかしらのアホに吹き込まれて暴走したもっとアホの事か」

 

 上層部の権力闘争の話や。どっかの家が他の家焚きつけて、五条悟に睨ませて、そいつの死体をみんなで美味しく頂こうとしとった話。

 

()()()()()()()

「は?」

「俺はな、ふと疑問に思ったのよ。暴走した阿呆は、頭の弱さを他の家に付け込まれた弱者だった。しかし、ならば。わざわざ利益を分け合おうとした『()()()()()()()()()()()()()()()?」

「…………」

「結論から言うとな、そんな者は何処にもいなかった。誰も彼も、俺たちは名も知らん誰かの掌で踊っておったわけだ」

「誰やねん、それは……」

「こういう事がな、他に何度もあった。内部争いに見せかけて、上層部(我々)を骨抜きにしようとしておる者がいる。トドメは呪術高専の襲撃だ。よほど上の動きに詳しくなければあんなことは出来ん」

「……上層部の中に、呪詛師と通じとる内通者がおるって事か?」

()()()()。俺の想定はな、既に一部の家は傀儡になっとるのではないかという事だ」

「――――――――!」

 

 やっば。

 

 成程なあ。パッパが最近焦っとった理由も、やけに権力志向になっとった理由も分かったで。

 上層部の中でも分裂が始まっとったわけやね。利益で傾いたんか洗脳されとるんかは知らんけど、呪詛師側に付いとるアホがおると。

 

「……一応聞いとくけど、五条悟はどっち側なん? あのカス(ジョーカー)を引いた方が勝ちなんやけど」

「阿呆。あのゴミは一人で国家転覆出来る。今俺たちが殺されてないのが何よりの証明だ」

「そりゃそうやな」

 

 それにしても、またしんどい話が始まったで。

 呪術界って一年に一度くらいピンチに陥っとるよな。ニチアサの映画か?

 

「にしてもパッパ、ほんまによう気付いたなあ。結構な大金星ちゃう?」

「フン……。どこかのアホ息子のせいで、外に眼を配らねばならんかったからな。そのせいよ」

 

 お、ツンデレェ!

 

「やかましい」

「何も言ってへんけど」

「顔がうるさいと言っておる」

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 回想終了。

 この話のお陰で、手っ取り早く九相図兄弟を殺すんやなくて生け捕りにするっていう選択肢を取れた。ほんまに、殺さずに済んでホッとしたわ。

 

 ……こういうカスみたいな危機が、実際のところ何度もある。その度にワイらは必死こいて回避しとる訳やけど、そろそろええ加減にしてほしいと思うわ。金ローのラピュタくらい再放送来るやんけ。

 

「何回目やねんこういうピンチ……!! 地雷原でダンス踊っとるんとちゃうんやぞ!!」

「ウケるw」

「ウケんなや。……にしてもやね、今回はちょっと規模がデカすぎるで」

 

 今までは何処まで行っても大型呪霊とか、呪詛師のやけっぱちとか、そういうのがせいぜいやった。それに比べて今回はどうや。敵側に複数体の特級呪霊がおって、更に上層部を浸食しようとする悪意と知恵を持っとる。過去一しんどそうな相手やで。

 

「ほんで、どうやねんな調子は。相手の顔くらいは分かったか?」

「……………………………」

「おい?」

「…………いやぁ? ぜーんぜん。向こうと何らかの【縛り】でも結んでるんだろうね」

「ふーん……まあ、全部が全部そんな上手い事行かんか」

 

 お使い任されとる時点で、下っ端も下っ端いう可能性もあったしなあ。まあ、ここは気長にやっていくしかないで。

 

「……まあ、また何か分かったら教えるよ。それより、どう? 二軒目行っちゃわない?」

「えー……お前と呑むと碌なこと無いからなあ……」

「まあまあまあまあ」

「こいつ、既に定型を使いこなしとる……!」

 

 五条悟、逆に貴様は何を持ちえないのだ!!

 

 という事で、ワイとアホ目隠しは二軒目……ワイの通っとるスナックに雪崩れ込んでいった訳やね。死ぬほど童貞煽り擦られてめっちゃ仲悪なったわ。最悪の先輩やね。

 

 

 

 

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