私は正義実現委員会所属の生徒だ。名前はまぁ、無いようなもの。   作:みょん!

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最終話 私は正義実現委員会所属の生徒だ。名前は。

 それから、私とイチカ先輩は、免除期間を終えて、現場に復帰した。

 リハビリ期間は、イチカ先輩と一緒に訓練を重ねて。相談と少しのケンカを経て、現場での動き方を改めた。

 それまでの前と後ろの関係ではなく、隣り合わせでの戦い方へと。

 私としては、イチカ先輩に少しだけ成長した姿を見せたかったのだけれど、イチカ先輩に『ミコちゃんだけを戦わせるのは、私が許せないんすよ。戦うなら、一緒に、っすよ』と押し切られた形だ。

 そして正義実現委員会の出動は、今日も行われた。

 イチカ先輩と二人で遮蔽物に隠れて、ハンドサインで合図を出し合う。

 ――私が行きます。

 イチカ先輩は首を振る。自分と、私をそれぞれ指差して、親指を相手側に向ける。

 ――行くなら一緒っすよ。

 ――……わかりました。

 イチカ先輩は指を三本立てる。3カウントで突入、の合図だ。

 イチカ先輩の指が、一本ずつ指折られていく。――ゼロ

 

 私とイチカ先輩は、同じタイミングで飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりミコちゃんはやれる子っすね!」

 制圧した場所を他の正義実現委員会の部員たちに任せて、委員会室へ戻る途中。周りに人がいなくなったのを見計らって、イチカ先輩は私の頭をそう言って撫でてくれる。

「…………~~~~」

 強くなったところを認めてほしい、と思う一方で。

 やっぱりイチカ先輩に褒められると、やっぱり嬉しくなってしまう。

「さて、報告しとくっすね」

「あ、お願いします」

 ん、と頷いて、イチカ先輩は携帯端末を操作して、耳に当てる。

「あ、ハスミ先輩っすか。任務完了っす。今は三班の子たちが後処理中。仲正イチカ、ミコ姉妹、怪我無しっす。これから戻るっすけど、いいっすよね? ……はい、はい。了解っすよ」

「…………、」

「ん、どしたんすか? ミコちゃん?」

「……いえ、なん、でも、ないです」

 姉妹関係申請書を出しているのだから、私とイチカ先輩を合わせて言う場合にはその言い方になるのだけれど、それでも、姉妹、と報告されると、こう……むずむずする。というか、こそばゆいというか、恥ずかしくなる。

 聞いているのはハスミ先輩で、全てを分かっている人なのだから、いいのだけれど…………。

「ふふ。ミコちゃんは相変わらず初々しいっすね」

 イチカ先輩の手が私の頭に乗る。その手が前後に動く。

「…………えへへへ」

 ほほが緩んで仕方が無い。委員会室に戻るまで顔を戻しておけばいいから。

 今はもう少しだけ、イチカ先輩に甘えることにする。

 

「ところでミコちゃん、すーーーっごく今更な話なんすけど」

「なんですか? イチカ先輩」

 トリニティの校門を潜り、あとは正義実現委員会の委員会室がある別棟に向かうだけ、となったとき、イチカ先輩は突然その場に立ち止まる。

 そして、頬を掻きながら、言いにくそうにイチカ先輩が言う。

「ミコちゃんって、……名前、なんて言うんすか? ずっと他の子がミコちゃんって言ってたから私もそう呼んでたんすけど……こう、ちゃんと親御さんからミコちゃんを預かる身としては、名前で呼んであげなきゃいけないんじゃないかなーと思うわけなんすけど……」

 頬を掻きつつ、イチカ先輩はそんなことを言う。困ったように苦笑いするイチカ先輩も、素敵だなと思う。

「…………ふふっ」

「なんすか?」

「なんか、本当に今更ですね。いいんですけど。『毎日』私みたいな子を『とっかえひっかえ』してたイチカ先輩ですからね」

「心外っすねぇ。ミコちゃんと姉妹になってからはしてないっすよ」

 肩をすくめて言うイチカ先輩。それまではそうだったことを否定しないあたりは、イチカ先輩らしいなって思う。

「そもそも、じゃあ私以外にはなんて呼んでたんですか? ニックネーム? それとも本名ですか?」

「ま、その相手によりけり、っすかねぇ。お茶会の間中、ずっと『キミ』で通した時もあったっすけど」

「…………あ、あはは」

 その子が私じゃなくてよかった、と強く思う。

 イチカ先輩が私を呼んだとき、クラスメイトの子が私をそう呼んだのを聞いたから、と言っていた。……とすれば、イチカ先輩に呼ばれる名前も、もしかしたら最初から本名な世界線もあったのかもしれない、と思った。

「私としては、イチカ先輩に『ミコちゃん』って呼ばれるのが好きなんですけど」

「嬉しい事言ってくれるじゃないっすか。……じゃあ、知っておくだけってことで。さ、教えて。――あ、どんな名前でも、私は笑ったりしないっすから」

 そのフォローが、嬉しいような、そうでもないような。

「……っていうか、イチカ先輩、姉妹関係の書類書いたときに見てるじゃないですか。その通りですよ」

「いやぁ、ミコちゃんの口から聞きたくって。……あと、読み方間違ってたら、恥ずかしいじゃないっすか。だったら、ミコちゃんから直接言ってもらった方がいいなって」

「そういうことですね。ええ、いいですよ」

 イチカ先輩の顔をまっすぐに見て、大きく息を吸って。

 

 私は、正義実現委員会所属の生徒だ。名前は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の、名前は――――」




仲正イチカ✕正義実現委員会のモブちゃんの長編小説、最終話です。

「やっぱりミコちゃんはやれる子っすね!」
姉のイチカ。妹のミコ。
姉妹制度で結ばれた正義実現委員会の二人は、今日も仲良く、帰路につく。
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