私は正義実現委員会所属の生徒だ。名前はまぁ、無いようなもの。   作:みょん!

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第六話 いつでもいっしょ

 イチカ先輩と姉妹関係になって、二週間ほどが経った。

 この二週間というもの――というよりももっと前から、具体的に言えばイチカ先輩と出動の時に出会ってから――私の心臓は常に動きっぱなしだ。

 ――常に心臓は動いてるじゃん、って小言は、口が悪いクラスメイトだけで十分だ。

 

 例えば。

『やっほーミコちゃん。ご機嫌いかがっすか?』

「な――ななななんですかいいイチカ先輩!?」

 夜に電話がかかってきたと思ったら、表示された名前は『イチカ先輩』。

 ――ミコちゃん、せっかく姉妹になったんすから、連絡先の交換でもしないっすか?

 ――…………へ?

 そんなやり取りの後、あの日に委員会室でモモトークのIDを交換したのだけれど。結構な頻度で電話がかかってきたりする。

 机に座って物理の予習をしていたのだけれど、もちろん放置。

「ど――どうされました!?」

『や、ミコちゃんの声が聞きたくなって』

「え。……それ、だけですか?」

『それだけっすよ? ……そっか、ミコちゃんは、お姉ちゃんの声も聞きたくないってことっすか。そうっすか……』

 電話の向こうでイチカ先輩が悲しそうな顔をするのが見えた気がして。

 相手に私の様子が見れていないのは分かっているのに、全力で手を横に振ってしまう。

「い――――っ、いえいえいえそういうことじゃなく! …………、――――、わた、わた、しも、イチカ先輩と、電話でおはなしするのは、嫌じゃ、ない、ですし……」

 言っていて、なんだか恥ずかしくなってきて。お風呂から上がって時間が経っているのに、また顔が熱くなるのが分かる。

 憧れの人と電話で話しているというのが、嬉しいという気持ちよりも、恥ずかしいとか、緊張するとか、そっちの方がまだ先に来てしまって。イチカ先輩と一緒に居るときに話すときみたいに、声が途切れ途切れになってしまう。

 そんな私の様子を見ているかのように、イチカ先輩は電話口の向こうでふふっと笑うのが聞こえる。――きっとこれがイチカ先輩と直接話していたのなら、ここで頭を撫でられてるんだろうな、って思う。

「そういうとこが可愛いんすよねぇ。うんうん。あー、そうだそうだ、伝えたかったことがあったんすよ。明日の放課後にミコちゃんとお茶会したいなーって思ってるんで、ミコちゃんにはクラスで待っててほしいんすよね』

「…………あー……、ですと、クラスの人たちに見られちゃうとなんなので、ゆっくり、来ていただけると嬉しいです」

『私としては放課後一番にミコちゃんに会いに行きたいし、ミコちゃんとゆっくりお茶会したいんすけどねぇ』

 ――その言い方はずるいですよイチカ先輩。

「…………いつもどおりで、いいです」

「やたっ! それじゃ、明日よろしくっすよー!』

「…………切れた…………」

 イチカ先輩との電話は、いつもペースを握られっぱなしで。でもそんな電話は新鮮で。

「明日…………か」

 スマホを胸に抱いて、どうしようもなく胸がドキドキ言っているのが、なかなか止められなかったり。

 

 例えば。

「いつものテーブルが空いてないなんて災難っすねぇ」

「そ、うですね」

「でもまぁ、こんな場所でのお茶会も乙な物っすよね」

「…………そう、ですかね?」

 電話があった次の日、お茶会用の丸テーブルが全部埋まっていて、ベンチに座ってのお茶会となった。

 そう、ベンチで。イチカ先輩と隣り合ってのお茶会。

 私が恥ずかしくて少しだけ離れようとすると、イチカ先輩の方から肩をくっつけてきて、口から心臓が出そうになる。紅茶の味? 分かるわけがない。

「……………………、」

 余りに恥ずかしくて顔を下に向けてると、イチカ先輩がいつの間にか私の正面にいて。

「――――――」

 前髪をかき上げて、私と物理的に目を合せて。

「今日のミコちゃんの瞳も、キラキラしてるっすね」

「――――――ッ!」

 だとか、心臓が爆発するような事を言う。

 

 例えば。

「んー、相手の出方はいつも通りっちゃ、いつも通りな感じっすけど……。引きこもってる場所が場所っすよねぇ。建物が古い分、崩れる可能性も……」

 出動命令がかかれば、私たち正義実現委員会の部員は問答無用で集められる。それが例え、大好きな憧れの先輩とのお茶会の途中であったとしても――。

 けれど今までと違うのは、イチカ先輩が出動するときには私も一緒に居られる、ということ。これは姉妹の誓いを結んだ場合、それでメンバーを固定するから、だとか、どうとか。

 それはつまり、作戦立案のイチカ先輩を、出動の度に、常に、間近で、見られるということで――。

「――――ん。ミーコーちゃーん?」

「――――ひゃいっ!?」

 気がつけば、イチカ先輩に肩を叩かれていた。円になってブリーフィングをしている正義実現委員会の人たちの目が、一斉に私に注がれる。

「作戦の方向性、聞いてたっすか?」

「………………、すみ、ません」

「全員の確認のためにもう一度。陽動班、挟撃班に分かれて、私たち陽動班はここでこのまま待機、十分後にスタングレネードを投げ込んで突入。相手の意識がこっちにある間に、挟撃班は南区画の方から挟撃。いいっすね?」

「――はいっ!」

「いい返事っす。それじゃ――作戦開始っすよ」

 イチカ先輩が私の頭をぽん、と叩いて、そう宣言したり。

 

 授業中は学年が別なので違うけれど。放課後も。出動中も。時には家に居るときに電話で。

 憧れのイチカ先輩と、一緒に居られる日々が続いている。

 もちろん、良いことばかりじゃなくて、盛大にひとり反省会を開くときも――結構な頻度で――あるのだけれど、それもイチカ先輩が、時には笑って、時には親身になって、話を聞いてくれる。

 

 そんな、憧れでしかなかったイチカ先輩との姉妹関係の日々が、続いていった。




仲正イチカ✕正義実現委員会のモブちゃんの長編小説、第六話です。

今日も元気にイチカに振り回されつついちゃいちゃするミコなのでした。
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