メダロットSAGA   作:正気山脈

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「そこまで! 勝者は久稲さん!」

 山の砂利道にて、そんな声が響く。
 その場に集まった一人の教師と三人の生徒、その内の一人であるリオは、マスクの内でふぅと息をついて額の汗を拭った。
 自身のメダロットであるモーゼスからの拍手を受けながら。

「見事な指揮でした、お嬢様」
「だからお嬢様はやめてってば」
「失礼。それで、このロボトルではどのようなトッピングを……」

 教師からカードを受け取り、それを確認する。
 そこに書いてあったのは――『バナナチップス』であった。

「……」
「……えぇと、これはなんとも……微妙ですね……?」
「うるさい」


FIGHT.10[山と川とメダロット(後編)]

 時を少し遡り、山の中にて。

 ホムラとノアとタマキ、そしてユウトのロボトルが始まり、各自メダロットと共に走り出す。

 

「行け、キバマル!」

《イナサ、充填完了》

 

 左腕から、真っ直ぐに勢い良く鎖分銅が伸び出ていく。

 狙ったのはユウトのヘッドシザース。しかし、背を向けているにも関わらず、彼は樹に向かって跳躍して難を逃れた。

 

「く……!」

「珍しく直線的だな、でもそんなんじゃ当たんねぇよ。ハク、チャージ」

 

 ユウトがハクと呼んだヘッドシザースは「御意」と頷き、全身に青い光を溜め込む。

 それと同時に、今度はタマキとチャッタが動く。

 

「チャッタちゃん! 頭部パーツ(ミミバッテリー)!」

「はいニャ!」

 

 返事と共にチャッタの両眼が輝き、両腕に電光が走る。

 

「なんだありゃ!?」

「ボルテージアップ……新しく実装された機能だね」

 

 言いながら、ノアはメダロッチからチャッタのパーツの情報を確認した。

 ボルテージアップは、味方全体が持つサンダー症状を与えるパーツの性能を向上させる補助スキル。格闘パーツでも射撃パーツでも、例外なくそのプラス症状を受ける事が可能だ。

 ホムラもそのデータを調べ終え、フンと鼻を鳴らす。

 

「バレット、充填終わったな!?」

「ああ」

《キャプテンハット、充填完了》

 

 バレットの眼部センサーが光り、起動音がその場に響く。

 対峙する面々には何が起こったのかまだ分かっていないが、既存のKLN型パーツの傾向から、何らかの設置スキルを発動した事だけは予測がついた。

 一体何が、どこに設置されたのだろうか。考える暇も調べる暇もなく、ホムラたちは行動を始める。

 

「よし……本格的に動くぜ! ローグシューター、速射だ!」

「了解!」

 

 左腕をハクに向け、乱れ撃つバレット。

 素早い身のこなしによって被弾を避けるものの、無傷で切り抜ける事は叶わず、左腕に攻撃が命中した。

 

「減衰した上でこの威力、メガガトリングかギガガトリング……いや、マックスバルカンの方か!」

「……けど、それを待っていた」

 

 ホムラの前で静かにそう告げたのは、ノアだ。

 キバマルは充填された右腕の忍者刀(タチカゼ)を構えており、その視線が捉えている相手、そして最も近くにいる相手はハクであった。

 バレットの位置取りからハクが移動するルートを先読みし、回り込んでいたのである。

 

「イヤーッ!」

 

 スラッシュの特性が十分に活かせる距離。キバマルによる横薙ぎの一刀が、高速で振り抜かれた。

 だが。

 

「……なに!?」

 

 その刃が命中する前に、ハクはスライディングで刃のギリギリ真下を通り抜け、回避せしめる。

 回避地点を予測していたにも関わらず、あまりにも見事な身のこなしにはホムラも舌を巻く。

 しかし、そんな中。静かに爪を研いでいた二人が、動き出す。

 

「いっけーチャッタちゃん! がむしゃらライデンパンチ!」

「にゃあああ!」

 

 チャッタだ。キバマルの攻撃の回避地点に待機していた彼女が、ボルテージアップの恩恵も受けた右腕の強烈な雷撃(ハイパーサンダー)を叩き込まんとしている。

 

「学生諸君もなかなかやるじゃねーの! でもまだまだ甘い! ハク!」

「御意」

 

 避けながら充填していたハクはそのまま前に飛び出し、雷撃を避けてすれ違いざまにチャンバラソードで斬り結ぶ。

 それによってチャッタは左肩を切り落とされ、左腕の機能が停止してしまった。

 通常であればここまでのダメージはないが、ヘッドシザースの脚部特性であるチャージファイトが発動していたのが災いした。

 チャージゲージが50%を上回っている場合に限り、パーツの性能が底上げされるのだ。

 

「むむむ……!」

「おいおい、これじゃそこのホムラくんが勝っちまうんじゃないかぁ? ま、時間切れまで耐え切ればだけどな」

 

 挑発的に笑うが、ホムラは頭を振ってニヤリと笑う。

 

「耐え切るつもりもやられるつもりもないッスよ。俺の全力をぶつけて、勝つ!」

「言うねぇ! ハク、いっちょ気合いを入れて――」

 

 最後まで言い切る前に、ユウトはピクッと片眉を反応させ、僅かに首だけ後ろを振り向く。

 その視線の先にいるのはノアだ。俯いていた彼はゆっくりと顔を上げると、静かに口を開いた。

 

「キバマル」

 

 人間もメダロットも問わず、ユウトとハクを除く全員が、ノアの目を見た瞬間に背筋を凍らせる。

 

「……遊びは終わりにしよう」

 

 青く澄んでいたはずの両の瞳から感じる、見るもの全てを射殺さんばかりの破壊的な闘気。

 目の前にいる相手を、行く手を阻むモノを確実に狩り屠るという、明確な意思がそこにあった。

 それと同時にキバマルの動きも変わり、メダロットたちですら目で追えない程の速度で木々を飛び回り続けている。

 

「ウソだろ……まだ()()()ってのか、コイツら……!」

 

 圧倒的な闘気に息を呑みつつも、気圧されてしまわないように気張りながら、ホムラは戦況を見るべく走り出す。

 

「うっ!?」

 

 だが、そこに素早くノアが立ち塞がる。

 戦うメダロットたちをホムラの視界から隠すように立ち回り、回り込んだり離れようとしてもすぐに妨げる動きを取った。

 これでは細かい指示ができない。ホムラは舌打ちし、ノアを睨む。

 

「どけよ! 見えねぇだろ!」

「邪魔をしたら後悔すると言ったはずだ。殴る蹴るはルール違反だけど、ボクは触れてもいないぞ」

「ンなことどうでもいいからどけよ!」

「どかせてみれば良いだろう……キバマル、今だ」

 

 あろうことか、ノアはメダロットに背を向けたまま指示を出し、タチカゼの一撃がチャッタの脚部を捉え中破させる。

 戦況を見てもいないというのに的確なタイミングで攻撃させるその姿に、学生組の二人は驚きを通り越して恐怖さえ感じていた。

 そこで、ホムラはタマキに声をかける。

 

「國丸! 一旦協力しろ! このままじゃ俺もお前も早総に倒される、でも二人がかりならどうにかできるはずだ!」

「わ、わかったわよ! チャッタちゃん!」

 

 要請に応じたタマキは、まだボルテージアップの効力が残っている内に再度右腕での攻撃を命じる。

 しかしまたもや回避された挙げ句、ホールド攻撃で足を取られて動けなくなってしまう。

 さらに間の悪い事にハクのピコペコハンマーの一撃も重なり、チャッタの頭が破壊された。

 

「あっ……あぅ……」

「無駄だ」

 

 チャッタもこれで機能停止、タマキは脱落。利用するはずだった味方は消え、再び一人となってしまう。

 だが、それでもホムラは諦めない。ノアの妨害で見えないなりに、バレットへ指令を下す。

 

「カトラスバレルだ、とにかくヘッドシザースの方を狙え! ロボトルに勝つ事を優先して――」

「楽しいロボトルがしたいのなら、ボクに本気を出させるべきじゃなかった。これはお前のミスだ」

「……うるせぇ!!」

 

 全員ほぼ同時にメダロッチから充填完了、そして攻撃のアナウンスがされるが、バレットの方は命中しなかった。

 逆にキバマルのホールド攻撃はハクの脚部に命中し、中度ダメージを与えた事が知らされる。

 バレットはハクのピコペコハンマーを受け、全身に傷を負って転倒。そしてその直後に破損箇所が修復され、ユウトは納得した様子で頷く。

 

「最初に仕掛けたのはリペアプラントか。なるほどなぁ、攻撃されても自動で回復してくれるからマックスバルカンと相性の良い組み合わせってワケだ」

「チーム戦ではないから回復するのも自分だけ……そこを利用して、有利に立ち回るつもりだったのか」

 

 ノアにもあっさりと見破られてしまい、ホムラは口を閉ざして歯を噛みしめる。

 

「クソッタレ……なんで、なんで……」

 

 ――なんで、まだこんなに遠い。まだ届かない。

 天賦の才、強さの高み、頂点の光景。何度手を伸ばしてもそれを凌駕できない、そこに到達できない。

 何より、それでも諦め切れない。勝利の味を、快感を、興奮を。

 ホムラは歯を軋ませ、メダロッチを静かに構える。

 

「バレット」

「……キバマル」

「ハク!」

『メダフォース、発動!』

 

 それは、全く同時に起こった。

 バレットが赤く、キバマルとハクは青く全身を発光させ、三体がその爆発的なエネルギーを解放する。

 

「こいつで俺が勝つ……ブッ放せ!! 獣王武神撃(じゅうおうむじんげき)だ!!」

 

 その言葉と同時にバレットが両手を組んで前に掲げると、そこにメダフォースの赤いエネルギーが集約し、形状が獅子の頭部を模した大砲のようなものに変容した。

 ホムラたちが発動したメダフォース、獣王武神撃。それは、両腕の射撃パーツの威力を一つに束ね、破壊的な武装を生み出す能力。

 二つの射撃パーツを組み合わせるため、それらのパーツが元々持っていた特徴も継承し、効果時間が切れるまで何度でも撃つ事ができる。そして、メダフォースを発動した時点で()()()()()()()()()()()()

 一撃でも当たれば、必ず勝てる。そうホムラが思っていた、その時だった。

 

「……ん!? おい待てノア、()()は……」

 

 そう言ったユウトの視線の先には、青いオーラを纏ってゆらりと動くキバマル。ホムラの目には、その姿が一瞬()()()映った。

 アスカとの戦いの時に使ったメダフォースとは、明らかに()()

 傍から見ているタマキも怯え切った様子で尻餅をつき、今にも泣き出しそうなほど顔を強張らせている。

 だが、ホムラも止まるワケにはいかない。一体化したバレットの両腕が、キバマルへと向けられた。

 キバマルもまた、ノアの指示を受け、ハクとバレットの方に駆け出そうとしている。

 

「狩り尽くせ、シャ――」

 

 そしてメダフォースが発動しようとした、その直前。

 

「こンの……バカ弟子がァッ!!」

 

 ユウトの怒号が山中に響き渡り、誰よりも速くハクが行動に出た。

 青い光をチャンバラソードに集めて、全てのメダロットを横薙ぎに斬り裂く一撃。

 その名も。

 

横一閃(よこいっせん)!!」

 

 ハクが光の刃を振り被り、それを見たバレットは慌てつつも狙いを定めて発砲。

 獣の咆哮のような発射音が響いてチャンバラソードに命中するものの、獅子の砲弾は斬り裂かれて散った。

 そして解き放たれた光の刃は二機の方へと真っ直ぐに飛び、パーツを両断する。

 だが、直後に聞こえたメダルの落ちる音は()()()であった。

 

「……負け、た……」

 

 見れば、倒れているのはバレットのみ。キバマルは両腕を全損してしまったものの、生き残っている。

 そして時間切れのアナウンスがその場に鳴り、最終勝者が決定。

 ノアとキバマルの勝利となり、しかしユウトから贈られたのは祝福の言葉ではなく胸倉に掴みかかっての叱責であった。

 

「何考えてんだお前! ガキ同士のロボトルであのメダフォースは使うなって言っといただろうが!」

「……すいません」

「ったく、こんなんで熱くなるガラじゃねぇだろお前は……」

 

 言いながらユウトはノアに頭を下げさせ、自分自身も謝罪の言葉を述べる。

 

「悪かったな。今回はこのバカ弟子の勝ちだが、みんな良い戦い振りだったぜ。縁がありゃまた戦ろうな」

「は、はい!」

 

 タマキは頷くが、彼の言葉はホムラには届いていなかった。

 結局勝てなかった。切り札のメダフォースまで使ったというのに。

 おまけにノアはまだ全力ではなく、別の力も隠している。その事実が、ホムラの胸中に重くのしかかっているのだ。

 そして黙ったまま立ち去り、その後に続いてタマキもハクも宿泊所に戻っていく。

 ユウトはそんな背中を見送った後に、ニッと笑いハクへ声をかけた。

 

「楽しみがまた増えたな」

「ええ。特にあのホムラという少年とバレット……」

 

 直後に、ハクが右腕をわななかせる。

 獣王武神撃と横一閃のメダフォース対決で、彼らは確かに勝利を収めた。

 だが、それでもハクはあの一瞬の攻防で敗北すら覚悟していたのだ。

 

「全力で押し切らざるを得なかった。あと一手遅れていたなら、機能停止までは行かなくとも……ロボトルの勝敗は変わっていたかも知れません」

「まったく、これだから面白い! 若手との勝負ってヤツは!」

 

 カラカラと笑い、ユウトは森の中で空を仰ぐ。

 次なる対戦相手を待ち焦がれて。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 時は過ぎ、全員のロボトルの終了後。

 無事にカレーライスを作り終えた生徒たちだが、その中には浮かない表情をした面々がいる。

 

「姫ぇ、いい加減機嫌直して下さいよ……」

 

 タマキたちトライクロウズと、彼女らと組んだ残り二人の男女の生徒がそうだ。

 ケンスケもキイチも、彼らは全員ロボトル実習に勝利できなかった。つまり、トッピングがひとつもないのだ。

 

「トンカツ食べたかったのに……」

「超有名人とロボトルできただけ良かったじゃないですか」

「そうだけどぉ! う~! うううぅぅぅ~!」

 

 スプーンを握り締め、今にも暴れ出さんばかりに頬を膨らませるタマキ。

 そんな彼女の席に、紙皿に乗った五つに切り分けられているトンカツが置かれた。

 

「えっ?」

「あげる」

 

 驚いて振り返って見れば、そこにいるのはノアだ。

 あまりの出来事にタマキのチームは全員目を白黒させるが、ノアが何も言わず自分の席に戻っていくのを確認すると、五人でひとつずつ分け合う程に明るい空気に早変わりした。

 そしてノアが自分の班に戻ると、同じ班の女子生徒が不思議そうに問いかける。

 

「ノアくん、どうしてトンカツあげちゃったの?」

「……油っ濃いの、好きじゃない」

 

 ムスッと唇をへの字に曲げてノアは言い、その隣でマリンはクスクスと笑いながらカレーを頬張った。

 一方、アスカの班はメイの方と合流し、入手したトッピングをシェアして一緒に食べている。

 当然ながら、シェアするものにはチキンも含まれていた。

 

「良かったねユメちゃん!」

「う、うん! えへへ……美味しい。日晴くん、ありがとう」

「私からもー! ありがとぉー!」

 

 隣の席に座るメイに肩を抱かれて赤面しつつも、アスカはカレーを食べ進める。

 

『めちゃくちゃ騒がしいなぁ』

「あはは……でもみんな喜んでくれてよかった。ところで、久稲さんは? 狩兼もいないし」

 

 フリントに返答しながらアスカが視線を彷徨わせると、自分たちとは離れた端の方にあるテーブルで孤独に食べているホムラを発見した。

 一体どうしたのかと思い、席を立って声をかけに行こうとするが、それを遮るようにリオが先んじて彼の元に向かう。

 

「何? なんかあったの?」

「話しかけんな、どっかいけ」

 

 ホムラは不機嫌な様子でそう返し、スプーンに掬ったカレーを食べる。

 しかしリオは全く動じる事なく、対面の席についた。

 

「なんでそこに座ってんだ」

「別に。食べてるところを誰かに見られたくないだけ」

「俺には良いのかよ」

「アンタなんかに見られたってどうってことないし」

 

 言いながら、リオはマスクをぐいっとズラす。

 ツンと通った鼻筋に、薄桃色の小さく美しい唇。その口元には小さなホクロが二つあり、中学生らしからぬ色気を感じさせる。

 そしてスプーンに乗ったカレーを食べようと口を開くと、その内側から尖った歯がチラリと見えた。

 食べ進めようとしていたリオは、そんなホムラの視線に気付いて眉をしかめる。

 

「なによ?」

「いや。お前、案外キレイな顔してたんだなと」

「……はっ?」

 

 間の抜けた声と共に、リオの手からカランッとスプーンがカレー皿の上に落ちた。

 ホムラは彼女がいきなりフリーズして目を丸くするが、直後にその意識が別のところに向かう。

 

「やぁやぁ学生諸君! まじかる☆ジャノメだぞ~!」

 

 背後から、ジャノメの声と生徒たちの歓声が聞こえたからだ。

 

「え!? うおおおおおあああああ!! マジ!? マジで生ジャノメ!?」

「……」

 

 ホムラが興奮して席を立ち、ジャノメの方へ駆けていく。

 2秒も経たない内に、やや赤みがかっていたリオの顔がスッと元通りになり、唇をムスッと曲げて眉間にシワを寄せながらカレーを掻き込み始める。

 ホムラはそんなリオの変化に全く気付く事なく、デレデレと鼻の下を伸ばして戻って来た。

 

「すげぇ……俺、ジャノメと握手しちまったぁ……日晴も俺の事を教えてくれてたみたいだし……うへへ……おい、お前も行って来いよ! こんなチャンスこの先二度とねぇかも知れねぇぞ!」

「キモいウザいバカアホマヌケスケベヘンタイ近寄んな」

「なんでキレてんだ!? っつーか元々お前が勝手に来たんだろうが!?」

 

 いきなり矢継ぎ早に飛んで来た罵声で、いつものように口喧嘩に発展する。

 そして彼らのメダロッチからも、また普段通りの反応が聞こえて来た。

 

『迂闊だなホムラ』

『お嬢様、いつの間にかこんなにもホムラ様と仲良くなられて』

「はぁ!? 別に仲良くなってないから!! 誰がこんなヤツと!!」

「そりゃこっちのセリフだ!! クソ女が!!」

 

 ぎゃあぎゃあと喚く二人を、アスカもメイも微笑みながら見守る。

 そんな騒ぎを教師陣のキリエが止めるべきか悩んでいる中、その背後から一人の男が肩に手を置いた。

 百舌鳥 ユウトである。

 

「よっ!」

「あ……ユウくん。ふふ、ロボトルは楽しかった?」

「まぁな。()()()も来たがってたんだけどな、どうも予定が合わなかった」

「でも、あなたが来てくれて良かった。生徒たちもみんな喜んでいたわ」

「そいつは光栄だね、キリエセンセ?」

「あぁっ、なんか意地悪な言い方! そういうところ変わらないんだから!」

 

 イタズラっぽく笑うユウトと、幼子のように頬を膨らませるキリエ。

 他の教師たちや生徒らは、普段のキリエは落ち着いた物腰の理知的な女性という印象を持っているため、その姿に困惑せざるを得なかった。

 何よりも、二人からは幼馴染というだけでは説明がつかないような、入り込む余地のない甘酸っぱい空気と、深い繋がりのような雰囲気が漂っているのだ。

 

「さぁみんな! 明日は自由時間の後に帰宅だ、早く寝るんだぞ~!」

 

 チトセのそんな号令により、夕飯の場はこれでお開きとなり、生徒たちはそれぞれ入浴と就寝の準備などを始めるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 翌日、林間学校最終日の自由時間。

 事前に話していた通り、アスカたちは川の方に遊びに来ていた。

 無論水着を持ち込み、着替えた上で。

 

「んん~! 川だぁ~! 冷たぁ~い!」

「ひゃあ!? め、メイちゃん!?」

 

 早速とばかりにスクール水着姿のメイが川に飛び込み、水飛沫を飛ばす。近くにいたユメはそれを浴び、驚いて身を震わせる。

 アスカはそんな姿を見て穏やかに微笑みつつ、自分も川の中に浸かっていく。

 

「いきなり飛び込んだら危ないよ十々喜さん」

「えへへ~、こういうの見たらついついやっちゃうの」

「元気だなぁ」

 

 メイはその言葉を聞いて自慢気に豊かな胸を張り、深く頷いてニッと笑う。

 続いて、ホムラとリオ、そしてユメも川に入る。

 そしてホムラが、ふと思い出した様子でアスカに話しかけた。

 

「そういやお前、ここでメダル拾ったんだってな」

「うん。ただ、先生に聞いたけど誰もメダルを失くしてないらしくてさ。前に来た誰かの落とし物かも知れないから、帰ったらセレクトに届けるつもりなんだ」

「そっか……いっそ黙ってネコババしちまえばいいのに」

「いやいや、持ち主がいたらその人もメダルの子も可哀想でしょ……」

 

 呆れたアスカの言葉に、ホムラは「冗談だよ」と返し、大きく伸びをする。

 

「今度はみんなで海かプールに行きたいね」

「良いんじゃねぇか。もう夏も近いし、浜辺にゃセクシーなオトナのお姉さんも……へへへ……」

 

 だらしなく鼻の下を伸ばし、妄想に耽るホムラ。

 そしていつものように、リオがジトッと彼を睨んだ。

 

「ほんっとキモい」

「あぁ?」

「はぁ?」

 

 ふたりともしばらく睨み合った後、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 その後アスカたちはメダロットも交えてしばらく川遊びに興じ、時間までのんびりと過ごすのであった。




メダロット解説コーナー

[機体名]
シャルトルージュ

[型式番号]
MDT-CAT-NG01

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ミミバッテリー(補助/ボルテージアップ/なし/3回)
◆右腕:ライデンパンチ(格闘/ハイパーサンダー/がむしゃら)
◆左腕:ライデンクロー(格闘/サンダークロー/なし)
◆脚部:ライデンフット(二脚/ブロウビート)

●HV:0/0/0 合計:0/0

[備考]
NGシリーズ初のCAT型メダロット。モチーフは猫の品種であるシャルトリューと、フランス語で赤を意味する『ルージュ(Rouge)』から。
両腕がマイナス症状付与の格闘パーツで構成されている。右腕は出力が高く貫通効果を持ち、左腕なら乱撃特性によって敵のガードを削りつつ停止症状を与えられる。
さらに頭部パーツはサンダー症状を付与するパーツの威力と命中率、そして充填・冷却率を強化する機能を持ち、これを使ってスピーディに攻め立てるのが基本戦術である。

本作品のオリジナルメダロット。
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