メダロットSAGA   作:正気山脈

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「さぁいよいよ始まりました! 夏季全日本ロボトルリーグ、天讃杯! その東東京代表チームを決定する予選の最終試合になります!」

 中央に六角形のリングが建てられ、この日のために貸し出されたメダリオン学園の体育館にて。
 出場選手である社森 ジュウゾウと椿黒 ソラ、その他高等部のメダロッターたち三人が、対戦相手のチームと対峙している。
 観客席では、アスカとメイたち五人の面々に加え、エナとタマキたちトライクロウズの三人組が応援のために声を張り上げていた。

「社森先輩、椿黒先輩! がんばれー!」

 ジュウゾウはその声援に拳を掲げて応え、ソラもひらひらと手を振る。
 そして互いに位置について、メダロットが出揃い――。

「それでは! ロボトル、ファイトォッ!」

 オオルリの宣言と同時に、試合は始まった。

「行くッスよコジロウ、ソードレシーバー」

 真っ先に前へ飛び出したのは、ソラと彼女が操る最新機体の『MDT-SSK-00 ササキスワロー』だ。
 右腕に長い刀、左腕に鞘を持ち燕の尾のように二又に分かれた飛行脚部を持つ機体。
 頭部も燕を彷彿とさせる形状で、嘴に当たる位置は眼部を覆うバイザーとなっており、胴体は藍と赤の陣羽織だ。
 アサッシンメダルのコジロウが指示を受けると、間もなくして充填を終えた左腕が爆散する。
 代わりに、パーツを使ったばかりだと言うのにその冷却速度が急激に増していく。

「えっ、何今の!?」
「ブーストサクリファイスね」

 エナがアスカの隣で語り、ホムラが頷く。
 ブーストサクリファイスとは、発動したパーツを自壊させる代わりに強力なプラス症状付与の効果を発揮する新機能だ。
 効果は各パーツによって異なり、ソードレシーバーの場合はファイトクーラー。味方全体に格闘攻撃の精度と威力を上げる『ファイトブースト』と、冷却効率を上昇させる『クーラー』が与えられる。
 これにより、ジュウゾウのキメンガーや三体の僚機たちがパワーアップし、敵機へと果敢に攻め込んでいく。

「行っけェェェーッ!!」

 ジュウゾウとソラたちの攻勢により、敵の機体を二機まで陥落。
 リーダー機は残り三機の内一機。しかし、その直後に大きく状況が動いた。

「サラシナヒメ、オニノカタナ」
「ぐっ!?」

 相手が受けているプラス症状を強制解除し、その症状の数だけ威力を上げるエフェクトクリア攻撃。それを、よりによってリーダー機であるキメンガーが受けてしまったのだ。
 さらに。

「メダフォース発動ッ! ドコカノオージ、ソニックショット!」

 リーダー機と思われる相手がメダフォースを発動し、ジュウゾウとソラ以外が脱落してしまう。
 それでも二人は奮戦するが、徐々に旗色が悪くなっていき――。

「リーダー機破壊を確認、試合終了! チーム『メルヒェン』の勝利です!」

 ジュウゾウのチーム『王闘魂(オトコ)組』は敗退する。
 しかし両チームの奮闘に対する称賛は鳴り止まず、ジュウゾウと相手チームのリーダーの堅い握手によって、代表決定戦は幕を下ろすのであった。

「次は絶対ェ勝つぜ!! みんな、ありがとなァーッ!!」


激闘編
FIGHT.13[夏休み開始! 目指せ天領杯!]


「んんんんん~!! 夏休み!! だぁ~っ!!」

 

 ジュウゾウとソラのチームの予選敗退から月日は流れ、7月も後半に差し掛かった頃。

 終業式を経て寮への帰り道で、メイは大きく飛び上がった後にアスカの背中に思い切り抱きついた。

 夏の熱気でやや汗ばんだ二人の肌が密着し合い、アスカはかぁっと顔が赤くなるのを感じる。

 

「と、十々喜さん!? テンション上がるのは分かるけど、その……!!」

 

 くっつき過ぎではないだろうか。

 背中に伝わる柔らかい感触に、目をぐるぐるとさせるアスカ。

 しかし、抱きついてくる少女はそんな事情に構わず無邪気に笑い、目を輝かせた。

 

「だってだって、ずっと楽しみだったんだも~ん! みんなで夏祭りとか海とか行っていっぱい遊ぼうよ!」

 

 リンゴ飴や焼きそば、タコ焼きに綿飴に……などと、今から祭りの屋台を空想して、アスカの頭の上でヨダレを垂れるメイ。

 すると彼女を現実に引き戻すべく、リオが声を上げる。

 

「宿題もあるけどね」

「うっ」

「あとアンタ、期末テストかなりギリギリだったでしょ。ちゃんと勉強しなさい」

「ううう~……リオちゃんのいじわる! 自分は成績良かったからって~!」

「いやあたしは普通だから……成績優秀っていうのはね、ユメみたいな子の事を言うのよ」

 

 その言葉と共に、一行の視線がユメの方に集まっていく。

 

「増子さんすごいよね、総合成績で学年3位って」

「そ、そんなことないよぉ」

「いやいや、学園の人数から考えても上位10人の中に入るのは相当だよ? 今度の試験で勉強会とかして欲しいくらいだもん」

「……え、えへへへへ……」

 

 僅かに頬を染めて、俯いてニヤけてしまうユメ。ちなみに成績上位層の中にはノアも含まれており、マリンに至っては学年トップである。

 そして話がそれ以上広がる前に、ホムラが前に出て大声を発した。

 

「今は成績の話なんてやめようぜぇ!! 楽しいことだけ考えろこれから夏休みなんだからよぉ!!」

「アンタこの中でドベの成績だったからって……」

「うるせぇぇぇー!! こんなモンはなぁ!! 赤点じゃなきゃ良いんだよ!!」

 

 拳を握って熱弁を振るう――というよりも開き直るホムラ。

 リオはその言動に呆れて溜め息をつき、アスカも苦笑しつつ話を進めていく。

 

「まぁ、宿題とか勉強とかは計画的にやれば良いとして。実際のところどうなの? みんな、やりたい事とかあったりする?」

 

 それを聞くと、アスカの友人たちは各々話し始める。

 と言ってもほとんど先程メイが語ったものと同じような内容で、夏祭りや海だけでなく遊園地やら温泉にも行ってみたいなど、要望は様々だった。

 しかしそうなると、どうしてもついて回る問題がある。

 

「うーん、海とかお祭りはともかく、温泉は……中学生だけでそんなところ行って良いのかな……」

「その時は頼れそうな大人に声かければ良いんじゃないの。先生とか」

 

 リオの提案を聞いてなるほどと思い、アスカは頷く。

 とはいえ都合良く手の空いている大人がいるとは限らないので、やはりある程度事前に予定を組み立て先生方に声を掛ける必要があるだろう、ともアスカは考える。

 その旨を級友たちに話した後、今度はホムラが声を上げた。

 

「遊びも大事だけどよ、やっぱ俺らはアレだろ! ロボトル大会!」

 

 言われてアスカは首肯した。

 メダロッターたちには、シーズンごとの戦績によって変動するランクが存在する。各国で夏季・冬季のロボトルリーグが開催されるのを契機として一度リセットされ、一段下のランクからのリスタートとなる。

 世界各地で開催されている大会の中には、そのランキングを基準として参加条件を定めているものもあり、中にはメダフォースが使えることが前提となっている大会すらあるのだ。

 特に冬季全日本ロボトルリーグ・天領杯であれば、ランキングを上げ続けた上で、他の大会で上位に入ったり連勝記録を伸ばすなどして実績を積まなくてはならない。

 そしてトップランカーともなれば、予選そのものが免除された上でシード枠として参戦が可能となる。

 

「俺たちも、せめて出場できるくらいにはならないとね」

「おう! 絶対出ようぜ、天領杯!」

 

 ホムラは親指を立てて笑い、アスカも同じく微笑む。

 が、そこでリオが呆れたように口を挟んだ。

 

「いやいや……遊びの前にまずアンタは勉強しろっての」

「るせー」

 

 不満顔でプイッと顔を背けるホムラと、その態度にムッと眉を寄せるリオ。

 するとそんな険悪な空気を和ませようとするかのように、おずおずとユメが手を挙げた。

 

「そ、そんなに心配ならさ、リオちゃんが勉強見てあげたら良いんじゃないかな……なんて?」

「は!? 心配なんてしてないから!? だっ、大体、なんであたしがこいつのためにそんなことしなきゃいけないのよ!!」

 

 目を剥き声を張り上げ、リオはマスクの下の顔を真っ赤にして目を背ける。

 ホムラはそんな様子に気付かず顔を逸らしたまま、鼻を鳴らして彼女へ言い返す。

 

「ったりめーだぜ、こいつに教えて貰うくらいなら一人で真面目に勉強するわ。横から口うるさいだろうしよ」

「……アンタなんか次のテストで赤点取れば良いのよ」

「あぁ!?」

『今のは流石に酷いぞホムラ』

「俺が悪いってのかよ!?」

 

 メダロッチの中のバレットに向かって叫ぶホムラを見て、アスカやメイたちはクスクスと笑いつつ、足を進めていく。

 そうして寮の玄関前に辿り着くと、アスカは振り返って友人たちに手を振った。

 

「後で合流して、みんなで細かい予定を組み立てようよ」

「さんせー!」

 

 元気な声でメイも応じ、その場で一時解散。

 自室まで戻ると、メダロッチからフリントが声をかけて来る。

 

『楽しそうだなアスカ!』

「フリントもね」

 

 微笑みながら答えると、フリントからも照れたような笑い声が返って来た。

 アスカは着替えながら再集合の準備を整えつつ、メダロッチを操作してメダテックの公式サイトなどから情報を収集する。

 

「直近で良さそうな大会、あるかなぁ……」

 

 検索条件はメダロット二体または一体でエントリー可能な、自分のランクと一致する大会。そして、サイオウ市付近だ。

 該当する候補が画面に列挙されるが、結局どれを選べば良いのか分からないので、ひとまずホムラと相談して決める事にした。

 集合場所は食堂。そこへ赴く途中、アスカは見覚えのある二人の姿を発見する。

 

「早総くんと水来さん!」

「あら、日晴くん」

 

 マリンは微笑みながらノアの腕をグイグイと引っ張り、アスカの前に連れていく。

 

「これから食堂で夏休みにどうするか話し合うんだけどさ、二人は予定とかある? 良かったら……」

「ボクにはやらなきゃいけない事がある。キミたちみたいに、遊んでいる暇なんかない」

 

 最後まで言い切る前にノアは拒否を示し、そんな彼にマリンは頬を膨らませる。

 

「もう、ノアくんったら! そんな言い方をしたら『めっ!』です!」

「……事実だよ。訂正する気はない」

「もー」

 

 飽くまで冷たい態度を貫くノアに不満そうな声を上げて、マリンはアスカに頭を下げる。

 そしてアスカはついでとばかりに、マリンに大会のことについて尋ねた。

 

「大会に出るつもりなら『地方統一戦』には参加しない方が良い」

 

 横から口を出したのは、ノアの方だ。

 

「どうして?」

「キミじゃ優勝できないからだよ。ボクは出場するけど」

 

 地方統一戦とは、読んで字のごとく八つの地方ごとに行われるロボトル大会のことである。

 例えばアスカたちの住む関東地方なら、東京・千葉・神奈川・群馬・栃木・茨城・埼玉の七つの都道府県のメダロッターたちが、それぞれ予選で三十二名になるまでふるいに掛けられた後、一同に会して覇を競い合うのだ。

 ちなみに前年度では激戦区の中部地方にて、鷹嶺 リクドウが姫鶴 テルコと甲斐頭 ハルノブの双方を含めた強豪を制し、中部王者として君臨した。

 この他にも、数多くの凄まじきメダロッターとメダロットがこの戦いに参加する。当然、中にはメダフォースを扱う者たちも、それに頼らずとも勝利を収める者たちもいる。

 ノアも、そんな粒揃いのメダロッターの一人だ。

 

『ケッ! ナメんじゃねーぜ! オレたちだって強くなってんだ、メダルも成長した! 前みたいにお前と忍者野郎に簡単に負けるかよ!』

「ちょっと待ったフリント、違うでしょ」

『アスカ! けどよぉ!』

「負けない、じゃない。()()()()()()()()()()!」

 

 力強いアスカの言葉に、メダロッチからは愉快そうな笑い声が聞こえて来る。

 するとノアは鼻を鳴らし、アスカに背を向けた。

 

「好きにすれば」

 

 そんな言葉を残して去る彼をマリンが追い、アスカはその背を見送りつつ改めて食堂へ向かう。

 

「にしても地方統一戦か……他の県では一体どんな人が出場するんだろう」

『今から楽しみだな!』

 

 調べれ見れば、関東地方での開催は15日後とある。

 その日までに力を蓄えておくことを決意し、アスカとフリントは食堂に足を運ぶのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 翌朝。

 アスカたち五人は、荷物を持って駅前のロータリーで集まっていた。

 昨日話し合った結果、まずは海へ二泊三日で遊びに行こうという話になったのだ。

 場所は神奈川のオーシャンパーク『エノシガイオス』で、ここではロボトル大会も開かれているため、アスカたちとしても是非参加したいところであった。

 だが急な話だった事もあり、メダリオン学園の中にこの日都合のつく教師陣はいなかった。

 そこでアスカらが目をつけたのは――。

 

「ふぅ、まさか君らと海に行くことになるとはな」

「みんな揃ってるー?」

 

 メダロット界の権威たる逢留 ヒロシと、その孫娘でジャンクショップを営んでいる逢留 エナだ。

 アスカがエナに連絡を送ったところ、ヒロシの方も時間が空いているという事で同伴する運びとなったのである。

 八人乗りのミニバンに乗って一行の前に現れた二人が人数を数えていると、続いてもう一人の乗員がひょっこりと顔を出す。

 

「あれっ、水来さんも?」

「来ちゃいました、私もおじいちゃんたちと遊びたかったので。本当はノアくんも連れて来たかったんですけど……」

 

 マリンはそう言って照れ笑いし、アスカに向かって「よろしくお願いしますね」と頭を下げる。

 対し、ホムラは不服そうな表情で腕を組む。と言っても彼女自身に対してではなく、ノアへの不満だ。

 

「連れねェなアイツ。俺らはともかくお前は婚約者だろ? 取られちまっても文句言えねェぞ」

「あぁそれは大丈夫です。私、こう見えても彼にゾッコンですから」

「そりゃお熱い事で」

 

 肩を竦めて微笑むホムラ。言葉通りマリンには特に不満はないようで、平気な顔で自信満々に頷いている。

 そうして準備を終え、一同は車に乗って出発した。

 

「海に行ったら私もこの子たちもみんな水着になっちゃうね~、日晴くん嬉しい?」

「え!? え、えっとぉ……」

「アハハ! 真っ赤になっちゃって、か~わいい~♪」

「うぅ……」

 

 ミラー越しにからかって助手席でクスクスと笑うエナと、赤くなった顔で俯くアスカ。

 一方、ホムラは呼ばれてもいないのに鼻息荒く彼女に反応していた。

 

「俺は嬉しいッス!!」

「アンタは黙ってなさいスケベ野郎」

「あぁ?」

「はぁ?」

 

 ホムラとリオが車内でも睨み合い、ユメが慌てふためくがメイとマリンは呑気に笑う。

 そんな会話を続けてしばらく車は進み、目的地であるエノシガイオスへと到着した。

 一同は早速ホテルに足を運んで、男性陣と女性陣で部屋を分けて荷物を置き、照りつける太陽と砂浜に赴く。

 早々にトランクス型の水着に着替えたホムラは、砂の上で飛び上がって大はしゃぎする。

 

「ヒャッハー!! 海だァー!!」

「いくらテンション上がってもそんな掛け声にはならないよホムラ!? どんだけ楽しみだったんだよ!?」

「当たり前だろお前!! こちとら水着のセクシーお姉さんを拝むために命懸けてんだぜ!!」

「そんなに!?」

 

 鼻の下を伸ばして煩悩に塗れた笑顔を見せるホムラに対し、アスカは困惑気味に言う。

 

「ハハハ、若人は元気で良いな」

 

 感心した様子で自らの顎をさすり、頷くアロハシャツ姿のヒロシ。意外にも、白衣の下にはそこそこに鍛えられた筋肉があった。

 逸るホムラを抑えながら待つ事数分、女性陣がやって来た。

 

「おまたせー!」

「うーわ、結構人いる」

「ちょ、ちょっと恥ずかしいかも……」

 

 先に出て来たのは、メイとリオとユメの三人組。

 メイはオレンジ色の三角ビキニで、オーソドックスながら彼女の体型に見合っており、本人の無邪気さとは裏腹にセクシーな空気を醸し出している。

 リオの方は真ん中に大きなリボンが付いた花柄の白いクロスデザインのビキニで、ボトムの左右もリボン状にして括ってある。ただしマスクは付けっぱなしで、恥じらいのようなものが見て取れた。

 ユメの水着はフリルのあしらわれた水色のビスチェビキニであり、彼女自身の雰囲気と相まって可愛らしさを感じさせるようである。

 

「広いですね~」

「あ、みんな揃ってるわね」

 

 続いて出て来たのは、マリンとエナだった。

 マリンは首元の部分がシースルーとなっているブルーのハイネック水着であり、腰に同じ色のパレオを巻いて上品に微笑んでいる。

 エナは右肩が露出した赤いワンショルダーのワンピースタイプの水着で、ウェストの左側が大きく斜めにくり抜かれた、アシンメトリーで際どいデザインだ。

 そのエナの姿を見るなり、真っ先にホムラが拳を握り込んで天を仰ぐ。

 

「水着美女、最ッ高だぜ!!」

「キモ……」

「あぁ?」

「はぁ?」

 

 またもや睨み合い、視線と視線で火花を散らすホムラとリオ。

 そんな二人の事をさて置いて、メイはズイッとアスカに迫っていく。

 同い年でありながら発育の良い彼女の肢体が目の前に飛び込み、アスカの視線はチラチラと泳いでしまう。

 

「どーかな、日晴くん! 似合うかな! 期末テストの前に、みんなで水着選んで決めたんだ~!」

「う、うん……すごく良い、と思う」

「えへへ! 良かった!」

 

 屈託のない純粋な少女の笑みと艶めかしいボディとのギャップに、アスカは悶え混乱する。

 その彼の心情を察して、ヒロシは両手を叩き注目を集めた。

 

「君たち、あまりはしゃぎすぎてはぐれんようにな」

「はっ、はい!」

 

 慌てながらもアスカは気を取り直し、しかし直後にまた想定外の事態が起きる。

 

「おっしゃあ俺が一番乗りだぜー! ナンパだナンパ、セクシー美女に飛び込めぇー!」

「早速走って行っちゃったよホムラ!? 大会のエントリーは!?」

 

 急いで追いかけるも、すぐに姿は見えなくなり。

 仕方なく戻ろうとするが、ヒロシたちも既にその場からいなくなっていた。

 どうやら気付かずにエントリーに向かったようだ。取り残されたアスカは周囲を見回し、思考する。

 

「よし、とりあえずメダロッチで連絡を――」

 

 そう思って操作しようとした、その時。

 

「わっ!?」

「オゥ!?」

 

 急き足で歩きながらメダロッチを操作したために、目の前から来た何者かとぶつかってしまう。

 柔らかな感触が顔を覆い、アスカは驚きながら顔を見上げる。

 

「す、すいません! 余所見しちゃって……!?」

 

 そこに立っていたのは、スラリとした身長の高い白いマイクロビキニ姿の女性だった。

 ブロンドヘアーに薄く日焼けした肌、目は碧く猫を彷彿とさせるアーモンド型で、柔らかな唇はアスカを見下ろして蠱惑的に微笑んでいる。

 そしてアスカは、自分がその麗しい水着美女の豊満な胸の間に顔を挟まれている事に気付き、鼻腔をくすぐる女の香りに眩みそうになりながらも大慌てで飛び退いた。

 

「ごごごごごめんなさいぃ!?」

「アラ、キュートな子ネ? ひょっとしてナンパかしラ?」

「え!? い、いえあの……」

「ウフフッ、そんなに赤くなっちゃっテ。どうかナ、このままワタシと一緒に楽しいコト……シにいかなイ?」

 

 金髪の女はそう言ってゆっくりと近づき、腰に手を回しながら舌舐めずりをする。

 アスカはその姿にゾクリと背筋を震わせつつ、身動きできずにただ自分の顔に熱く血が集まっていくのを感じていた。

 

「日晴くん!!」

 

 そんな時、傍で声がかかって彼女の手から解放される。

 見れば、いつの間にかメイが戻っており、ヒロシたちも慌てて帰って来ていた。

 アスカを女性からかばうようにギュッと抱き寄せ、威嚇するように目を吊り上げている。

 

「日晴くんに変なことしないで下さい!」

「アラ? ひょっとしてガールフレンド? それともカノジョかナ?」

「へあっ!? そ、そそそそそういうワケじゃ……っていうか! あ、あなたは誰なんですか!?」

 

 狼狽しながらも人差し指を突きつけ、メイが問う。

 すると、女は流れるような金髪を掻き上げ、妖艶に笑む。

 

「ワタシはヴァネッサ・シーガル。パパがアメリカ人で、ママは日本人なノ。アメリカのハイスクールに通ってるんだケド、今は交換留学中なのよネ」

「え……高校生の方だったんですか!?」

「ええ、二年生ヨ」

 

 アスカは改めてヴァネッサの姿を眺めて、パチパチと目を瞬かせる。

 高校生としてはやや大人びた顔立ちと、男を惑わせ骨抜きにさせるような色香を漂わせる肢体。

 ヴァネッサはその視線に気付くと、再び挑発的に唇を釣り上げた。

 

「今どこを見てたのカナ~?」

「あ、いえっ、その……」

 

 ニマニマと笑いながらアスカの顔を覗き込もうとする、ところでヴァネッサを再びメイが引き剥がす。

 

「あのっ!! 今から私たちロボトル大会のエントリーに行くので!!」

「ヘェ、奇遇ネ。実はワタシもエントリーしてるのヨ。その時はヨロシク♡」

「むむむむむ……もう行こっ、日晴くん!!」

 

 頬を膨らませて、アスカの腕に固く抱きつきながら彼女から背を向けるメイ。

 ヒロシはアスカたちの後ろを歩き、顎をさすって考え込む。

 

「……彼女、確かヴァネッサ・シーガルと名乗っていたな」

「何か気になるんですか、博士?」

「ウム。実は……」

 

 返答しようとしたところで、一同はロボトル大会の会場に到着。

 

「着いたよ! ほら、締め切られる前に行こ行こ!」

「あっ、うん!」

 

 メイはそのままアスカの背を押して受付に向かい、ヒロシも気を取り直してそれに追従する。

 すると、彼らの前にホムラが現れた。

 

「おうお前ら、遅かったな」

「なんでホムラが先回りしてるの!? ナンパしに行ったんじゃないの!?」

「いやコイツがいきなり連絡して来たからよぉ」

 

 言いながら彼が親指で差した先にいるのは、意外なことにリオだった。

 尤も、本人はツンとそっぽを向いて素知らぬ顔をしているが。

 

「エントリーの受付とナンパで天秤にかけたら流石にこっちだよなって」

「そもそも天秤にかける必要ないでしょスケベ」

「それに、試合が終わってからナンパすりゃ良いし?」

「アンタまだ諦めてないの……」

 

 呆れた様子で頭を押さえ、リオは溜め息を吐く。

 その後、時間が過ぎない内にアスカもエントリーを済ませ、再び八人が集合した。

 

「よし、これで参加できるね」

「か、開催までまだ一時間くらいあるけど、どうしよう?」

 

 ユメに問われると、ホムラはメダロッチを掲げ意気揚々と返答する。

 

「なモン決まってんだろ。試合開始までパーツの見直しと調整だ!」

「そこはナンパじゃないんだね、良かった……」

 

 

 

 そして、一時間後。

 海上に浮かぶ滑り台やらジャングルジムやらトランポリンなどのバルーンアスレチックを前に、大勢の参加者と観客が砂浜に集っていた。

 今回参戦したメダロッターは三十二名。その面々の中には、アスカとホムラたち以外にも、先程邂逅したヴァネッサの姿がある。

 

「さぁやってまいりましたエノシガイオス名物『オーシャンパーク・ロボトル大会』! 実況兼レフェリーは私、ヨコハマ担当公認レフェリーのMr.(ミスター)ウミウが務めさせて頂きます!」

 

 真っ黒に日焼けした青い海パン一丁の男が、マイクを片手に暑苦しく叫ぶ。

 その姿を見て、ホムラは眉根を寄せてやる気なさそうに溜め息を吐く。

 

「ほ、ホムラ? 明らかにテンション下がってない?」

「だってよ、いつものオオルリさんじゃなくて男のレフェリーだぜ? これじゃ気分もアガんねェだろ……」

 

 言って、ホムラは再び息を垂れた。

 しかしそんな彼のことなど知らぬとばかりに、ウミウは説明を進めていく。

 

「ルールを確認します! 使用可能なメダロットは各試合一体のみ、フィールドはアスレチック周辺のみで、潜水メダロットや飛行メダロットは海の中でも空の上でも行動可能ですがアスレチックから完全に離れた場合は場外負けとなります!」

 

 見ればバルーンアスレチックの周囲にはセンサー付きのブイがいくらか漂っており、場外に出たメダロットだけでなく、外部からの侵入者をも探知して反則できないよう抜かりなく監視されているのが分かった。

 ちなみに、この海上アスレチックにはメダロットの攻撃やメダフォースなどの要因で簡単に損傷して穴が開いたりしないよう、特殊な素材が使われている。

 

「では、初戦の説明です! 内容は簡単、八機のメダロットで準決勝の一枠を賭け争うサバイバルロボトル! 自分以外のメダロットを機能停止にするか、時間切れの際に最も損傷の少なかった一機だけが次の試合に進めます!」

 

 これを合計四回行った後、準決勝・決勝と繋がる。

 中々過酷な戦いになる事が予測でき、初戦・第一試合のメンバーの一人であるアスカは緊張した面持ちでアスレチックのスタート位置である六角形の浮島に足を運ぶ。

 そして、全員が指定の地点に揃ったところで、ウミウは大きく右腕を天に掲げた。

 

「それでは、ロボトル――ファイトォーッ!」

 

 振り下ろされると同時にゴングが鳴り、アスカとフリントは浮島を出てアスレチック上を駆け抜ける。

 その視線の先にいるのは、真っ赤なタコ型メダロットの『MDT-CLA-01 カネハチまーく2』。彼とサーファーらしいメダロッターの男は、多脚を活かせるであろうジャングルジムを目指しているようだった。

 得意地形ではない平らな場所を移動している、今こそが最大のチャンス。アスカとフリントは、一気に射撃パーツの射程距離まで詰めていく。

 

「フリント、先手必勝!」

「おうよ!」

 

 充填が終わり、右腕のバスターマグナムが火を吹く。

 放たれた弾丸は一直線にカネハチの側頭部を直撃するが、メダロッターはそれを見てニヤリと笑い、カネハチはその勢いのまま自ら水面に飛び込んで行った。

 

「海中に!?」

「チッ! そういやあのタコの脚部、水ン中でも使えるヤツじゃねーか!」

 

 脚部特性のひとつ、マリナー。

 この機能を搭載している脚部は、本来なら得意ではないフィールドであろうと自由に動き回れるようになる。

 カネハチまーく2はそれを活かして水の中に潜り、そしてフリントの死角である反対側から飛び出して、左腕からワイヤーを伸ばして巻き付け先端のフックでアスレチックに固定した。

 格闘パーツのホールド、それもがむしゃらによる全身への攻撃だ。両腕を絡め取られ動けなくなった途端、それまで互いのメダロットと交戦していたはずの参加者二人がフリントに牙を剥く。

 

「見ろ、良いカモがいるぜ!」

「一時休戦だ、まずは弱ってるヤツから落とす!」

 

 集中攻撃をかけようとしている機体は、それぞれ『MDT-KZA-01 カイゾクロベー』と『MDT-RAY-04 アラゴスター』だ。それぞれ、充填しながら左右から接近して来る。

 迫る二機のモーションと冷却中のカネハチの状況を鑑みて、アスカは即座に指令を飛ばした。

 

「フリント! 左だ、左に飛べ!」

「おう!」

 

 アスカの指示を信じ、フリントは剣を振り上げるカイゾクロベーの方に跳躍する。

 そして、斬撃が直撃し――ワイヤーが、切断された。

 

「はあっ!?」

左腕(ツイスト)が切れ……!?」

 

 瞬間、フリントはカブトムシさながらに一気に突撃してカイゾクロベーをアラゴスターごと海へ押し出し、頭部の先をカネハチの方に向ける。

 

《充填完了》

BANG(バン)!」

 

 飛び出したミサイルは、カネハチに見事着弾。爆発と共に、メダルが外へ吐き出された。

 

《頭部、機能停止》

「し、しまった……!?」

 

 さらに溺れて水面で藻掻くカイゾクロベーとアラゴスターも、暴れ回って互いに互いを攻撃した結果、共倒れとなって機能停止する。

 これで残る敵は四機。そう思った直後、二人の近くで破壊音が二度聞こえ、次いでハッチが開きメダルの落ちる音も二度響く。

 そうしてアスレチックを登って現れたのは、アスカにとって意外な人物だった。

 

「多少やるようになったみたいね、日晴」

「久稲さん!?」

「でも、今回はこっちが勝たせて貰うから」

 

 彼女の傍らからフリントの前に飛び出して来たのは、左腕を『MDT-HPP-00 ヒポポジャマース』のカバトレンジャに変更したモーゼスだ。

 リオからの指示を受けて飛び出していくと、ミノスハンマーを振り下ろしてフリントを叩く。

 フリントはハンマーを蹴り上げダメージを最小限にして凌ぎ、自身は左腕のラピッドバルカンで乱れ撃つ。

 

「ヘッ! いつになくやる気じゃねェか、アンタのとこのお嬢様!」

「水着もじっくり時間をかけて選ばれておられたので。余程、ホム……皆様とのお出かけが楽しみだったのでしょう」

 

 自分の相棒の言い掛けた言葉でカッと耳まで赤くなり、リオはメダロッチ越しに怒鳴りつける。

 

「モーゼス!! 余計なこと喋るな!!」

「失敬。そういう事なので、今回は私も本気(ガチ)で参りますよ!」

 

 ほぼ同時に冷却からの充填を終えて、モーゼスは左腕のブレイクハンマーで、フリントは右腕のバスターマグナムでそれぞれ迎え撃つ。

 結果、フリントは左腕の機能が停止し、モーゼスの方は右腕を失った。

 ほとんど五分と五分の激戦に、アスカは額の汗を拭う。

 

「やっぱり手強いね、あの二人……!」

「あぁ。こっちも負けてらんねェなァ!」

 

 冷却が終わるのを待つ間、如何にして相手の攻撃から逃れるべきか。

 数瞬の思考の後、先に動き出したのはリオの方であった。

 

「モーゼス、走って」

「御意に!」

 

 牛の戦士は踵を返し、リオは海中に潜って素速くフリントらの視界の外へ逃れていく。

 アスカらはそれを追いかけた末に、滑り台の前まで追やられたモーゼスと、その隣に立つ海水でズブ濡れのリオを発見する。

 

「どーする!? 撃つか!?」

「いや。彼女の狙いは恐らく……」

 

 言い終える前に、アスカは背後から水の跳ねる音を聞く。

 振り返ってみれば、そこにはフリントに対し右腕(ブロフェンディ)でのサクリファイス射撃攻撃を行おうとしているアビスグレーターの姿があった。

 

「背中がガラ空きだぜ! 貰ったァ!」

 

 そして掌にある吸盤のように見える部位から爆撃が放たれようとした、その瞬間。

 

「ギャアアアッ!?」

 

 アビスグレーターの右腕が砕けると同時に全身に火花が散り、さらにフリントには攻撃を避けられ、飛びかかった勢いでモーゼスの左腕に殴られて滑り台から転がり落ちていった。

 その際、滑り台の終点に隠すように仕掛けてあった光の球体にぶつかり、それを散らせて機能停止する。

 

「やっぱり、射撃トラップだったんだ!」

 

 追い詰められたように見せかけて、死角となる位置に射撃トラップを仕掛け、攻撃を誘って一気に勝負を決める。

 それがリオの狙いなのだと見抜いていたからこそ、アスカは下手に攻撃しなかったのだ。

 舌打ちと共にリオは再びモーゼスを連れて逃げ出し、アスレチックの影に潜む。

 

「さっきのバカのせいでトラップが壊されたわね……」

「如何します? ご要望とあらば再設置致しますが」

「そう何度も通じるとは思えない。次はトラップを使わせてくれないでしょうね。けど、トラップがあるかも……と思わせられる今の状況は使える」

 

 言いながら二人はポールが並ぶ道にて、フリントたちを待ち構える。

 自分たちを追って来た場合、アスカたちはこの特殊素材のバルーンポールによって射線を遮られてしまうため、簡単に攻撃を通せなくなる。

 逆に回り込んで来るようならその分時間を喰う事になり、不用意に近づけば仕掛けられたトラップの範囲内に入ってダメージを受けるかも知れないという状況で、心理的に追い詰められる事になるだろう。

 いずれにしても、リオはフリントを見つけた瞬間にモーゼスへ攻撃を命じれば良い。ただそうするだけで、アスカは一手遅れるはず。

 そう思って来た道や反対方向に目を配っていた、その時だった。

 

「取った!」

 

 フリントのそんな声が、()()から聞こえて来る。

 驚いて見上げれば、そこには飛行パーツを使っていないにも関わらず高く空に飛び上がっているKBTメダロットの姿があった。

 なぜ。一体、どうやって。

 思考によって一手遅れ、そしてフリントの来た方向を見てすぐに悟った。

 

「トランポリン……を!?」

 

 フィールドに設置された水上トランポリン。それを使ってジャンプし、ショートカットすると同時に周囲にトラップがない事も一目で把握したのだ。

 さらに海面からは泳いで来たらしいアスカも姿を見せており、どうやら罠に目を配りつつ既に愛機へ攻撃命令を下していたようであった。

 直後に放たれる、バスターマグナム。モーゼスはその狙い撃ちを頭部に受け、機能を停止しポールに向かって倒れ込む。

 

「そこまで! 勝者、日晴 アスカ選手&フリント選手!」

 

 ウミウの叫びと同時に、アスカは息をついて海から上がり、リオに右手を差し出す。

 

「良い試合だった、ありがとう」

「……ムカつく。でも、確かにちょっと面白かった」

 

 リオも頷いて握手に応じ、二人は共に観客席に向かって歩き出した。

 

『フム。ホムラさんから彼に乗り換えですか?』

「いや違うから……っていうか、アイツの事なんて何とも思ってないから!!」

 

 途中そんな事を相棒と話しながら、赤くなった顔をマスクで隠し、メイたちの元に戻る。

 続く第二試合の出場者は、エナとユメを含む八人。

 エナもさりげなくエントリーしていたのか、という部分に驚きつつも、アスカらはその試合の模様を見学する。

 機体は頭部・脚部が『MDT-WDN-01 アクアネレイド』で両腕を『MDT-SLF-01 ウィンドシルフ』というニコイチ構成で、メダルはミラージュメダル。ユメはいつも通りのアレクベアだ。

 

「アモーレ、作戦開始よ!」

 

 エナに名を呼ばれた機体、アモーレは即座に海に飛び込み、そして充填が終わると同時に右腕パーツ(ウィンドグローブ)の射撃攻撃でアスレチック上の敵を海へ引き寄せる。

 射撃攻撃のひとつ、サクションだ。水場が苦手な二脚のバンカランや車両タイプのエイムフラッシュはこれに狙われ、真っ逆さまに遊具から落ちて機能停止してしまう。

 

「うわっ、エナさんすごいね」

「すごいというか、えげつない戦い方っていうか……あの戦法とはやり合いたくないわあたし」

 

 メイとリオの感想に同意を示しつつ、アスカは試合の進行に注視する。

 既に残り人数は半分、エナもユメも生存しているが、ここで状況が大きく動く。

 アモーレと同じく潜水していたバイフィッシュがベアの背後から跳ね上がり、ファイトブーストがかかった状態でコンペンチのサンダー攻撃を頭に叩き込んだ。

 これによってユメは脱落。さらに、エナの方も。

 

「ライブラ! アグリメント!」

 

 頭上から迫っている対戦相手の女性の『TMZ-LBR-00 ライブラ』の攻撃が命中し、一撃で機能停止してしまう。

 

「うわっ、アンチシーか」

「流石にアレは耐え切れねェよな……」

 

 アスカとホムラが残念そうに呟く中、続く一撃で勝敗が決する。

 勝利を収めたのは、相性の悪いアンチシー攻撃を食らう前にサンダー症状付与で動きを止め、ひたすら連続攻撃するという力技で押し切ったバイフィッシュ。

 最終勝者となった小学生の男の子は、嬉しそうに両手を挙げ笑った。

 そして、第三試合の選手に招集がかかる。そのメンバーはメイとマリン、だけではない。

 

「ハァ~イ♡」

 

 客席にいるアスカへと投げキッスを送る、ヴァネッサの姿があった。

 アスカはドギマギとしつつも、彼女に対して小さく手を振る。

 

「お前またあんなセクシー美女と……まさか、ナンパ成功したのか!? 俺より先に!?」

「い、いやいやいや! ちょっと話しただけだから! そ、そういえば博士! あの人のこと、何か知ってるって言ってましたよね!」

 

 言われてヒロシは頷き、神妙な目付きで語り始めた。

 

「昔私も会った事があるんだが、メダテックのアメリカ支社にはシーガル室長という研究者がいてね。その彼の奥方が、実はプロのメダロッターなんだ」

「じゃあ、あの人はそのプロメダロッターの娘!?」

「ウム。奥方の名は海祢子(ウミネコ) ソウウン。女流プロとしてここ神奈川からアメリカに渡り、世界に名を轟かせた大人物だ」

 

 ヒロシが言い終えるのと、ほぼ同時に。

 

「し、し……試合、終了~!!」

 

 けたたましくゴングが鳴り響き、ウミウの口からその言葉が発せられる。

 その事態に、全員が目を見張っていた。なぜなら――まだ試合が始まってから、()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 だが実際フィールドには、彼女の操る『MDT-SWS-01 フェアパーリー』だけが残っており、メイの『MDT-SCS-00 スイマーメイツ』の脚部を使ったリリーも『MDT-SLN-01 スィーカマー』の装備で固めたマリンのリリムも、敗れ去っていた。

 

「絶対に勝ってネ、キュートボーイ。決勝で待ってるカラ」

 

 唇を釣り上げ、真っ直ぐにアスカを見つめるヴァネッサ。

 その目付きが今までの蠱惑的なものではなく、ロボトルを楽しむ戦士(プロ)のものである事に気付いた時、アスカもまた緊張した面持ちで息を呑んだ。




メダロット解説コーナー

[機体名]
ササキスワロー

[型式番号]
MDT-SSK-00

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ガンリュウジンバ(治療/セルフレストア/なし/1回)
◆右腕:モノホシナガミツ(格闘/アンチエア/がむしゃら)
◆左腕:ソードレシーバー(補助/ブーストサクリファイス:ファイトクーラー/なし)
◆脚部:エンビグリーヴ(飛行/エクスプローラー)

●HV:0/0/0 合計:0/0

[備考]
佐々木 小次郎型のメダロットであり、剣技の逸話から燕の要素も併せ持つ。
まるで物干し竿のように長い刀を使って、飛行している相手メダロットを一刀のもとに断ち斬る対空特化機体。
左腕の機能によって自身と味方を強化した後、がむしゃらアンチエア攻撃で全パーツを一気に破壊するのが基本かつ理想の動き。
もしプラス症状を解除されたり右腕が破壊されたとしても、一度ならば頭部パーツで治す事ができる。
僚機をトルネード持ちにして組み合わせれば敵を強制的に飛行メダロット状態にできるため、その凄まじい剣技を遺憾なく発揮できるだろう。

本作品のオリジナルメダロット。
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