メダロットSAGA   作:正気山脈

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「ねぇ、日晴くん」

 夕暮れ時、浜辺で片付けを行っている途中。
 メイが、ビーチボールを拾いながら問いかける。

「たまに見かけるサブスキルの『CF』って、私あんまりよく分かってないんだけど……アレって何?」
「えーっと……CF行動っていうのは、メダロット同士の連携攻撃を使うためのサブスキルだね。まず最初にCFを使えるメダロットがそのスキルを発動して、その次に別のメダロットがCF行動を使うと、二体の連携攻撃で相手の機体に同時にダメージを与えるんだ」
「へぇ~! じゃあ、自分がメダロットを二体使えないとダメなんだ!」
「そうだね。ちなみに射撃攻撃がクロスファイア、格闘攻撃がクロスファイトっていうんだ」

 納得した様子でメイが頷いていると、近くで話を聞いていたホムラが声を上げた。

「アスカ、サブスキルじゃない方も説明した方が良いんじゃねぇか?」
「あぁ、そっか。この機能とは別に、もう一つクロス攻撃を可能にする方法があるんだ」

 首を傾げ、説明を待つメイ。アスカはその様子にクスリと微笑みつつ、解説を始める。

「クロスセットとクロスファイア、それからクロスファイト。さっきのサブスキルと違って、これはパーツによる行動の名前だよ」
「どう違うの?」
「まず、サブスキルの方と違って設置行動のクロスセットを持ってないと、クロスファイアとクロスファイトは使う意味がない。プラントみたいな感じで味方の場にナノマシンで形成された攻撃用ドローンを生み出した後、射撃行動のクロスファイアか格闘行動のクロスファイトを使うとドローンが起動して強力な一撃を放てるんだ」
「じゃあ、一体のメダロットだけでも使えるってこと?」
「そうだね。もちろん、味方の設置したクロスセットにクロス攻撃を合わせる事もできる。少し手間はかかるけど、威力はすごいよ」

 アスカはかつて、クロス攻撃を持つ『MDT-KBT-05 サイカチス』を使った白藤 ハジメのロボトル大会の映像を見た事があるのだ。
 メダチェンジした状態によってのみその連携攻撃を使えるのだが、変形後の車両脚部の機動力も相まってその威力を遺憾なく発揮していた。
 さらに、ヒロシも二人の話に補足を行う。

「よく勉強しているようだな。ちなみに、サブスキルのCF行動に対してクロスファイアやクロスファイトのパーツを使っても、連携攻撃は発動しない。CFはCF、クロス攻撃はクロス攻撃で合わせなければならないから注意しないといけないぞ」
「なるほど~! 博士もありがとうございます!」

 屈託のない笑顔で感謝を述べた後、メイは後片付けを続行。
 そして、全員で真っ直ぐにホテルに戻っていくのであった。


FIGHT.15[ククリ猛襲!(前編)]

 海での大会の後、ホテルにて。

 ロボトルでの疲れを癒やすため、アスカたちは温泉を訪れていた。

 当然混浴などではないので、男性陣は男湯、メイたち女性陣は女湯の方にいく。

 

「言っとくけど覗いたらタダじゃおかないから」

「けっ! お前のなんか覗くワケねーだろうが。俺が興味あんのは年上のお姉様のカラダなんだよ」

 

 ホムラはリオからの注意にそのように返した後、互いにそっぽを向き合ってズカズカとそれぞれ暖簾をくぐる。

 相変わらずな様子の二人にアスカとメイも苦笑しつつ、脱衣所へと足を運んで行った。

 メイが上着を脱ぐと、スポーツブラに包まれた大きな果実が、ぶるんっという音が聞こえるのではないかという勢いで弾み出る。

 その様子を見ていたユメは、自分のソレを見下ろして比べながら、しゅんと肩を落とした。

 

「……メイちゃん、背もお胸も大きくて本当に羨ましいなぁ……」

「そう? でも、私はユメちゃんが羨ましいよ。お人形さんみたいに可愛くってさ~」

「ひゃっ!?」

 

 言いながらメイは下着姿のまま抱きついて、その豊満な胸の中にユメの顔を埋めさせる。

 すると胸元で恥ずかしそうに呻く声が聞こえ、直後にリオが二人を引き剥がした。

 

「あんたら二人とも、今のまんまで困ってないんだから良いでしょ」

「むぅ~。そりゃリオちゃんは良いよ、スタイル良い上に超カワイイんだしさ」

「……別にそんなことないし」

 

 入浴するということで普段は付けっぱなしのマスクを外しているリオが、ほんのりと赤く染まった顔をフイッと背ける。

 続いて、その和気藹々とした空気を聞きつけて、一糸纏わぬ姿のマリンが現れた。

 

「うふふっ、仲がよろしいですね」

「わぁ! 肌白くてキレイ! しかも細~い!」

「きゃっ!? ちょ、ちょっと流石にひっつきすぎです……!」

 

 そんな姦しい四人の女子中学生を、衣服を全て脱ぎ終えたエナが、両手を叩いて彼女らを落ち着かせる。

 

「はいはい、あんまりはしゃいじゃったら他のお客さんたちに迷惑よ~」

「いやぁ、若いエネルギーに満ち溢れてるねぇJCズは」

「ジャノメさんだって、かなりお若いでしょう?」

 

 まぁねぇ~、と返してジャノメは笑い、全員一糸纏わぬ姿で浴場へ向かった。

 そして潮風でベタついた髪と身体を洗い流して、次は浴槽の湯の方へ。

 小学生男子のように豪快に飛び込もうとしていたメイをリオとユメが止めに入り、その横をジャノメとエナの二人が通り過ぎて先に浸かっていく。

 

「あぁ~効くゥ~」

「温泉最高~♪」

 

 気分は極楽、とばかりに蕩けた表情で温泉を楽しむ六人。

 そんな彼女らの前に、湯気の向こうから一人の少女がやって来る。

 

「アラ? アナタたち……」

 

 やや日に焼けて褐色がかった肌の、金髪の女子高生。彼女を見るなり、メイは「あっ!」と声を上げた。

 

「ヴァネッサさん!? どうしてここに!?」

「それはモチロン、ワタシもこのホテルに泊まってるからヨ。大会の後の温泉は本当にスペシャルなんだからネ。今日は負けちゃったケド」

 

 そう言いながらヴァネッサは温泉にチャプンとその艶めかしい肢体を下ろし、嘆息する。

 水着の跡の残る肌と湯面に浮かぶ高校生離れしたたわわな果実が、ユメの視線を釘付けにした。

 すると、その目に気付いたヴァネッサは彼女の方を見やって薄く笑み、腕で谷間を強調させながらズイッと近付く。

 

「触ってみたいノ?」

「ひゃぇ!?」

「だって物欲しそうに見つめてるかラ……いいヨ? ホラ、遠慮しないデ」

 

 言ってヴァネッサは手首をそっと掴んで、ゆっくり自分の胸へと引き寄せる。

 既にのぼせているのではないかと思う程にユメの顔が赤く染まっていき、あと少しで触れてしまう、その寸前。

 リオが彼女の肩を掴んで自分の方に引っ張り、ヴァネッサの魔の手から遠ざけた。

 

「ユメを変な方向に誘導しないで下さい。この子純粋なんだから」

「アハッ! ジョークよジョーク、ちょっとからかったダケ♡」

 

 ユメたちにウィンクしながらそう言って、大きく伸びをした後に再び温泉に身を預ける。

 しばらくそうして堪能した後、ヴァネッサはメイの方に「そういえば」と向き直った。

 

「ストレートに聞くケド、アナタはアスカのことどう思ってるノ?」

「えっ!?」

 

 覗き込むような眼差しを受け、メイはドキッと胸を鳴らす。

 その反応から確信めいたものを感じ取って、ヴァネッサはさらに続ける。

 

「ワタシはあのコ、かなり好きだけどナ~。カワイイだけじゃなくて、カッコイイところもあるシ♡」

「あう、うぅ~」

「水着が取れてかばってくれた時モ、すごくキュンと来ちゃっタ♡」

「むむむ~……」

 

 苦悩し、先程のユメのように顔を真っ赤にするメイ。

 そんな中、隣で入浴していたマリンが水面を波立たせ身を乗り出す。

 

「それで、それで? どうなんですか十々喜さん! 日晴くんのことをどう思ってるんですか!」

「なんでアンタが一番イキイキしてるのよ……」

「だって他人の恋愛話ってすごく面白いじゃないですか!」

 

 目をキラキラと輝かせ、メイににじり寄るようにしてマリンが尋ねる。

 他の女子の面々も、熱量に差異はあれど興味はあるようで、その視線を受けたメイはぐるぐると目を回し――。

 

「私……私、分かんないよっ」

「あっ! メイちゃん!」

 

 そのまま飛び出して走り去ってしまった。

 ユメやマリンは慌てて呼び止めようとするも間に合わず、仕方なく残りの四人と共にその場に残った。ヴァネッサは、走っていくメイを見て余裕の笑みを零している。

 

「フフッ、やっぱりまだ中学生ってコトかしらネ」

「いや普通にアンタが大人気ないだけでしょ」

 

 リオのそんな鋭い指摘を受けてもヴァネッサは笑顔を崩さず、むしろ楽しそうに鼻歌を口ずさんでさえいた。

 

 浴衣に着替え終わって暖簾をくぐったメイは、やや時間が経ってから落ち着きを取り戻し、そして後悔の溜め息をつく。

 いきなり出て行ってしまったので、楽しい旅行気分を自分が台無しにしてしまったのではないか。

 普段は深く物事を考えずに行動する彼女の中で、そんな危惧が渦巻いているのだ。

 

「十々喜さん、どうかしたの?」

 

 そうしてしばらく俯いて歩いていると、突然目の前から声がかかる。

 見れば、そこにはアスカとホムラが立っていた。彼らも既に温泉から上がったところのようで、ほのかに赤い頬のまま涼んでいた。

 

「な、なんでも……ないよ」

「本当に? なんだか浮かない様子だけど」

「大丈夫だよ! そ、それより温泉といえば牛乳と卓球! 一緒に行こうよ、ね!」

 

 いつもならすぐに抱きつきに行くところであるが、今の彼女は理由の分からない気恥ずかしさからそれができずにいる。

 アスカも首を傾げているが、ホムラは何やら察した様子でニヤリと笑う。

 ともかく彼女の提案を受け入れ、アスカたちは自販機と卓球台のある娯楽室にやって来た。

 室内には宿泊客のメダロットの姿もあり、メダロッターたちとの遊びに興じている。

 どうやらここでは自由に自分のメダロットを連れて良いらしい。早速、アスカたちも呼び出した。

 

「なんか面白そうなことやってねぇか!?」

「卓球だね。メダロットといっしょにやって良いみたいだよ」

 

 でもその前に、とアスカはメイとホムラと共に自販機の方に歩いていく。

 

「どれが良い? コーヒー牛乳? 他にも色々あるけど」

「えっと、じゃあこれ」

 

 言いながらメイが買ったのは、瓶入りのバナナ牛乳だ。

 パッケージには乳牛型メダロットのメニーミルクと、バナナ型メダロットのヒットセラーが印刷されている。

 アスカはコーヒー牛乳で、ホムラはフルーツ牛乳を購入。三人一緒に呷り、プハッと息を吐く。

 そしてメイは、先程までの悩み事などなかったかのように、いつもの元気で快活な笑みを浮かべた。

 

「美味しいね~!」

「ふふ、そうだね」

 

 いつもの調子に戻ったようだ、とアスカ自身も安堵し、牛乳を飲み終えた後に今度は卓球台へと移る。

 アスカとフリント、メイとリリーがそれぞれペアになって対戦することになった。

 

「卓球はあんまりやった事ないんだよなぁ。十々喜さんは?」

「ツイストサーブなら知ってる!」

「それ別のスポーツじゃない?」

 

 審判はホムラが担当し、ラケットなどの準備を終えたことを確認すると、右手を振り下ろす。

 

「んじゃ、はじめェー」

 

 それと同時に、意気揚々とフリントがピンポン玉を頭上に掲げる。

 

「よっしゃいくぞアスカ! オレのダンクスマッシュを見せてやる!」

「だからそれ違うスポーツだよ!? しかも今からするのはサーブだし!!」

「じゃあこっちはオーバーヘッドキックだよ、リリー!」

「ラケットは!?」

 

 そんな風にはしゃぎながら、慣れない卓球に熱中すること約二十分。

 中学生の人間二人は、楽しさから我を忘れて遊んでしまい、すっかり息を切らしていた。

 

「はぁ、はぁ……えへへ、せっかくお風呂入ったのにちょっと汗かいちゃったね」

「あはは、そうだね……って!?」

 

 視線を上げ、アスカがメイの方を向いた直後。

 その顔が耳まで真っ赤に染まり、目が見開かれる。

 一体どうしたのだろうと首を傾げるメイ。すると、彼女の相方であるリリーが慌てた様子で話しかけて来た。

 

「メイちゃん! 浴衣、浴衣!」

「ほぇ? ……あ!?」

 

 見下ろせば、動き回ったせいでメイの浴衣の帯紐が少しほどけており、胸元が肌蹴てしまっている。

 無論完全に帯が取れたワケではないし下着はつけているのだが、それでも羞恥は抑えられない。

 アスカは慌ててメイと共に物陰に移動して、ホムラやフリントたちに他の宿泊客の視線を遮るよう手伝って貰った上で、帯を締め直した。

 

「ご、ごめんね日晴くん、こんなことになっちゃって」

「だっ、大丈夫大丈夫! しょうがないよ、俺も熱くなりすぎてたし」

 

 そう言いながらも、アスカは先程の事態のせいかメイを直視できないでいる。

 またやらかしてしまったか。再び後悔の念が生まれ始める最中、ホムラが自らの眉を寄せて二人を振り返った。

 

「……おい」

「あ、狩兼くんもわざわざごめんね」

「いや、そうじゃなくてよ。なんか騒がしくねェか?」

 

 ホムラの言葉を聞いてアスカとメイも耳を澄ましてみると、確かに慌ただしい足音が何度も響いたり、金属がぶつかるような音が遠くで木霊している。

 一体何が起きているのだろうか。他の客たちも戸惑っている中、アスカたちは娯楽室の扉を僅かに開いて隙間から覗く。

 そうして殺到するのは、無数のメダロットたち。ボロゴブリンにマジカルピエロ、ワンホイールやゴーフバレット、他にも『MDT-GLT-00 ガイロット』に加え『MDT-BCY-00 クライバンシー』の姿もある。

 

「なんだよあいつら!?」

「野良メダロット? いや……まさか!?」

 

 現れた面々に既視感があったアスカは、すぐにその正体に思い至り、扉を閉じて咄嗟にホムラやメイたちと共に物陰に身を隠した。

 

「ホッホォォォーウッ!!」

「ここは俺たちESC(エスケイプ)が占拠させて貰うぜぇ!!」

 

 即座に現れたのは、ピエロの仮面の集団。以前にアスカたちが参加した大会を荒らした、ESCの構成員だ。

 その全員が、金属バットや刃の長いナイフで武装している。

 

「なんであの連中がここに!?」

「大会が終わったばかりだって言うのに……!」

 

 言いながらアスカはメダロッチを確認してロボトル協会に通報しようと試みるが、前回と同じく反応がない。

 

「ダメだ、また衛星の管理システムが妨害されてる……どうする、みんな」

「ヘッ! どうもこうもねーだろ! オレたちで叩きのめしてやろうぜ、アスカ!」

 

 優勝して自信がついたのか、意気込みながら言ってのけるフリント。

 しかし、ホムラは冷静な様子で首を左右に振る。

 

「アイツら、全員武器持ってやがるぞ。監視されてないからって好き放題する気だ、下手に近付くと俺らが危ねェな」

「じゃあどうすんだよ!?」

「方法は一つだろ、フリント」

 

 ホムラはそう言って、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

 一体何をするつもりなのか。敵に聞こえないようコッソリと話を聞きつつ、アスカたちはすぐ実行に移る。

 そして。

 フリントとリリーの二機が外に出て、棚の中に保管してあったピンポン玉のケースを取り、廊下にいるESCの人間とメダロットたちの方へ一斉に転がしブチ撒けた。

 

「うおっ!?」

「なんだこいつら、危ねぇ!」

 

 飛行・浮遊のメダロットには通用しないが、人間たちや二脚のメダロットはピンポン玉で転ばないよう歩みを遅らせられる羽目になる。

 それでも何体かは転倒してしまい、車両脚部のマジカルピエロとワンホイールに至っては完全に立ち往生させられていた。

 

「クソが! 邪魔しやがって!」

「まずお前らのメダルから頂いてやる!」

 

 怒ってピンポン玉を蹴飛ばし、多脚故に不安定な場所でも移動できるガイロットと、地面にいないゴーフバレットやクライバンシーを伴ってフリントたちに向かっていく覆面道化たち。

 だが彼らが娯楽室の扉の前を通りかかろうとしたその時、何かが転がるような音が中から響く。

 

「ん?」

「何の音――」

 

 瞬間、扉を壊して勢いよく()()()()()()()()()()()()

 

「衝撃の卓球台エントリーッ!!」

『グヘッ!?』

 

 ホムラだ。卓球台についているキャスターのロックを外し、それを使って思い切り走り抜け、覆面たちもメダロットも纏めて壁に叩き込んだ。

 ESCの者たちは突然の事態に狼狽し、ガイロットが無常にも次々と轢き倒されるのを唖然として眺めていた。

 

「わざわざホテルに来てまでルール無用の土俵を作りやがったのはお前らなんだからなァァァーッ!! 俺たちもやりたい放題やらせて貰うぜェェェーッ!!」

「ところで扉壊しちゃったけど良いの?」

「こいつらのせいってことにすりゃ問題ねぇぜ!! ギャハハハハハーッ!!」

「すごい悪い顔してる……」

 

 あまりにも悪党めいた振る舞いを見せるホムラに戸惑いつつも、アスカはフリントに指示を出して空中のゴーフバレットたちを撃ち落とすべく右腕のバスターマグナムを放つ。

 混乱した状況も相まって避け切れず弾丸が頭部にクリーンヒットし、一機が機能停止。

 だが前回と同じくメダルは排出されず、次弾の準備をしている内にESCの面々は落ち着きを取り戻し始めた。

 そこで、再びホムラが動く。

 脚部を『MDT-SPI-01_2 ブービースパイダ』のスパイダーネットに変更したバレットを、卓球台の上に転送したのだ。

 

「バレット、そこでしっかり掴まってろよ!」

「フッ、面白い」

 

 言われた通り、バレットはその多脚で台の端を掴んでガッシリと固定し、ホムラが再び疾走。

 

「撃滅の卓球台エントリーだーッ!!」

『ぎゃあああああ!?』

 

 ホムラがキャスターを走らせて地上の敵を蹴散らしつつ、バレットが上空の敵を射抜く。

 そこにフリントの援護射撃も加わることにより、敵機の数を大幅に減らすことに成功した。

 だがそれでも、まだ続々と廊下からESCのメダロットが湧いて出てくる。

 ホムラはアスカの方を振り返りつつ、自身も新たにメダロットを呼び出す。

 グレードカブキ一式のトシマスに、頭部と左腕がヒットセラーで右腕・脚部を『MDT-KNI-01 レディゴー』のものに変更したカトリーだ。

 

「俺はこのままジャノメさんたちを探しながら敵を潰して回る。お前と十々喜は別方向から走って、連中を残らずブチのめしてくれ。そうすりゃその内どっちかが首謀者に出くわすさ」

「うん、それで行こう! 頼んだよホムラ!」

「任せときな! トシマス! カトリー! お前らはバレットを守れ、しっかり付いて来い!」

 

 そう言ってホムラは再びテーブルに手を伸ばし、トシマスたちと共に全力で走り出す。

 

「抹殺の卓球台エントリィィィーッ!!」

「……あの感じなら本当に何も心配いらなさそうだな……」

 

 次々と敵メダロットを一掃していくホムラの姿を見送りつつ、作戦通り自分たちも行動を開始する。

 迫り来るのはまだ機能停止していないクライバンシーとガイロット、遠くからはマジカルピエロが走って来るのも見えた。

 アスカは瞬間的に周囲を見渡して状況を分析した後、足で掬い上げるようにしてピンポン玉を空中へ蹴り上げ、ガイロットに向かって射抜くようにシュート。

 飛んで行ったピンポン玉はその関節の間に挟み込まれ、ビームの刃を発振させようとしていた左腕の駆動を阻害し、刃が隣のクライバンシーの頭部に直撃して同士討ちを誘発させた。

 

「よし!」

「やるなぁアスカ! オレも負けてらんねぇ!」

 

 左腕のラピッドバルカンが火を吹き、敵機を蹴散らす。

 しかしESC側も無抵抗ではなく、射撃攻撃を弾幕めいて展開し、フリントに軽くない傷を負わせる。

 瞬間、傍にいたリリーが右腕でフリントに触れると、そこから流し込まれた粒子(ナノマシン)がすぐさま装甲を修復した。

 

「今のリリーはブレザーメイツ一式だから、サポートは任せてね!」

「頼もしいよ、ありがとう十々喜さん!」

 

 装甲が直ると同時に、アスカは再びフリントへ指示を送る。

 だがいくらローンビートルの装甲が頑丈で回復役もいるとはいえ、一機のみでは大勢のメダロットを相手に猛攻に耐え切れはしない。そもそも手数が足りていないせいで、何体かは止めることができず、アスカとメイを直接狙おうとしていた。

 そこでアスカは、自分たちを取り囲もうとしていた敵メダロットたちの目の前に、自身の持つもう一体の友を呼び出す。

 

「出番だよアオカゲ!」

「ん!」

 

 セイボウメイツの装備一式で転送されたアオカゲは不意打ちでコンフュージョンを食らわせ、それを発症したゴーフバレットは味方のゴーフバレットをアンチエアで同士討ちし、自滅。

 隊列は再び崩されたところで、フリントの射撃が敵陣に風穴を開け、階段への道が開く。

 

「多分敵がいるとしたら下の階だ! このまま――!?」

 

 そう言ってアスカが階を下ろうとした、その直前。

 下階から、身も凍るような殺意めいた恐ろしい気配が立ち上って来る。

 

「一体なんだ……下から、すげぇイヤな感じがするぞ!?」

 

 フリントもそれを感じて身構え、アスカたちと共にゆっくりと降りていく。

 すると、そこにいたのは羊角のガスマスクを被った赤い髪の女。その傍には、三体のメダロットがいる。

 先頭にいるのは赤い馬型のバイクに跨る緑の鎧の武将で、左隣には青い鎧の騎士、右隣にいるのは全身から刃を伸ばす機体。

 それぞれ『MDT-CHA-00 チュウゲンハオー』と『MDT-BBB-00 バルブブルー』と『KKR-KKZ-00 キリーキンザム』だ。

 ガスマスクの女、ククリはアスカとメイを見つけると、心底鬱陶しそうに舌打ちする。

 

「チッ! なんでいつもいつもお前みたいなクソガキが俺たちを邪魔しに来るんだ?」

 

 他のESCの連中とは、どこか様子が違う。明らかに格上だ。

 そう思って、アスカは尋ねる。

 

「あなたは一体……!?」

「ホウセン、ジルドレ、ジャック。二度と生意気なことができないようたっぷり痛めつけてやれ」

 

 しかしククリはその問いかけを無視し、自らの操る三体のメダロットたちに命じる。

 チュウゲンハオーのホウセンはフリントとリリーに、キリーキンザムのジャックはアオカゲの方に飛び込んでいく。

 そして、ジルドレと呼ばれたバルブブルー一式の機体は、上機嫌な様子でアスカの方に目を向けた。

 

「イッヒッヒッヒッヒッ! 実に愛い少年だ……我が主の命令通り、この私の手で存分に辱めてやろう!」

「こ、こいつ何言ってるんだ!?」

 

 メダロットだというのに粘着質な声と視線を送った後、ジルドレの右腕の槍が素早く振り抜かれる。

 冷気を纏うそれによって浴衣の裾が斬り裂かれ、ミニスカートのようになってアスカの生足が外気に晒された。

 

「うわっ!? ふ、服を!?」

「イヒヒィッ! 思った通り、顔立ちと同じく瑞々しいしなやかな白い肌は生娘のよう……その頬を赤く染める、まだ貞操を保った少年特有の羞恥! あぁ、たまらぬなぁ!」

「な、何を言ってるんだ……このメダロット、変態か……?」

「分かるか、私のこの槍がビンビン感じているのが! このままキミを丸裸にして、男を知らない未熟な蕾を激しく挿入()いて掻き乱せと叫んでいるぞぉ!」

「変態メダロットだ!?」

 

 あまりの気持ち悪さに、先程とは別の意味で寒気を感じて後ずさりするアスカ。

 するとその恐怖を感じ取ったのか、ジルドレは再び目にも留まらぬ速度で槍を振るい、氷の槍で衣服のみを斬った。

 帯紐が破られ、ハラリと浴衣が肌蹴てしまい、下着のグレーのボクサーパンツがあらわとなる。

 

「さぁ、絶頂に至る刻が来たぞ少年よ。キミの純潔は私のモノだ……♡」

 

 まるで舌なめずりでもしているかのような仕草と、奇妙な圧を感じるおぞましい声色。

 今までとは違うベクトルの強敵を前に、アスカとメイはたじろぐばかりであった。




メダロット解説コーナー

[機体名]
キリーキンザム

[型式番号]
KKR-KKZ-00

[性別]


[パーツ]
◆頭部:キットバス(格闘/デストロイ/がむしゃら/1回)
◆右腕:キリサイダー(格闘/デストロイ/がむしゃら)
◆左腕:ツラヌキン(格闘/デストロイ/がむしゃら)
◆脚部:ササッテルー(二脚/トラップバスター)

●HV:1/0/0 合計:1/1

[備考]
全身にナイフや剣を生やしている、刃物型のメダロット。名前は『斬り刻む』から。
その特徴はなんと言っても、脚部以外の全てのパーツがデストロイ攻撃で占められていること。とにかく相手のパーツを確実に破壊するという殺意に満ちた構成である。
足のナイフは攻撃にこそ使えないものの、十徳ナイフのような見た目故か敵の罠を無力化し破壊することができる。これによって、よりデストロイ攻撃を安全に通す事が可能。

原作の『KKZ00 キリーキンザム』の仕様変更版。
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