メダロットSAGA   作:正気山脈

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「くくく、イイ女が揃ってるじゃねぇか」

 エノシガイオス付近のホテル、その温泉の女子更衣室にて。
 無数のメダロットと共に館内へ侵入したESC構成員の男たちは、覆面の内側で下卑た笑みを浮かべながら、それぞれナイフや金属バットを手に、浴衣姿やまだ下着のままの女性たちに迫っていた。
 群衆の中には、逃げ遅れてしまったエナとマリン、そしてリオの姿もある。ユメとジャノメとヴァネッサは先に出ていたらしく、ここにはいない。

「オラオラッ、痛い目に遭いたくねぇならさっさと脱ぎやがれ!! それとも無理矢理がお望みか!?」
「メダロットを出そうとかヘタなこと考えるなよ! その瞬間俺たちも容赦しねぇからな!」

 ナイフを突きつけたりバットをロッカーに叩きつけて威嚇しながら、ESCの面々は怯える女たちを見て嘲笑う。
 このまま為す術なく、されるがままになってしまうしかないのか。
 誰もがそう思っていると、エナがひとり、前に出て来る。

「なんだぁ?」
「私が一人であなたたちを相手にする。だから、他の人に手を出さないで」
「ほ~う? お前一人で俺ら全員を満足させられるってのか?」
「ええ」

 言いながら、エナは自らの浴衣の帯紐をゆっくりと外していく。
 男たちは面白い見世物が始まると思い、客たちにメダロットを出させないよう警戒しつつ、エナの身体を注視する。
 そして彼女は完全に帯紐を解くと、そのまま浴衣の内側に手をやり。
 中から、大振りなモンキーレンチを取り出した。

「えっ?」
「フゥンッ!!」

 そんな豪快な掛け声と共に、エナは浴衣を肌蹴させつつも思い切り目の前のESCの男のこめかみ辺りに振り被る。
 ゴツッ、という鈍い音が響いて一人が昏倒し、一同は驚愕。何が起こったのか分からずエナとマリン以外の誰もが立ち尽くし、その隙を彼女らは突く。

「ダァッ!!」
「みんな今の内にロッカーからメダロッチを出して下さい!」

 マリンの呼びかけとエナの攻撃もあり、女性客の行動は敵よりも早かった。
 ESCに混乱が波及している内に全員が言われた通りにメダロッチを装着、エナも先んじて自身のメダロッチを操作する。

「メダロット転送! 来なさい、アモーレ! コンモツィオーネ!」
「あっ!?」
「みんなもメダロットを! 急いで!」
「このクソが! こうなったらお前ら、やっちまうぞ!」

 怒りに声を荒げ、ESCの者たちが武器を手にメダロットたち共々襲いかかる。
 するとエナは浴衣をマントのように翻しながら自ら脱いで投げ捨て、敵の一人の顔に覆い被せ視界を塞ぎ、金属バットを奪い取る。
 そうしてレンチとバットの二刀流で男相手に大立ち回りを演じ、さらに自身の呼び出したアクアネレイド装備のアモーレとウィンドシルフ一式のコンモツィオーネには敵機のボロゴブリンやマジカルピエロの相手をさせた。

「でぇい!! りゃあっ!!」
「な、なんだこの女!? 細身のクセにめちゃくちゃ武闘派じゃねぇか!?」

 更衣室の入口が一つに限られているために、後続のメダロットも駆けつけるのが遅れており、メダロッターの方もエナの奮戦でどんどん数が減っている。
 だが、それもいつまでも続かなかった。

「そこまでだ、動くんじゃねぇ! こいつがどうなっても良いのか!」

 言われてエナが振り向くと、そこにはナイフを突きつけられ羽交い締めにされたリオの姿があった。
 男はマスクのない彼女を舐め回すように見下ろすと、くつくつと笑い始める。

「ガキっぽいが、よく見るとお前もイイ顔と身体だなぁ? へへ、こいつから頂いちまうか?」
「くっ……!?」
「恨むんならそこの女を恨みな、代わりに今から気持ちいいことたっぷり仕込んで――」

 言いながら男がリオの胸に手をやってまさぐろうとした、その時。
 勢い良く更衣室の扉が蹴破られ、ホムラとバレットが飛び込んで来る。
 再び全員が愕然とする中、彼は素早く疾走し、リオを辱めようとしているESCの男を殴りつけ、バレットはその側にいるボロゴブリンを撃ち抜いた。

「オォラァァァッ!!」
「ぐげ!?」

 男はそのままロッカーの角に後頭部を打ち付け、失神。倒れ込みそうになったリオは、ホムラが抱き寄せ救助する。

「野郎ォォォ!」

 だが戦いはまだ終わっていない。
 いきなり現れたホムラに対し、近くにいた一人の構成員がバットを振り下ろさんと迫っていく。
 しかし、その瞬間。
 ロッカーの後ろから密かに回り込んでいたマリンが、男のズボンをパンツごと思い切り真下にずりおろす。
 ピョコンとソレが露出して、男は思わず間の抜けた声を上げる。

「へっ……?」
「お従姉ちゃん、今!」

 直後、風を切るようなエナのレンチによるスイングが、轟音と共に男の股間へと食い込んだ。
 真下からカチ上げられた激痛で、覆面の内で目を見開いて涙を流し、彼は脂汗を滲ませながら思わず膝をついてしまう。

「うっぎゃあああああ……!?」
「安心なさい、加減したから潰れてないはずよ」
「あ、あががが……」

 ガクガクと膝が震え、力が入らず四つん這いになり、なおも痛みが続いて荒い息でゴロリと転んで仰向けになる。
 するとマリンが、苦しむ男の股間をじっと見下ろした後、一笑に付してこう言った。

「小学生の頃のノアくんよりずっと小さいですね」

 その一言がトドメとなったのか、男はそこで意識を手放してしまう。
 ひとまず更衣室での争乱は収まり、リオを含め女性たちは安堵の息をついた。
 そんなリオへと、ホムラは真剣な眼差しを送りながら声をかける。

「おい、怪我とかねェか?」
「う、うん……」
「なら良かった。まだそこらに敵がウヨウヨいやがる、お前もどこかに隠れといた方がいいぜ」

 いつになく真摯で、かつ力強い言葉。勇敢で、頼りになる大きな背中。
 その後ろ姿を見つめてリオはやや頬を赤らめつつも、ある事実に気付いてハッと目を見張る。

「っていうか……なんで真っ先に女子更衣室に来てんのよアンタ!!」
「えぇっ!? 今更かよ、っつーかそんなこと言ってる場合じゃねェだろ!?」
「うっさいバカバカバカ!! スケベ、変態、覗き魔!! 早く出て行きなさいよ!!」

 こんな状況でも始まってしまう、いつもの口喧嘩。
 微笑ましい二人の様子に、エナとマリンは思わずほっこりと笑みを浮かべる。

「仲良しねぇ~」
「そうだねぇ~」
『どこが!?』

 口を揃えて否定すると、周りの女性たちもプッと噴き出してしまう。
 だが戦いはまだ終わっていない。ESCの者たちを拘束して監視を客や従業員たちに任せつつ、ホムラ・リオ・エナ・マリンの四人は、戦いを続けているであろうアスカたちを探しに向かうこととなった。
 その寸前、リオはこっそりとマリンに尋ねる。

「……見たことあるの? その、早総の()()を……」
「昔の話ですけど、よく一緒にお風呂に入っていたので」

 なるほど、とだけ返し、興味は惹かれつつもそれ以上聞かずにリオはただ頷くのであった。


FIGHT.16[ククリ猛襲!(後編)]

 エノシガイオスにESCが現れ、ホテルを襲撃したその当日。

 アスカたちは、現れたククリの従える三体のメダロットと対峙し、追い詰められていた。

 フリントとリリーが相手取っているホウセン、アオカゲに襲い掛かるジャック、そしてメダロッターを執拗に狙うジルドレ。

 アスカがそのジルドレからの攻撃を受けているせいで、フリントたちへの指示が滞ってしまい、普段通りに立ち回れなくなっているのだ。

 

「クッソ、このままじゃマズい!」

「せめてメイちゃんたちを助けられたら……きゃっ!?」

「うおっと!」

 

 フリントたちに素早く迫る、ホウセンが装備している左腕のホウテンガゲッキ。

 しかし車両脚部による直線的な突撃ということもあって装甲を僅かに掠める程度の被害で済み、さらにリリーが即座に回復に動いたため無傷で凌ぐ。

 対ホウセンにおいて、フリントはホムラたちの助けを期待しこれで戦局を長引かせているが、ここでククリが動く。

 

「ホウセン、ちょっと狭いんじゃねェか?」

「ああ。車両で屋内は少々動きづらい」

「じゃあ……()()()か」

 

 言いながらククリはメダロッチを操作し、そこから放たれた光条をホウセンが受ける。

 すると脚部の赤いバイクのパーツが分離してティンペットが露出し、新たな脚部が出力され始めた。

 

「え!? ロボトル中にパーツ変更!?」

「普通ならそんなの反則……いや!」

 

 アスカはフリントたちの状況を見ると、意を決した様子で目を見開き、指示を飛ばした。

 

「フリント今だ、転送中の隙を狙えー!」

「おう!」

 

 パーツの転送中、メダロットは完全に無防備。

 ならばそこを叩いて頭部を砕くことさえできれば、戦況は大きく変化するはず。

 アスカとフリントはそう考え、既に充填を終えたビリーザハットからミサイルを発射しようとした、次の瞬間。

 突然に正面から飛んで来たナイフがフリントの右肩に突き刺さり、さらにヒールでの蹴りが胸部を打った。

 

「ガッ……!?」

「やらせるかバーカ」

 

 ククリによる直接の妨害だ。

 当然公式試合であれば反則行為だが、彼女にそんな躊躇は存在しない。

 放たれたミサイルはククリとホウセンの間を通り抜けてホテルの窓に着弾し、ガラスを破壊。その間にホウセンの脚部に、緑色に変更された『MDT-DOG-03 ブルーティス』のスイングテールが装着された。

 敵のあまりの無法ぶりと非道さにアスカは愕然とし、直後にジルドレの槍が完全に浴衣を剥ぎ取ってしまう。

 

「あっ!?」

「フッハハハハハ! 余所見をしているからホラ、布切れ(パンツ)一枚になってしまったぞ少年! 楽しみだなぁ、キミの蕾を摘む時が!」

 

 相変わらず粘着質な声遣いで言い放ち、ジルドレは再びにじり寄る。アスカの下着を完全に破るために。

 

「クソッタレの変態野郎が……! アスカ、悪いけどもうちょっと耐えてくれ! 絶対オレがなんとかしてやるから!」

「違うよフリントせんぱい。私たち、だよ」

 

 そう告げたのは、ジャックと交戦中のアオカゲだ。

 ジャックの両腕の刃から繰り出されるデストロイ格闘攻撃を飛ぶように避けながら、彼女は自らの左掌を敵機の胸部に叩き込む。

 しかしその一撃は装甲を僅かに傷つけるだけで終わり、大勢を変化させるには至らない。

 

「フン、邪魔して来た割に大した事ねぇガキどもだな。ジルドレ、ジャック、ホウセン。さっさと終わらせて――!?」

 

 ククリが新たに指示を出そうとした、その寸前。

 アオカゲを相手に戦っていたはずのジャックがホウセンの方に飛び込んでいき、右腕パーツのキリサイダーをがむしゃらに振り回した。

 間一髪のところで避けることはできたものの、いきなり味方から不意打ちを喰らいかけたため、ククリは怒りで声を荒げる。

 

「ジャック!? お前何やってんだ!?」

「う、あ……敵、敵……倒す……」

「……コンフュージョンか!?」

 

 明らかに正気を失っている彼の様子を見て、ククリは舌打ちを漏らす。

 今のジャックは、敵と味方の区別がついていない。コンフュージョン症状を付与するアオカゲの左腕パーツ、ラズリーチャームによって。

 心の内から苛立ちが溢れ出し、カツカツと床を踏みながら、マスクの内でアスカを睨む。

 

「弱ェクセに邪魔すんじゃねェよクソガキどもが……こっちはさっさと優勝者を探してメダルを奪らなきゃいけねぇってのによォ……!!」

 

 その言葉を耳にすると、アスカは目を見張った。

 彼女の狙いは自分だ。より正確には、自分が大会で優勝して得たメダルが狙いなのだろう。ただ、()()()()()()()()()()()ことに気付いていないようだが。

 そうとは知らず、ククリは青い鎧の騎士に怒声を浴びせる。

 

「ジルドレ!! もうさっさとそいつにトドメ刺せや!!」

「フゥ~、もう少し焦らしたかったが仕方がない。このまま一気に丸裸にしてやろう」

「殺せっつってんだろボケ!!」

 

 ククリからの指示と罵声を無視し、ジルドレはアスカの尻に向かって一直線に走り出す。

 

「させてたまるかよ……コラァッ!!」

 

 するとフリントは、自らの肩に刺さったナイフを乱暴に引き抜き、思い切り振り被ってジルドレに投げた。

 しかしその足掻きも、咄嗟に構えた騎士の左腕が防ぎ、刃が半ば盾に食い込む程度で終わってしまう。

 

「フッ、当たらなければこんなもの」

「今だフリント! 撃て!」

「え?」

 

 直後のアスカの指示により、フリントは左腕のラピッドバルカンで銃撃。

 全ての弾丸が盾に、そして刺さったナイフに着弾し、刃をより深く押し込んで左腕(デジール)を機能停止に追い込んだ。

 

「ジルドレ!?」

「カッハ……ハハハハハァ!? そう来るか、キミは面白いなぁ少年!! とても魅力的な攻撃だが……まず私の求愛に背いた罰を与えないとなぁ!!」

 

 言いながら、ジルドレは疾走する。

 彼の槍の穂先が向かう先は――メイだ。

 

「十々喜さんを!?」

「死ねェッ!!」

「危ない!」

 

 このままでは、メイの命が危ない。アスカは即座に反応し、彼女に向かって飛び込んだ。

 瞬間、ジルドレは()()()()、槍の標的をアスカに変えた。正確には、彼の最後の一枚に。

 

「ついに隙を見せてくれたねェ!! さぁ、お楽しみの時間だ!!」

 

 凍る穂先でボクサーパンツが無惨に破れ局部が露出してしまうのと、抱きしめるような形で押し倒して守るのはほとんど同時だった。

 すぐ片手で隠したものの、変態騎士(ジルドレ)の舐め回すようないやらしい視線は、今のアスカの裸体を決して見逃さない。

 

「滑らかで清らかな無毛の肌、先まで皮に包まれた熟し切っていない果実! 見事だ……美しいぞ少年! キミの痴態でビンビン感じるゥゥゥ!」

「うぅっ……」

 

 じりじりと迫りくるジルドレ。アスカは恥ずかしい姿を晒してもなお、隣にいるメイを守ろうと前に出る。

 そんな頼もしい彼を、メイは傍で支え起こして共に並ぶ。

 

「さぁクライマックスだ、蕾を乱すぞ少年! 私の槍を受け入れてくれェッ!」

 

 再び、ジルドレは槍をアスカに向けて走り出した。

 フリントたちは未だホウセンやジャックによって足止めさせられており、もはや抵抗の術は存在しない。

 だがその時。発砲音のようなものが聞こえたかと思うと、騎士の全身に粘質の液体がへばりついた後、続いて飛び出した弾頭が脚部を撃ち抜き破壊した。

 

「ヘグゥッ!?」

「なに!?」

 

 弾が飛んで来た方角を見れば、そこには三人の女の人影と四体の機影が見える。

 

「アスカにナニしてるのヨ、この変態!!」

「二人とも大丈夫!? 今助けるからねー!」

「わ、私も……!」

 

 脱衣所から駆けつけた、浴衣姿のヴァネッサとジャノメとユメ、さらにそんな彼女らの操るメダロットたち。

 リーフィータン一式装備のチャイカと、いつものアレクベア装備のベア。そして、ジャノメが呼び出した八ツ首を生やす青い蛇の『MDT-YMT-00 ヤツクビダイジャ』を装備しているヘビメダルの機体。

 相手にしなければならない敵が一気に増えたことでククリはまたもや不機嫌になるが、ジルドレは逆に、ユメを見つけて興奮した様子で右腕を掲げる。

 

「美少年に加えて美少女だと!? しかもこんな幼気な……あぁぁぁっ、素晴らしいィー!! 自慢の槍がいきり勃つゥ!!」

「ひゃあ!? いやぁ!! こ、来ないでぇ!!」

 

 異様な発言を繰り返す変質メダロットの姿にユメはすっかり怯え、ヴァネッサたちの後ろに隠れてしまう。

 すると、ジルドレの前にヤツクビダイジャとリーフィータンが立ち塞がり、充填を終えて攻撃を放つ。

 

「ウワバミ、トリカミノコウベだよ!」

GYYYYYSHAAAAA(ギィィィィィシャアアアアアー)!!」

 

 名を呼ばれたヤツクビダイジャのウワバミは、右腕についた二本の蛇頭から泥のような粘液を発射、それがジルドレを拘束する。

 リーフィータンも使える、敵を潜水状態に変えるマイナス症状を付与する射撃攻撃、マッドショットだ。

 さらにそこへ、ヴァネッサとチャイカが動く。

 

「今よチャイカ!」

「あーしらのコンビネーションアタックで! いっけー!」

 

 左腕であるリーフフィンズの発射口から撃ち出されるのは、アンチシー攻撃。

 これによりジルドレは対潜水の攻撃を受けてしまい、右腕を砕かれた。

 

「クマクマクマー!!」

 

 さらにベアの重力攻撃も合わさり、頭部も破壊。そのまま撃沈する。

 残るはホウセンとジャック、それと外から無数に現れる取り巻きのメダロットたち。

 ジャックは既にコンフュージョンから立ち直っており、リリーやアオカゲに対して再びデストロイ攻撃を行おうとしている。

 

「させないよ~!」

 

 そんな時、チャイカが介入する。大きな両腕のパーツを広げてジャックの視界を妨げ、リリーが治療パーツの行動に移っている間、攻撃を引き受ける役目を買って出たのだ。

 加えて、状況を見ていたジャノメは増援として新たにメダロットを転送し始めた。

 

「おいでヴィオラちゃん! ホントは配信でやりたかったけど……おニューのパーツの力、見せつけちゃえ!」

 

 出現した機体は、フリル付きの紫のロングドレスを模した装甲を持つ、ドリル状の黒い巻髪のような部位が特徴的な魔法少女のメダロットだ。

 右手にハートの意匠を取り入れた魔法の鞭を持ち、左腕には大きな砲口のバズーカを装備しており、スカートは短めだが腿部にはバーニアが付いているのが確認できる。

 アスカたちも初めて目にする、新種の機体であった。

 

「それ、もしかして……」

「FSL機の新型、魔法少女と貴族令嬢の要素をかけ合わせた『MDT-FSL-NG01 ファンシーアール』だよ! イイでしょ!」

 

 話している間に、背後から迫り来る無数の敵機。

 ファンシーアールを纏うヴィオラはそれを、左腕の射撃武器、テロレタイグニスからマスコット型の強化爆弾であるパワーミサイルを放って迎撃した。

 だが敵は続々と湧いて出て、アンチエアの攻撃も仕掛けてくる。

 それらの猛攻を悠々と回避し、ウワバミの援護射撃でも守られながら、続いて頭部のパルランマギアを発動。巻髪の中から飛び出す伸びる無数の蛇の牙が、ハイパーウィルスが敵機を落とす。

 

「カワイイだけじゃなくて強いんだよ、私」

「さっすがヴィオラ~!」

 

 未だ数的優位は敵側にあるものの、圧倒的な戦闘能力を前にしてホウセンとジャック以外はほとんど戦う気力をなくし始めている。

 さらに、チャイカがジャックと対峙している間に動いていたリリーから声が上がった。

 

「フリントくんとアオカゲちゃんのダメージ、直し終わったよ!」

「リリーえらーい!」

 

 少しずつ、しかしながら確かに戦況は好転している。はしゃぐメイの隣でアスカはそれを確信し、今ならば勝てるハズだと強く拳を握る。

 ――額に青筋を立てて歯を軋ませるククリが、全身からドス黒い光のようなものを放出し始めたのは、そんな時だった。

 

「いい気になるなよ目障りなガキがァ……!! ホウセン!!」

「ようやくか」

 

 続いてジャックを押しのけホウセンが前に立ち、ククリと同じく真っ黒な輝きを立ち昇らせる。

 まさか、と一同が目を剥いた直後、想像通りの事態が起こってしまった。

 

『メダフォース、飛将凱旋!!』

 

 その叫びと同時に光が収束し、ホウセンの全身を覆った瞬間。

 まさしく瞬きするようなそんな僅かな間に、チャイカ・ヴィオラ・ウワバミ・ベア・リリー、そして回復したばかりのアオカゲまでもが左腕や右腕、脚部などパーツ各部を砕かれてしまった。

 

「なっ!?」

「そんな、たった一体で……!?」

 

 いくらメダフォースを使って得たものだとしても、あまりに異常な戦闘能力。

 一体何が起きたのか、原因を探るためにメダロッチを操作してデータを分析すると、真っ先にジャノメが反応を示す。

 

「ちょっ、ウソでしょ!? さっきのメダフォースでプラス症状が四つも追加されてる!?」

「パーツの威力を強化するバーサークと命中精度を上げるスーパーサーチに、充填・冷却効率をアップするオーバードライブ、おまけにあらゆる地形に適応させるインベーション……でも、流石にデメリットなしじゃないみたいね」

 

 そう言いつつもヴァネッサは息を呑み、ホウセンを睨む。

 表示されているマイナス症状は、メルト・サバイバル・チャージゲージガバナー・ノンイバーシブの四種。

 メルトは装甲が徐々に融解していく状態で、サバイバルはパーツの再生効果が抑制される症状。チャージゲージガバナーはメダロット自身のチャージ上昇量を削減するもので、ノンイバーシブは防御・回避行動ができない状態を表す。

 飛将凱旋。それは多大なマイナス症状を背負って自分自身を追い詰めてでも性能を大幅に強化し、勝利を掴むためのメダフォースなのだ。

 ホウセンは体にかかる負荷で溶けながらも攻撃を続け、ベアとウワバミを完全破壊。さらにアオカゲにも強烈な斬撃を叩き込み、機能停止に追い込む。

 

「これで分かったろ、お前ら如きに最初から勝ち目はねェんだよッ!! 次はそいつをやれ、ホウセン!!」

「ン゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛!! ル゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ゛!!」

 

 暴れ回るホウセン、その目が捉えた次なる標的は、フリントの傍で狼狽えるリリーだった。

 

「逃げて、リリーッ!」

 

 メイが発する悲痛な叫び。

 瞬間、アスカの脳裏にフラッシュバックする、かつて暴走したヒパクリトに襲われた幼少期の記憶。

 そしてまるで共鳴するかのようにフリントのコアにも流れたかと思うと、ノイズが走ってそのカマキリのメダロットと、ククリ・ホウセンの姿が()()()

 次いで二人の胸の内に湧き上がったのは、激しい怒り。これ以上、同じ悲しみを繰り返させたくないという願いだ。

 

「もうこれ以上、人間もメダロットも傷つけさせはしない!」

「このクソッタレの悪党共が! 絶対に許さねぇ!」

「俺は……!」

「オレたちは!」

『お前らみたいなヤツに、負けない!!』

 

 アスカとフリント、絆で結ばれたメダロッターとメダロットが叫ぶと共に、二人の身体は白く輝く。

 

「なんだ、この感じ……全身が熱くなって、力が溢れて来るような……」

 

 先頃のホウセンたちが放ったものとは真反対な、清浄なる煌き。

 フリントの背から伸び出す、燐光を纏う真っ白な昆虫の翅。

 それを前にして、ククリはひどく狼狽え後退りしていた。

 

「こ、この光……ま、()()()ッ!?」

 

 アスカたちがやろうとしていることに対して、明確に恐怖している。

 彼女の様子からそれを確信して、アスカとフリントは叫んだ。

 

『メダフォースッ!!』

 

 光が右腕のバスターマグナムに集まり、そして銃口から解き放たれる。

 光線は敵味方関係なくその場にいるもの全てを包み、飲み込み、視界を白く染め上げる。

 やがれ光が晴れた時、そこには赤く染まった光を全身に帯びるフリントと、()()のホウセンたちが立っていた。

 

「……ハ、ハハハハハッ!! なんだなんだ、驚かせやがってよ!! 何も起こってねェなァ!?」

「そ、そんな!?」

「不発かァ? それとも今使ったところで何の意味もない効果だったのか……どっちか知らんがまァ良いさ。テメェら纏めて死ぬんだからなァァァッ!!」

 

 アスカやフリント以外の面々が絶望してしまう中、勝ち誇ったように笑ってククリは命じる。

 

「トドメを刺してやれ、ホウセン!!」

 

 リリーやチャイカたちが攻撃を迎え撃つべく身構え、次なる攻撃に備えようとした時。

 名を呼ばれた当のホウセンは、その場で留まっていた。

 

「おい、ホウセン?」

「ぐ、が……あぁっ……!?」

「ホウセン!?」

 

 猛将のメダロットは苦しみに喘ぎ、その場で膝をつく。

 驚きながらもククリが自分のメダロッチで原因を探ると、そこに映っていたホウセンのステータスに、大きな異常が起きていることに気付いた。

 

「なっ、なんだ!? なんで……()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 飛将凱旋は、本来ならこれで得た全ての症状をロボトル終了時まで維持することができる。

 しかしながら今、ホウセンは先程手にした強大なプラス症状を完全解除され、逆にマイナス症状のみを残してその身を焼かれているのだ。

 これがフリントたちの発動したメダフォースによってもたらされた事態であることは、ククリにも容易に理解できた。

 

「クソがァ!! だが所詮強化を解除するだけのカスみてぇな能力だ、その程度で俺に勝てると思うな!!」

 

 引き続きホウセンに立ち上がって攻撃するよう指示を出し、ホウセンも苦しみながら飛びかかっていく。

 

「ナメてんじゃねェぜ」

「俺たちは、勝つ!」

 

 対するアスカも指示を出し、フリントは充填しながら右拳を突きつけた。

 ぶつかり合う両者の渾身の一撃。直後に片方のメダロッチから、アラームと共に音声が流れる。

 

《右腕・左腕パーツ、機能停止》

「は!?」

 

 そんな驚愕の声を上げたのは、ククリの方だ。

 見れば実際にフリントの拳を受けホウセンの腕はひしゃげており、さらに続く銃弾が右腕だけでなく左腕にまで貫通し、完全に粉砕されたようであった。

 飽くまでも相手は射撃パーツのはず。だというのに、格闘用に作られたホウセンが力負けしている事実に、ククリだけでなくその場の全員が信じられないと言った様子で見ていた。

 何かあるのは間違いないが、ホウセンの方に先程のマイナス症状以外の異常はない。

 ということは、何か起きているのはフリントの方だろう。そう思い、ヴァネッサとジャノメは再びメダロッチを操作し調査する。

 すると、原因はすぐに分かった。フリントの脚部に変化があったのだ。

 

「脚部特性……マスターピース?」

「どういうこと? ローンビートルの脚は違う効果だったと思うけど?」

「もしかして、これもさっきのメダフォースの力なノ?」

 

 マスターピース。その効果は、装甲以外の機体性能と自身のパーツの威力が全て通常の三倍になるというもの。

 ただし一定時間が経過すると自動的に解除され、元の脚部特性に戻る。この圧倒的な出力上昇により、フリントは容易くホウセンの腕を砕いたのである。

 そして、ホウセンの頭部は攻撃用ではない。本来の公式ロボトルなら完全に詰んでいる状況、それでもククリは反則行為で足掻く。

 

「クソッ、クソが……だったらホウセン自身を転送し直してマイナス症状を――」

「させるかよ!!」

「ハッ!?」

 

 だがその行動も既に読まれており、赤い閃きを纏うフリントのラピッドバルカンがホウセンを撃ち抜き、全てのパーツを破壊した。

 メダフォースという手を切ってなお、この醜態。ジャックは残っているがこの数相手ではどうしようもない、もう敗北と言って良いだろう。

 ククリは牙を剥き出しにして一度大きな地団駄を踏み、アスカの顔を睨みつける。

 

「テメェらの顔は覚えたぞクソガキめ……次に会ったらタダじゃおかねぇ、そのカブト共々絶対にブッ殺してやるからなァッ!!」

 

 言ってククリが地面に小さな筒状の物体を投げて壊すと、そこから凄まじい勢いで黒煙が立ち込め、視界を覆い隠す。

 そうして煙が晴れた頃には、ESCの構成員もそのメダロットたちも、まるで最初からいなかったかのように忽然と姿を消していた。

 だがその場に荒らされた旅館や破壊されたメダロットという明確な証拠が存在する以上、今回の事件が夢や幻などという事はあり得ず、セレクトや警察の捜査が入るだろう。

 

「な、なんとか助かった……」

 

 安堵して溜め息と共にそんな言葉を吐き出し、アスカはその場で尻餅をつく。

 直後、女性陣の視線が自分の方に集まっていることに気付いた。

 メイは顔を耳まで真っ赤にしてポーっと立ち尽くし、ユメも赤くなって両目を手で隠しつつも指の隙間からチラチラと、ヴァネッサは舌舐めずりしながら見下ろし、ジャノメに至ってはヨダレを垂らして食い入るように凝視している。

 

「ん?」

 

 不思議に思って視線を落としてみると。

 そこには、一切隠すことなく全員の前に晒されている、アスカ自身のシンボルがぶら下がっていた。

 

「あぁっ!?」

 

 戦いの激しさで夢中になっていたせいか、いつの間にか手で隠すのをすっかり忘れてしまっていたのだ。

 慌てて足を閉じようとするも、それはいつの間にかローアングルで目前まで接近していたジャノメの手によって阻止され、開脚状態かつ至近距離でスマートフォンにより動画を撮られてしまう。

 

「ちょ、ちょっと何してるんですか!?」

「隠さないで、こんなチャンス滅多にないからもうちょっと見せて!」

「いや撮らないで下さいよ!?」

「だいじょーぶだいじょーぶ、これ配信で流すとかじゃなくて個人的なアレの撮影だからさぁ!」

「ちっとも大丈夫に聞こえない!!」

「ぐへへ……良いモノ撮れちゃったぁ~♪」

 

 さらに、そんな騒ぎを聞きつけてか、見知った顔が集まって来る。

 マリンとエナとリオ、そしてホムラとヒロシの五人だ。

 アスカの裸体を目の当たりにして、リオはギョッと目を剥いた後に赤くなった顔を背け、ホムラは状況を察して「浴衣取ってくる!」と言い残しヒロシと共に走り出す。

 一方、マリンは眼を丸くして、エナはその痴態を興味深そうに見下ろしていた。

 

「わ、どうしたんですか日晴くん? 丸出しじゃないですか?」

「あらまぁ♡ いい眺め♡」

 

 アスカにとっては不運なことに、今日一緒に来た女子全員に裸を見られてしまったことになる。

 しかし悲劇はそれだけに留まらず、戦いの混乱が収まったのを確認しに現れたホテルの従業員たちも、こんな時に限って若い女性が多く――。

 

「いやあああああ!? 見ないでぇぇぇぇぇ!!」

 

 アスカは涙目になって、必死に自らの股を隠し、絶叫するしかなくなった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 それから約二時間後。

 ホムラが貰って来た浴衣を着たアスカは、事件後に駆けつけた20代の女性のセレクト隊員からの聴取に応じた後、部屋に戻っていた。

 ただし下着を用意する時間はなかったため、話している間ずっと下半身に風が通るような感覚がして、さらに自分の裸を見た女子たちの視線もあってずっと落ち着けずにいた。

 そして今ようやくその羞恥から解放され、ボクサーパンツを穿くことができたのだ。

 だがそんな思いをしたアスカがすぐに立ち直るはずもなく、ベッドの上で三角座りして深く長い溜め息をついていた。

 すると、メダロッチからフリントの声が聞こえて来る。

 

『いい加減元気出そうぜアスカ、せっかくの旅行なんだろ?』

「フリントの言う通りだぜ、フルチン見られたくらいでヘコむなって。いい経験になったじゃねぇか」

「全然良くないよ!? どういう経験!?」

 

 続いて傷心のアスカにメダロッチから届いた音声は、アオカゲのものだ。

 

『聞いてアスカ。気づいたんだけど、おちこんでるを並べ替えるとね、おちん――』

「うわぁ!? 言わなくて良いしなんで今それを!?」

『アオカゲジョーク。どや』

 

 励ますのかと思えば唐突に妙な下ネタを突きつけられそうになり、慌ててアスカは言葉を遮る。

 そんな風にホムラやフリントたちと話していると、突如として来客を知らせるチャイムが室内に鳴り響く。

 一体誰だろう、とアスカがドアを開いてみれば、そこにはメイがいた。頬は赤く染まって、どこかモジモジとしている。

 

「十々喜さん?」

「日晴くん、今……良いかな?」

 

 既に夜中だが、一体どうしたというのか。

 アスカが怪訝そうにしていると、後ろからホムラがニヤつきながら肩に手を乗せる。

 

「俺しばらく外出とくからよ、遠慮すんな。なんなら二人でベッド使っちまえ」

「いや、それはダメでしょ……」

 

 呆れたように笑いつつも、先程より顔を赤くしているメイを招き入れ、バルコニーの方に向かう。

 そうして到着の後、隣り合わせに手すりに寄りかかって夜景を眺めつつ、アスカの方から問いかける。

 

「で、どうしたの? 眠れない?」

「えっとね、私……日晴くんに助けて貰ったのに、何もお礼言えてなかったなって。だから……ありがとう」

「あはは、どういたしまして。でもそんなに気にしなくて良いよ。友達のためだもん」

 

 アスカがそう微笑みを返すと、メイは顔を赤くして俯き、グッと唇を引き結ぶ。

 ややあって顔を上げると、彼女は再び口を開いた。

 

「そっ、それとさ。あの……」

「うん?」

「……わ、私も日晴くんのことを、アスカくんって呼んでも……いい、かな? あと私のことも、名前で呼んでくれたら……嬉しいなって」

 

 照れた様子で言葉を紡ぐメイを見て、自分も気恥ずかしさを滲ませつつも、アスカはそれに頷いた。

 

「良いよ、メイ……ちゃん」

「~~~!」

 

 名を呼ばれると、メイは真っ赤な顔で胸を押さえて悶え、呼吸を荒げる。

 そして深呼吸してアスカの方に向き直った後、覗き込むように彼の目を見つめ身を寄せた。

 

「アスカくん、私ね! 会った頃から助けて貰ってばかりだけど、これからは変わるよ! いつまでも助けられるんじゃなくて、頼られるくらい強くなるから! だから、だから……」

 

 言葉をそこで区切った後、メイは大事そうにアスカの両手を取って、月明かりの下でいつもの屈託のない笑顔を見せる。

 

「私のこと、ずっと……ちゃんと見ててね!」

 

 その心底嬉しそうな笑顔を見た途端、アスカは自分の胸の鼓動が高鳴り始め、顔に血が集まっていくのを感じた。

 

「約束だよ!」

「う、うん」

 

 戸惑いながらも頷く彼を前に、満足気に笑うメイ。

 二人はそれからしばらく、メイが眠くなって部屋に戻るまで談笑し続けるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ――アスカたちがロボトル大会を終え、ESCとの戦いを乗り越えた、その翌朝。

 大阪府のエビスノ市の公園にあるタコ焼き屋台『あ~す』を、一人の端正な顔立ちの人物が訪れた。

 黒のインナーカラーが入った白い長髪に後ろ髪をうなじの辺りで一つに束ねて垂らし、タレ気味な目と黄色い瞳は鉄板の方に向いている。

 身に纏っているものはグレーのシャツとダークブラウンのサスペンダー付きスキニーパンツ、さらに黒色のスニーカーだ。

 また両耳にはいくつかシルバーピアスが開いており、左腕にはシアンブルーのメダロッチを装着している。

 

「まいどリョウちゃん。今日も、いつもの8個入りのソースマヨでええんか?」

「おー、頼むわ!」

 

 店主である中年の男からリョウと呼ばれた、目鼻立ちの整ったその13歳ほどのメダロッターは、料金を先に出して近くのベンチに座り、タコ焼きを待つ。

 その間にメダロッチで起動したのは、ジャノメの配信。今回はメダリオン学園で講師をやったという動画のようであった。

 だが程なくして、店主がタコ焼きを運んでくる。

 

「ヘイお待ち」

「おぉ、これこれ……」

 

 リョウは熱いタコ焼きを頬張り、破顔した。

 

「んん~! やっぱここのタコ焼きが一番ウマいわ! 皮の丁度いい焼き加減とナカのトロみ、ンでタコ! まさに『タコ焼きとは地球』! 最ッ高のバランスや!」

「アハハハ! おおきになぁ!」

 

 タコのように丸い頭の店主がそう返し、タコ焼きをもうひとつおまけとして乗せてくれる。

 動画を見ながらそれを食べ進めていると、今度は近くを通りかかった同年代の男女、リョウのクラスメイトが声をかけて来た。

 

「あっ、リョウくんや」

「今年も地方統一戦、頑張ってね!」

「絶対応援行くからなぁ~!」

「キャー! リョウくんこっち見てー!」

 

 するとリョウは自分への黄色い声援に対してグッと親指を立てた後、手をブンブンと振って返事をする。

 

「任せとき、バッチリ優勝したるからな!」

 

 そうしてクラスメイトとも別れ、映像に再び目をやった、その時。

 動画に映っているジャノメと対決中のKBT使いの少年――日晴 アスカの姿を見つけて、リョウはハッと目を剥いた。

 

「まさか……!」

 

 それきり沈黙し、リョウはタコ焼きを食べ終えると、容器をゴミ箱に捨てて店主に向かって両手を合わせる。

 

「ごちそうさん。ンでおっちゃん、急やけど近い内に東京の方行くわ」

「えぇ!? いきなりやねぇ、どうしたん? 何しに行くん?」

「そら決まってるやろ」

 

 リョウは、唇に笑みを浮かべる。

 先程までとは違う――獰猛な、飢えた虎のような笑みを。

 

「ロボトルしに、な」




メダロット解説コーナー

[機体名]
ファンシーアール

[型式番号]
MDT-FSL-NG01

[性別]


[パーツ]
◆頭部:パルランマギア(格闘/ハイパーウィルス/がむしゃら/3回)
◆右腕:マジカルエボルブ(格闘/エミットハンマー/なし)
◆左腕:テロレタイグニス(射撃/パワーミサイル/速射)
◆脚部:パッペンピッポ(飛行/ホール)

●HV:0/0/0 合計:0/0

[備考]
FSL型のニュージェネレーションズ・モデル。
モチーフは従来機同様に魔法少女、かつ『伯爵(アール)』という名から貴族令嬢も含んでいる。
右腕の武装の見た目は鞭だがハンマー系の武装から変わっていない。ただし、左腕はファイア系やナパームからミサイルへと変化した。
基本構成に関してはこれまでとほとんど同じでパワーに優れる機体。
また全ての攻撃が全体特性及びがむしゃらを持つため、脚部特性:ホールにより威力を向上させることが可能である。

ジャノメをリスペクトしたのか、ところどころにヘビの意匠も加わっている。
なお、本編で登場した際のカラーリングは紫と黒髪だが、本来はピンクのドレスかつ金髪である。

本作品のオリジナルメダロット。
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