メダロットSAGA   作:正気山脈

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FIGHT.18[ウーラリの毒牙]

 大阪からやって来たアスカの幼馴染、重永 リョウ。

 泊まる場所のない彼女はメダリオン学園の寮にやって来て教師陣・寮母とのロボトルに勝利し、メイの部屋に宿泊することを許可された。

 その戦いが終わった夜、一度席を外していたメイはリョウの待つ自分の部屋に戻っていく。

 

「リョウちゃ~ん、そろそろご飯食べに……」

「おう、ええで」

 

 扉を開いた時、メイの視界に飛び込んで来たのは下着姿のリョウだった。

 目を数度パチパチとさせた後、メイは慌てて扉を閉める。

 

「なんで裸!?」

「別にそんなん、普段からウチはこうやけど」

「普段からそうなの!?」

「今夏やし脱いだら涼しいやろ? それにメシ終わったらすぐ風呂やし」

「……確かに!」

 

 ならば自分も脱ごうか、とまで考えたところでメイはハッと目を見張って頭を振った。

 

「いやでも寮の中では服着ようよ!?」

「えぇ~」

 

 ぶー、と薄緑色のブラとパンティスタイルのまま唇を尖らせるリョウ。

 そんな折、新たに室内に呆れ顔のリオと苦笑するユメがやって来る。

 

「何やってんのアンタら……」

「そ、その格好のまま外出ちゃダメだよ?」

 

 三人全員からそう言われた以上、何も着ないワケにはいかない。

 リョウはそう思ってか、ゴソゴソと自分の衣服の中から取り出したウィンドブレーカーを上から羽織り、そのままジッパーを閉じて彼女らに見せる。

 

「じゃあこれでええか?」

 

 ややサイズが大きめであるためか裾も長く、まるでミニスカートのようになっている。

 はぁ、とリオは頭を抱えて息をついた。これでは薄い布地にギリギリで隠しているだけだし生足が丸出しなので、どちらにせよ男子たちの目の毒だ。

 

「なんでそれで大丈夫と思えるのよ」

「なんや、何がアカンねん? ウチこんなにカワイイやろ」

「関係ないわよ……自分で言ってるのも変だし。アンタさぁ、裸族って言うか、露出狂の気でもあるワケ?」

「いや別にあらへんよ、裸族とか露出狂とかそんなんただの変態やんけ」

「何なのよマジで」

 

 尚も文句を垂れるリョウに対し、とにかく追い出される前に下だけでもちゃんとした服を着るよう三人が告げると、ようやく渋々ながら彼女は多くの着替えの中からホットパンツを着用して共に食堂へ出ていく。

 到着すると、そこには既にアスカとホムラ、さらにトライクロウズの面々の姿がいる。

 

「おまたせ」

「ウチやでー」

 

 女子四人組が合流し、これで九人。

 それぞれ夕食を食べすすめ、カレーを頬張っているホムラが「なぁ」とリョウに声をかける。

 

「アンタも天領杯出場目指してんのか?」

「あぁん? 何を言うとんねん、目指しとるのは優勝や! ウチは銀河で一番強いメダロッターやからな! しかもカワイイ!」

「大きく出るねぇ、面白ェ。でも優勝は譲らねーよ、勝つのは俺だ」

 

 向かい合った席にいる二人は互いに見つめ合い、視線が火花を散らす。

 そんなホムラに対し、隣に座るリオは彼の耳を摘まんで思い切り引っ張った。

 

「痛ぇな!? なんだよ!?」

「別に」

「あぁ!?」

「はぁ?」

 

 いつものように、今度は眉間にシワを寄せるホムラとムスッと頬を膨らませたリオが睨み合う。

 リョウは納得した様子で数度頷き、二人を指差した。

 

「おふたりさん仲ええんやな~、もしかして付き合っとるん?」

『ンなワケないだろ!!』

 

 ダンッ、と二人同時に机を叩いて「やっぱなかよしやん」とリョウの笑いを誘い、指摘を受けホムラとリオは互いに顔を背ける。

 アスカは苦笑しつつ、コホンと咳払いした。

 

「俺だって優勝を目指してるんだ。ホムラにも、リョウちゃんにも負けるつもりはないよ! だからまずは地方統一戦で良い戦績を残さないと!」

「ウチも手加減せぇへんで? むしろガンガン来いや!」

「姫たちを忘れて貰っちゃ困るんだけどぉ~?」

 

 快活に笑って、リョウは拳を掲げる。加えてメイも隣で意気込んでおり、タマキたちもロボトル大会への意欲を見せている。

 そんな彼女たちと話しつつ、ふとアスカはあることを思い出して視線を上げた。

 

「そういえば、()は今どうしてるんだろう……」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 同じ頃。

 アガタ遺跡のある山の中、木々に囲まれ迷彩柄のテントがひとつ、ひっそりと立てられていた。

 内部には、電気式ランタンの光を頼りに座って読書している少年が一人いる。

 メダリオン学園に通う生徒の一人、早総 ノアだ。

 ペットボトルに入った水を口に含みつつ、書籍を読み進めていると、左腕のメダロッチから着信音が鳴り響く。すると彼は読書を中断して、すぐさま通話に応じた。

 

「どうした」

『怪しい集団が遺跡の方に接近中です。一瞬、ピエロの覆面がフードの隙間から見えました』

ESC(ヤツら)か……分かった、すぐに向かう」

 

 そう言って、ノアは全身を覆う黒い外套と無機質な白い仮面を装着し外に出る。

 テントの傍には一体のメダロットが胡座をかいて控えており、主人が現れると共に立ち上がった。

 青いドット迷彩のボディカラーにクリアレッドの瞳、反り返った大きな二本の黄色い触角。両腕上部には肉抜きのされた装甲の内側に何らかの武装が仕込まれているのが見て取れる。

 これはカミキリ型メダロットのNG機、名は『MTD-LHB-NG01 エイシイストN』。KWGのオニハヤテが忍者であるのに対し、こちらは軍隊の潜入工作員のような印象だ。

 

「キバマル……イヤ、K。行クヨ」

御意(ラジャー)

 

 マントの内側に仕込んだボイスチェンジャーを起動したノアは、そう告げるとキバマルと共に素早く走り出した。

 そうして遺跡の入口前に先んじて到着した後、すぐにピエロの覆面の集団が姿を現す。

 ESCの面々は先回りされていたことに動揺しつつも、後ろから歩み出て来ようとする一人のために道を開ける。

 姿を現したのは、羊の角が付いたヴェネチアンマスクを被り、ドレスを纏う青い長髪の人物。格好は女性そのものであるが、ボイスチェンジャーを使っていない低音の男声で語りかけて来た。

 

「あらぁ、もしかしてあなたが遺跡守ちゃん? 思ったより、小さくてカワイイのねぇ?」

「……去レ」

「そう言わないでぇ。アタシはウーラリ。よろしくお願いするわ、可愛いコちゃん?」

「去レ」

 

 これ以上は警告しない、とばかりにノアは自らのメダロッチを構える。

 するとウーラリは「オホホホホッ」と高笑いして、自身も部下たちと共にメダロッチを操作し始めた。

 

「そう言われて素直に帰るワケがないでしょう? やっておしまい!」

『メダロット転送!』

 

 ボロゴブリンやゴーフバレット、マジカルピエロにワンホイールなどESCが主に使う無数のメダロットが立ち塞がる。

 さらに、ウーラリ自身はSM嬢型の『MDT-SMJ-00 ウィップワールド』と花魁型の『MDT-OIR-00 アリンスダユー』を転送し、くつくつと笑う。

 

「クズドモガ……K、マダラナイフ」

御意(ラジャー)

 

 タンッ、と大きく踏み出し敵陣へ躍り出ると、K(キバマル)は自らの右腕から短い刃をバタフライナイフのように展開させ、斬り込んだ。

 レンジソード。敵の機体との距離に応じて、貫通攻撃・全体攻撃の二種を使い分けることができる格闘武装である。

 敵の攻撃は回避しつつ次々に斬り倒し、ノアとKは各個撃破を重ねた。

 そうすると、ウーラリはマスクの内から含み笑いを漏らしながら、自身の機体に指示を下す。

 

「アリンスダユー、ヒダリテアリンス」

「ありんす~」

「それとウィップワールド、ハニーウィップ」

「アハハハッ!」

 

 アリンスダユーが発動したのはファイトブースト、味方の機体の格闘パーツの性能を向上させる機能を持つ。

 そしてウィップワールドの右腕のムチも、先のヒダリテアリンスにより、当然出力が増している。

 高速で振り抜かれるそれを、Kは持ち前のスピードで回避しつつ、冷却を終えて攻撃準備を整えた。

 

「K、がむしゃらでマダラパルス」

御意(ラジャー)

 

 返事と共に左腕の上部が展開すると、スピーカーのようなものが露出し、そこから耳を裂くような音が鳴り響いて近場にいたウィップワールドを襲う。

 これもまた格闘武装、ハイパーウェーブである。ウェーブ症状付与に加え貫通性能を有するが、使用後の冷却中の回避・防御が不能となるリスクを持つ。

 放たれた音波は、しかし標的に命中する前に無理矢理肉壁として引き摺り出されたゴーフバレットに阻まれてしまった。

 

「チッ!」

「アハッ! それじゃ避けられないねェ!」

 

 ウィップワールドはそう言ってムチを振り上げ、Kへと仕掛けていく。

 だが、その瞬間。

 二体のメダロットの間を、()()()()のメダロットが割り込む。

 右腕にトゲ付きの盾を持つ、漆黒の騎士の風貌。左手には柄の双方向に刃が付いた剣を装備し、足は大きなタイヤの一輪駆動となっている。

 暗黒騎士型メダロット『MDT-DNT-01 シャドウアーマー』。構えた盾でウィップワールドを弾き飛ばし、サンダー症状を与えその場に停止させた。

 敵からの攻撃に備え、いつでも守りに入れるよう、戦いに入る前からノアが指示を出していたのだ。

 

「いつの間に!?」

「ぐ、鬱陶しいィ……!!」

 

 全身を襲う電流で動きを止めてしまったウィップワールド、その頭上に突如として月の光めいた白く淡い輝きが差し込む。

 瞬間、今まで愉快そうな声を上げていたウーラリは、ハッと息を呑んで夜空を見上げた。

 

「――上!?」

「遅イ」

 

 そこにいたのは、全身が真っ白な『月下美人』と呼ぶに相応しい、花のような女性型メダロット。

 サボテン科の花にしてコウモリをモチーフにする『MDT-QON-00 ナイトクイーン』だ。

 地上の敵機が見とれている間にビーム攻撃でウィップワールドの脚部を破壊、さらにKとシャドウアーマーも他の敵機を仕留め続け、戦況を優位に進めていく。

 数の上では圧倒的であったにも関わらず、徐々に追い詰められていくのを実感し、ウーラリは腹の底から笑い声を発した。

 

「不意打ちとはねぇ~! そういう手段を選ばないところ、とっても素敵だわぁ! 好きになっちゃーぁう!」

「気持チ悪イヤツダ」

「照れちゃってぇ……でもこっちはあんまり時間をかけたくないし、そろそろイカせちゃおうかしらぁ?」

 

 一人と一機が笑い合い、その身体が禍々しく毒々しいピンク色の光に包まれていく。

 大技が来る。それを察して、ノアとKたちも身構えた。

 

「ウィップワールド、メダフォース発動よォ~ン!」

「了解ィ!」

『メダフォース、官能催眠(エロティック・ヒプノシズム)!』

 

 そしてウィップワールドの両目からハートの形を取る光線がKたち目掛けて発せられようとした、次の瞬間。

 三体のメダロットは近くにいたアリンスダユーを押し出し、その体躯でメダフォースを発動したウィップワールドの視界を完全に封じた。

 

「なっ!?」

「アリンスダユー……!?」

 

 味方のハート光線を受けてしまい、花魁のメダロットはガクリと項垂れる。

 その直後、アリンスダユーはビクッと機械の身体を震わせて夜空を見上げた。

 

「アヒッ、アヒヘヘヘヘヘェ♡ 気持ちいいでありんす~♡」

 

 眼部にハートの光が灯って完全に錯乱しており、まるで酩酊しているかのように足取り(戦車)も覚束ない。

 ウーラリとウィップワールドのメダフォース、官能催眠は、攻撃を受けた全てのメダロットにマイナス症状のロックとゼログラビティを付与する技。

 アリンスダユーがそれを受けたこと、さらに自陣の機体に被害がないことを確認したノアは、すぐさまKと共に青い光を纏って反撃に打って出る。

 

「終わらせる。メダフォース、兜割(かぶとわり)

御意(ラジャー)

 

 いつかアスカとフリントのコンビと対決した時のように、その場で大きく跳躍して空中で回転するK。

 そのまま呆然とするウィップワールドの頭目掛けて、縦一文字に刃を振り下ろした。

 

「エッ?」

 

 間の抜けた声を上げた後、頭の真ん中から股までSM女王のパーツが一撃で両断されてしまう。

 一刀兜割。頭部を狙った高威力の格闘攻撃を行うメダフォースで、頭を外したとしても別パーツにほぼ確実に命中し、ダメージが頭部を含む別パーツに貫通する二段構えの大技だ。

 ウィップワールドを失ったウーラリは、息を呑みつつ再びメダロッチを構えようとする。

 だがその寸前、今度は遺跡の中からもう一つの人影と一体の機影が出現したのを見て、踏み止まった。

 人間の方はノアと同じく黒いマントに無機質な仮面、しかし彼よりも背が高い人物。メダロットの方は、クワガタという昆虫を全身で表したような、両肩から大アゴを天に伸ばす重甲な青い機体。『MDT-KWG-06 ティレルビートル』である。

 

「新手でありんす!?」

「ここまでみたいね……みんなもやられそうだし」

 

 ウーラリの言葉通り、ノア側の増援である一人と一機は軽々とメダロットたちを千切っては投げ、機能停止に追い込んで行く。

 これでは勝てない。ウーラリは懐から球状の物体を取り出すと、それを地面に投げ破裂させる。

 すると凄まじい勢いで煙が噴出し、視界を黒く埋め尽くした。

 

「退却、退却よぉ~! また会いましょうねぇ~可愛いコちゃん!」

 

 その呼びかけに応じて慌ただしい足音が聞こえ、煙が晴れると共にESCの面々は忽然と姿を消してしまう。

 増援の男は舌打ちしつつ、仮面を外して「よっ」とノアに話しかける。

 男の正体は、世界に名を馳せる最強のKWG使いのメダロッター、百舌鳥 ユウトだった。

 

「お疲れ様です、師匠」

「お前も御苦労さん」

「いえ。遺跡に近付き盗掘を行う者を討つこと、野良のメダロットを近付けないようにすること……それが()()()()()としての僕の使命ですから」

「地方統一戦、出るんだよな。そん時ここは俺が守っといてやるから任せとけ」

「ありがとうございます」

「っつーか……お前は天領杯にも出場しろ。んで世界大会を目指せ」

「え?」

 

 キョトンと小首を傾げるノアに対し、ユウトは微笑みながらその頭を撫でる。

 

「お前はもっと、広い世界を知った方が良い。使命を果たすのも良いがな、ロボトルの才能があるのに遺跡や学校に行くだけじゃ勿体ないぜ。相棒も泣いちまうわ」

「僕は……別に」

「まぁ、俺も特に強制はしねぇさ。でもな……面白いぜ、世界ってのは」

 

 夜空を仰ぎ、星々を見つめながら紡がれるユウトの言葉。

 一方のノアはその意味を理解しかねるまま、メダロットたちを再転送するのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 翌朝。

 朝食を食べるため、アスカたちは再び食堂に――またもやリョウが下着姿で寮内を徘徊しようとするというトラブルを経た後で――集結していた。

 

「おはよ~」

「ウチやでー」

 

 特に悪びれる様子もなくヘラヘラと笑い、リョウはメイたちと共に挨拶する。

 アスカも同様に「おはよう」と返し、しかしホムラからは返答がない。

 見れば、彼の視線はスマートフォンに釘付けになっている。呆れ返って、リオは溜め息をついた。

 

「あんた、またジャノメの配信を……」

()()()……クソッ、なんであの野郎が!?」

 

 その場にいる全員が、ホムラの発した言葉に耳を疑う。

 熱狂的にジャノメ好きを公言する彼のことなので、ジャノメの動画配信チャンネルをチェックしているものだとばかり皆が皆考えていたのだが、そうではなかった。

 ホムラが一同に提示した画面に映っていたのは、ある男の設立したチームの活動を配信するためのチャンネルだ。

 その名も『リクドウ組放送局』。

 

『ようこそ視聴者ども、俺様のチャンネルへ』

「リクドウ、って鷹峰 リクドウ!?」

「この人が……!」

 

 スマートフォンの中のリクドウは、高級な黒革のソファーに座して片肘をつきふんぞり返り、薄く笑みを見せている。

 鷹峰 リクドウ。今や日本で彼の名を知らないメダロッターはほとんどいないとされる程に有名な、通称『魔王』。

 

『今日は特別な報せを送るため、動画を配信することにした。近々地方統一戦があることはメダロッターの視聴者なら全員知っているだろう。そして、この俺様がその中部戦に出場することも』

 

 喉奥でくっくっと笑いつつ、リクドウは組んだ長い脚を解く。

 

『だが俺様の目的は飽くまでも世界制覇、世界を手中に収めることだ。まずはこの日本という国を俺様色に染めなきゃあならない。そこで思いついたことがある。オイ、ミツ』

『はっ!』

 

 傍で立って控えていたミツと呼ばれたセンター分けの黒い長髪の美男子にカメラが向き、一礼の後に強い語気で話し始める。

 

『我らリクドウ組はその力を全国に示すため日本各地に遠征し、全ての地方統一戦に出場・優勝する!! これ即ち、ロボトルの天下布武!!』

「……な……!?」

『では紹介しよう、リクドウ組の優秀なメダロッターたちを!!』

 

 バサァッ、と大きな音が立つほどの身振りでミツが腕を振るい、リクドウの背後の赤い幕が降りて、そこから数名の男女が姿を現す。

 その顔触れを見て、タマキは眉をひそめる。

 

「こいつら全員見たことあるわ。みんな、かなり強いメダロッターだったはずよぉ」

「強豪が揃ってリクドウ組に加わったってこと!?」

『まずは銀山(ギンザン) ヒヨリ。圧倒的ゲームスピードで対戦相手を翻弄する、私ほどではないが中々の鬼才だ』

 

 言われて前に進み出たのは、日焼けサロンで焼いたような全身が綺麗に褐色肌となっている小柄な少女で、髪は金色でツインテール状にしており、長い睫毛の目元をラメ入の色取り取りのストーンで飾っている。

 爪も多彩なネイルチップで装飾し、服装はヘソ出しのノースリーブの黒いトップスにデニムのショートパンツと、まさしく『ギャル』と言うべき風体ながら愛らしさを併せ持つ少女だった。

 

『ヒヨリだよぉ~☆ アタシはリクドウしゃまの右腕やってるんで、知らないみんなはヨロシク~☆ 近畿戦で会お~ねぃ☆』

『喋れなどとは言ってないぞサル女』

『ハァ゛~ン゛!? なんか言ったかガリ勉デコ助!! ケツに腕突っ込んで目玉引っ張り出すゾォ゛!?』

『下品なガキザルは放っておいて続いてのメダロッターを紹介しよう』

『おいコラ!! 無視すんなクソデコ!!』

 

 極限まで声を荒げ、牙を剥き出しにしてミツを威嚇するヒヨリ。

 その様子を映像で見ているユメは、ポカンとしながらひとり呟く。

 

「な、なんかリオちゃんと狩兼くんみたいだね……」

「だね~。すごく仲良さそう」

 

 続くメイの言葉には、ホムラとリオが無言で睨みつけて否定するが、当のメイは全く気付かず意に介していない。

 配信映像は、その間にも流れていく。

 

『北海道を攻めるは無骨なる猛将反町(ソリマチ) ナガヨシ! 九州には鬼将軍間岸(マギシ) カツイエ! そしてこの私、御館様が最も信頼を寄せて下さっている真の右腕たる常盤(トキワ) ミツヒデ!! 我が頭脳を以て、関東を制圧させて貰う!!』

「関東戦って、この人はこっちに来るってこと!?」

『他にも紹介しきれないほど数多くの有力な勇士が、全ての地方を同時に攻める!! もはや一介の無名メダロッター如きで我らを、御館様を阻むことは叶わぬ!!』

 

 拳を握って熱弁を振るった後、リクドウの乾いた拍手によってミツヒデの演説は終わりを告げる。

 そして、口角を釣り上げながら立ち上がった。

 

『俺様やリクドウ組に恨みがあるヤツ、良く知らないが気に入らねぇってヤツ、どうでもいいと思うヤツもいるだろう。俺様はその全てを飲み干し、まずは日本一の座を頂く。そしてあの王様気取りの白藤 ハジメにも百舌鳥 ユウトにも勝ち、世界を取る』

「……!!」

『プロメダロッターはこの辺りでそろそろ世代交代が必要だ。ヤツら二人より俺様の方が優れていることも、じき証明されるだろうぜ。楽しみにしてろ下々の凡愚ども! フフ、ハハハ! フッハハハハハハァー!』

 

 リクドウのそんな高笑いを最後に、配信は終わる。

 しばしの間一同は静かに黙していたが、やがてリョウとホムラがそれを破った。

 

「なんや面白いことになって来たやないか、俄然やる気ィ出て来たわ」

「俺はリクドウの野郎には借りがある、配下が来るってンなら上等だ。ミツヒデって野郎にもたっぷり礼をしてやるぜ……!!」

 

 二人がそう言って頷き合い、タマキもケンスケ・ミヤマと共に今後の方針を相談し始める中、アスカはまだ沈黙している。

 メイは怪訝そうに、その顔を覗き込んだ。

 

「アスカくん?」

「なんか、上手く言えないんだけど。リクドウの言葉にすっごくムカついた」

 

 そう告げた後、アスカは「だから決めたよ」と言って唇を引き結んで顔を上げる。

 

「リクドウ組を潰す……あいつらを、ハジメさんと同じ世界(ステージ)には絶対立たせない」

 

 赤く燃える、しかし静かに滾る闘志の炎。

 そんな瞳を見て、さらに彼の手の中のコップが強く握り締められているのを目にして、メイもホムラもぐっと息を呑む。

 一方のアスカはその視線を受けてハッと顔を上げ、力みすぎた手を緩めて微笑みかける。

 

「とにかく、これで負けられない理由が増えたね。俺は彼らにも勝つよ」

 

 こうしてアスカらは気を引き締め直し、来る地方統一戦に向け決意を新たにするのであった。




メダロット解説コーナー

[機体名]
エイシイストN

[型式番号]
MDT-LHB-NG01

[性別]


[パーツ]
◆頭部:マダラホーン(補助/カーネル/なし/3回)
◆右腕:マダラナイフ(格闘/レンジソード/なし)
◆左腕:マダラパルス(格闘/ハイパーウェーブ/がむしゃら)
◆脚部:マダラステップ(二脚/ブラッドステイン)

●HV:0/0/1 合計:1/1

[備考]
LHB型のメダロット。ライバル機であるKWG忍者のオニハヤテと対になるようにするためか、モチーフは潜入工作員となっている。
敵機との距離によって特性が変化するレンジソードと、妨害攻撃を行うハイパーウェーブを併せ持つ。敵からの攻撃に対してはカーネルで回避力を高めることでやり過ごせる。
武装は貫通や全体攻撃を持つため、脚部特性のブラッドステインとの相性が良い。

ちなみにこの機体を使う際、ノアは素性を隠すためキバマルをコードネームで呼んでいる。

本作品のオリジナルメダロット。
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