ホムラやリョウ、リオたちもサイオウ市の夏祭りに赴いていた。
「おっしゃあ! 景品貰っていくぜおっちゃん!」
「違う! 違うで、タコ焼きは地球なんや! もっとタコの大きさをやなぁ……!」
出店のメダロット射的に参加したホムラは、バレットと共に景品として置かれている限定品のメダロットのパーツを入手。
リョウは、タコ焼き屋の店主に本場大阪の味について熱弁している。
そんな彼らの様子を見て、リオは呆れたように溜め息を吐き、ユメは苦笑。トライクロウズの三人組は、他の店や景品を巡って四苦八苦していた。
「へっへっへっ、今なら浴衣美女へのナンパも成功するかもなぁ」
「するワケないでしょスケベ」
「あぁ?」
「はぁ?」
いつものように睨み合うホムラとリオ。
そんな二人へと、背後から声をかける者が現れた。
「君たち、ちょっと良いかな」
「あん?」
ホムラは睨みを利かせたまま振り返って、そして目を剥く。
「……テメェは」
「ウソ!?
そこに立っていたのは、先日のリクドウ組放送局の配信でも映っていた長髪の男、常盤 ミツヒデ。
ホムラは無言でリオたちをかばうように前に立ち、その隣にリョウも並んだ。
「私のことを知っているとは、光栄だ。百発百獣のホムラくん」
「そっちこそ俺を知ってんのかよ」
「まぁ、な。リクドウ様ほどではなくとも、愛知では君も有名人だよ」
「で? 一体何の用だ」
「そうだな……では手短に、単刀直入に言おう」
薄く目を細めるミツヒデが、ホムラに対し告げた言葉は――。
メイからの誘いで、彼女の実家である宮城の七夕祭りとそこで催される二人一組のロボトル大会に参加することになったアスカたち。
浴衣に着替えてメイの家族たちと共に現地へ向かったアスカは、現地で大会のチラシを発見し、それに目を通す。
そこには参加レギュレーションや賞品などについて記載されており、今回のロボトルではリーダー機はなく二体両方が機能停止するかタイムアップ後の判定によって勝敗が決まるという。
「へぇ、優勝賞品は新型メダロットのパーツなんだ。しかも七夕がモチーフ……」
『こりゃあ負けらんねぇなアスカ!』
メダロッチから聞こえるフリントからの言葉に頷いて、アスカはメイと一緒に大会の受付に向かった。
「七夕ロボトル大会にようこそ……ご参加の方ですね?」
「あ、はい」
「では使用するメダロッチとメダルの登録をどうぞ」
受付の男と手短にやり取りを済ませると、二人は早速待合所として設けられたテントの方に足を運んだ。
背の部分に整理番号の書かれた用紙が貼り付けられたパイプ椅子が並んでおり、既に何名も参加者が集まっている。
だが、その待合所はどこか奇妙な様子であった。
「な……なんか」
「他の大会の時と雰囲気が違う、ような……?」
二人の視線の先にいるのは、ペアと思わしきやたらと距離が近い男女の面々。
アスカとメイが首を傾げていると、後ろから二人を眺めていたサクとエミが声を掛けて来た。
「やっと気付いた? そ、この大会ってカップル参加多いのよ。まぁ七夕だから当たり前っちゃ当たり前だけど」
「お友達同士で参加したりも、してるみたいです……たまに女の子同士とか男の子同士のカップルも混ざってるけど……」
それを聞いて再び周りを見てみると、確かに指を絡ませたり腕に抱きついたりなど、明らかにベタベタしている。
さらに、エミの指摘した通り同性同士の参加者も。
友人同士のペアと見られる選手もいるとはいえ、アスカもメイも気恥ずかしさから顔を赤く染めてしまう。
「え、えっと……あ、あんまり気にしないようにしよう!」
「う、うん」
そう言った二人だが、意識し合ってしまっているのか度々互いの視線がぶつかって、慌てて目を逸らすという行為を繰り返している。
サクがニヤニヤしながら、ハナとエミは微笑みながらその光景を見守るが、そんな穏やかな時間は突如として背後から聞こえた大声によって打ち壊されてしまう。
「イエェェェーイ! 今年も俺ちゃんがやって来たゼェェェーイ!」
一同が驚いて振り返ると、そこには右目にモノクルサングラスを着け、大きく見事な龍の文様が目立つ青い浴衣を纏う茶髪の男とその取り巻きがいた。
左右の手にイカ焼き・わたあめ・チョコバナナ・リンゴ飴・フランクフルト・トルネードポテトを一本ずつ串を指で挟んで持っており、それを器用にひとつずつ食べている。
「祭りといえばこの最強の伊達男、
「うわっ、出た」
眉間に皺を寄せ、露骨に嫌そうに吐き捨てるサク。
アスカはひっそりと、この異様な人物の詳細を尋ねる。
「誰なんですかあの変な人……?」
「昔からこの辺に住んでる声のデカいアホよ。祭りの度にああやって派手に騒いでんの」
サクが呆れ顔で溜め息を吐くと、声を潜めていたにも関わらずその会話が聞こえたのか、件のマサムネが近寄って来た。
「威勢の良いこと言うじゃねェかキレイな姉ちゃん! 俺ちゃんに惚れてんのかい?」
「なんか初対面みたいな感じ出してるけど、多分今日で会うの7回目くらいよ」
「そうだっけ? でもそんなに会ったことを覚えてくれてるたァ光栄だねェ、俺ちゃんと一緒にどうだい?」
「毎回言ってるけど絶対イヤ」
「……ヘッヘッヘッ」
取り巻きたちにイカ焼きやわたあめを渡した後、マサムネはその場で地に両手をついて項垂れる。
「断られたぁぁぁ~……」
『も、ものすごい落ち込んでるー!?』
アスカとメイが驚き、サクは肩をすくめる。
「分かるっしょ? アホなのよコイツ。会ったことすら忘れてるクセに、何回断ってもナンパして来るのよね。本当にウザい」
「あはは……」
辛辣だなと苦笑するアスカだが、一方でエミは少し違った様子を見せていた。
「でも、油断しちゃダメ、です。あの人は有名なメダロッターなんですよ」
「そうなの?」
「リクドウ組っていうすごく強くて実績のあるチームから勧誘されたって噂、ありますから」
「あのリクドウ組から!?」
つい先日、動画配信サイトで地方統一戦で各地への遠征を宣言していたあの鷹峰 リクドウが、戦力として欲している。
それは彼の実力の程を物語るのには十分であり、アスカもグッと息を呑んだ。
当の本人は未だに落ち込んでいるが、そんな彼の前に取り巻きの中から一人の女が声をかけて来る。
「マサムネ様、どうかお気を確かに……大会が始まりますので」
菖蒲の花の柄が入った白い浴衣を着ている、肩にかかる長さの紫髪の長身の女。
キリッと唇を引き結んで真っ直ぐにマサムネを見つめており、彼とは正反対な生真面目さを感じさせるようだ。
するとマサムネはサッと立ち上がって、再び取り巻きたちから串焼き類を受け取って食べ始める。
「そうだな!! 俺ちゃんはハーレム帝国を築き上げる夢を持つ男!! 1回くらいで落ち込んでたら『独眼竜』マサムネの名折れだゼ!!」
「いや、あの方に断られるのは累計13回目です。お互い正確に覚えていらっしゃらなかったようですが」
「数字とか細かいことはどうでもいいゼ!! とにかく大会の準備すんぞコトメ!!」
「かしこまりました」
コトメと呼ばれた女はそう言った後、アスカたちに一礼してからその場を去っていく。
一体今のは何だったのだろう。そう思っていると、今度はメイが浴衣の裾を引っ張って話しかけて来た。
「アスカくん、私たちも準備しよう?」
「あ、うん」
とにかく今は試合の方に集中するべきだ。
そう思っていると、アスカは彼女がどこか落ち着かない様子でサクやエミやハナの方をチラチラと見ていることに気付いた。
「もしかして緊張してる?」
「えへへ……ちょっとだけ。上手くできるかなって、こんな風に思うの初めてかも」
「ふふ。あんまり気負わずに、とにかく楽しもう。今日はお祭りでもあるし」
安心させるように微笑みかけるアスカ。その言葉で、メイも穏やかに笑みを浮かべる。
『それでは参加者の皆様、お集まりください!』
大会が始まるアナウンスだ。
今なら誰にも負けない気がする。メイはそんなことを思いながら、アスカの手を取って戦場に赴くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
それから数十分後。
祭りのロボトル会場に、一人の短髪の男が姿を現す。
浴衣ではなく半袖のグレーのワイシャツに黒のスラックスを履いており、やや強面。
男、十々喜 ミノルは妻であるハナや娘のサク・エミの姿を見つけ、真っ直ぐに彼女らの方に歩いていく。
「ふー、すまんすまん。遅れちまった」
「あなた、お疲れ様♡」
ミノルに声をかけられるなり、ハナはすぐに彼に抱きついて腕に手を絡める。
そして家族で並び、大会の様子に目をやった。
「メイは大会に出てるんだったな。どの辺りまで進んだんだ?」
「今は準決勝ですよ」
「本当か!? あの子がそんなところまで!? メダリオン学園でよっぽど実力をつけて――」
直後、ミノルは石のようにその場で硬直する。
浴衣姿の娘の隣に、男子がいるのだ。
ギギギ、と首をハナたちの方に向けながら、ミノルは問う。
「隣の男は誰だ」
「あら? 話したでしょう、彼が日晴 アスカくんですよ」
「はぁっ!? 男子だったのか!? 俺は名前を聞いててっきり……クッ!! 娘に悪い虫が!!」
「うふふふ」
ミノルは慌てふためき、ハナがふわりと笑った。
そうこうしている間にロボトルは進み、決着する。
「日晴選手と十々喜選手の勝利です!」
客席から歓声が響き、アスカとメイはフリント・リリーと共にハイタッチを交わした。
「よし! これで決勝進出!」
「やったねアスカくん!」
「次で優勝だぜ! やってやろうじゃねーか!」
「勝とうね!」
喜ぶ愛機たちと共に待合所に戻る最中、メイは嬉しそうにアスカに抱きつく。
その姿を見て、またもやミノルが目を剥いた。
「お、おい!? 随分距離が近いぞ!?」
「メイはアスカくんがお気に入りなんですよ」
「ぬうう……」
唇をヘの字に曲げミノルが唸っていると、決勝戦の準備が終わり試合が始まる。
メイたちの対戦相手は、例の信天翁 マサムネ。さらに、その相方の
二人はアスカとメイに気づくと、感心した様子で頷いた。
「へぇ~、まさか決勝の相手が中学生とはなァ! でも容赦はしないゼ?」
「よろしくお願い致します」
コトメが一礼した後、二人は同時にメダロッチを操作する。
『メダロット、転送!』
マサムネの前に現れたのは東洋龍をモチーフとしたメダロットの『MDT-DRA-03 シィアンロン』で、本来は緑だが青いカラーリングで統一されている。
コトメの方は、メイド型メダロットの『MDT-MDM-00 メダメイド』一式の装備。機体色は緑をベースとして花柄のデカールもあしらわれており、和メイドを思わせるスタイルだ。
「メイちゃん、勝とう!」
「うん! いくよ、アスカくん!」
二人の言葉でロボトルの場に立つフリントとリリー。リリーの方は、右腕のみプリティプラインのドントムーブでそれ以外はブレザーメイツのパーツで統一されている。
浴衣姿の女性レフェリーもロボトルのリングに立ち会い、右腕を挙げた。
「それでは決勝戦! ロボトル――ファイトォ!」
腕が振り下ろされ、開戦。
即座に動き出したのはアスカとフリント、さらにマサムネとシィアンロンだ。
「フリント、ラピッドバルカン準備!」
「シィアンロン! チャージ!」
マサムネが共に往く相棒メダロットに下した指示は、エネルギーの蓄積。
真正面から突き進んで来たため、攻撃が来ると思っていたフリントは戸惑いつつも、アスカの指示通り銃口をシィアンロンに定めた。
メイの方はリリーに頭部パーツ使用を指示しつつ、密かにアスカに近づき声を潜めて話しかける。
「狙いはメダフォースかな……?」
「いや。シィアンロンはメダチェンジ機だから変形の方かも知れない。どっちにしてもやらせるワケにはいかない、攻め立てよう!」
アスカの言葉に頷き、メイも次の行動をドントムーブの使用に心の中で決め込む。
そしてフリントの充填が終わり発砲の瞬間、シィアンロンをかばう形でメダメイドが立ち塞がった。
『え!?』
アスカとメイが驚く中、マグカップ型の飾りが付いた円形のトレイに見立てた盾を使って、メダメイドは鮮やかにフリントのガトリング攻撃を防ぎ切る。
「オボンコボンです。マサムネ様のシィアンロンへの攻撃は全て、私のメダメイドがガードさせて頂きますわ」
「イェーイ! 流石コトメだゼ!」
眼鏡をキラリと輝かせて掛け直すコトメに、マサムネは賛辞の言葉を送りつつ、シィアンロンと共に駆け出す。
「サイバーコアは厄介だが、関係ねぇ。俺チャンには必勝の切り札があるからなァ。行くゼ、シィアンロン! まずはロンチージャー!」
「変形でもメダフォースでもない!?」
十分にエネルギーチャージを終えた愛機へと、マサムネが次に出した指示。
それは、自身のエネルギーを消耗して敵機へと大打撃を与える左腕の刃、チャージブレードの機能であった。
素速く振り被られたその腕は、咄嗟に回避に動いたフリントの胸を少し掠めるのみに留まり、結果としてアスカたちは生き延びる。
「あっぶねぇ!?」
「フリント! 大丈夫!?」
「コンシール症状のお陰でな……でも次はやべェかも」
あの威力と速度の一撃がもう一度来れば、今度は逃げ切れない。
アスカの脱落を危惧したメイは、リリーへと指示を飛ばす。
「いけない……リリーちゃん、お願い!」
「やらせませんよ」
「わ!?」
しかし割り込んだメダメイドのガトリング攻撃が、リリーを足止めする。
そんな一進一退の決勝ロボトルの模様を眺めていたミノルは、腕を組みながら冷静に戦いの行く末を分析していた。
「マサムネは信じられない程のアホだが、群を抜くロボトルセンスの持ち主で地方統一戦での優勝経験もある。相方のコトメくんも簡単に勝てる相手じゃない。アスカくんとやら、運がなかったな」
「あなた! どっちの味方なんですか!」
「え!? い、いや……そりゃ
幼子のように頬を膨らませ詰め寄るハナに、ミノルはしどろもどろになりつつも答える。
一見おっとりしているようだが、妻から感じる圧には警察官であるはずのミノルでさえ思わず怯んでしまう程であった。
十々喜夫妻がそのように痴話喧嘩をしている間にもロボトルは進行し、メダメイドの猛攻によってリリーの脚部と右腕が半壊。さらにフリントからの攻撃を避け再びチャージを重ねたシィアンロンへ、マサムネは命じる。
「そろそろ終わらせてやるゼ! メダフォース、俺の切り札!
シィアンロンの全身が輝きを帯び、その背後にエネルギー体の青龍の姿が出現。
機械龍の身体を飲み込み、共に真っ直ぐフリントへ向かっていく。
対するアスカは、フリントと顔を見合わせ頷き合い、メダロッチを構えた。
「フリント、こっちもやるよ!」
「おうよ!」
一歩遅れながらも、こちらもメダフォースを発動。飛んでくるシィアンロンの出方を見定めつつ、充填しながら回避に動けるよう立ち回る。
そして両雄激突。シィアンロンの一撃を受けたことでフリントの左腕が砕かれるが、まだ戦闘続行は可能だ。
だが、状況を見守っていたコトメは眼鏡を掛け直した後、静かに勝利を宣言する。
「これで終わりですね……マサムネ様の昇り龍は、特殊なプラス症状であるドラゴライズを得た。この症状には自分の使う全ての攻撃パーツにアンチエア機能を付与する効果があります」
「でもフリントくんは二脚タイプだよ!」
「関係ありませんよ」
確信に満ちた対戦相手の言葉。
メイがそれにどこか言い表しようのない不安を感じつつも、状況は進む。
『ピースメーカーッ!!』
充填が終わり、フリントのメダフォースが発動したのだ。
銃口から放たれた白い光条がその場を包み込み、フリントのパーツ性能を大きく引き上げる。
「なんともない……いや!」
咄嗟にメダロッチで状態を確認して、マサムネは僅かに目を見開く。
ピースメーカーの効果、敵機プラス症状・味方機マイナス症状の解除が発動し、シィアンロンのアンチエア機能が消えてしまったのが分かったのである。
しかし、驚きはすれどマサムネに焦った様子は見られない。
「やるじゃねェか。だがな、昇り龍の恐ろしさは
そう告げた直後に、異変が起きる。
「フリント!?」
「お、俺の身体が……どうなってんだぁ!?」
腕一本を犠牲にながらも攻撃を凌ぎ切ったフリントのその身体が、突如として足元に龍の紋様が現れたかと思うと、そこから噴いた風によって巻き上げられたのだ。
「昇り龍にはもう一つ効果がある。ターゲットに選んだメダロットは、冷却が始まった瞬間にトルネードを発症しちまう身体になるのさ」
「なんだって!?」
「充填から冷却のサイクルを1セットとして、効果は3セット終わるまで続く! そんで、これ自体はマイナス症状じゃねェから自力で解除もできないゼ!」
結果的に敵のプラス症状を解除して助かったとはいえ、アスカたちの状況は絶望的である。
トルネード症状を受けると、アンチエアの効果を受けるだけではなく移動や回避・防御もできなくなってしまう。
さらには冷却そのものも一時停止するため、単純に攻め手が滞る。それが3セット続くとなれば、相手が対空攻撃を持っていなくとも機能停止による敗北は必至だ。
しかもこの大会のルールではリーダー機が存在しないため、どうにかシィアンロンを対処したところでメダメイドも倒さない限りロボトルは終わらない。
一体どうすればこの戦況を引っ繰り返せるのか。
「……私がやるしかない!」
思考を巡らせた時、アスカの隣でメイが眦を上げた。
「リリーちゃん! 行くよ!」
「うん!」
相棒も頷いて右腕の剣を前に掲げ、二人はシィアンロンに向かって走りだす。
だが、そこにまたもやメダメイドが立ち塞がった。
「性懲りもなくドントムーブですか? 申し訳ありませんが、もうここで詰みとさせて頂きますよ。オボンコボンで」
左腕のトレイを構え、腰を落とすメダメイド。
そうしてリリーの剣と彼女の盾が激突――しなかった。
「かかったね」
「え……いや、まさか!?」
衝突の直前で立ち止まったリリーは剣を地に向け、自身の左腕をフリントの方に向けている。
ブレザーメイツの左腕、スペアパーツ。その機能はレストアと言い、機能停止にされた味方のパーツを復元する効果があるのだ。
これによって、フリントの左腕は見る間に再生していく。
直後、シィアンロンの頭部から放たれたファイア攻撃が彼を襲うものの、つい先程再生した左腕を使っての防御でなんとかその場を持ち堪えることができた。
「助かったぜ……なんとか首の皮一枚繋がった、ありがとよ!」
「えへへ」
トルネード症状も攻撃を受けたことで解除され、飛ばされた状態から地に降り立つ。
そして継続しているマスターピースの力で、スピーディに走り回りながら右腕のバスターマグナムを充填していく。
「くっ、速ェ!?」
「落ち着いて下さいマサムネ様! ガード機能は既に発動済み、私のメダメイドが守れば勝機は――」
そうこうしている内に、銃口から真っ直ぐにライフル弾が放たれる。
メダメイドは即座に割り込んで盆を構え防御態勢に移り、しかしフリントの放った弾丸は容易くその防盾を射抜く。
《右腕・頭部パーツ、機能停止》
「なっ……一撃で!?」
ハッチからメダルを排出して地に倒れ、コトメ・メダメイド組は脱落。
それでも、マサムネは余裕の笑みを浮かべていた。
「だがなァ! これでまた冷却が始まって、トルネード症状だゼ! こうなりゃ完全に俺チャンたちの餌食よォ!」
「フフ、それはどうかな?」
アスカはそう言って不敵に笑うが、実際にフリントは再び竜巻に飲まれ空中に漂ってしまう。
防げるはずがない。勝ち誇ってマサムネが高笑いしようとした、次の瞬間。
「
リリーの一閃がシィアンロンの頭に直撃し、その動きを完全に止めた。
フリーズ症状の発症。これもトルネードと同じく移動と充填・冷却を封じる機能があるが、サンダー及びフリーズには発症した機体を飛行状態にする効果はない。
ただしその特性上、トルネード症状はそれら二つよりも有効な効果時間が短いという特徴がある。
つまり、停止症状をシィアンロンよりも先に受け、なおかつ停止時間の短いトルネードを受けていたフリントは、マサムネたちよりも先に動けるのだ。
「よし! ビリーザハットだ!」
解除されたのを見計らい、すぐに命じるアスカ。その援護のため、メイとリリーも攻撃に打って出る。
当然抵抗の術はなく、シィアンロンにミサイルの強烈な一撃が命中。
背中からメダルが吐き出され、レフェリーがロボトル終了の合図を出す。
「優勝は、日晴選手&十々喜選手!」
割れんばかりの拍手と歓声が送られ、アスカもメイも照れながら手を挙げそれに応える。
さらにマサムネとコトメも二人に近づき、拍手と賛辞で勝利を称えた。
「お前アスカって言ったな? やるじゃねェか、気に入ったゼ! 俺チャンのチームに来いよ!」
「マサムネ様、これ以上は邪魔になりますから……」
「考えといてくれよー!」
コトメにズルズルと引きずられるようにして、マサムネはその場から退場。
苦笑しながらその姿を見送りつつ、続いてアスカとメイは優勝賞品のパーツを受け取る。
片方は和風にデザインされたハープを持つ天女のような姿の機体、もう片方は両腕がワシの翼となっている牛角の男の機体だった。
「『MDT-TNB-00 ベガプリンセス』……七夕の織姫型メダロットか」
「こっちは『MDT-TNB-01 アルタイーグル』だって! これは彦星型で対になってるんだ!」
メイから差し出されたアルタイーグルのパーツを受け取り、アスカの方はベガプリンセスを手渡す。
「えへへ……お揃いだね!」
嬉しそうに、屈託のない笑みを見せるメイ。そんな彼女に対し、アスカは赤面しつつも同じくはにかんで頷くのであった。
それからミノルとも合流し、屋台巡りなどを楽しんだ後。
「これでお開きかぁ~」
「明日以降もあるんだよね、また行こうよ」
隣でリンゴ飴を食むメイにそう言い、アスカは綿飴をかじる。
そんな中、サクは後ろから彼らに声をかけた。
「ねぇ、アンタら短冊になんて書いたの?」
聞かれると二人とも、ビクッと僅かに身を震わせる。
そしてアスカの方から先に答え始めた。
「俺はそんなに大した願いじゃ……」
『今よりもっと身長伸びますように、って書いてたよ』
「ちょっ!? 言わないでよアオカゲ!?」
メダロッチから聞こえた声に慌てていると、目を丸くしたエミが問いかけて来る。
「意外……ロボトルのことじゃないんですね」
「だって、それは俺が自分でどうにか頑張らなきゃいけないことじゃん。身長はどう頑張れば良いのか……なんか自分で言ってて虚しくなって来た……」
身近にいる高身長の女子三人を見ながら、アスカは肩を落とす。
するとその一言に強く共感したのか、ミノルがその背にそっと手を乗せ深く頷いた。
続いてサクは、恥ずかしそうに俯くメイの顔を覗き込んで「あんたは何書いたの?」と改めて尋ねる。
「え!? えと……その……ひ、秘密」
「えぇ~?」
「絶対内緒だもん。ママにもパパにも、お姉ちゃんにもエミにもアスカくんにも」
パタパタと先へ歩きながら、メイは言う。
――彼女が笹の上の方に括り付けた赤い短冊には、弾むような丸い文字で『アスカくんとずっといっしょにいられますように』と書かれていた。
「……は?」
「お前、今なんて言うた?」
サイオウ市にて、ミツヒデと邂逅したホムラたち。
彼の口から放たれた言葉に、リオとリョウが眉をひそめ、ホムラが絶句する。
「共に来たまえ、狩兼 ホムラ。その力を我らがリクドウ様のために役立てるのだ」
※ ※ ※ ※ ※
メダロット解説コーナー
[機体名]
メダメイド(MDTver)
[型式番号]
MDT-MDM-00
[性別]
女
[パーツ]
◆頭部:ホーコニア(補助/レーダーサイト//4回)
◆右腕:モップル(射撃/ガトリング/)
◆左腕:オボンコボン(守護/ガード500/)
◆脚部:コマネヅム(二脚/オールラウンダー)
[備考]
メダテック製のメダメイド。
パーツ名およびデザインはR版のものであり、型番はMDMを使用している。
なおゲーム版だと左腕は防御(ガード)だったが、
情報によるとRでは攻撃が強すぎて脆くみえるだけでメダメイドの防御威力が59と高いとの事でガード500を採用。
脚部はオールラウンダー。Rでは飛行メダロット並の速度をもつ二脚だったそうで、脚部特性によって再現している。
(後にメダメイドが最新ゲーム版に登場した際、設定を公式にあわせて変更する可能性があります)
※こちらの機体データは、メダロットSAGAの外伝作品であるメダロットHERMITを執筆して下さっているCODE:Kさんから頂きました。
CODE:Kさん、ありがとうございます!