メダロットSAGA   作:正気山脈

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 アスカとノアが千葉でボーラと戦い、宇宙メダロッターたちと共にその脅威を打ち破ったその翌日。

「弁解の言葉を聞かせて頂きましょうか」

 東京に戻ったノアは、逢留家の屋敷にて、世界的な実力者のプロメダロッターの白藤 ハジメと百舌鳥 ユウト、そしてメダロット博士の逢留 ヒロシを正座させていた。
 千葉でボーラと戦っていた際に現れた宇宙メダロッターの二人、その正体はハジメとユウト。その場に居合わせたアスカには気付かれなかったものの、まかり間違えばバレてもおかしくはなかったのだ。
 今、ノアはそのことについて追及したところである。そんな中で、ヒロシは静かに手を挙げる。

「あの……ノアくん、なぜ私まで詰められているのか聞いても良いかな?」
「とぼけないでください博士。あの宇宙メダロッターの衣装、あなたが作ったものでしょう」
「いやいやいや! わ、私は関わっておらん、本当本当!」
「まぁ確かにあんなダサいデザインのスーツを作るとは思えませんが」
「何を言う、アレはメダロッチに専用のメダルをセットすれば自動で転送されて即座に着替えることができるスグレモノで……あっ」

 ギロッ、とノアに睨まれてヒロシは背を丸めて怯んでしまう。

「もう一度聞きますよ。なんですか宇宙メダロッターって、どうしてあんな目立つものを作ったんですか? いい大人が三人も揃って恥ずかしくないんですか?」
「カッコいいから恥ずかしくないぞ!」
「ちょっとは申し訳なさそうにしてくださいよ世界チャンピオン。ボクらの活動は社会を混乱させないためにも、秘密裏に行われるべきだ。人目について良いことなんて一つもないんですよ?」
「でも、あのスーツカッコいいだろう?」
「人の話ちゃんと聞いてます?」
「安心してくれ、君の分のスーツも用意してある!」
「いやいりませんよ!」

 思わず怒鳴りつけ拳を握り締めるノア、そんな彼をユウトが正座しながら諌める。

「まぁ落ち着けよ、ノア。俺たちは何も悪ふざけとかカッコいいってだけで作って貰ったんじゃないんだぜ? 光学迷彩とかワイヤーフックとか色んな機能を博士に搭載して貰ってるんだ、これも活動に必要なアイテムのひとつさ」
「機能を考えてくれてるのは嬉しいですけど……それなら、今までの遺跡守りの装束に搭載してもいいワケで……」
「それと、近々地方統一戦があるだろ? 今はそっちに集中しようぜ」
「……師匠、誤魔化そうとしてませんか?」
「ソンナコトナイゼ」
「目を見て言ってくださいよ」

 視線を逸らすユウトをジトッと睨めつけながら、ノアは言う。
 すると、今度はハジメが口を開いた。

「大丈夫だノアくん、君の使命と俺たちの目的は同じ。充分理解してるよ。何せ――」

 僅かに目を細め、神妙な面持ちでハジメは告げる。

「地球と人類の存亡がかかっているからな」


激闘編-地方統一戦の巻-
FIGHT.25[関東統一戦! 予選開始!]


『さぁ少年! 今の内にビーストマスターを倒してしまうんだ!』

『俺たち宇宙メダロッターは、アイツらから地球の自由と平和を守るために戦うエージェントだぜ! よろしくな!』

『また会おう、少年たち! ハーッハッハッハッハーッ!』

 

「……ってことがあったんだ」

 

 アスカが千葉の実家から戻って来た当日の夜。

 彼の部屋に集まったホムラ・メイ・リオ・ユメは、フリントのアイカメラの記録映像を見ていた。

 子供の姿に化けた推定宇宙人に、ノアとの共闘。そして、宇宙メダロッターファーストとブレイヴ。

 二泊三日という短い期間に凝縮された異常空間を見て、リオは酷く困惑した様子でアスカに向き直る。

 あの仮面の不審人物二人組は一体何なのかと、ハッキリ問わざるを得なかった。

 しかし、それはキラキラと目を輝かせたホムラによって遮られる。

 

「やべぇ!! 宇宙メダロッターさん、マジかっけぇ……!!」

「は?」

「そうでしょ~!!」

「は?」

 

 男子二人が意気投合し、さらにメイもその輪に加わっていく。

 

「アスカくん、女子でも宇宙メダロッターになれるかな!?」

「……なんなのコイツら……」

 

 頭を抱えてリオが項垂れ、ユメも苦笑い。

 だが事件に巻き込まれたという事実は存在するので、リオは彼にひとつ尋ねる。

 

「とりあえずこの話、セレクトとか警察には?」

 

 その質問に対し、アスカは首を左右に振った。

 拾ったティンペットはセレクトに届けたが、先程の映像までは見せていない。映像ログにハッキリ残っていても信じて貰えるかどうかは分からないし、調査したところで他に証拠など残っていないからだ。

 

「……現場にいないと、宇宙人なんて言ったってきっと取り合ってくれないと思うんだよね」

「せめて宇宙メダロッターさんが一緒にいないとなぁ」

 

 一体なぜそんなに宇宙メダロッターを信頼できるんだ、とリオは言葉にしかかったが、何を言ってもダメそうだと諦めの溜め息を吐く。

 続いてアスカは、この場に居合わせた4人に注意を呼びかける。

 

「みんなのことは信用してるから打ち明けたけど、この件はくれぐれも内密にね。学園の中にもあの宇宙人の仲間がいるかも知れないから」

「まぁ、人に化けるくらいだしそこはそうね」

「もし怪しいヤツを見かけても、1人でどうにかしようとしないでね。俺かホムラか、後は早総くんにも伝えて欲しい」

 

 一同は頷き、この件は一旦置いて話題を切り替えた。

 

「もうじき地方統一戦が始まるな」

「そうだね。どんなすごい強敵が集まるんだろう、今から緊張しちゃうなぁ……」

 

 各地から集まるメダロッターや、まだ見ぬメダロットたち。

 勝てるかどうかという不安もありつつ、強豪とどこまでやり合えるかという期待もアスカの中で高まっている。

 

「関東ならあの人も来るんじゃない? 海で会った、ヴァネッサさん」

「あのミツヒデって野郎もいるな」

 

 ヴァネッサとは以前に一度戦っているが、大会で出会った時にはさらに手強くなっているかも知れない。

 ミツヒデの方も、実力は未知だがあのリクドウの片腕と呼ばれている以上弱いはずがないだろう。

 アスカとホムラは頷き合い、メダロッチを掲げる。

 

「よし、それじゃあ大会に向けて外で最終調整すんぞ!」

「宿題も忘れないでよ」

 

 リオからの指摘にホムラがガクッと肩を落としつつも、5人は寮の外へ飛び出していった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 そして、地方統一戦当日。

 アスカたちは関東の会場である東京のスポーツ会館に到着、そこでメダロッチへ大会用のアプリのインストールを頼まれ、言う通りに実行する。

 会場内には、彼らを含め数多くのメダロッターと、その応援に来た観客が集っていた。

 やはりというべきか年上の選手が多く見られ、アスカには自分が場違いなのではないかという気さえして来る。

 だがそんな折、聞き馴染みのある声が一同の耳に届いた。

 

「やっぱりアンタたちも来てたんだぁ?」

 

 國丸 タマキと橋太 キイチ、宮間 ケンスケ。チームトライクロウズだ。

 

「三人も参戦するんだね!」

「もちろんよ。上位は姫たちで独占するんだから」

 

 タマキが胸を張って「ふふん」と自信満々に笑ったのも束の間、今度は別の方向から二人のメダロッターが姿を現す。

 メダリオン学園高等部の、社森 ジュウゾウと椿黒 ソラだ。

 

「悪いがそうは行かねぇ、勝つのは俺っちだからなぁ!」

「自分も優勝を狙わせて貰うッスよ」

 

 アスカは「望むところです!」と強気に返したが、周囲にいる一部の初対面のメダロッターたちは、それを聞いてヒソヒソと冷ややかに笑っていた。

 

「たかがガキどもが優勝とはなぁ。笑わせるぜ」

「どうせ、お遊びのつもりで来てるだけだろ」

「ああいう手合いは所詮お山の大将、世界の広さを知らないんだろうな……」

 

 そんな陰口を耳にして、真っ先にホムラが動き出す。

 大勢の大人たちに対して、正面から堂々と、鼻で笑った。

 

「アンタらがそのクソしょうもねぇお山の大将じゃないって保証はどこにある? 聞かせてくれよ、実力でよォ?」

「なんだと……!? ガキが、調子に乗るなよ!! 痛い目に遭わせてやろうか!?」

「だから、黙らせてみろよ。えぇ? さぞかし強いんだろ? 世界を語るからには、なぁ?」

 

 ギリッ、と歯を軋ませて、周囲のメダロッターがホムラを睨む。

 ユメが怯えてメイとリオの後ろに隠れ、その3人をかばうようにアスカが前に出る。

 さらにジュウゾウとソラも、ホムラと共に大人たちに対峙していた。

 一触即発、今にもロボトルが始まるのではないかと思われた、その矢先。

 

「見ろ! リクドウ組だ!」

 

 別のメダロッターが放ったその一言で、注目はその一点に集中する。

 見れば、そこには確かにセンター分けの黒い長髪の男、常盤 ミツヒデがいた。

 取り巻きを連れ堂々と闊歩する彼を見ると、先程までアスカやホムラに噛み付いていたはずの威勢の良いメダロッターたちは道を開けてしまう。

 一方のホムラは、そんな連中には目もくれず、真っ直ぐにミツヒデと睨み合っている。

 

「よく逃げずに現れたものだ、百発百獣よ。今なら以前の御館様に対しての侮辱の言葉の数々、撤回を許してやっても良いが?」

「誰がするかよ。俺はお前にもリクドウの野郎にも勝つ、世界最強になるのは俺だ」

「図に乗っているな……貴様がどう足掻こうと、何をほざこうと、優勝するのはこの私だ。そしてその勝利を御館様に捧げる……光栄に思え、凡俗共。貴様らはリクドウ組の伝説の、礎となるのだからな」

 

 言いながら、ミツヒデはアスカたちを一瞥した後に、その場を去っていく。

 直後に、ステージの中央にオオルリが姿を現す。

 

『皆様長らくお待たせ致しました、今大会の司会とレフェリーを務めます、Ms.オオルリと申します! ただ今より、関東地方統一戦を開催します!』

 

 大勢のメダロッターが歓声を上げ、注目がオオルリへ集まり、誰もが彼女の説明に耳を傾ける。

 

『まずは予選! ここで本戦に進む参加者の人数を、合計32名まで絞り込みます! その中から16名をランダムにAブロックとBブロックで振り分け、優勝までの道のりを競って頂くことになります! それでは、予選のロボトル形式を発表しましょう!』

 

 そう言った後、オオルリは自らのメダロッチを操作して大きなホログラムスクリーンを投影、そこに『ガンスリンガーロボトル』と表示された。

 

『皆様には今から屋外で連続ロボトルを行って頂きます! このロボトルで5勝した方から先着順に、本戦への参加が確定します! 負けた後はすぐに別の選手を探してロボトルしてください!』

「なるほど、さっきメダロッチにインストールした専用アプリはこのために……」

『出撃可能なメダロットは1体! なお、同じ選手と連続でロボトルしても勝利数にはカウントされませんので悪しからず! また、故意の遅延行動などによる選手への妨害は反則となりますのでご注意を!』

 

 このロボトルでは負けたとしても勝利数がリセットされはしないが、再戦と勝利までに時間がかかればそれだけ本戦に進める可能性も狭まってしまう。

 つまり、確実に本戦に上がるなら全戦全勝がベスト。その上で、負けた時のカバーという意味も含め、如何に素早く決着をつけられるかが突破の鍵となる。

 選手全員が会場を出てメダロッチを操作し、使用するメダロットを転送して、オオルリからの合図を待つ。

 そしてメダロッチのアプリでカウントダウンが始まり、0になった瞬間。

 

『それでは始めましょう! ロボトル――ファイトォーッ!』

 

 オオルリの宣言と共にメダロッターたちが一斉に動き出し、ガンスリンガーロボトルが始まる。

 アスカの最初の対戦相手は、先程陰口を叩いていた大人たちの内の一人、20代の男性メダロッターだ。

 

「くくくっ、俺は大会本戦の常連でねぇ。ガンスリンガーロボトルも経験済みなんだよ。こういう時は勝てそうな相手を見つけて勝ち星を上げるのがセオリーなのさ、お前みたいな弱いヤツをな!」

 

 不敵に笑いながら、男はメダロッチを構えて自身の機体である『MDT-DVL-00 ブラックメイル』を呼び出す。

 対するアスカのフリントは、いつものローンビートル一式ではなく、以前入手したアルタイーグル一式を装備している。

 そして、男の言葉を鼻で笑った。

 

「大会本戦の常連ってそんなに自慢するほどすごいかぁ? 本戦で全然勝てないなら、予選落ちと大差ないんじゃね?」

「なっ……こ、この野郎! ナメた口を!」

「お前こそアスカをバカにしただろ。絶対許さないぜ、お前!」

 

 相手の顔が強張って赤くなり、視線がフリントの方に落ちる。

 もうロボトルは避けられない状況だ。しかし、先程までと違いアスカには少しも動揺がなく、逆に強気な態度で立ち向かおうとしていた。

 

「いくよフリント!」

「おうよ!」

『ロボトル、ファイト!』

 

 周囲でメダロッターたちが戦い始める中、アスカも予選ロボトルを開始する。

 対戦相手の男は即座にメダロッチに向かって指示を飛ばし、戦況とフリントの行動を見極めるべく走り出した。

 

「行くぞブラックメイル、デビルハンド充填開始!」

 

 黒山羊の姿をした悪魔のメダロット、ブラックメイル。その武装は全身がゴースト格闘攻撃のみで固められており、途轍もない威力を持っている。

 アスカはそれを承知の上で、アルタイーグルの車両脚部を走らせ、真っ直ぐにブラックメイルへと突撃していく。

 

「フリント、インカイサン(右腕)を速射で!」

「おしきたぁ!」

 

 翼を生やした右腕を掲げたフリントが、素早く充填を終えて銃口から冷気の弾丸を三発放つ。

 それを受けたブラックメイルは凍りつき、完全に動きを止めてしまう。

 

「げ!? こ、これは……ま、まさか!?」

「そう、インカイサンの機能はフリーズバルカン! これはフリーズ症状だ! 次は頭部パーツのウシカイオトモ!」

 

 黒い悪魔の凍結の間に、腕の冷却を終えたフリントは頭の牛角の照準を定め、そこから氷塊の砲撃を放った。

 アイスクラッシュ。全パーツに被害を及ぼすこの技の直撃は、フリーズ症状を発症している今、致命的なダメージをもたらす。

 

《頭部・脚部、重度ダメージ。右腕・左腕、機能停止》

「ウソだろ!? 一撃で、こんな!?」

「これでトドメだ! 左腕、オヤニナイで狙い撃ちだ!」

 

 倒れた挙げ句に両腕を失って行動が中断されたブラックメイルへ、アスカたちはさらなる追い打ちをかける。

 クーラープラントショット、射撃と同時にプラントの設置を行うパーツだ。とはいえ設置行動に頼るまでもなく、狙い撃ちにより頭部を破壊。ブラックメイルは完全に機能を停止した。

 

「楽勝だったな!」

「まずは一勝! フリント、次の相手を探しに行くよ!」

「へへっ、おうよ!」

 

 あまりのスピーディな決着に男が呆然とする中、アスカたちはすぐに次の対戦相手を探しに歩き出す。

 男はわなわなと身を震わせつつも、頭を振って自身も対戦相手を探し始める。

 

「ク、クソが……これは何かの間違いだ。まともにやれば、俺が勝つはずなんだ……あんなガキが本戦まで勝ち上がるワケねぇんだ」

 

 敗北したとは言えど、まだ予選が始まってから然程時間は経っていない。つまり、まだ初戦の決着をつけていないメダロッターも多いはず。

 ならばアスカもそこまですぐには対戦相手を見つけられない、予選突破まで自分にもまだまだチャンスがある。

 ここからが勝負だと思い、周囲を見渡していると、対戦を終えたのかまだ相手を見つけていないのか、褐色肌の銀髪の少年の歩く姿を発見した。

 

「おいガキ! 俺と勝負しろ!」

 

 声をかけられ、少年はKWG型メダロットと共に振り返る。

 

「ボクに言ったんですか?」

「そうだ! 悪いが、お前みたいなガキに地方統一戦の舞台は勿体ねぇよ! 俺が出場するための踏み台になって貰うぜ!」

 

 無礼な振る舞いをしながらメダロッチを構える男に対して、少年は短く溜め息を吐く。

 

「手加減の必要はなさそうだな。キバマル、身の程を思い知らせてやれ」

「御意」

 

 男は知らなかった。その銀髪の少年、早総 ノアが、アスカよりもさらに速く初戦を勝って終えたのだということを。

 男は思い知った。この世には、自分より年下でも数段高い実力の持ち主がいるということを。

 結局、男が今年度の予選を突破することは叶わなかった。




メダロット解説コーナー

[機体名]
アルタイーグル

[型式番号]
MDT-TNB-01

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ウシカイオトモ(射撃/アイスクラッシュ/なし/2回)
◆右腕:インカイサン(射撃/フリーズバルカン/速射)
◆左腕:オヤニナイ(射撃/クーラープラントショット/狙い撃ち)
◆脚部:チクサグル(車両/追加弾倉)

●HV:1/0/0 合計:1/2

[備考]
ワシとウシの要素を取り入れた、クールな彦星型のメダロット。TNBは七夕を意味する。
敵機にフリーズ症状を与えるフリーズバルカンと、それを発症した相手に大打撃を与えるアイスクラッシュの組み合わせで戦うのがセオリー。純正構成であれば、脚部の追加弾倉により3回まで使えるようになる。
ウシカイオトモを使い切ったとしても、左腕のクーラープラントショットで仕事ができる。頭部以外はフリーズコンボ以外でも有用な機能なので、パーツを差し替えても使いやすい。

本作品のオリジナルメダロット。
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