メダロットSAGA   作:正気山脈

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「今だバレット、決めろ!」
「フッ!」

 発砲音と共に弾丸が放たれ、頭を貫かれたセキゾーが倒れ伏す。

「く、くそぉ……覚えてやがれ!」

 そのメダロットの持ち主は悔しそうに捨て台詞を吐き捨て、去っていく。
 オオルリにより予選ロボトル開始の合図がされた後。
 ホムラとバレットは、自分たちに挑んで来た相手を次々と倒し続けていた。
 始まる前に挑発し返して注目を集めたのが効いたのか、面白いほど何度も対戦相手の方から突っかかって来たのだ。
 しかし、そこから3連勝した辺りで状況は一変、見物していた大人たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げ出し、既に周りには誰もいなくなっている。

「これで4連勝。なんか拍子抜けしちまったな、正直もっと手強いヤツがかかって来るかと思ってたぜ」
「あと1勝と慢心するなよホムラ。人数には限りがあるんだ、なるべく急いだ方が絶対に良い」
「わーってるっての」

 口うるさいことを言う相棒に対してそんな風に返しながらも、彼の言う通りに急ぎながら次の相手を探し回る。

「見つけたぞ、狩兼 ホムラ」
「あん?」

 会場付近の方へと向かってみると、ホムラは『KKR-TTB-00 テンテンボマー』を連れたメダロッターの男に声をかけられた。

「ミツヒデ様のご指示だ、次はこの俺と勝負して貰おう!」
「じゃあお前を軽くブッ倒して、そろそろ本戦に殴り込むとするか」

 リクドウ組の一員だという男は、ホムラをギロッと睨めつけてメダロッチを構える。
 そして、戦いが始まった。

『ロボトル、ファイト!!』


FIGHT.26[本戦へ進め!]

 

「フン。どうやら、私が一番乗りのようだな」

 

 本戦の会場であるスポーツ会館に戻ったミツヒデは、受付を悠々と通って会場に辿り着く。

 周囲は静まり返っており、人の気配がほとんどしない。

 

「他の連中は何をやっている、たかが5勝するだけだというのに……まさか、例の配信を見た大物たちにロボトルを挑まれたのか?」

 

 今回関東戦にエントリーしたリクドウ組の面々を思い出していると、ミツヒデの通って来た廊下から一人の女が姿を現した。

 スラリとした高身長で、ブロンドヘアーに小麦色の日焼けした肌、赤いキャミソールにホットパンツというスタイル。

 ミツヒデは彼女に気づくと、鼻を鳴らしつつ声を掛ける。

 

「ヴァネッサ・シーガル……やはり、貴様も勝ち上がって来たか」

「アラ。そういうアナタは、例のリクドウ組の人ネ?」

 

 金髪をかき上げながら、ヴァネッサが問う。

 そして、溜め息混じりにポツリとひとつ言葉を漏らす。

 

「にしても、まさかワタシが()()()になっちゃうとはネ~」

「……なに!?」

 

 三番目ということは、つまりミツヒデよりも前に、既に予選通過を果たしたメダロッターがいたということだ。

 驚き詰め寄って来るミツヒデを見るや、ヴァネッサは目を丸くする。

 

「知らなかったノ? ワタシ、さっき近くを通りかかったんだけド……アナタが来るよりもっと前に、もう本戦入りした男の子がいたわヨ?」

「バカな!? そいつは一体何者なんだ、どこにいる!? まさか、狩兼 ホムラではないだろうな!?」

「ちょ、落ち着いテ! 確かインストールしたアプリで本戦確定したメンバーを見れるハズだから!」

 

 するとミツヒデはヴァネッサから離れて、早速メダロッチを操作しアプリを立ち上げ、出場リストを確認。

 見れば、自分とヴァネッサより上に、確かに一人の少年の名が記載されていた。

 

「早総 ノア!? バカな、誰だこいつは!? こんな少年の存在は私のデータにないぞ!?」

「あ、メダリオン学園の生徒ネ。確かワタシの友達がそういう名前のコの話をしてたワ」

「そんなはずは……!?」

 

 狼狽し、自分の記憶を必死に掘り返して探るが、やはり聞いた覚えも見た覚えもない。

 それもそのはず、ミツヒデが事前調査した段階では、ノアは東京を離れて大会と関係のない行動をしていたのだから。

 想定外の事態は連鎖的に起こり得る。不安が、ミツヒデの脳内を駆け巡った。

 

「御館様のいる中部地方は問題ないとして、他の地方もちゃんと勝ち進んでいるんだろうな……!?」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 一方、スポーツ会館の外では激しい予選ロボトルが続いていた。

 アスカたちと共に参加したメイは、近くでリオとユメも戦っている中で、若い女性メダロッターを相手に戦っている。

 使用しているのは、七夕の大会で手に入れた新機体、アルタイーグルと対になるベガプリンセスだ。

 対する相手メダロットは、十二支の午型の『MDT-IHS-00 アイアンホース』の頭部と脚部に、十二支の酉型の『MDT-HKG-00 ホークダカー』の両腕を組み合わせたニコイチ構成。カラーリングが白系になっており、ペガサスを彷彿とさせる。

 

「行きなファルシオン、ブルーサテライト!」

 

 バイク型の脚部を駆動させ、ファルシオンと呼ばれたそのメダロットが突撃。

 接近して拳を叩き込み、装甲がメダロットを足止めする音波を奏でる。ウェーブ攻撃だ。

 リリーは両腕を交差させて踏みとどまり、攻撃を堪える。

 

「速い! でも、負けないよ! リリー、ウリバタケ!」

「うんっ!」

 

 ベガプリンセスの右腕パーツ、和風ハープのウリバタケから音が鳴ると同時に、二つの炎がファルシオンの右腕の装甲を焼く。

 

「く、ファイア症状!? しかも二つも……!」

「ふふん、ダブルファイアだよ!」

 

 ダブルファイアとは、攻撃と同時に敵機へファイア症状を二度与える機能のこと。これに加え、発動した機体自身もファイア症状を負うことになる。

 ――ただし。

 

「ベガプリンセスの脚部、カジノハヒメの特性はコンバスション! ファイア症状はこの機体のナノマシンを逆に活性化させて、回復・強化に変えるよ!」

「んなぁっ!?」

 

 ファイア症状の発生により、ファルシオンの冷却効率が大幅に減少、装甲も焼け焦げていく。

 逆に、機体性能の上がったリリーは再び充填を始めた。

 

「これでトドメ! タナバタオコゲ、がむしゃらで!」

「うん!」

 

 左腕に燃え盛る炎を纏いながら、真っ直ぐに猛スピードで突撃。

 フレイム攻撃だ。ファイア症状を受けるデメリットはあるが、武器の破壊力が増す。そして、脚部の機能によりデメリットは存在しないも同然となる。

 パーツ全体を炎の拳が砕き、メイとリリーが勝利を収める形となった。

 

「完敗ね。対戦ありがとう、できれば本戦でまた会いたいわ」

「えへへっ、ありがとうございます! また戦いましょうね!」

 

 メイは女性と握手を交わし、次の対戦相手を探す彼女と別れた。

 そこに、同じく対戦を終えたリオとユメが駆けつける。

 

「調子良いみたいじゃん?」

「リオちゃんこそ! お互い、あと1勝になったねー!」

 

 大きな体で飛び上がって喜びをあらわにするメイと、その無邪気な姿に呆れながらもフッと笑みを見せるリオ。

 一方、ユメはやや肩を落としていた。

 

「うぅ、こっちはまだあと3勝だよぅ……出場は厳しいかも」

「大丈夫よユメ、本戦に行けないからって怒ったりとかしないから」

「そーだよ! だから最後まで一緒に頑張ってみよう、ね!」

 

 そんな彼女らの言葉を聞いて、ユメは目に涙を浮かべながら頷くと、再び三人でロボトルに向かう。

 

 同じ頃、トライクロウズの三人組も予選を戦い抜いていた。

 

「チャッタちゃん、ゴーゴー!」

「ヴァヴァ! ブッ放せ!」

「ガメス、撃ち抜けー!」

 

 雷撃と銃弾、レーザー光線がそれぞれの対戦相手の機体を機能停止させ、三人を勝利に導く。

 タマキたちは愛機と喜びを分かち合い、続いてケンスケとキイチがタマキへ拍手を送った。

 

「姫、本戦確定おめでとうございます!」

「俺らもすぐ追いつくんで!」

「二人ともあと1勝だもんねぇ、待ってるわよぉ」

 

 ふふん、と自信に満ちた笑みを浮かべ、会場へ足を運ぶタマキ。

 二人もリーダーに負けていられないとばかりに、次のロボトルに向かう。

 そんな折、彼らの前に二人の若い男が立ち塞がった。

 

「我々とロボトルして貰おうか」

「こちらも4勝……リクドウ様のため、そろそろ本戦に行きたいのでね」

 

 くつくつと笑いながら手招きをする男たちに対し、ケンスケたちは神妙な面持ちになって息を呑む。

 

「リクドウ組……!」

「ケンスケ、どうする!?」

「決まってるぜ! こいつらに勝って、本戦行くぞ!」

「だな! リクドウがなんだ、こっちには姫がついてるんだよ!」

 

 望むところ、と二人がメダロッチを構え、出場を賭けたロボトルが始まる。

 

 その会館の裏手では、また別の人物が本戦への出場を確定させていた。

 

「っしゃあ! 俺っちの勝ちだ!」

 

 メダリオン学園高等部所属、社森 ジュウゾウ。

 クリムゾンキングを使い、リクドウ組のメダロッターを打ち破って、堂々とスポーツ会館の方に向かっていく。

 その道の途中、背後から何者かの気配を感じ取って、彼はゆっくりと振り返る。

 

「さっさと出て来い、逃げも隠れもしないぜ」

「おやぁ? バレちゃいましたか」

 

 現れたのは、背丈の高くスマートなツーブロックの青髪の青年。

 唇は緩やかに吊り上がっており一見穏やかな顔つきだが、耳には狼を思わせる銀のピアスが目立ち、チロリと舐めずった舌にもピアスが開いている。

 

「何の用だ? 俺っちはもう予選通過してんだぜ、ロボトルなら別の相手を探しな。本戦でならやり合えるかも知れねぇしよ」

「あぁ~勘違いしないで下さいねぇ、私はこれから待ち合わせてる相手のところに向かうところだったんですよ。では、失礼します~」

 

 ヒラヒラと手を振りながら、男は去っていく。

 そして曲がった口角をさらに深く上げて、ジュウゾウがいた方向に僅かに首を傾ける。

 

「……あの高校生、そこそこやりそうだ。くくっ、戦い終わったからってすぐ会場入りするのはバカのすることだよ、本戦のために時間の許す限り情報収集しておかないとねぇ」

 

 そんな風にひとりごちながら、肉食動物が獲物を探すかのように、スンスンと鼻を利かせながら別の『狩り場』へと足を運んだ。

 

 

 

「よし! 行っけぇ、フリント!」

「こいつで終いだァーッ!」

 

 関東地方統一戦・予選の1戦目で勝利を収めたアスカとフリント。

 二人はその後も順調に本戦までの勝数を稼ぎ、残り1勝というところまでスムーズに辿り着いていた。

 次の対戦相手を見つけて倒せば、ようやくアスカたちに地方統一戦の参加資格が与えられる。

 とはいえ、ここから連敗してしまえば道は途絶えるため、まだまだ油断ならない。浮足立たないように気をつけながら、アスカは周囲を窺いロボトルの相手を探す。

 

「どうやらキミも4勝できたみたいッスねぇ」

 

 すると、背後から少女が一人、アスカの元へとやってくる。

 ジュウゾウと同じくメダリオン学園高等部の生徒、ササキスワローを連れた、1年女子の椿黒 ソラだ。

 

「椿黒先輩!」

「……アスカも、ってことは」

「自分も4勝。あと一戦、勝てば確定ッスね。あとはお互い相手を見つけるだけ」

 

 そう言った上で、ソラは「そこで」と続ける。

 

「ここでロボトルしないッスか? ヘタに歩き回って時間を食うより、よっぽどいいでしょ?」

 

 勝った方は本戦に進める。逆に負けたとしても、完全に枠が埋まっていない限りは出場の可能性は残るはず。

 何より、先輩と本気でロボトルをしてみたい。

 頭の中でそのように結論を出したアスカは、ソラの提案に快く頷いた。

 

「やりましょう、でも負けてもお互い恨みっこなしですよ!」

「そうこなくちゃね。じゃあ、準備するッスよ」

『パーツ転送!』

 

 メダロッチを二人同時に操作して、それぞれフリントとコジロウのパーツが変化する。

 フリントの構成は頭部・脚部がローンビートルのまま、右腕を以前ロボトルの中で手に入れた『MDT-GDR-00 ガンデスペラード』のハードターゲットに、左腕はアルタイーグルのオヤニナイとなった。

 対するコジロウは、右腕のみ『MDT-SIN-00 シンセイバー』のコテツザンゲキに変えてある。

 これで互いの準備は完了。頷き合って、二人はそれぞれの相棒と共に走り出す。

 

「ロボトル!」

「ファイト!」

 

 戦いが始まって真っ先に動き出したのは、フリントだ。

 

「行くよフリント、オヤニナイ!」

「おう!」

 

 左腕から銃弾を放つと同時にクーラープラントがセットされ、冷却スピードが上昇。

 一方、攻撃を左腕の鞘一本で受け止めたコジロウは、そのままその腕自体を機能によって自ら破壊する。

 

「ソードレシーバーの効果は知ってるッスよねぇ?」

「たしか、ブーストサクリファイス……!」

 

 これによってコジロウは、ファイトブーストとクーラーの二つのプラス症状を同時に獲得。

 攻撃が来る前に倒さなければ、負けてしまう。それを予感して、アスカは戦況を見極めるべく走り、フリントもコジロウと付かず離れずの距離を保つ。

 そして先にクーラープラントを発動していたお陰ですぐに冷却を終えたため、フリントの方が先に充填を完了し、その照準が上空のサムライに定められる。

 

「喰らいやがれ!」

「ぐうぅっ!」

 

 発砲音と共に飛ぶ銃弾。コジロウの脚部は飛行型、ハードターゲットの持つアンチエア射撃攻撃の対象だ。

 しかし、飛燕のサムライが身を捩ったことによって、その弾丸は脚の装甲を掠めるだけに留まる。

 

「しまった……!?」

「よし、行けそうッスね。コジロウ、コテツザンゲキのがむしゃらアサッシンで一気に決めるッスよォ!」

 

 コジロウが地上へ急降下し、素早く刀を振るう。

 アサッシンは、パーツを破壊できなければ自壊するというリスクがある代わりに、命中した敵の装甲に致命的なレベルの傷を負わせることができる優れた武器。

 これをがむしゃらで扱うことにより、そのダメージはフリントのパーツ全体に波及する。

 

「があああぁっ!?」

「フリント!?」

「や、やべぇ……足持ってかれた!」

 

 凄まじい威力の斬撃で、脚部は完全に機能を停止。

 充填・冷却効率も落ちてしまったフリントに対して、脚部未破壊のコジロウは冷却をスピーディに終えてしまった。

 

「こりゃあ驚いた、機能停止までは届かなかったッスね。でも、これで自分たちが圧倒的に有利ッス」

「くっ!?」

「コジロウ、トドメ行くッスよ! コテツザンゲキ!」

 

 がむしゃらで余計なリスクを負う必要はない。そう判断してソラが命じ、コジロウは充填しながらフリントに一直線に接近する。

 そして真っ直ぐに刀を、頭を目掛けて突き立てた。

 ザクッ、という貫通音が聞こえ、勝利を確信したソラは強く拳を握り締める。

 

「勝っ――」

「て、ねぇよッ!!」

 

 直後、フリントの声が戦場に響く。

 よく見れば、コジロウの突きは左腕を貫き機能停止させているものの、切っ先は頭部を避けてしまっていた。

 パーツ全体への攻撃指示を出さなかったが故に、攻撃が届かなかったのだ。

 

「なぁっ!?」

「こいつで終わりだァ!!」

 

 刀が抜けないままフリントが充填を終え、そのままコジロウの胴に右拳とアンチエア射撃が炸裂。

 今度は完全に命中し、頭部が機能停止してメダルが吐き出された。

 アスカの勝利だ。彼の表情は徐々に歓喜のものに変わっていき、フリントの元に駆け寄って抱擁し合う。

 

「やった、勝った……勝ったよフリント! 予選通過だ!」

「おう! でも、喜ぶのはまだ速い! 本番はこれからだぜ!」

 

 そうは言いつつも、フリントの声も明るいものだ。

 二人の喜ぶ様子を眺めつつ、ソラは彼らに拍手を送る。

 

「おめでとうッス。自分もすぐ本戦に上がるッスよ、次は向こうで」

「はい! 本戦でもロボトルしましょうね!」

 

 メダロッター同士握手を交わした後、アスカは会場へ、ソラは次の対戦相手を探しに歩き出すのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ソラとの決着後。

 スポーツ会館に到着して受付を済ませたアスカは、そこですぐにホムラの姿を発見する。

 

「ホムラ! もう来てたの?」

「よう! 相手の方から寄って来たんでな、案外すぐ終わっちまった。まぁ、俺より速く着いたヤツもいるけどよ」

 

 言いながら、ホムラはメダロッチからアプリを立ち上げ、予選通過者のリストを開示した。

 

「早総くん……!?」

「あの野郎、1位でとっくに通過してやがったんだぜ。とんでもねぇ話だよな」

 

 アスカ自身もノアを強いメダロッターだとは常々思っていたが、大人たちを余裕で抑えて圧勝するほどとは考えていなかったのだ。

 フリントと共に、2位以降の順位も確認していく。

 

「2位通過は常盤 ミツヒデ……あっ、ヴァネッサさん3位だ! ホムラは5位通過か、すごいね!」

「アスカ! オレたちは、オレたちはどのくらいなんだ!」

「俺は15位、大体半分くらいの位置だね」

「えぇ~っ!? あんだけ頑張ってこの順位かよ!?」

「しょうがないよ。むしろ駆け出しの俺たちが32人の枠に入れたんだし、かなり健闘したと思うよ?」

 

 ホムラもその言葉に頷きつつ「速けりゃ絶対強いってワケでもないしな」と付け足す。

 そうしてしばらく話していると、二人の人物が彼らの前にやって来た。

 予選を勝ち上がった、ジュウゾウとタマキだ。

 

「あらぁ、日晴も無事に通過できたのねぇ」

「よ! 俺っちも来たぜぇ、9位だ!」

「こっちは10位。ふふん、姫って強いでしょう?」

 

 胸を張るタマキと、その隣でガハハと笑うジュウゾウ。

 そんな二人に対して、アスカは拍手を送る。

 

「社森先輩、やっぱり強いなぁ……ところで國丸さん、残りの二人は?」

「ケンスケとキイチだったら、4勝したところまでは確認したわよ。ま、すぐに来ると思うわ」

 

 あの二人なら絶対勝ち上がる。そう思えるほどに彼らを鍛え直したのか、タマキには確信があるようだった。

 直後、会館にオオルリによるアナウンスが流れる。

 

『参加者の皆様にご案内申し上げます。たった今、予選通過メダロッター32名が確定しました。予選通過者の方は、速やかに会場にお集まり下さい。繰り返します……』

 

 メンバーが完全に出揃った。

 メイやリオ、ユメたちは勝ち上がれているだろうか。ソラも、あの後ちゃんと勝ったのだろうか。

 息を呑みながら、アスカは出入口の方をじっと注目する。

 すると。

 

「あー! アスカくん、やっぱりもう来てたんだ!」

 

 元気な声と共に、メイが飛び出してアスカに抱きついた。

 

「メイちゃん! 勝ったんだ!」

「えへへ~、実は5勝した後もアスカくんのこと探してて遅れちゃったんだ」

「あ、そういう……と、とにかくおめでとう、本戦も頑張ろうね!」

 

 メイは嬉しそうに「おー!」と声を上げて拳を掲げ、アスカから離れず抱き締め続ける。

 そのすぐ後に続いて入って来たのは、リオだ。どうやら、メイと一緒に来たらしい。

 

「なんだ、お前も通過できたのか。お疲れさん」

「……ふんっ」

 

 ホムラから視線をプイッと逸らしつつも、リオは彼の隣に並ぶ。

 さらにその後、他の選手に混じってケンスケとキイチもすぐに現れた。

 

「二人も突破できたみたいねぇ。まずは、第一関門クリアよ」

「このまま、目指すは三人で上位独占!」

「腕が鳴るっすね!」

 

 タマキたちトライクロウズも、互いを鼓舞して決意を新たにする。

 人数が徐々に増えていき、会館にいる面々をジュウゾウはじっと観察していた。

 

「見ろよ、他県からは結構な有名人も来てるぜ」

「あっ、6位通過の……名前は風野(カザノ) シオリさん!」

 

 ジュウゾウの指差した方向を見てアスカが名を挙げたのは、ヴァネッサに負けず劣らずの高身長と凹凸のハッキリしたスタイルを併せ持つ、ミラーシェードを掛けた銀髪の女性だ。

 宇宙航空研究開発機構HEXA(ヘキサ)所属の茨城出身メダロッター、風野 シオリ。HEXA製メダロットの『HXA-SUN-00 メダサン』と『HXA-MON-00 メダムーン』を連れて、ノースリーブのタートルネックとデニムパンツ姿で佇んでいる。

 他にも、埼玉の出身や群馬の出身の有名メダロッターが数多く出場しているようだった。

 

「ん?」

 

 そんな折、ふと入口の方に目をやったメイが、きょとんとして首を傾げる。

 

「メイちゃん、どうしたの?」

「いや、今見かけた()()()()()って確か4位通過の人じゃないかな? なんで今頃会場に来たんだろう……」

 

 アスカも同じ方向を見るが、既に人混みに紛れ込んでしまったのか、見つけることはできなかった。

 さらに、ホムラとリオも周囲に目を配ってやや戸惑っている。

 

「椿黒先輩がいねぇな」

「ユメも見当たらないわね、もしかして……」

 

 あの二人は、脱落してしまったのではないか。

 悪い予感が頭の中をよぎるが、それを中断させるように再びオオルリの声が響く。

 

『お待たせ致しました! 32名の入場を確認しましたので、これより関東地方統一戦の本戦を開始致します!』




メダロット解説コーナー

[機体名]
ベガプリンセス

[型式番号]
MDT-TNB-00

[性別]


[パーツ]
◆頭部:マラプトノカ(格闘/マイナスチェイン/がむしゃら/3回)
◆右腕:ウリバタケ(格闘/ダブルファイア/なし)
◆左腕:タナバタオコゲ(格闘/フレイム/がむしゃら)
◆脚部:カジノハヒメ(二脚/コンバスション)

●HV:0/0/0 合計:0/1

[備考]
竪琴を奏でる、情熱的な織姫型のメダロット。TNBは七夕を意味する。
敵機に2つ、自身に1つファイア症状を与えるダブルファイアと、相手のマイナス症状の数だけダメージが増幅するマイナスチェインの組み合わせで戦うのがセオリー。純正構成であれば、ファイア症状のダメージを回復に変えた上で機体性能を向上できる。
マラプトノカを使い切ったとしても、左腕によるがむしゃらフレイムなら充分なダメージを期待できる。他のマイナス症状パーツと組み合わせたり、アルタイーグルを僚機にして敵機の動きを止めながら大ダメージを与えるのも面白い。

本作品のオリジナルメダロット。
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