メダロットSAGA   作:正気山脈

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「ハッハッハッ! 諸君、体育の授業の始まりだぞ!」

 運動場の真ん中でそう言ったのは、赤いジャージを着ている背の高い黒髪の女教師、体育担当の奉五郎(ホウゴロウ) チトセだ。
 クリップで留められた長い後ろ髪を撫でつつ、メダロッチを操作して自身の機体を二体呼び出す。
 片方はゾウ型の機体である『MDT-ELF-00 メガファント』で、もう片方はジャンガリアンハムスターを元にした『MDT-HMS-01 ジャンガリアン』である。

「さて、今日はロボトル演習の前にHVパーツについて解説しようか! 君たちは、メダロッチに表示されているHVという文字の意味を知っているかな? これはヘヴィパーツと言って、重量の大きいパーツなんだ!」

 チトセがメダロッチを操作し、画面をその場に表示する。
 そこには、メガファントとジャンガリアンのステータスが記されており、メガファントのパーツのひとつにHVの表記が見られた。

「ヘヴィパーツは高性能だが、その重さを支える脚部のHVリミットをオーバーしてしまうと、メダロットの性能が下がってしまうぞ!」
「具体的にはどのくらい弱体化するんですか?」
「いい質問だな! メダテックからの発表によれば、リミットオーバーしたパーツ1つ分につき25%! つまりリミット0なのに3つともHVパーツにしてしまうと、実に75%もの戦力ダウンになる! 上半身の筋肉を活かすには、ちゃんと足腰も鍛えなければならないという事だな!」

 言いながら、チトセはメガファントを招き寄せる。

「例えばメガファントの頭部パーツ! これは両腕の盾と違ってヘヴィパーツなので、パワーはあるがちゃんとHVリミット1以上の脚部を使わなければ維持できないぞ!」

 続いて、彼女の前にジャンガリアンが漂いながら出て来た。

「一方、このジャンガリアン! この子にはHVパーツは存在しないが、脚部のリミットは0! 重いパーツを付ける事ができない!」

 言いながらチトセは二機の頭を撫で、生徒たちへ話を続ける。

「そして大体の場合、安定感のある戦車や多脚などの脚部はHVリミットが高く設定されており、空を飛ぶ浮遊・飛行脚部は0である事が多い! もちろん、メダロットによって多少異なるがな!」

 自身の両腕を組んで力強く仁王立ちするチトセ、その両脇でメダロットたちも頷く。

「ではここで私から問題だぞ! 狩兼くん、メガファントの脚部パーツが破壊されたらどうなると思う?」
「脚部がなくなったら重量を支える事ができなくなって、性能が下がるッスね」
「正解だ! HVパーツを残したまま脚部を破壊されると圧倒的に不利になる、みんなもHVリミットには気を付けて楽しくメダロットをビルドアップするんだぞ! 先生との青春の約束だ!」

 チトセはそう締め括った後に、授業を始めた。
 練習ロボトルが行われ、時は過ぎ、授業が終わる。
 最後に、一人の男子生徒が挙手して質問を投げかけた。

「せんせー! ティンペットって、オスとメスがあるけど赤ちゃんを作れるんですか?」
「えっ!?」
「そもそも赤ちゃんってどうすればできるんですか?」

 生徒の目は純粋な好奇心で満たされており、キラキラと光っている。
 だが、チトセは顔を耳まで真っ赤にしてその視線から目を背けてしまい、指をもじもじとさせ始め――。

「そ、その……えと……そういう話は君たちにはまだ速いので! 今日はここまで! オシベだとかメシベだとかの話は……あーっと、生物学の槻地先生とかに聞くように! 以上、解散解散ー!」

 まさに脱兎の如く疾走し、授業終了のチャイムが鳴り響くのであった。


FIGHT.05[強くなりたい]

 アスカとフリントがノアの操るキバマルに敗北してから、数日が経過した放課後のメダリオン学園にて。

 10勝を目指していた時とは打って変わって、アスカらは大人しくなっていた。

 キバマル戦での大敗が相当堪えたのだろうな、と同じクラスのホムラは彼を見て思う。

 そんなホムラに対し、相棒のバレットがメダロッチから話しかけて来た。

 

『何か声をかけてやらないのか?』

「何言えば良いってんだよ。メダフォースを使えるヤツだったから仕方ないとか、相手が悪すぎたとか? 意味ねぇだろそんなもん」

『だが明らかに落ち込んでいるように見えるぞ』

「そもそもここで折れるんなら、最初からこの学校に来たりしねぇよ。心配いらねぇって。こんなんで挫けるような弱いヤツだとは思えねぇ」

 

 二人がそんな会話をしていると、いつものように教室の扉が勢い良く開かれ、メイが姿を現す。

 

「日晴くん! 一緒に帰ろ!」

 

 いつも通り元気良くアスカの元に駆け寄っていくメイ。

 だが、アスカは首を左右に振った。

 

「ごめん、今はちょっと……一人で帰りたいんだ。ごめんね」

 

 言いながらアスカは、メイの横を通って教室を去っていく。

 するとメイの方も、肩を落としてシュンと眉を下げる。

 

「日晴くん……あれ以来元気ないね……」

「ま、あんだけ一方的に負かされたら無理もないんじゃない?」

「ひゃっ、リオちゃんその言い方はちょっと」

 

 一緒に来ていたリオとユメも、アスカの背中を見送った。

 そしてリオは、アスカと同じように覇気のなくなったメイを見て溜め息をつく。

 

「なんであんたまで元気なくなってんのよ」

「だってぇ~……友達が落ち込んでたらさ~……」

 

 言いながら、メイは今にも泣き出しそうなほどに瞳を潤ませる。

 リオとユメはそんな彼女を諌めつつ、教室から外へ出ていく。

 そして、たった今の顛末を見届けていた影が、廊下に三つ。

 

「聞きましたか姫! 日晴のヤツすごい調子悪そうですよ!」

「今の状態で襲いかかれば、オイラたちが勝てます!」

 

 ケンスケとキイチ、そしてタマキ。トライクロウズの三人であった。

 タマキは二人からの提案を聞くなり、いきなり両手で彼らの股間をギュウッと鷲掴みにする。

 

『はぉぁっ!?』

「あんたたち、姫がそんな事しなきゃ勝てないと思ってるワケ!? バカにしてんのぉ!?」

『ご、ごめんなさいいいい許してぇぇぇ~!! 離してぇぇぇ~!!』

「まったく……」

 

 悶える二人の股ぐらからパッと手を離したタマキは、そのまま浮かない表情でアスカの背中を見送った。

 一方、そのアスカは考え込んだ様子で門から学校の外へ出て行く。

 その直後、メダロッチが着信音を鳴らした。

 

「ん、メール?」

『逢留のじーさんからみたいだな』

 

 アスカはすぐにメダロッチを操作し、メールの内容を黙読する。

 そこには、以下のような内容が記されていた。

 

『君のお陰で充分なデータが取れて、KBT以外のNGモデルも開発が進んでいる。本当にありがとう。少し話がしたいので、今から研究所に来れないだろうか?』

 

 少々悩んだ末、アスカは了承の旨を書いて返信。するとフリントが不思議そうに声をかけて来る。

 

『行くのかよ?』

「うん。相談したい事もあるからね」

 

 かくして、アスカたちはヒロシに会うべく、研究所を目指して歩き出すのであった。

 

 

 

 しばらく歩いた後、アスカは無事にサイオウ市にあるメダテック本社へと到着する。

 受付嬢に事情を伝えたところ、博士から連絡を貰っているという事で、すぐに研究室へと案内された。

 そして室内に入ると、意外な顔と再会する。

 

「あら、いらっしゃいませ」

「水来さん!? なんでここに!?」

 

 ヒロシの隣に立つのは、彼と同じく白衣を着用している水来 マリンだ。

 その驚く姿を見て、ヒロシはマリンを見下ろし首を傾げる。

 

「なんだマリン、まだ言ってなかったのか?」

「……そういえばお話するのを忘れていましたかも知れませんわね」

 

 どこか照れたように笑って誤魔化そうとするマリン、その肩にヒロシが手を乗せた。

 

「この子は私の孫だ」

「え? ……えぇぇぇっ!?」

 

 思ってもみない関係性に、アスカは素っ頓狂な声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!? じゃあ姓が違うのはどういう!?」

「水来は父の姓ですので」

「あ、あぁ、なるほど……そりゃそうだよね、うん……」

 

 混乱のあまりおかしな質問をしてしまい、心を落ち着けるために深呼吸するアスカ。

 そうして室内のソファに腰掛けて冷静になった後で、改めて対面に座るヒロシに「お話というのは?」と尋ねた。

 

「ウム。メールで送った通り、君のお陰で実は思ったより研究が捗ってね。ローンビートル一式とは別に、その礼をしたいんだが……」

 

 言いながら、ヒロシはテーブルの上に小冊子を置く。

 メダロットのカタログ、男女のティンペットが写ったページだ。

 

「男型と女型ティンペット、どっちが欲しい?」

「え、貰って良いんですか!?」

「もちろんだとも、流石にメダルは別途用意して貰う事になるがね」

「ありがとうございます!」

 

 ぱぁっと明るい笑顔を見せるアスカ、それに対してフリントからは低い声が漏れて来る。

 

『へっ、全く呆れたヤツだなお前は。新しいのが手に入ったらすぐそれに夢中か? お前も他の人間と同じだな』

「フリント?」

『まぁしょうがねぇよな、オレじゃ全然役に立たなかったんだから。さっさとティンペット貰っちまえよ』

 

 不機嫌な、不服そうな声。それを聞いて、マリンは小首を傾げて尋ねた。

 

「もしかしてキバマルくんに負けたのを気にしてますの?」

『な……ち、違うっての!』

「拗ねてますわねフリントくん」

『うるせぇうるせぇ! 拗ねてなんかねぇぇぇ~!』

 

 すっかり意地になってしまい、フリントは騒ぎ立てる。

 それを聞いたアスカは、怪訝そうにメダロッチに向かって声をかけた。

 

「フリント? えっと、別に役に立ってないなんて思ってないよ?」

 

 一瞬、フリントが沈黙する。続け様に、アスカは話を続けた。

 

「っていうか……多分、あの時もっとちゃんとしなきゃいけなかったのは俺の方なんだよ」

『え?』

「最初に早総が言った通りだよ。力量差をちゃんと理解せずに挑んで、フリントを勝たせてあげられなかった」

『アスカ……』

「それに早総は指示を短く飛ばして俺に何をするのか悟らせなかったし、キバマルは次にメダロッターがどんな指示をするか予測して立ち回っているみたいだった。メダフォースが使えるかどうかなんて関係なく、実力もチームワークもすごいんだ」

 

 マリンとヒロシが微笑みながら見守る中、フリントは唸り、まるで言葉を絞り出すようにメダロッチから言葉を発する。

 

『オレが負けたせいで落ち込んでたんじゃないのか?』

「落ち込む? え、俺が? なんで?」

『だって、今日とかホムラやメイと全然話してなかったし……』

「あぁ……それは単にどうやったら早総に勝てるのか、ずっと考えちゃってたから。ちょっと上の空になってたかも」

 

 後でみんなに謝らないとね、と苦笑して付け加えつつ、アスカは拳を握って語りかけた。

 

「あのくらい、いやあれよりずっと強くならなくちゃならない。フリントと一緒に強くなりたいんだよ」

『……そっか』

「あ、でもそれはそれとして。ロボトルの大会レギュレーションには三対三もあるから、ティンペットとメダルは貰える内に貰うからね。とりあえず女型ティンペットでお願いします」

『うおーい台無しじゃねーか!? ったく、しょうがねぇマスターだな!!』

 

 言葉とは裏腹に、弾むような口調でフリントが話す。

 アスカの方も、朝から悩んでいたのを忘れたかのように明朗な笑顔を浮かべた。

 そんな和やかな様子を見ながら、マリンは二人にひとる提案をする。

 

「日晴くんとフリントくん、折角ですのでロボトルをしていきませんか?」

「え?」

「10戦くらいでは女性型メダロットのパーツもあまり集まってないでしょう? それに私も少し、息抜きがしたいところだったので」

 

 マリンはそう言って、自分の腕に装着されている水色のメダロッチを構えた。

 ノアに負けて以来、数日ぶりのロボトル。アスカは胸が躍るような気分で、同じくメダロッチを構えようとする。

 直後、音を立てて研究室の扉が開け放たれた。

 

「合意と見てよろしいですね!?」

 

 そこにいたのは、レフェリー衣装の上から白衣を羽織り、絵に描いたような瓶底眼鏡を着用したオオルリだ。

 

「わぁ!? ふ、不法侵入!?」

「失礼ですね! レフェリーはロボトル協会の所属、つまり関係者なのでちゃんと許可は取れています!」

「そ、そうなんだ……」

「そうなんです!!」

 

 キュピーン、と眼鏡を指で眼鏡を掛け直したオオルリが自慢気に言う。

 アスカとマリンは呆れたように顔を見合わせ、ヒロシはコホンと咳払いをして研究室の奥にあるドアを指で差す。

 

「向こうにロボトルコートがあるから、とりあえずそこまで移動しよう」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

『メダロット、転送!』

 

 六角形のラインが引かれた試合場へと、二体のメダロットが送り込まれる。

 一体はアスカのパートナー、ローンビートルのフリント。

 もう片方は、マリンの傍に立つ女性型メダロット――だが、一見するとそうとは分からない姿の機体だ。

 血に濡れたような真紅のボディと、凶悪な白い髑髏の意匠を持つ、頭部にヤギのような双角を宿し悪魔の翼を背負う怪物めいたメダロット。

 天井に向かって禍々しく咆哮するそれを見たアスカは、ぎょっと目を見開く。

 

「『MDT-DVL-03 ブロッソメイル』ぅ!? ちょ、ウソでしょ!? こんなところでお目にかかれるなんて……」

「あ、間違えた! 違います違います、今回はこの子じゃありませんわ!」

「えっ?」

「うっかりしてました、前に使ったパーツ設定をそのままにしてましたね。これに変更して……と」

 

 メダロッチの操作によって、その禍々しい悪魔が別の姿に換装された。

 深く青い制帽とスクールセーターやスカートのような外見の装甲に、エメラルドグリーンのネクタイとソックス、そして長い髪と背に付いたクリアブラックの翅。

 SLR(セーラー)型やBLZ(ブレザー)型に似た学生チックな可愛らしいデザインながら、どこか虫、それも蜂を思わせるような姿だ。

 

「その機体は……初めて見るね?」

「この子も新作のメダロット、名前は『MDT-OSB-00 セイボウメイツ』です」

「あれ、NGの型番じゃないんだ?」

「NGシリーズは飽くまでも従来の機体の新世代なので……今後も、普通にNGシリーズ以外の新機体は作られますわ」

 

 ふふっ、と楽しそうに笑うと、大青蜂(オオセイボウ)型メダロットのセイボウメイツの両肩に手を置く。

 

「私に勝てたら、このセイボウメイツのパーツ一式を差し上げます」

「俺が負けたらどうするの?」

「え、うーん……じゃあ一日だけフリントくんのパーツ一式を貸して下さい。私も使ってみたいので」

 

 一体何に使うんだろう、と思いつつ準備を完了させ、それを確認したオオルリが天井に向けた手を振り下ろした。

 

「それでは! ロボトル――ファイトォ!」

 

 掛け声を合図に、両者とも動き出す。

 アスカ側は相手の機体に銃口が見当たらないので距離を取るように指示しつつ、右腕パーツ使用で敵機に狙いを定める。

 対して、マリン側も同じく付かず離れずの位置取りで行動、そして攻撃の指令を出した。

 

「リリムちゃん、ラズリーキャップ使用!」

「了解よ!」

 

 その言葉の後にフリントより先に充填が終了し、制帽の校章のような部分が展開して銃口が出現、小さな針が撃ち出される。

 

「うあっ!? な、なんだあ……!?」

 

 針が直撃した途端に、フリントの身体に異変が起きた。

 バスターマグナムの充填が即座に中断されてしまい、何もできないまま冷却が始まったのだ。

 

「パニック症状!? 頭部はパニックの射撃武器だったのか!」

「正解ですわ。このメダロットのパーツ、ちょっと厄介ですのよ」

 

 言った後、マリンは続けてリリムへと命令を下す。

 

「接近してラズリーチャームをがむしゃらで使用!」

「はい!」

 

 アスカ側がまだ態勢を立て直せていない間に、左腕の充填が始まる。

 額から一筋の汗を垂らしつつ、アスカも冷却完了と同時に指示を送った。

 

「フリント、頭部準備!」

「分かっ……た!」

 

 が、充填開始の途中で再びリリムの攻撃が始まる。

 

「残念ですけれど、少しだけ遅いですわ!」

 

 リリムの左手が緑色に発光し、その掌がフリントの顔に直撃した。

 瞬間、フリントの両目がコーションテープのように黄と黒で瞬き始め、形容し難い叫び声を発して頭を押さえてふらつき始める。

 完全に前後不覚だ。しかし何が起きたのか、アスカにはすぐに分かった。

 

「今度はコンフュージョン!? 複数の妨害攻撃を使い分けるのか……!」

「ふふふ、完璧なプランニングですわ! あとは右腕のラズリータッチでレベルドレインし続ければ――」

 

 キュピーンという音が聞こえるのではないかという程の誇らしげな表情をしながら、マリンが眼鏡を指先で掛け直す。

 しかし、その直後。混乱状態のフリントの頭部から発射されたミサイルが、リリムに命中する。

 

「あ、あら……?」

《脚部・左腕・右腕・頭部パーツに中度ダメージ》

「あららぁ!?」

 

 コンフュージョンは、攻撃部位から発せられる特殊な信号波によって内部の機能を狂わされる事で、症状を受けたメダロットの照準が正常に定まらなくなり敵味方の区別もなくなってしまうという厄介な技。

 もちろん攻撃を行う発症者自身さえも対象になってしまう可能性があるのだが、今回のようにそうならない場合もある。

 

「そっか、今回はお互いメダロットが一体ずつだから確率的には二分の一なんだ……」

「け、けれどリリムちゃんはまだ倒されていませんわよ!」

《充填完了》

 

 アナウンスを聞くが速いか、今度は右掌がフリントへと叩き込まれた。

 レベルドレイン症状。攻撃対象メダロットの内部にあるナノマシンに干渉し、メダルから出力されるデータに異常を与えてパーツ全体の性能を落とすという効力を持つ。

 この症状は重複するため、何度でも同じ攻撃を続ける事で敵機の性能をどんどん減衰させられるのだ。そうして戦力を喪失したところで、一気に攻め立てるのがこのセイボウメイツの戦い方である。

 

「ラズリーチャームを再充填! 私のプランに狂いはありません、あまり!」

「うん。でも」

《充填完了》

 

 ガシャンッ、とフリントがリリムの頭にラピッドバルカンの銃口を突きつけた。

 見れば、既に彼は視界不良の状態から立ち直っている。

 

「これでオレも回復した!」

「はっ!?」

 

 コンフュージョン症状は、一度攻撃を受けると解除されるのだ。

 即座に反撃が来る事は想定しておらず、リリムは至近距離からガトリング攻撃を全て受ける事になった。

 

「きゃあああ!?」

《左腕に中度ダメージ、左腕機能停止。頭部パーツに軽度ダメージ》

「これでコンフュージョンはもう使えない!」

 

 左腕は破壊できたものの、依然パーツ性能は落ちたまま。マリンは再びクイッと眼鏡を指で上げる。

 

「ま、まだですよ! リリムちゃん、冷却が終わったら頭部パーツで!」

「りょ、了解!」

 

 ラズリーチャーム破壊によって攻撃が中断されたため冷却が始まるが、それを悠長に待つフリントたちではない。

 

「フリント! 右腕充填で接近、頭部に注意して!」

「おう!」

 

 拳を握った後、フリントは指示通りに走り出してリリムを逃さないように距離を詰め続ける。

 しかし先程のように射撃を意識した位置取りではなく、むしろ格闘戦でも始めるのではないかという詰め方だ。

 一体どうするつもりなのか、リリムたちが困惑し始めた、次の瞬間。

 

《充填完了》

「オラァ!!」

「きゃあぁ!?」

 

 バスターマグナムと共に放たれたフリントの拳打がリリムの顔面に直撃し、リリムは思い切り後ろに倒れ込んで後頭部を強打する。

 

「よし、もっと攻め続けるぞ!」

「おうよ!」

 

 再び突撃するフリント。リリムは短く悲鳴を上げ、立ち上がって後ずさりする。

 相手のパーツ性能が落ちているとはいえ、ダメージが重なってリリムの頭部はもう限界に近いのだ。

 

「射撃機体で殴って来るなんて!?」

「これはちょっと予想外ですわね……?」

「マリン~!! どうするのよ~!?」

「落ち着いてリリムちゃん! と、とにかく頭部の充填を急いで! パニック攻撃なら……あっ!」

「どうしたの!?」

 

 発言の直後に充填が終わり、針が発射される。

 そしてそれがフリントの足に命中するが、最初のような症状は起こらなかった。

 

「ありゃ? なんともない」

「ウム。パニック技は冷却中の相手にヒットした場合、メダフォース抑制症状のMFシールに変わるのじゃ」

 

 と、いう事は。

 リリムがフリントの足音を聞いてビクッと震え、頭に突きつけられた銃口から火花が噴き出る――。

 その後に背中のハッチからホーネットメダルが飛び出して地面に落ち、オオルリは右腕をアスカの方に掲げた。

 

「勝者は日晴選手とフリント選手!」

 

 決着はついた。フリントは握り拳を天井に突き出し、アスカは胸を撫で下ろす。

 

「ふぅ~、ちょっと危なかったかも……」

「お疲れ様でした。では、約束通りこのパーツを」

 

 言いながらマリンはメダロッチを操作してセイボウメイツのパーツを全て転送し、ホーネットメダルとティンペットを回収する。

 数日ぶりの勝利と新しいパーツに表情を綻ばせるアスカ。後はメダルを手に入れれば、戦力は整う。

 

「フリント、もっとロボトルに勝っていつか早総を追い抜こう!」

「おう! へへっ、待ってろよ忍者野郎!」

 

 アスカがニッと微笑み、フリントがサムズアップをする。

 いつもの調子に戻った二人を、ヒロシとマリンは温かく見守るのであった。




メダロット解説コーナー

[機体名]
セイボウメイツ

[型式番号]
MDT-OSB-00

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ラズリーキャップ(射撃/パニック/なし/5回)
◆右腕:ラズリータッチ(格闘/レベルドレイン/なし)
◆左腕:ラズリーチャーム(格闘/コンフュージョン/がむしゃら)
◆脚部:ラズリータイツ(二脚/キャリアー)

●HV:1/0/0 合計:1/1

[備考]
OSB型のメダロット。モチーフは女学生とオオセイボウ、名前の由来は『制帽(せいぼう)』と『青蜂(セイボウ)』。
全てのパーツが妨害症状を起こす武装で固められており、それらを使い分けて敵機を撹乱する戦い方を得意とする。
その性質上、主にチーム戦において活躍する。

胸部の軟質装甲は厚い。

メダロットSに登場した他作品とのコラボ機体『TKR03 クインハニー』のパーツ構成を原型とする、オリジナルメダロット。
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