メダロットSAGA   作:正気山脈

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『これからメダロットを始めるキミに――新世代機登場! ニュー・ジェネレーション・メダロット!』

 メダリオン学園の寮室にて。
 ホムラは自室でパソコンを用いて、動画投稿サイトのひとつであるM-Tubeでメダテックの宣伝動画を閲覧していた。

『定番のDOG型やCAT型はもちろん、エントリーモデル仕様のKBT型やKWG型なども販売! さらにNGシリーズでは今後も中級者向けのミドルモデル、エキスパートモデルも発売決定!』

 映像にはこれまでとは異なる姿の青い犬型メダロットや赤い猫型メダロット、さらに黄色い亀型メダロットに加え、他にも様々な機体が映っている。

『NGシリーズ以外も継続してラインナップ続々! 手に入れろ!』

 その言葉を最後に、メダテックのPVは終わった。
 続いて、メダテックとは異なる企業の紹介映像が画面に流れ始める。

『最上級の、エレガントな輝きをあなたに。ゴージャス・インダストリーでは、ハードネステンのような宝石型を代表とした、見た目にも美しい高級メダロットを多数取り扱っており――』
『諸君! 自分の使うメダロットにイマイチ迫力が足りない、もっとロボトルをリアルな戦場っぽくカッコ良く彩りたい! そう思っていないか!? そんなミリタリー好きの君たちに朗報だ! 我々、黒龍重工の作るメダロットは――』
『メダライブ! みんなこんメダ~、まじかる☆ジャノメだよ! なんとなんとー! 今回はメダライブで取り扱ってるパーツ紹介の案件を――』

 しばし眺めている間に各社の新製品の紹介は終わり、ホムラはそのまま動画サイトのタブを閉じる。
 そしてSNSのとあるニュース記事の見出しが目に入って、その眉をしかめた。

『白藤 ハジメと百舌鳥 ユウト以来の天才!? 愛知出身、魔王と呼ばれたメダロッターに迫る!』

 記事のサムネイルには、制服を肩に羽織った一人の男子高校生の姿が映っている。
 身長は180cm前後、外ハネの真ん中分けの茶髪で襟足が長く、鋭い目つきで瞳は赤、唇の左下にはホクロがひとつ。
 自信に満ち溢れた不敵な笑顔を見せ、腕を組んでふんぞり返って、少年は威圧的な眼差しで眼前のカメラを見下ろしていた。

「勝たなきゃならねぇ相手がいるってのは、俺も同じなんだよな……」

 その瞳を睨み返すように見やり、ホムラはそう呟く。
 すると、左腕のメダロッチからバレットが声をかけて来る。

『ホムラ、今日はロボトルや授業があって疲れてるだろう? もう遅いしそろそろ眠らないか?』
「わーってるよ」

 ぶっきらぼうに返事をして、PCの電源を切ってホムラはベッドに向かった。


FIGHT.07[NGシリーズ始動!]

 アスカたち一年生が入学してから時は経ち、5月上旬。

 休日、しかも新しいメダロットの発売日という事もあり、サイオウ市のおもちゃ屋や家電屋は多くの人で溢れ返っていた。

 既にローンビートルは手に入っているので何の気無しにショッピングモールの方を訪れたアスカだが、ここも老若男女問わず多くの人間で賑わっており、目を丸くしている。

 

「うわぁ~、すごい人だなぁ。やっぱり新発売のパーツ目当てなのかな」

『こいつらみんなメダロッターだと思うと、ワクワクしてくるぜ!』

「フリントは相変わらずだねぇ」

 

 苦笑しつつも、アスカも新しいパーツのメダロットとの戦いを夢想していた。

 これから先どんな相手とロボトルする事になるのか、どんなメダロットと出会えるのか。

 そんな風に胸を躍らせていると、何者かが背後からアスカの肩に手を置く。

 

「ん?」

 

 振り返ってみれば、そこにいるのはホムラとリオだった。

 

「よっ、日晴」

「狩兼と……久稲さん? 珍しいね、二人がその……揃って一緒にいるなんて?」

『デートってヤツか』

「ちょっ、フリント!!」

 

 メダロッチから聞こえたフリントの発言にアスカが慌てていると、ホムラが頭を抱え、リオが長い溜め息を吐く。

 

「オイオイオイオイオイ、ンなワケねぇだろ。勘弁してくれ」

「偶然同じ場所で出くわしただけ。そんなんじゃないから。誰がわざわざこんな、いつも鼻の下伸ばしてるようなスケベ野郎と……」

「いつもマスク着けて顔を隠してるような女に言われたかねぇなぁ、そんなに顔に自信がねぇのか?」

「は?」

「あ?」

 

 いつもこのような険悪な雰囲気になるので、先程は言葉を選んでいたのだが、フリントが全て台無しにしてしまった。

 睨み合う二人を仲裁する形で、アスカは話題を切り替える。

 

「そ、それより! 二人はどういう用事で来たの?」

 

 ホムラもリオも眉間にシワを寄せてプイッと互いの顔を背けると、それぞれこの場に赴いた理由を話しだした。

 

「前に予約したパーツが届いたんでな、ここで試そうとしてたんだが……人多いなやっぱ」

「私は本屋に行くだけ。でも流石に人多すぎるから別の日にしようかと思ってる」

 

 リオは面倒くさそうにそう呟き、また溜め息を吐く。

 そうして三人は話しながら駅前の広場の方まで移動し、ゆっくりとベンチに腰掛けた。

 

「ところでアスカ、お前新しいメダルのことはもう良いのか?」

「良くはないっていうか、まだ探してるんだけどね。なかなか見つからなくって」

「そっか……俺の方でもあれ以来大会の情報を色々追ってんだけどよ、メダルが優勝賞品ってのはどうも近場になくてなぁ」

「あの時に邪魔が入らなきゃ、こんな事にはならなかったのになぁ」

 

 大会に乱入して進行を妨害し、賞品を奪ったのは結局何者だったのか。

 アスカたちはあの大会での騒動の後、テレビで『不審なサーカス集団がメダルを強奪』という見出しのニュースが報道されていたのも確認したが、正体に関しては未だ判然としないようであった。

 セレクトと警察が共同で調査中であるという発表があったものの、市民の不安は拭い切れていない。

 これから先、本当に二枚目のメダルを手に入れる機会は訪れるのだろうか。アスカがそんな事を考え始めた、その時。

 

「おうおうおうおうおう!」

 

 突然に背後から大声が聞こえ、三人とも驚いて振り返る。

 見れば、そこにいるのは声に見合った大柄な体格の高校生の男子。背中を覆うほどの長い赤茶の髪と、鋭い三白眼に赤い瞳が特徴的だ。

 

「今の話ィ聞かせて貰ったけどよぉ、それは自分が絶対に優勝できたって言いたいのかぁ!? この俺っちを差し置いてよぉ!」

 

 明らかに不良のように思えるその青年は、そう言って右手の親指を自分に突きつけ存在を誇示する。

 だが当然アスカたちは初対面なので、何事か分からず動揺していた。

 

「な、なんですか!? 誰!?」

「俺っちは社森(シャモリ) ジュウゾウ! メダリオン学園高等部二年生! 世界最強のメダロッターを目指す、漢の中の漢! あの大会に参加する予定だった一人だぜ!」

 

 威風堂々とした佇まいで名乗る青年、ジュウゾウ。

 しかしその言葉を聞いて、アスカは小さく首を傾げる。

 

「……あれ、でもあの時あなたの顔は見なかったような……?」

「普通に寝坊して受付に間に合わなかっただけだ!!」

「じゃあ参加できてないじゃないですか!?」

 

 思わず驚いて声を張り上げると、ジュウゾウは自分の腕を組んで豪快に「ダッハッハッハッハッ!」と笑って流す。

 一体この男はなんなんだろう。そんな疑問をアスカとリオが口にする前に、ホムラが声をかける。

 

「世界最強とは大きく出るじゃねェかアンタ。そんなに強いのか?」

「当然だぜ! 今ここで証明してやっても良い、寝坊してなきゃ俺っちが優勝してたって事をな!」

「面白ェ……だったら大会の時に使う予定だったパーツで相手してやるよ」

 

 二人と違って、ホムラの方はジュウゾウに対し大いに興味を持っているようであった。

 リオはまた面倒くさそうに深い溜め息を吐くと、目の前の高校生に物怖じせず言い放つ。

 

「あのですね、何をそんな勝手に熱くなってるんですか? 私たち中学生なんですけど? 年下相手にムキになって恥ずかしくないんですか?」

 

 もはや罵倒に近いが、ジュウゾウは全く堪えた様子がなく、むしろ逆に呆れた様子で鼻を鳴らした。

 

「ロボトルに年齢は関係ねーだろ。中学生だろうが小学生だろうが、強いヤツは強い。俺っちより強いヤツだっている」

「そもそも久稲、乗り気じゃないならお前だけ帰れば良いじゃねぇか。どうせ勝つ自信もねぇんだろ?」

 

 ホムラまでもがジュウゾウに加勢した事で、リオは額に青筋を立ててメダロッチを構える。

 

「アンタらマジでムカつくんだけど……!!」

「決まりだな。そっちは三人がかりで来な。こっちは……こうだ!」

 

 言いながらジュウゾウはメダロッチを操作すると、その場に三体のメダロットを呼び出した。

 

「えっ!? 一人でメダロット三機を同時に!?」

「ハッタリ……じゃ、なさそうだな」

 

 言いながら、三人も各自メダロットを転送しつつ敵機を観察する。

 先頭に立つのは頭に角を生やし、右腕に持った大きな金棒を肩で担ぐ赤鬼の『MDT-KMN-00 キメンガー』だ。

 もう一体は白いボディに赤いトサカが特徴的な、フライドチキンを棍棒のように持つニワトリ型の『MDT-CKN-00 クリムゾンキング』で、左腕がウズマキザメ型の『MDT-UZS-00 インフィニティス』のレフトソーに置き換わっている。

 最後の一機のみ、アスカたちも詳細を知らないメダロットであった。

 鳥の姿で赤と黄をベースカラーとして後頭部から赤い毛が伸び、両腕にバーナーのような噴射口が付いているのはPHX(フェニックス)型の特徴であるが、三人とも見た事がない機体なのだ。

 メダロッチで確認してみれば、その機体の名は『MDT-PHX-NG01 ハイフェニックス』という名で、新発売のNGシリーズの一種のようであった。

 

「面白いじゃねぇか、やってやるぜ!」

「合意と見てよろしいですね!!」

 

 いつものように声が聞こえて、その場に駆けつけたのはレフェリーのMs.オオルリ。

 今回は特別コスプレなどはしていないが、なぜか洗濯バサミを片手に現れた。

 

「これより、日晴選手・狩兼選手・久稲選手の三人チームと社森選手一人による変則チームロボトルを行います! 使用するメダロットは、日晴選手チームがそれぞれ一機ずつ! 社森選手は三機を使えるものとします! よろしいですね!」

「あの……その前にどうして洗濯バサミを持ってるんですか?」

 

 アスカが尋ねると、オオルリは人差し指で頬を掻きながら事情を明かす。

 

「同僚から聞いたんですけど、昔あるレフェリーが洗濯バサミを使ってものすごい登場の仕方をしたらしいんですよ。ただ何をしたのかは知らないので試しにやってみようと思ったんですが、方法が皆目見当も付かなくて」

「せ、洗濯バサミを使って……劇的な登場を? どういうこと……?」

「まぁ順当に考えると乳首に挟むとかなんですけどねぇ」

「絶対やめて下さいよ!? それただの変態じゃないですか!?」

 

 顔を真っ赤にしてアスカが言い、ホムラはオオルリの痴態を想像してニヤリと笑う。

 直後に苛立った様子でリオが大きな咳払いをすると、彼らは気を取り直して戦闘準備を再開する。

 アスカチームが指定したリーダー機はバレット。これが悟られないよう、そして敵のリーダー機がどれなのかを探りながら立ち回らなくてはならない。

 

「それではロボトル――ファイトォー!!」

 

 レフェリーの合図と共に、ロボトルは始まった。それぞれの陣営が、メダロッチを介してパートナーへ指示を出す。

 

「フリント! まずは厄介なパーツを持ってるクリムゾンキングから狙おう!」

「続けバレット! パターンB実行!」

「じゃあモーゼス、とりあえず左腕でガード」

『へ!?』

 

 フリントとバレットが右腕を充填している間に、モーゼスは左腕の盾(ミノスシールド)を構え、カウンターガードによる防御と反撃の態勢を取る。

 だが目前に迫ったクリムゾンキングの振るう右腕、ドンドンパンチは、一撃でその盾を完全破壊した。

 

「モーゼス!? ど、どうして……」

「このバカ野郎何考えてんだ! クリムゾンキングの頭部と右腕はデストロイ攻撃だ、ガード系パーツと相性最悪なんだよ!」

 

 デストロイ。名前の通り、命中した敵のパーツを一度の攻撃で破壊する技。

 ただしその破壊機能を発揮するには条件があり、対象のパーツが使用中――即ち充填・冷却・ガード体勢の発動の間でなければならない。

 これはパーツ使用中は内部のナノマシンが活性状態であるためで、デストロイ効果はその攻撃によって内部機能を狂わせる事により発動するからだ。それ故に、該当条件以外の状況下では、ただダメージを与えるだけの攻撃になる。

 

「クソッ、バレット!」

「分かっている!」

 

 失敗した彼女らのフォローに回るべく、フリントのライフルとバレットのレールガンが炸裂。

 二発の弾丸はどちらもクリムゾンキングの右腕へと着弾、破壊してその爆発の余波が頭部を襲い、小破せしめる。

 しかしジュウゾウの表情は全くの余裕で、むしろ一仕事を果たした愛機を「よくやった」と労ってさえいた。

 

「あっちの嬢ちゃんは大した事なさそうだな。キメンガーは引き続きチャージ、クリムゾンキングは冷却が終わったらすぐレフトソーをライオン野郎に! ハイフェニックスは右腕(ファイアバーナー)、KBT狙いで行け!」

 

 赤鬼がエネルギーを溜め込み、ニワトリと不死鳥は冷却に移る。その間にフリントたちの冷却が終わり、次なる指示を下す。

 アスカは目立った動きを見せないキメンガーをリーダーと見てビリーザハットの使用を、ホムラはもう一度クリムゾンキング狙いでそれぞれ攻撃させた。

 リオはというと、先頃のミスをまだ引き摺っているのか、味方二人にも聞こえないような声で短く命令を出している。

 そうして各自充填しつつ動き出した結果、最初に攻撃に移ったのはハイフェニックスだった。

 バーニアで飛行しての接近の後、右手の噴射口から真っ赤な炎が飛び出し、フリントの装甲を焼き焦がす。

 

「あっちぃ!?」

「まずい、ファイア症状が……!」

 

 装甲が燃焼する事で時間の経過と共にダメージを負い続ける、冷却効率も下がってしまうマイナス症状、それがファイア症状だ。

 ただしこういったファイア症状を付与する機能を持つパーツは耐熱性が高く作られているため、該当パーツの冷却率低下は発生しない。

 もちろん、フリントにそのようなパーツは装備されていないため、この症状による影響をモロに全て受けてしまう。

 

「あちちちちち!!」

《継続ダメージ発生中》

「くっ、慌てないでフリント! 良く狙って!」

「お、おう!」

 

 アスカからの声を受け、フリントの頭部からミサイルが発射される。

 矛先はキメンガー。しかしその装甲は堅牢で、ほとんどダメージが通っていなかった。バレットの方もアサッシン攻撃で左腕が破壊され、ピンチに陥っている。

 そしてさらなる追い打ちをかけるべく、ジュウゾウはクリムゾンキングに冷却の終わっていないフリントへの攻撃を、ハイフェニックスにはチャージを指示しつつ、キメンガーに目を向けた。

 

「さぁて、そろそろ本番行くぜぇ? キメンガー、メダチェェェェェェンジ!」

 

 メダチェンジ。特定のメダロットが持つ、別形態への変形機能。

 変形した機体は通常の頭部や腕のパーツが使えなくなるが、代わりに『ドライブ』という元パーツとは異なる行動を実行できる。

 また脚部による移動方法が変化する場合もあり、メダチェンジ前後で全く違う運用が可能となるのだ。

 キメンガーの場合、鬼の姿が変形する事によって魔除けのシンボルたる鬼瓦に変化し、移動方法(ムーブ)は浮遊となる。

 

「狙い撃て、チャァァァァァァァァァァジ!! バスタァァァァァァァァァァッ!!」

 

 鬼瓦の顔の上に付いた砲門へとエネルギーが集まり、その狙いがフリントに定まる。

 完全に集中攻撃するつもりだ。アスカは相棒に回避するよう声をかけるが、反応はやや遅れてしまっていた。

 回避も防御も間に合わないであろうタイミングで、重い一撃が放たれる、その瞬間。

 変形したキメンガーの全身がバチバチと音を立てて火花を上げ、損傷によってチャージバスターの発射が一瞬遅れる。

 その僅かな隙に、フリントは攻撃を回避しファイア症状からも立ち直った。

 

「……はれ?」

「簡単にやらせるワケないでしょそんなの」

 

 言ったのはリオ。見れば、モーゼスの頭部の黒い角が輝いており、そこから放たれた粒子が光の玉を形成している。

 それを見て、アスカはハッと顔を上げた。

 

「そうか、射撃トラップだ!」

 

 アステリオスの頭部パーツ、ミノスホーン。

 敵チームのあらゆる射撃攻撃に対して反応し、トラップの機能で自動的にダメージを与える。

 リオはビシッと人差し指をジュウゾウへ突きつけ、鼻を鳴らした。

 

「私を大した事ないとか言ったの、訂正して貰うから」

「良いね良いねぇ! やるじゃねぇかお前ら、楽しくなって来たなァ!」

 

 ジュウゾウがカラカラと笑いつつ、再びキメンガーたちへ指示を送る。

 射撃トラップがあると分かった以上、もうチャージバスターを使う必要はない。

 そもそも今回のメンバーはほとんどが格闘攻撃を中心としているため、わざわざ射撃に頼らなくても殴り続ければ勝てる。運悪く不意打ちを食らったに過ぎないのだ。

 

「キメンガーはドライブBをライオンに、クリムゾンキングは頭部でカブトを殴れ! ハイフェニックスは左腕、相手はライオンだ!」

 

 やはりモーゼスへの攻撃はせず、対象は二機に絞り込まれている。

 が、ここに来てジュウゾウは攻撃を集中させる先を、フリントからバレットへ変更した。

 その些細だが確かな変化を、この三人は見過ごさない。

 黙って視線を交わして頷き合うと、それぞれすぐ行動に出た。

 

「フリント、左腕でキメンガーを!」

「おう!」

「バレットもホルンシューターでキメンガーを狙え!」

「分かった!」

「モーゼスはクリムゾンキングを止めるわよ。右腕、がむしゃらで行って」

「かしこまりました」

 

 モーゼスが前線で斧を振り上げて突撃し、クリムゾンキングの前に立ちはだかる。

 その真横をキメンガーとハイフェニックスが通り過ぎるが、既にフリントとバレットも鬼へ照準を定めていた。

 

「へっ! メダチェンジした機体はパーツがひとつになってんだぜ、つまり頭パーツを狙われて一撃ノックアウトされるような心配もねぇ! 集中砲火なんか……」

「無意味なんかじゃありませんよ!」

「あぁん?」

 

 眉をしかめ、ジュウゾウは訝しむ。

 すると、フリントたちの左腕から連射された弾丸が全て鬼瓦に命中し、呆気なく破壊しメダルを吐き出させた。

 

「き、キメンガー!? どういうことだ!?」

「ガトリングやショットガンは、狙い撃ちと違って敵パーツを選ばず複数回の攻撃を行う技だ。だが今お前自身が言った通り、メダチェンジした機体は()()()()()()()()()()()()()()()……!」

「ハッ!?」

 

 本来なら命中する部位に規則性のない、ダメージを分散する形でパーツへ攻撃する『乱撃』という特性。それが、メダチェンジ機に対しては確実に全弾が装甲を撃ち抜くのだ。

 フリントもバレットもそれが使える。故にキメンガーを倒すことができた。

 しかし、ロボトルはまだ終わっていない。撃墜したのはリーダー機ではなかったのだ。

 アテが外れてしまった事に落胆する間もなく、ハイフェニックスの炎が自身ごとバレットを焼いて脚部を砕く。

 

「ぐぅ!?」

「バレット! クソッ、しかもファイア症状にかかりやがった!」

 

 ハイフェニックスの左腕、フレイムバーナーの機能はフレイム攻撃。

 使った自分自身もファイア症状になる代わりに、症状を受けている間は火力が増すのである。

 一体リーダー機はどちらなのか。考えながら冷却を待つ間に、ハンマー攻撃を受けながらもモーゼスを飛び越えたクリムゾンキングのデストロイ攻撃が、フリントの左腕を刺す。

 冷却終了寸前のところを狙われたため、彼のラピッドバルカンは一撃で砕け散った。

 

「やべぇ、ちっくしょう!」

「リーダー機さえ倒せれば……!」

 

 焦りつつも、グッと息を呑んで心を落ち着かせようとするアスカ。

 一方ジュウゾウの方も、表情は冷静ながら、自らの状況があまり芳しくない事を悟っている。

 キメンガーは既に破壊されているのに対して、パーツが一部破損しているとはいえアスカ側の戦力は健在。ゆっくりしている余裕はない。

 ここで勝負をかけるべきだと考え、そのために愛機たちへと命ずる。

 

「そろそろ終わらせてやるよ。ハイフェニックスはライオンにブラストバーナー(頭部パーツ)、クリムゾンキングはチャージ開始だ!」

「……! フリント、クリムゾンキングにミサイルだ!」

 

 ハッと目を見張ったアスカがそう指示を出し、リオはそれに続く。

 

「モーゼス、クリムゾンキングにハンマー! この際がむしゃらじゃなくて良い、とにかく早く殴りに行って!」

「かしこまりました」

 

 突然に集中攻撃が始まったのを見て、ジュウゾウはぎょっと目を見開いた。

 なぜなら、狙われているクリムゾンキングはリーダー機。しかもチャージ中でデストロイ攻撃の発動もない以上、絶好のタイミングだ。

 既に何度もダメージを負っている以上、確実に当たるミサイルの全体攻撃や強力なハンマーを受ければパーツの破壊は確実だろう。

 

「こりゃしくじった……か!」

 

 ジュウゾウの呟きと共に、フリントのビリーザハットとモーゼスのミノスハンマーがクリムゾンキングの頭部に直撃。パーツを損壊させ、メダルを排出した。

 

「勝者、日晴チーム!」

 

 オオルリから宣言がされて、ロボトルが終わる。

 するとすぐに、ホムラがアスカへ問いかけた。

 

「なんでクリムゾンキングがリーダーだって分かったんだ?」

「確信したワケじゃないけどさ、ほら。さっきチャージしてたでしょ? メダチェンジ機じゃない以上は無意味にチャージする理由はない、という事は社森さんは一気にトドメを刺すためにメダフォースを使おうとしたって事になる。ならクリムゾンキングに入ってるのは練度の高い信頼の置けるメダルなんだろうなと思って、つまりリーダー機なんじゃないかなと」

「……そういうことか。まぁどっちにしろ、メダフォースは止めなきゃいけないしな」

 

 納得した様子で頷くホムラ。その二人の方に、ジュウゾウも寄っていく。

 

「日晴って言ったな! 中々良い読みだったぜ! それから狩兼とそっちの嬢ちゃんも、良い腕してるぜ!」

 

 そう言った後、彼は「さぁパーツを持って行きな!」と言ってメダロッチを掲げた。

 特にパーツを賭ける数は指定しなかったので、入手できるのは代表者一人のみがひとつだけ。

 そこで真っ先に声を上げたのは、アスカだ。

 

「今回は久稲さんがパーツ貰いなよ」

「え?」

「だな。あの射撃トラップには素直に助けられたぜ、反撃の切っ掛けになった」

 

 ホムラも特に反対せず、リオは促されるままパーツの受取に応じた。

 送られて来たのは今回クリムゾンキングの左腕に使われていたパーツ、インフィニティスのレフトソーだ。

 

「機会がありゃ高等部の方に顔出しな、ロボトルならいつでも受けて立つからよ! じゃあなー!」

「はい! 次大会に参加する時は寝坊しないでくださいねー!」

 

 連絡先を交換したジュウゾウが帰っていくのを見送り、アスカとホムラは自分たちのパートナーと共に、先程のロボトルの反省点などを振り返り始めた。

 そんな中、モーゼスを戻しながらふとリオは「そういえば」と首を傾げる。

 

「あの大会ってなんでセレクトが参加してたのかしら……?」




 同日、サイオウ市の警察署内の会議室にて。

「ショッピングモールの大会に現れた者たちは、犯罪組織『Electrical Sheep Circus(エレクトリカル・シープ・サーカス)』……通称ESC(エスケイプ)と言います。今回の件以外にも遺跡で盗掘活動を行ったり、他人のパーツを奪ったり……何人所属しているのか、何を目的としているのかは不明ですが、日本国外でもその姿が確認されている事から世界規模で動く組織と考えられます」

 S.E.L.E.C.T所属の八熊 ダイゴは、他の隊員たちと共に会議に参加していた。
 サイオウ市のショッピングモールに現れた異常集団を対処するべく、警察と連携し合同作戦を立てているのだ。

「こちらを御覧ください。例のショッピングモールで撮影された映像です」

 そう言って会議場のスクリーンに投影された録画映像には、ESC側のメダロットであるボロゴブリンがローンビートルの一撃で倒されている姿が映っている。
 正面から倒れ込み、背中のハッチが開く。しかし、そこからメダルが飛び出す事はなく、薄く黒い煙のようなものが吹き出ているだけだった。

「これは!?」
「どうやらヤツら、メダルかティンペットの方に何らかの細工をしているようでして。この機能のせいで連中のメダロットを回収・解析する事もできませんでした」
「これでは調査が難しいですね……」
「ええ。とはいえ既存のメダロットのパーツが通用する以上、罠にかけた状態で倒せば回収に向かえる……と、思われるんですが」

 言いながらダイゴは溜め息交じりに頬を掻き、敵の未知なるシステムに頭を悩ませる。
 その後も会議は進み、セレクト側からの報告が終わった。

「以上が、我々の得た情報になります」
「質問なのですが、あなた方セレクトはなぜESCが大会に現れる事を知っていたんです?」
「とある協力者から情報を得まして。まぁ、それでも向こうが想定以上の戦力を投入していたために捕らえる事ができなかったのですが……」
「その協力者とは?」
「申し訳ないがそれはお答えできません……が、確かに信用できる素性の者です」

 警察の中には、セレクトに対し疑いの目を向ける者もいる。
 たった今の問答の最中にも、懐疑的な意見が小さく聞こえていた。
 それを承知の上で、ダイゴは深く頭を下げる。

「あの悪党どもを捕らえるには、我々の力だけでは不足なのです。どうか、警察の皆様にも力を貸して頂きたい」

 お願いします、と他のセレクト隊員と共に告げるダイゴ。
 ややあって少しずつ拍手の音が重なり、セレクトたちは合同捜査に迎え入れられるのであった。
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