メダロットSAGA   作:正気山脈

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「はっはっはっ! よく来たな、ここでの対戦相手は私だぞ!」

 そう言って腕を組みながら山間を繋ぐ吊り橋の上で仁王立ちしているのは、体育教師のチトセであった。
 彼女の目の前には、三人の生徒がいる。メイとマリン、そしてキイチだ。
 橋の真ん中で堂々と佇みつつ、チトセは再び叫ぶ。

「当然ながら私は特別講師ではない! しかし、私に勝てば福神漬が手に入るぞ!」

 言いながら、チトセはポケットから福神漬の描かれたカードを見せる。
 するとややあってメイが手を挙げ、質問を始めた。

「あの、先生」
「なんだ十々喜くん!」
「どうして震えてるんですか?」
「うむ、良い質問だな! ここは高所だから主に飛行か浮遊脚部のメダロットが有利になるのだが……」

 ぷるぷると小刻みに震えながら、彼女はカッと目を見開く。

「先生は! 高いところが苦手だ!」
「じゃあなんでここに!?」
「くじ引きの結果だ! というか早く始めよう下を見るのが嫌だ怖い怖い怖いから!」

 涙目になって捲し立て、しかし決して仁王立ちをやめないチトセ。
 その姿にやや呆れながらも、彼女がかわいそうになったメイたちは早速ロボトルの準備を始めるのであった。


FIGHT.09[山と川とメダロット(中編)]

「ハッ……そりゃあ、周りが全員格下に見えるワケだな。その人が師匠だってぇなら」

 

 林間学校二日目。

 山の中で開催された、カレーのトッピングを賭けたロボトル実習。

 ホムラは二人の特別講師の内の一人、世界最強のKWG型使いと名高い百舌鳥 ユウトと対戦する事になった。

 ただしこの実習はバトルロイヤル形式であるため、他にも参加する生徒がいる。その一人が、ユウトを師匠と呼んだKWG使い、早総 ノアなのだ。

 ロボトルを始めるには、あと一名足りない。その集まる間まで、ホムラはメダロッチを操作して使用パーツを調整する。

 

「……始まる前にひとつ言っておく」

「あ?」

「ボクの邪魔だけは絶対にするな。後悔する事になるぞ」

「へぇ~~~そいつは面白ェなァ~~~全力で邪魔してやるよクソボケが」

 

 額に青筋を立てながらホムラが睨み、ノアの方は彼に目をやらない。

 そんな二人を見てユウトは呆れ返りつつも、茂みの方でガサガサと音が鳴るのを聞くとそちらに視線を移す。

 

「あら、ここが目的地かしら……って」

 

 現れたのは、トライクロウズの國丸 タマキであった。

 

「げぇーっ!? 早総 ノアと狩兼 ホムラ!? なんであんたたちが姫の相手なのよぉ!?」

「運ねぇなお前。よく見ろ、その上であの特別講師さんだぞ」

「ウッソォ!? 百舌鳥 ユウトプロ!? サインください!!」

「今かよ! 俺だって欲しいわ!」

 

 騒ぎ立てる二人の話を聞くなり、ユウトはケラケラと笑いながらサインに応じた。

 色紙はなかったので、ふたりともシャツに名前を書いて貰っている。

 

「さぁて、それじゃあメンバーが出揃ったところで――始めるぞ」

 

 そしてにこやかな表情から一転して、ロボトルの準備となると目付きが鋭くなった。

 相対する三人は、その静かな闘気を感じ取って距離を取り、メダロッチを構える。

 

『メダロット、転送!』

 

 発せられた光線がその場に四機のメダロットを呼び出す。

 ライオン型にネコ型が一体ずつ、そしてクワガタのシルエットが二つ。

 ユウトはそれらを見て、ニヤリと唇を釣り上げた。

 

「ほう! KLN型の最新モデル、NGシリーズの『MDT-KLN-NG01 リオンビアード』か!」

「この間買ったパーツでね。こいつで討ち取らせて貰うぜ!」

 

 ホムラの相棒であるバレットに装着されているのは、ブラウンとオレンジを基調としたカラーリングに、赤い海賊帽を被ったような頭部が目を引くライオン型メダロット。

 右腕には一本の赤く細長い銃身が、左腕には太く短い銃身が伸びており、さらに頭部にはドレッドヘアーのような形状のタテガミがあり、帽子の下の顔はクリアグリーンのバイザーで覆われている。

 総じて、ウォーバニットやマスケティアードのようなこれまでに生み出されたKLN型の要素を取り入れつつ、海賊のイメージを盛り込んだ豪快で雄々しいデザインであった。

 

「そっちの嬢ちゃんもCAT型の最新機『MDT-CAT-NG01 シャルトルージュ』だな、良いじゃねぇか」

「え、えへへ……ありがとうございます」

 

 ユウトの見ている機体は、ペッパーキャットに代表されるような尖った耳の紅色のネコ型のメダロットだ。

 コンセントプラグ状の三本のツメに、ピンク色のアース線の尻尾、足爪は三本の丸型プラグ。体の各部にはイナズマのマークが見て取れる。

 ノアの機体は以前アスカと対戦した時と同じオニハヤテ、故に生徒側はNGシリーズのみで固められる事になった。

 一方ユウトが扱うのは、かつて全日本ロボトルリーグでも使用していた、初期KWGのヘッドシザースだ。

 

「百舌鳥プロの機体はアレか、後期生産タイプのヘッドシザース01……」

「流石に旧式すぎない? もしかして姫、ナメられてる?」

「違うよ。師匠はKWGシリーズだけでなく他にも色んな機体を持っているけど、手加減なんかじゃない。旧い機体だから自分を侮っているとか、勝てるかも知れないなんて考えない方が良い。あの人はいつだって本気で来るから」

 

 それを証明するかのように、ユウトは鋭い瞳の内に闘気を滾らせ、メダロッチを構える。

 

「さァ……やろうぜ!!」

『ロボトル、ファイトォッ!!』

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 同じ頃。

 川辺で特別講師のジャノメと対戦する事になったアスカとケンスケは、持ち込んでおいた学校指定の水着に着替えていた。

 二人とすぐにも着替えを終えると、再びジャノメの元に戻っていく。

 

「お、着替え終わったね! 実はもうひとり生徒さんが来たの、これでロボトルロイヤルを始められるよ~♪」

 

 言いながらジャノメは自分の後ろに控えていた少女の背を押し、紹介するかのように前に出す。

 その顔を見て、アスカは思わず「あっ」と声を上げた。

 

「増子さんだ」

「ひゃっ! 日晴くんがいる! えー、えと、負けないよ!」

 

 既に紺色のスクール水着に着替えているユメは、キリッと眉を吊り上げ唇をへの字に曲げながら、ピシッと人差し指を突きつける。

 だが普段の彼女の様子を知っているアスカとケンスケからすれば、その強気な態度は全く似合っておらず、むしろちょっとした可愛気すら感じて笑みをこぼしてしまうほどであった。

 

「今日はなんか珍しく気合入ってない?」

「だ、だって……美味しそうなんだもん、チキン……」

 

 今度はシュンと眉を下げ、恥ずかしそうに両手の指先をいじり始める。

 そんな姿にジャノメたちはときめきを感じつつも、メダロッチを操作してパーツを選定し、構えた。

 

「それじゃ~早速!」

『メダロット、転送!』

 

 ジャノメの掛け声に合わせ、その場に()()のメダロットが姿を現す。

 瞬間、ケンスケが疑問の声を上げた。

 

「ん!? なんでそっち二体いるんスか!?」

「あぁゴメンゴメン。この子(ナガラジャ)は気にしないで、撮影係だから。戦闘に出場するメダロットじゃないからパーツも使えないの、安心して!」

 

 下半身が蛇となっている赤いボディのメダロット『MDT-NAG-00 ナガラジャ』は、撮影機材を手に颯爽と下がっていく。

 どうやら本当にロボトル目的で呼んだワケではないようだ、と安心しつつ、各々戦場に揃った機体たちに目を向ける。

 アスカが呼んだフリントのパーツはいつも通りローンビートルをメイン、しかし脚部のみソニックタンクのブロックブルームに変更していた。

 ユメも今まで通りのアレクベアを選択しているが、ケンスケの方はブルースドッグではなくアスカも初めて見る機体だ。

 

「宮間、そのメダロット……」

「こいつか? 良いだろ、DOG型最新モデル! 『MDT-DOG-NG01 ブラウシェパード』だぜ!」

 

 ケンスケがそう言って見せびらかしたのは、DOG系列特有の青と黒のカラーリングが特徴的な犬型メダロット。

 両腕にひとつずつライフルが装備されており、ジャーマン・シェパード・ドッグに似た尖った耳が上に伸びている。

 また眼部は緑色のゴーグル状のバイザーで覆われ、その内側に黄色い眼光が見て取れた。

 

「ふんふん、なるほど! 三人ともなかなか手強そうだね~!」

 

 そう言ったジャノメが呼び出したのは、毎回配信でも使われている紫色のボディで髪が黒いファンシーエール。ただし、左腕のみ『MDT-BCY-00 ノワールカッツェ』のハナレテーとなっている。

 これで戦うメダロットは出揃った。あとはロボトルの開始を宣言するだけだが、その寸前にいずこからか「待った!」の声がかかった。

 

「合意と見てよろしいですね!?」

 

 言いながら川の上流からボートに仁王立ちして現れたのは、レフェリーのMs.オオルリ。

 青色の四角いブラと左右を紐で結ぶTバックタイプのショーツというセットのセクシーなビキニ姿で、その上にさらにウィンドブレーカーを羽織っている。

 しかし胸の部分は先端を隠しているだけで、上着も閉じきれないのかチャックが途中までしか上がっておらず、その柔らかく大きなものがより強調される結果となっていた。

 

「あ、あの。今日のは真剣ロボトルじゃないんですけど……」

「知ってますよ、私もオフの日です! ただちょっと校外学習ロボトルの話を聞いて、面白そうなので寄りました!」

「えぇ……?」

 

 困惑しながらも、アスカの視線はチラチラとオオルリの水着姿に注がれている。いけないことであると分かっていても、つい見てしまう。

 そんな彼の様子に気付いたジャノメは、イタズラっぽく笑っていきなりオオルリに抱きついた。

 

「にひひー! この配信をアップすれば爆乳(バクチチ)効果で再生数も爆上がり間違いなしだよぉ~! いやいや捗りますなぁ~!」

「ちょ、ちょっとジャノメ選手! いきなり何してるんですか!」

 

 二人の水着の美女が戯れる姿を前に、アスカは顔を真っ赤にして見惚れてしまい、思わず自分の水着の端をキュッと握り締める。

 ケンスケは鼻血を垂れながらオオルリたちを食い入るように見つめ、ユメの方は両手で目を覆って慌てふためく。

 一方で、彼らのメダロットたちは戸惑うこともなく遠巻きに事態を眺めていた。

 

「あいつら何やってんだぁ?」

「わかんないクマ」

「フッ、平和だな……」

 

 ややあって一同落ち着きを取り戻した後、ようやくオオルリが準備を終え、右手を天に振りかざす。

 

「それでは気を取り直して……ロボトルゥ――ファイトォッ!」

「っしゃあ!」

 

 開始と同時にフリントが動き、右腕(バスターマグナム)を充填しながら川の浅い部分から走って渡り切る。

 飛行・浮遊脚部を使う他の二体はともかくとして、二脚のブラウシェパードでは川を乗り越えるのが困難であるため、まずは距離を取って攻撃の届かない位置からファンシーエールを仕留めようという寸法だ。

 

「ヴァヴァ! シャープライフル《速射》だ!」

「了解だマスター!」

 

 ケンスケの命令でヴァヴァが疾駆し、すぐに右腕に銃口をフリントに向ける。

 そして、ほぼ間を置かずライフル弾が頭部に直撃した。

 

「えっ!?」

「なんだ今の、充填が速すぎる!?」

 

 ユメとアスカが驚く中、ケンスケは得意げに笑いながらふんぞり返る。

 

「こいつが新実装されたサブスキル、速射だぜぇ! 狙い撃ちと逆で威力は落ちるが、その分充填・冷却効率が上がる! さらに脚部(ジュウカー)の特性《ライフルマーチ》で、ライフル系の射撃パーツもパワーアップだ!」

「サブスキルの威力低下を、脚部の機能がある程度補っているのか……!」

「さぁヴァヴァ、今度はファンシーエールに速射だ! 撃って撃って撃ちまくろうぜぇーっ!」

 

 ビシッと指を突き出して支持を出し、ヴァヴァもそれに従い動き出す。

 既にベアもブレイク攻撃の左腕パーツを充填し始めているのだが、その速度を上回る勢いで銃撃が放たれようとしている。

 だが。

 

「今だよヴィオラちゃん!」

「わかったよ~!」

 

 そんな返事が頭上から聞こえて来たかと思うと、空中で魔女っ子メダロットがホウキを大上段に構え、ヴァヴァに向かって落下しようとしているのが見えた。

 もう回避は間に合わない。ファンシーエールの右腕、マジカルブルームの一撃がヴァヴァの脳天に直撃する。

 

「まじかる☆アターック!」

「おぐぅ!?」

 

 地面をバウンドして思い切り吹き飛ばされたブラウシェパードは、水飛沫を上げて川に叩き込まれていた。

 

「クッソ!! 立てるか!?」

 

 幸いにも浅い部分で止まったため、よろめきながらも中破した頭を振り、ヴァヴァはすぐに復帰する。

 

「な、なんとか……ハッ!?」

 

 しかしその目の前に、充填を終えたベアが浮遊しながら迫っていた。

 

「チキンのために食らうクマァ~!!」

「ぐご!?」

 

 至近距離かつ真正面から重力(ブレイク)射撃が撃ち込まれ、ヴァヴァは再び水面に飛ばされてしまう。

 今度はやや深い場所に、しかも下半身だけが水面から飛び出す形で川の中に水没しており、僚機もいない以上助け起こす事もできないため復帰は絶望的である。

 

「ち、ちくしょう! ヴァヴァー! 立て、立つんだー! このままじゃ俺のチキンが~!」

「あの子はとりあえず放置して問題ないかな……よーし、ヴィオラちゃんは他の二機に集中して!」

 

 それを聞いたファンシーエールのヴィオラは「はーい!」と元気に返事をするが、その直後に脚へライフル弾が直撃した。

 

《脚部パーツ、中度ダメージ》

「ウソ、当たったの!? どこから!?」

「オレを忘れんなよ」

 

 地上で走っていたフリントだ。狙い撃ちの充填が終わり、高威力・高精度のバスターマグナムの一撃がたった今放たれたのである。

 

「う~ん、あの子結構強そうかも。じゃあ……」

 

 次の標的は、あのKBTにしよう。

 声を潜めてその指示を出すと、ヴィオラは頷き充填と同時に空を飛び回る。

 攻撃に選択したパーツは、再びマジカルブルーム。敵対機にアレクベアもいる以上、攻撃に時間のかかる狙い撃ちはそう何度も続けられるものではないはず。

 ジャノメはその判断から標的をフリントにしたのだが、直後にベアの方が動く。

 

「落ちるクマ~!」

「わっ!?」

 

 アレクベアの頭部パーツ、メテオスマッシュの重力攻撃だ。

 見れば、浮遊しているベアが水面に移動し、川へ水没させようとしていた。

 このままでは自分も引きずり込まれてしまうと考えたヴィオラは、そうはさせまいと標的をベアに定める。

 それと同時に、ジャノメのメダロッチから充填完了の合図が鳴り響く。

 

「いっけー!」

「べ、ベアちゃん避けて!」

 

 ブレイクによる落下の勢いを利用し、ヴィオラが思い切りマジカルブルームを振り下ろさんとする。

 ユメもそれを理解して、ベアに回避を急がせた。

 しかし、その時。

 

「ハァァァウリングカノォォォンンン!」

『!?』

 

 ケンスケの叫び声に応えるように、水中のヴァヴァが頭部パーツ(ハウリングカノン)のパワーライフルを発動。

 胸が展開し銃口が露出、発射と同時に水底に突き刺さった頭が反動で抜け、その勢いのままベアの脚部にヴァヴァの後頭部が直撃した。

 そうして体勢を崩したところに、今度はホウキが叩きつけられる。

 これによりベアは頭に重い一撃を受け、メダルを吐き出してしまう。

 

《ビリーザハット、充填完了》

 

 瞬間、アスカのメダロッチからその音声が流れ、ヴィオラとジャノメは反射的にフリントの方を見る。

 彼の視線は水面ギリギリまで降下した紫の魔法少女を捉え、銃の形を作った指先を真っ直ぐに差していた。

 

BANG(バン)!」

「あっ!?」

 

 頭部からのミサイル攻撃。これがマトモに直撃すれば、アスカ側へ一気に形勢が傾くだろう。最悪、機能停止さえあり得る。

 ジャノメはそう思って戦況を注視して指示を出し、直後にミサイルが着弾。水上で爆発が起き、水飛沫が激しく舞い上がった。

 

「やったか……!?」

「まだ油断しちゃダメだ、バスターマグナム用意!」

 

 降り注ぐ水を浴びて濡れながらも、アスカは戦況を確認する。

 数刻の後に聞こえる、メダルの排出音。

 しかし、爆炎に倒れたのはヴィオラではなく、彼女によって盾代わりにされたヴァヴァであった。

 

「なんだって!?」

「ふー、危ない危ない」

 

 安堵の声を漏らしながら、爆発に巻き込まれ機能停止した左腕をダラリと垂らし、同じく破壊された脚部を引きずりながら陸地に移動。

 これで一対一。とはいえヴィオラがパーツを失っているのに対してフリントはまだ頭部以外にダメージを負っていない、故に有利なのはこちらだとアスカは考える。

 だが、そのやや楽観した思考はすぐに打ち砕かれる事となった。

 

「ちょっと大人気ないかもだけど……流石に一戦目から負けたくないし! ヴィオラちゃん、そろそろ本気だしちゃおっか!」

「はぁ~い! ヴィオラ、いっきま~す!」

 

 ジャノメからの指令を聞くと同時に、ヴィオラがホウキを空に掲げると、その全身が紫色に輝いて光が立ち昇る。

 

「ま、まさか……あの輝きは!」

「メダフォース!?」

 

 ノアとのロボトルで敗因となった一撃。それが今、全く同一の技ではないにせよ、目の前に立ち塞がっていた。

 そして、アスカもフリントもこの窮地を前に直感する。

 これを超える事ができなければ、一生かかってもノアとキバマルのいる高みに届かないだろう、と。

 

「ディーンドライブ!!」

 

 発動の瞬間、紫色に発光したヴィオラの体が浮かび上がり、そのまま砲弾のように超高速で突進した。

 フリントの方はというと、同じく紫の光を帯びて浮かび上がっているが、姿勢制御ができず身動きが取れなくなっている。

 メダフォース、ディーンドライブ。自身と敵メダロットに反重力を発生させ、回避不能の強烈な一発を全てのパーツに食らわせる重力格闘攻撃。

 

「フリント! 耐えろ!」

「ぐ、が……ァ!」

 

 アスカからの言葉を受け、せめて身を守ろうとフリントは自身の腕を交差させる。

 そして、光を纏うヴィオラの破壊的な突撃が炸裂し、彼女共々地面にクレーターを作って砂煙を噴き上げた。

 戦いの行方はどうなったのか、二人のメダロットは無事なのか。

 そんな心配をしている最中、アスカのメダロッチから音声が木霊する。

 

《左腕・脚部、機能停止。頭部・右腕重度ダメージ》

「えっ!? ウソ、凌がれたの!?」

 

 ジャノメはぎょっと目を見開き、メダロッチ越しにヴィオラへ呼びかけようとした。

 だが、一手遅かった。フリントは晴れつつある砂煙の中で、既にバスターマグナムの充填を終えている。

 

「おおおおおおらあああああァァァッ!!」

 

 その一瞬の隙に、フリントの拳と銃弾が放たれた。

 ヴィオラはそれを受けて天を仰ぐように倒れ、頭部が機能停止する。

 

「勝負あり! アスカ選手&フリント選手の勝利です!」

 

 オオルリの宣言を聞き、アスカは安堵の息を吐く。

 そして、一同は各々のメダロットとメダルを回収するが、その途中でユメが疑問を口に出す。

 

「ねぇ日晴くん、フリントくんはメダフォースを受けたのにどうして耐え切れたの?」

「今回俺が選んだのが戦車脚部だったから、かな」

 

 アスカの言葉を聞き、ユメもジャノメもハッと目を見張る。

 戦車タイプの脚部はフィールドを選ばず扱えるという点の他に、堅牢な装甲によって防御能力が向上するという特性がある。

 その性質故に回避行動がほぼできないというデメリットもあるが、これが作用したお陰でヴィオラのディーンドライブを受けても生き残る事ができたのだ。

 無論それでもギリギリの勝負ではあったが、メダフォースを乗り越えた。その事実が、アスカの心に爽やかな風を吹き込ませていた。

 

「ん?」

 

 ふと、アスカは川の中で何かが光るのを目にする。

 近づいて拾い上げてみると、それは疾走するウマのシルエットが描かれたメダル。ウマメダルだった。

 

「なんでこんなところにメダルが……?」

「おーい、アスカくーん」

 

 ジャノメから呼ばれ、アスカは咄嗟にメダルをポケットに入れ彼女の方に歩いていく。

 

「はいこれ、パリパリチキンの引換カードね」

「あ、ありがとうございます。良いロボトルでした」

 

 ジャノメからカードを受け取り、握手のため右手を差し出すアスカ。

 すると、彼女はその手を取らずにアスカの左右の頬をプニッと摘んだ。

 

「ふぇあっ!? な、なにを……」

「むふぅーん、ちょっと仕返し。よく見るとキミ男子なのにカワイイ顔してるよね~うりゃうりゃ~」

「いひゃいです、やめてくだひゃいよー!」

「にひ、ほんとカワイイね~」

 

 相当アスカを気に入ったのか、ジャノメはイタズラっぽくニヤニヤと笑いながらその頬を引っ張ったり戻したりする。

 やがてオオルリから静止が入ると、彼女も手を止め元のテントへ戻っていく。

 

「そうそう。終わったら私たちもカレー食べに行くから! また後でね~! サインもあげちゃうから」

「あ、はい! また向こうで!」

 

 アスカの方も、ユメとケンスケと共に宿泊所に向かって歩き出す。

 川で拾ったメダルを水着のポケットに入れたまま。




メダロット解説コーナー

[機体名]
ブラウシェパード

[型式番号]
MDT-DOG-NG01

[性別]


[パーツ]
◆頭部:ハウリングカノン(射撃/パワーライフル/なし/6回)
◆右腕:シャープライフル(射撃/ライフル/速射)
◆左腕:レイドライフル(射撃/ライフル/狙い撃ち)
◆脚部:ジュウカー(二脚/ライフルマーチ)

●HV:0/0/0 合計:0/1

[備考]
NGシリーズ初のDOG型メダロット。モチーフはシェパード、名前の由来はドイツ語で青を意味する『ブラウ(Blau)』から。
全身がライフル系パーツで統一されている。右腕はスピードを、左腕は確実性・安定性を重視し、頭部は高威力のパワーライフルとなっている。
初心者に易しいのはもちろんのこと、熟練したDOG使いでも楽しめる機体としてデザインされた。

脚部特性の《ライフルマーチ》は、スキル名に『ライフル』を含んでいるパーツの威力が上がる機能。
基本的にライフル持ちが多いDOG型とは特に相性が良い脚部である。

本作品のオリジナルメダロット。
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