ミリしら転生者がアドステラで好き勝手やるだけの話   作:冬に生まれたかも

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そんな事ある?????

 

 

 

 いつも通りお姫様は御立腹だった。

 何故かって?

 宇宙に帰って来る期日になってもエランが帰って来ないのだ。強化人士4号伝に「ちょっとやる事があるから遅れるわ」とふざけた伝言だけ寄越してきて、事の詳細は何も伝えていない上でだ。

 今回ばかりは自分がエランを振り回す気でいた予定があったのにだ。

 そして自分がエラン達と別れた後での大立ち回りを自慢したくて仕方なかったのだ。

 しかし、その出鼻を挫かれたのも手伝って大変腹を立てている。

 

 地球に降り立つ前にこの後の動き方も決めていただけに、会社の運営で困ることも無いから、それで文句を言うことはできない。

 ソレがまた腹立たしい。

 彼ら彼女らは宇宙に帰って来てからは、鉱山の採掘業社、その親会社へと掛け合って地球からの素材の輸入に関する契約を整えていた。つまり、ベルメリア・テクノロジーズはMS製造産業において自社製品を開発・販売する段階まで漕ぎ出したのだ。

 

 そうして数日過ごしている内に(ようや)くエランが帰ってきた。鼻歌を歌いながらに上機嫌でだ。

 そのエランが扉を開けてオフィスに入ってくると同時にミオリネは蹴っ飛ばした。

 完璧な助走からのジャンプ、そして地面から離れた両足が着地したのはエランのヘソの辺り。

 それは綺麗なドロップキックだった。

 

「グゴッ……」

「まずは謝罪から聞きましょうか。言い訳は許さないわよ」

 

 そして綺麗な受け身で地面に降りたミオリネは、衝撃で倒れたまま咳き込んでいるエランに絶対零度の眼差しを向けたまま説教を始めたのだ。

 怒りは人の身体能力をここまで向上させるらしい。

 

「ハハハ、ごめんって」

 

 そう言って場を流そうとするが、今回ばかりはミオリネが許さなかった。

 時間にすれば大したことは無かったはずだが、その怒りの密度からか、それともエランがあんまりにションボリとした反省顔を作るのが上手かったからか、周りでその説教を見守る人々にとっては1時間か2時間は正座をさせられている様に見えた。

 4号もエランを庇おうと間に入ろうとするが、結局はミオリネを落ち着かせることもできずにエランの横で正座をさせられて、いつの間にか説教を受けるのは2人に増えていた。

 

 この説教を見させられていたのは、ベルメリア・テクノロジーズの社員たちだ。何も崩れ行くペイルから引き抜いたのは、優秀な技術者だけでは無い。義肢の販売やこれから始める新規事業に向けて事務員も増やしていた。

 引き抜くことに元々のペイルの一般社員の給料も把握していたことが、大いに役立った。元トップグレードの恩恵であろう。他社よりも優位に交渉ができたのだ。

 彼ら彼女らは引き抜きの話しが来た時はピンチを脱するどころか、ベネリットグループ総裁の娘の会社への転職と言う飛躍の予感にワクワクしていたが、今目の前に見せられるある種のプレイのような雰囲気を漂わせる3人に(ちゃんとした会社なのか……?ここは……もしかして判断を間違えたのでは……?)と口には出さないまでも不安を覚えたのだった。

 

 そう、このお説教を見守っていたのは新しくベルメリア・テクノロジーズに入ってきた者たちだけだった。つまり今この場にはベルメリアはいない。彼女は今『ジェターク・ヘビー・マシーナリー』へとGUND-ARM(ガンダム)の共同開発のために出向していた。

 だから新しくベルメリアテクノロジーズが販売する商品の開発は彼女抜きで進める必要があった。

 しかし、そんなことは()うに分かっていて、問題にもならない。

 

 何故ならベルメリアテクノロジーズがこれから開発・販売するのはMSでは無いからである。

 では何を扱うのか?

 それは長距離巡航用フライトシステム、言い換えればティックバランをそのままパクって販売する腹心算(はらづもり)なのだ。

 開発なんて真面目にやる気がサラサラ無いのである。

 ──死体蹴りも良いところだった。

 そんな無茶苦茶なやり方は当然、ミオリネが反対したのだが、エランがペイルから盗み取った(持ち出した)KPI管理シートを広げて具体的な販売ルートを示してみせたことで反論を封じこんでしまった。

 ──当然そんなことはアウトである。人はここまで死人に口無しを冷酷に使えるものなのか……

 

 

 

 そうして、順調過ぎるスタートを切ってフライトシステムの販売は怖いくらいの快進撃を遂げていた。

 この一因にはサラッと流されてしまったがミオリネが地球で見せた大立ち回りが大いに関係している。

 

 彼女はオーストラリア大陸でのGUND義肢の契約を当初の予定よりも遥かに上回るスピードで成し遂げたのである。勿論、残った時間を使って遊ぶためではない。

 

 ニコニコと愛想を振り撒いて大男たちのハートを掴んでサッサと仕事を済ませた──誰の影響なのか凄まじい人身掌握術だった──彼女は葡萄畑に行く事も無く、ベルメリアを連れてアラシャ鉱山に飛んで行ったのだ。

 

 そこでまた、現地の採掘業社とGUND義肢の契約を(はた)から見れば簡単に感じられるようにスマートに取り付けてみせた。

 そしてサプライズとして宇宙に帰ってきたら、アラシャでの義肢の販売を元にその親会社とのレアメタルの輸入に関する契約はエランに、大いに自慢した後で押し付けてやろうと考えていた。

 ──エランの理由不明の遅刻によって自分でする羽目になったが……

 

 このミオリネの優れた経営能力こそがベルメリアテクノロジーズの躍進の所以(ゆえん)であった。

 

 遅れて帰ってきたあの日の説教中に、このレアメタルの件を切り出された当のエランの反応は「ミオリネならそれぐらいやるだろ」と信頼しているような、冷たいような反応であったが、彼の内心ではドキドキバクバクであった。

 それはミオリネの優秀さに驚いたからでは無い。今までミオリネと一緒に過ごしていれば彼女がこれ位やってのけるだろうと思ってはいた……

 いたが、その仕事ぶりは完璧に過ぎた。

 

 エランが『主人公補正』の存在を疑ってしまう程に。

 

 エランは心の中で自問自答を繰り返した。

 表面上はションボリとした顔を維持したままで。

 

 ミオリネ・レンブラン、彼女の生まれ育ち、家族との関係性、人となり、それらを鑑みて確実にメインキャラクターの1人であるとは確信していた。

 

 なんなら『ミオリネ』と言う名前の由来は億万長者(ミリオネア)からであって、【機動戦士ガンダム 水星の魔女】は学園ものらしいと言う知識から、もしかしたら権力者の娘、即ち(すなわち)()わゆる悪役令嬢ポジションなのではないか?

 とまでは考慮していたが……

 

 していたが見落としていたことが有る。

 

 ファミリーネーム『レンブラン』の由来、それは彼女の息を呑むほど美しい髪の色から薄明光線または天使の梯子などと呼ばれるような、雲の切れ間から太陽の光が漏れて大地に降り注ぐ光の柱という意味でのレンブラントだと思っていた。

 デリングも昔は黒髪であったらしいが、今は見事な白髪である事も含めてそう判断していた。

 

 そこで思考を停止してしまっていた。

 由来が1つだけとは限らないのに……

 

 レンブラント、それは水星最大のクレーターの名前でもあったはずだ。

 

 つまり彼女こそが『水星にドデカいクレーターを作るほどの衝撃を与えた悪役令嬢』と言う意味での『水星の魔女』であると言う可能性が…………????

 

 そんな事ある?????

 

 だが違和感は有ったのだ。薄明光線を意味する名前を持っているのなら、その語源からオランダ系の人物であるはずだ。

 それにしては身長が低過ぎる。現時点で約30センチは言い過ぎだが、それ位は自分との身長差がある。

 自分の高い身長は宇宙空間で生活していればそう言う事もあるだろうと思っていたが……

 

 ミオリネの低い身長は、オランダ系の生まれであると言う情報を分離させてクレーターである事を強調するためだった?

 

 つまりは彼女が『水星の魔女』であるという事の伏線だった?

 

 確かに悪役令嬢を主人公とする作品はネット小説のトレンドを作り上げるほどに強いコンテンツの1つだった。

 それをガンダム作品が取り入れる可能性を見落としていた。

 

 【機動戦士ガンダム 水星の魔女】は学園モノで悪役令嬢モノでガンダム作品だった??????

 

 そんな事ある??????

 

 では自分が今まで『水星の魔女』の『主人公』だと思っていたSNSで見かけたあの『ヴァナディース事変』での被害者エルノラ・サマヤに似た赤毛の少女は何者なんだ?

 

 なんとなくで流し見していたために確証は無いがオレが見たイラストの数はあの赤毛の少女が多かったぞ?

 

 つまりあれか?

 あの娘がメインヒロインだったの?

 

 そんな事ある?

 

 いや、まあ、それはあり得るか……

 

 でもミオリネを『水星の魔女』で『主人公』だと現段階で確定させるには余りにも情報が足りない。

 

 なんならオレの知る限りではミオリネと水星には何の接点も無いじゃないか。

 

 それどころか、何もかもの情報が……物語のストーリーラインを考察するだけの情報がまだまだ足りていない……

 

 落ち着け……落ち着くんだオレ……

 オレはまだ、それを悩むべきタイミングにまで達していない……

 今は考えるな……情報をインプットするだけに留めて、後の事は未来の自分にぶん投げるんだ……

 

 などと、エランは『原作』を知らないで『転生』をしたがゆえの意味の無い迷走を、説教を聞き流しながら誰にも言えずにしていたのであった。

 ある意味でミオリネのサプライズは大成功していた。

 

 (ちな)みに、この動揺を誤魔化すためにポロッと(こぼ)してしまった「オレもシュラスコが食べたかった……」と言う呟きがミオリネの怒りに更に火を付けて、葡萄畑の件にまで説教を発展させたのだった。

 

 

 

 

 

 数ヶ月後……

 

 ところ変わってジェターク社社長室、そこにエランたちは呼び出されていた。

 社長室に居るのはエランとミオリネとベルメリアとヴィムの4人であった。

 彼ら彼女らが揃って黙って目を通して居るのはジェターク社の現行機ディランザ、その次世代機である意志拡張AIを搭載した実証機ダリルバルデの更に次に向けた、ジェターク社とベルメリアとで共同開発しているGUND-ARM(ガンダム)についての資料であった。

 その機体の名前はシュバルゼッテ、ジェターク社の次世代コンセプトモデルにベルメリアによってGUNDフォーマットを導入した。ガンビットを装備した機体である。

 これを開発中のヴィムとベルメリアは何も成果を自慢したくてエランとミオリネを呼んだのでは無い。開発に当たって大きな問題があって相談のために呼び出したのだ。

 

 しかしエラン・ケレスと言う男は、今までこう言った技術的な問題は絶対的な信頼を持ってベルメリアにぶん投げてきたのでポンコツもいいところである。

 

 今も資料の中で輝くシュバルゼッテの勇姿に目をキラキラと輝かせているのみであった。

 そのシュバルゼッテと言う名前に、直接的に解釈すれば『黒い女』転じて『魔女』を意味する名前を与えたジェターク社に思うところが無い訳では無いが……

 最早そんなことよりもこの機体の主兵装ガーディアンの余りのロマンに心を奪われていた。

 

 エランはこの時、心の底から思った。

 

 このおっさん天才か?と……

 

 経営、MS制作、暗躍、裏工作、どれも高い水準で行う優れた人物であることは分かっていたが、ここまでカッコ良い機体を、エランに刺さる機体を作る事によって、エランの中でグングンと好感度をあげていた。

 

 が、ヴィムとベルメリアの2人は問題が有ってミオリネとエランを呼び出したのである。目を輝かせている場合では決して無い。

 

 その問題点とは2つだった。

 1つはGUNDによる群体遠隔操作システムが想定していた水準まで達しそうにない事。

 これは時間が解決できる事かも知れないので重要度は相対的には高く無い。

 そして、肝心の2つ目が頭を悩ませていた。それはシュバルゼッテのテストパイロットについてだ。

 

 まだまだ安全性が確保されていないGUND-ARM(ガンダム)だ。そこで悩むのは必然と言えよう。

 これには4人揃って答えを出せないで全員で頭を抱えている。

 ジェターク社の社員を乗せることはヴィムが拒否、強化人士4号を乗せることはミオリネとベルメリアが拒否、そして当然ジェターク社の御曹司たちグエルとラウダを乗せることはヴィムが断固拒否。

 誰も答えを出せないでいる。

 

 そんな暗い雰囲気に包まれた社長室。

 誰もが言葉を発せずにいるこの会談を覗く影が2つあった。

 

 グエルと強化人士5号である。

 

 強化人士5号はあのペイルの騒動の時から変わらずにジェターク社に保護されていた。

 

 そして、会社の中の一室を生活空間として与えられていた。

 

 

 強化人士5号にヴィム・ジェタークから与えられた部屋は、今までの生活を考えれば破格と言っても良いぐらいだ。

 食事は暖かいし、寝床も柔らかい。そして何より、ペイルにいた頃は日常であった人体実験が無いのが素晴らしい。

 少し前の自分であれば考えられない程だ。

 

 それでも強化人士5号の頭から離れて止まない思いがある。

 

 僕が手に入れるものはコレでは無かったはずだ。

 エラン・ケレスと手を組んだ時の条件ならば、一連の作戦を終えれば、新しい『市民ID』と受け取って『再整形』をするはずだった。ペイルに致命傷を負わせたのならば、僕が手に入れるのは全ての柵から解放された新しい人生のはずだったんだ。

 

 原因は分かっている。

ヴィム・ジェタークの中で、エランの価値が上がったのだ。ヴィムはエランをジェターク社に入れたくて堪らないのだろう。

 そして、僕はその為の最上級のエサになる。

 

 いつ死んでもおかしく無いペイルの中から逃げ出したかった僕は、全力を尽くした。

 自分で言うのも何だがエラン・ケレスにとっては最高の仕事をしたと思っている。

 だけどソレが逆に良く無かった。

 エランは僕と直接会って交渉したのだから、僕を裏切ることはあり得ない。

 顔を見て話せば分かる。あのギラギラとした野心は尽きることなく上を目指すのだろう。そして、上を目指すと言うことは味方を増やすと言うことだ。

 だから僕を裏切れない。

 周囲からの信頼を得るとはそう言うことだ。

 エランが僕に自由を与える準備をしていたことは、確定だったはずだ。

 そう考えていたのが甘かった。

 エランは僕の自由を認めざるを得ない。だけど、ヴィム・ジェタークは認めない。

 ヴィム・ジェタークもまた、野心溢れる男の1人だった。その想定が抜けていた。

 

 ヴィム・ジェタークは『自由』の定義を変えてきた。「録音機を付けられたのは、看過できんミスだ」と言って「インサイダーの所為で完全にペイルを堕とすことができなかった。だからまだお前には奴らに命を狙われる恐れがある」と脅して「お前を保護するためだ」と、まるで後ろ盾になるかの様な口ぶりに『市民ID』と『再整形』という選択肢は奪われて、ジェターク社の庇護下に入るように、まんまと丸め込まれてしまった。

 と言うよりは呑まざるを得なかった。自分の身の安全が何よりも大切なのだから。

 

 今となっては、あの録音機がヴィム・ジェタークとエラン・ケレスのどちらの差し金だったのかは分からない。

 

 もう誰も信じる事ができない。

 

 今言える事は僕はジェターク社がエランを手に入れるためのエサである事、それだけが今の僕の存在価値だ。

 

 

 その証拠にヴィム・ジェタークがエランにここまでの会談の流れを「いくら考えても現時点の条件でコレを決める事はできんな」と打ち切って、勧誘を始めていた。

 

「話は変わるが、お前たちベルメリアテクノロジーズは未だにベネリットグループに入れていないそうじゃないか。どうだ?ここらでウチの傘下に入らんか?」

 

 自身が勧誘のためのエサにされる。そんな事はどうでも良い。何も気にしない。それよりも問題なのは、今後のジェターク社での自分の扱いだ。

 

 繰り返すが僕が今、ヴィム・ジェタークの庇護下にいるのはエラン・ケレスを釣るためのエサだからだ。ではその後はどうなる?

 

 利用価値の無くなったその後の僕はどうなる?

 

 そんな事は容易に想像がつく。ペイルでのあの実験動物扱いに戻ってしまう。

 

 そんなのは嫌だ。

 

 そんな事を、考えて、考えて、考えて、

 

 一筋の勝ち筋を見つける。

 

 そう、ヴィム・ジェタークが僕を実験動物として使おうと考えているなら、自分からなってしまえば良い。

 ただし、最低限の安全だけは確保させて貰う。それが今の僕に残された道。

 

 覚悟を決めた戦士様な顔をして、もしくは後が無くなった債務者の様な顔をして社長室の扉を叩く。

 

「失礼します」

「「5号?」」

 

 突然、部屋に入ってきた5号に驚いた様子でエランとヴィムが反応を返す。

 そんな彼らに5号は頭を下げて要求をする。

 

「お願いがあります。シュバルゼッテを僕に下さい。いや、テストパイロットには是非僕を選んで欲しい」

 

 そして、とうとう床に手を置いてまで懇願し始めた。

 

「お願いします。助けると思って」

「ちょっと!いきなり現れて何言ってんのよ!」

 

 そんな彼に呆気に取られて固まっていた面々の中でミオリネが、逸早く反応して彼女とある程度の親交のある者ならば説明を求める言葉だと理解できるが、それ以外の者には拒絶の様に聞こえる発言をした。

 

「どうしてですか?僕の価値、能力はあなた方ならご存知でしょう?」

 

 そう言って5号は余裕の無い瞳で立ち上がって、フラフラとヴィムに近づいて行く。

「一旦落ち着け」というヴィムの声も聞こえていないかのようで、その足が止まる事は無い。

 

「うっ……」

 

 希望を掴もうとするように不安定に前に伸ばした5号の腕がヴィムの肩に触れる直前で、新たな乱入者によって5号の服の衿足が掴まれて後ろに投げられる。

 

「エラン、父さんに何をしている」

 

 乱入者は最近、忙しさからか以前よりも自分たち兄弟とあまりコミュニケーションが取れ無くなっていた父親の様子を見に来たグエルであった。

 

「誰かと思えば……グエル様じゃないですか。僕は今、大事な話しをしてるんだ。退いていて下さいよッ」

 

 ヴィムと話がしたい5号と、それを拘束しようとするグエルで揉み合いになる。

 

「お前のことは、良く分からんヤツだと思っていたが……何に怯えてるんだ?」

 

 グエルの挑発の様にも聞こえる言葉に冷静さを失い、自制が効かなくなった5号が殴りかかる。

 

「父親の前だからってッ格好つけるなよ!」

 

 取っ組み合いに激しさが増す。

 

「うっ……なっ……」

 

 が、一瞬の隙を突かれた5号がグエルに後ろから押さえ込まれ倒される。 

 

「ぐ……ぐぅ……」

 

 下から睨みつける5号に上から語りかける。

 

「やめておけ。ここを壊したら謝るどころじゃ済まなくなる」

 

 押さえ込まれた腕を、いくら動かそうとしてもビクともしないので諦めて力を抜けば拘束から解放される。

 解放はされたが、グエルの目がこれ以上ここに留まる事を許していないことは明白で仕方なしに、社長室から飛び出して行く宛もなく走って行く。

 その背中を目で追いかけていたグエルは溜息を吐くと、真剣な顔でヴィムに頭を下げて、

 

「申し訳ありません、父さん。お叱りは後で受けます」

 

 返答も聞かずに彼も飛び出して行った。

 その瞳は口元に手を当てて考え込んでいる本物のエラン・ケレスの顔を捉える事は無かった。

 

 その真っ直ぐさにエランは彼に主人公性を見出した。

 この騒動の最中のエランの内心は物語の把握モードだった。

 

 もしかして彼が主人公だったりする?

 

 そんな事ある?

 

 と言った具合で。

 そして雰囲気がとっ散らかった場で、口元に手を置くのを辞めてヴィムに話を振る。

 

「良いんですか?アレ、放っておいて」

 

 そう問いかけるエランに顔を顰めて、「身内の恥を見せたな」と呟いて

 

「あ"〜、強化人士5号の事は息子(アレ)に任せておけ。それで解決する」

 

 そう言ってこの騒動を片付けた。

 そして、元の話題に戻る。

 

「それで?ウチの傘下に入らんか?」

 

 と、何事も無かったように問いかけてくる。

 ミオリネが返答に困っているとエランが横から勝手に答えを返す。

 

「すみません。大変ありがたいお話しなのですが辞退させて頂きます」

「ほぅ」

 

 ヴィムは一度目を細めてから面白そうに会話を続ける。

 

「その判断に後悔はしないか?」

「当然です」

「これがベネリットグループ参入への最後のチャンスかも知れんぞ?」

 

 心底楽しそうな雰囲気を漂わせたまま、威圧感を放ってくる。

 それにミオリネが説明を求める。

 

「どういうことです?」

「何、お前たちに呼び出しが入ったのだ。デリングからな。用件は俺にも分からん」

「なっ!?」

 

 ミオリネは顔を青くして固まっている。

 一方でエランはヴィムと同じ様な楽しそうな顔で続きを促す。

 

「で、その日程は?」

「この後すぐだ。素直に俺の話に乗っていれば助け立ちもできたんだがな」

「お心遣い感謝します。でも大丈夫ですよ。自分たちのことは自分たちで何とかします。ヴィムさんはベルメリアさんと一緒にシュバルゼッテをお願いします」

 

 そう言い放ったエランは堂々とした足取りで扉へと向かって行った。

 

 固まっていたミオリネも、そんなエランを見て顔色を戻すと、一瞬で顔を赤くしてから小走りでその背中に近づいて行き、

 

「勝手に話を進めるんじゃないわよ!」

 

 と後頭部を叩いて横に並び、2人揃ってジェタークの社長室から出て行ったのであった。

 

 

 

 




 アンケート機能の使い方を覚えたので使ってみました。
 よろしければご協力お願いします。
 選択肢にグエルが居ないのは、この時点で彼にガンダムを渡してしまうと、もう強すぎて作者の予定が全て崩壊してしまうと考えたからです。
 グエルを選びたかった方には申し訳ない限りです。

シュバルゼッテのテストパイロットは?

  • 強化人士4号じゃない?
  • 強化人士5号でしょ
  • 大穴、エラン
  • 本編では乗ってたし、ラウダ
  • 超大穴、ヴィム
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