ミリしら転生者がアドステラで好き勝手やるだけの話 作:冬に生まれたかも
ジェターク社の社長室、そこではCEOヴィム・ジェタークが時折顔を
「あれ?仕事中ですか?約束通りのつもりだったけど時間を間違えたかな」
「いや、時間通りだ。お前にはこれからのことを話し合っておきたいと思ってな」
「ならミオリネ社長も呼ばないとじゃないですか?怒られるのオレなんですよ」
「ワハハハ、それくらい耐えろ。それが甲斐性だ」
「はーい。勉強になりまーす」
「さて、冗談は此処までとして……何故呼ばれたかは分かってるだろ?」
ヴィムが発する空気が重たいものに変わるが、顔つきは悪巧みを思い付いたばかりの子供の様にも見える。
「ペイル社のことですね?」
「こうも察しが良いとつまらんな」
「なんであの時、リスクを取ってまでファラクトどころか強化人士計画まで話したと思ってるんですか。お互い迂遠なやり取りは、よしましょうよ。貴方だって御三家から1つを追放できる好機なんだ。使わない手は無いでしょう」
「なら結論から言わせてもらおう。ペイルテクノロジーズの件で審問会を開くぞ。証拠は充分なんだろうな」
「言ってませんでしたけど、オレもベルも元ペイルの社員なんですよ。証拠なんて余る程ありますね」
顔を合わせて2人は同じ表情を浮かべる。
好戦的で獲物を前にした獣が牙を剥くような笑顔だ。
「なら決まりだな」
「決まりですね」
各々が立ち上がりビシッと音が聞こえてきそうな勢いで決めポーズをとる。
「行くぞ!」
「勝ち確のォ〜……ッ!」
「「魔女狩りパーティーへ!!」」
審問会、それは厳かに行われる。最上段に位置する席──裁判所であれば裁判官席にあたる位置──に座るのは統括代表デリング・レンブランだ。そして、証言台を囲むように一段高い場所にベネリットグループの上位企業の役員たち、力ある者たちが取り囲み見下ろしている。
静寂に包まれた薄暗い部屋で役員の声が響いた。
「これより審問会を始めます」
通常ならば、あまりの威圧感に口を広げることもままならないであろう、証言台に立つ人物たち─ペイルテクノロジーズのCEO4人─は、何故か余裕をもって微笑みすら浮かべていた。そんな彼女らにデリングは問いかける。
「ペイルテクノロジーズ代表、ニューゲンに問う。お前は『魔女』か?」
「いいえ」
「ヴァナディース機関との繋がりはあるのか?」
「いいえ」
「ならどうやって
「ファラクトは
シラを切るペイル社の面々にヴィムが口を挟む。
「ならば、これはどう説明するつもりだ。エラン」
「はい。ヴィムさん」
ヴィムの横に座るエランが指を動かすと証言台を囲むように座っていた面々のディスプレイに資料が表示される。
「ファラクトのデータではパーメット流入値が基準を超えています。これはガンダムの基幹システム、GUNDフォーマットの特徴を表しています」
「もしあれがガンダムならパイロットは死んでしまっているでしょう?」
「その為の強化人士でしょう。その証拠もありますよ」
ディスプレイに強化人士計画の全容が表示される。そこには目を背けたくなる非道な行いが記されていた。資料に添付された写真には、子どもたちの虚な目、髪を剃られた頭に溢れた手術痕、赤く発光する皮膚。到底許されるものでは無い。
「もう言い逃れできないねェ」
「それが本当であればでしょう?」
「どういう意味?」
「貴方、エラン・ケレスがどういう人物なのか分かっているの?」
「自己紹介をしろって?元はペイル社の中核を担っていた人物さ。少し調べれば誰だって辿り着ける事実だ。だから、この証拠に説得力がある」
「皆さんに見てもらいたい人がいるの。入ってちょうだい」
ニューゲンが手を叩くと扉の開く音と共に証言台にスタスタと足音を立てて近づいてくる人影がある。そいつは黄緑色の髪と瞳で自信満々といった表情を浮かべ、性格が悪そうに目と口を歪ませていた。
「紹介しましょう。ペイルテクノロジーズ次期後継者エラン・ケレスです」
「初めまして。後継者兼、ファラクトパイロットのエラン・ケラスです」
ヴィムは尋問するような目で横にいるエランを睨み、参列していた上位企業陣はザワめき、デリングは沈黙を保っていた。
「どういうことだ?」
真実以外を述べるのを許さないという気迫の籠った声でデリングがニューゲンに問いかける。
「つまり、こういうことです。確かにペイル社は社内のこの非人道的な行いを看過していた。ヴァナディース事変後、密かに我が社に紛れ込んだ『魔女』がことを企てたのでしょう。しかし、それは発覚次第に凍結し、該当部門を解体した。この迅速な対応で幸いにも子供たちが犠牲になる前に止められた。ですがGUNDフォーマットを利用した機体、その有用性に目をつけ、既存のパーメットリンクを基にした操作技術でコレを再現し、弊社の次期後継者をパイロットに据えても問題無い程に危険性を落とした機体の製造に成功した。最早ファラクトはガンダムとは呼べない『呪い』の無い機体となったのです」
「で、オレの横にいるコイツをどう説明する?」
ヴィムがニューゲンに問いかける。
「白々しいことを言わないでちょうだい」
「何だと」
「我々がこの事実を公表する前に、事態を把握した貴方が、ペイルを陥れる為に用意した偽物でしょう。もっとも後継者に選ばれておきながら辞める人間なんていない。そんな当たり前のことに気付けない、間抜けの姦計は、通じなかったようだけど」
「抜け抜けとッ……」
「なら其方の彼が本物だという証拠はあるのかしら?私たちは彼の戸籍から社内での業績まで事細かに説明できるけれど」
怒り心頭で怒鳴り声をあげようとしたヴィムを目の前のディスプレイに表示されたメッセージが留めた。
"これはチャンスですよ"
横に座るエランからだ。視線を其方に向けずに返信を返す。
"どういうことだ?"
予め打っていたのであろう。間髪入れずに説明が返ってくる。
"ここでガンダムをベネリットグループが認めた前例を作ればオレたちの新型も認可せざるを得なくなります。ここはペイル社の味方になって御三家パワーでゴリ押しましょう"
「うーむ……」
渋い顔でヴィムが唸り声をあげて悩んでいると、それまで事態を静観していた男が意見を発する。サリウス・ゼネリ、グラスレー社のCEO。老いてなお賢しい経営者だ。
「今までの話を聞いてもファラクトがガンダムで無い数字での証拠はない。認めるわけにはいかんな」
グラスレーは生粋のガンダム反対派だ。ヴァナディース事変を鎮めたベギルベウ、アンチドートを開発したのも彼らだ。この流れを見過ごせば当初の予定通りペイル社をベネリットグループから追放することも叶うだろう。それを思えばヴィムが黙るのも正解の選択肢と言えよう。
"ガンダムを認めさせる。ペイルに致命傷を負わせる。ここで動けば、オレたちなら総取りできますよ。全部、奪いとりましょう"
今度こそヴィムはエランに振り返る。そこにあったのは此処に来る前と同じ、獲物を前にした獣の牙を剥くような笑顔だ。
エランの顔を見つめる背後でニューゲンたちとサリウスが舌戦を繰り広げているのが聞こえる。会場の注目が全てそこに注がれている。デリングも鋭い目つきでそれを見ている。それら全てを無視して目を閉じる。
思い出すのは若き日の自分自身だ。ジェターク社を継ぐ前の自分、継いだばかりだった頃の自分、それからも剛腕でまとめ上げてきた自分。その野心を失っていない
そんなことは無い。断じて無い。
自身もまた、エランと同じような笑顔を一瞬だけ浮かべると、真剣な表情に戻りデリングの声を遮るように声を発する。
「決まりだな。ファラクトはガンダムだ」
「意見よろしいでしょうか?」
非難するような目線がデリングから向けられる。が、構わずに続ける。
「近年の市場では、他社のMSのシェアが高まってきています。ガンダムを再現した機体なら業績回復の起爆材になり得るかと。ここは認めて、機体の技術情報を提供させるのが得策かと」
「カテドラルの協約を破る気か?」
サリウスが非難の声をあげる。
が、ジェタークの傘下企業の一部、ペイルの傘下企業が流れに乗るように賛成の意見を。グラスレーの傘下企業やガンダムに拒絶反応を示す企業が反対の意見をあげ、舞台はガヤガヤとした騒めきに包まれる。
「そして、もう一つ。その
そう、そうだよ。そう来なくっちゃヴィムさん。ペイル社とジェターク社が、揃って事を進めれば、強引に見えても誰にも止められないんだ。これだけでベネリットグループはガンダム疑惑のかかった機体の運用を認めざるを得なくなる。
でも、サリウスさん安心してくれ。
ファラクトの件で倫理問題が発生することは無いよ。お披露目会で性能に疑問符が突きつけられるんだから。業績回復の見込みで見逃された機体がデビュー戦で盛大に転ける、これ以上のネガキャンは無い。直ぐに誰もが存在を忘れてしまうさ。ベネリットグループがガンダムを見逃した、この事実だけを残して……
ペイルテクノロジーズも恨まないでくれよ。偽物なんぞ用意して、ルール無用の戦いを挑んできたんだから……このオレ相手に。
好き勝手にことを進めるのにおいてオレの右に出るものはいないね。
あっ…………ミオリネにこの事をどう説明しよう。ベルはもう、何でも許してくれるけれど、ミオリネは怒ると長いんだよなぁ……
どうしよう???