東方実況録:実況してるタイプの霊夢と魔理沙が幻想入り   作:鳩胸な鴨

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誤解は進むよどこまでも

「どうしたんだ、霊夢。

そんなサボテンみたいな格好で遊んで」

「遊んでないよ!血まみれだよ!」

「お前の場合3秒で治るだろ」

「私、頑丈じゃないんだわ!

リスポーンが早いだけなんだわ!!」

 

小傘は理解が追いつかない事態に直面し、思考を遥か彼方にぶん投げていた。

どう見ても死んでる大怪我を負った霊夢が、普通に魔理沙と言い合ってる。

小傘の知る魔理沙なら、大慌てで霊夢に駆け寄り、心配の言葉をかけたことだろう。

が。目の前の魔理沙は「またか」と言わんばかりの呆れた瞳を向け、あろうことが刺さった針を躊躇いなく抜いている。

美しい友情などカケラもない。

まるでそこらに生えた雑草を引っこ抜くかのように、魔理沙は霊夢に刺さった棘を抜いた。

 

「お前、紫から聞いたからな」

「魔理沙が昔書いたポエムを私がこっそり裏垢で呟いてるってのが?」

「小傘、ちょっと傘貸してくれ。

ちょうどいい傘立て見つけたから」

「その傘立てって霊夢のことだよね!?」

「違うぞ、これは傘立てだ。

ほら、このつむじのところあたりにギリギリ刺せそう」

「目ん玉どうなってんだお前!?」

 

小傘らしからぬ怒鳴り声が響く。

一方の霊夢は慣れているのか、冗談冗談と返した。

 

「あれだよね。屋根裏にズンドコバビブブッチ飼ってることだよね」

「ちが…、待って?ウチの屋根裏そんな訳のわかんねぇもんの住処になってんの?」

 

魔理沙と霊夢って同居してたっけか。

小傘がそんな疑問を浮かべる横で、おもわずツッコミを入れる魔理沙。

これ以上一緒にいたら、脳に通う神経が軒並みとち狂ってしまう。

そんな確信を持った小傘は、魔理沙に苦笑を向け、踵を返した。

 

「じゃ、わちきはこの辺で…あでっ」

 

と。彼女の歩みを、茂みから出てきた誰かが止める。

小傘がそちらを見上げると、愕然とした表情を浮かべる、自身の知る魔理沙が居た。

 

「れ、霊夢…!?なんだ、その怪我!?

誰にやられたんだ!?」

 

ややこしい状況になった。

確信を前に、小傘は乙女がしてはいけない顔芸をかます。

その横では、傷だらけの実況霊夢が普通の魔理沙を見て、なにか確信に至ったかのような素振りを見せた。

 

「この反応あれだ。

私のこと『ちゅきちゅきだいちゅきお嫁さんにしゅる』ってタイプの魔理沙だ」

「小傘、ちょっと霊夢の足持ってくれ。たたむから」

「『たたむ』って何!?」

 

人体をたたむ気なのだろうか。

小傘がツッコミを入れるのをよそに、普通の魔理沙が実況魔理沙を見やった。

 

「わ、私の偽物…!?

まさか、お前がやったのか!?」

「やってない。来た時からこう」

「そんな言い分が信じられるか!

食らえ、マスタースパーク!!」

 

自身の思い込んだままに普通の魔理沙がそう叫び、ミニ八卦炉を取り出す。

そこから間髪入れずに光が放たれた、その時だった。

 

「ちょっと、別世界の私!だいじょ…」

 

その射線上に、巫女霊夢が降り立ったのは。

 

「「「あ」」」

「「え?」」

 

ちゃっかり避けた実況魔理沙、元々射線外にいた小傘を除き、2人の霊夢だけがその光に包まれた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃、紅魔館の中庭にて。

日傘の下で紅茶を嗜んでいたレミリア・スカーレットは、驚愕を露わにしていた。

否。彼女だけではない。

そのそばで読書に耽っていたパチュリー・ノーレッジも、給仕に勤しんでいた十六夜 咲夜でさえも愕然とし、わなわなと震えている。

彼女らの視線の先。そこには…。

 

「およ?たしかお昼寝してたはずなのに、なーんでこんな館に居るんだ?」

 

フランドール・スカーレットが、日傘をさすことなく、中庭を闊歩していたのだ。

 

レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット。

この姉妹の種族は吸血鬼。

言わずもがな、十字架、にんにく、燦々と照りつける太陽など、強さと引き換えに弱点も多い妖怪である。

だと言うのに、フランドールは気にすることなく太陽の元を闊歩している。

2分もすれば消し炭になるはずなのに、フランドールの体には何の変化もない。

 

もうお察しのことだろう。

このフランドール・スカーレットは、実況者世界のフランドールなのである。

 

無論、そんなことをレミリアたちが知る由もなく。

紅茶を思いっきり吹き出したレミリアは、震えた声でパチュリーに叫んだ。

 

「パチェ!!陽の下で活動できる魔法ってあったっけ!?」

「そんな便利魔法あったらとっくに言ってるわよ」

「よね!?よね!?何アレ!?!?」

「私も知らないわよ」

 

なんと羨ましいことか。

なんと度し難いことか。

妹が先に太陽を克服したという事実を前に、レミリアが羨望と屈辱を浮かべていると。

フランドールの視線が、レミリアへと向いた。

 

「あれ、お姉様?帰って来れたんだ。

いや、私もここどこかわかんないけど」

「か、帰って…?なんの話?」

「え?『十股するまで異世界から帰れま10』やってたじゃん」

「ホントになんの話!?!?」

 

そんな最低な企画に参加した覚えはない。

パチュリーの視線が、ゴミを見るような瞳に変わる。

違う。やってない。

そんな言い訳すら許さず、実況フランは続けた。

 

「たしか、八股までは達成したんだよね!」

「………レミィ」

「やってない!!やってないから!!」

「お嬢様…。吸血鬼はそこまで積極的な生殖活動が必要なのですか…?」

「違う!!違うから!!

ちょっと、フラン!

私がビッチみたく言うんじゃないわよ!!」

「え?ヤリチ○の方じゃなくて?」

「うぉおおい何言ってんの!?

ちが、違うから!!生えてないから!!」

 

実況フランが口を開くたび、誤解がややこしくなっていく。

自分の股にイチモツはない。

それどころか、そう言う経験すらない。

この500年において、恋人のこの字もない。

そう弁明を続けるも、あまり効果はなく。

パチュリーと咲夜の瞳に、なにか憐れみに近い感情が篭っていくのがわかった。

 

「ふ、ふ、ふふ、フランドール!!

さっきから根も葉もないことを言って、私をどうしたいのよ!!」

「根も葉もないって、本当のことしか言ってないんだけどなぁ」

 

ぶちっ、とレミリアのこめかみから血液が噴き出す。

レミリアからみたら、名誉毀損もいいところな情報の羅列だが、実況フランから見れば事実以外の何者でもない。

そんなすれ違いに両者が気づくはずもなく、レミリアが槍を顕現させた。

 

「今日という今日は許さないわ!!

暫く外に出れないことを覚悟なさ…」

 

日傘をさしながら叫ぶレミリアだったが、ふとその言葉を止める。

その視線の先は、実況フランの手。

なにやらよくわからない光が収束し、ばちばちと音を立てている。

フランって、こんな技使えたっけ?

そんな疑問に至るも遅く、実況フランの手から不条理が放たれた。

 

「思い出せびーーーーむ!!」

「ぎゃぁああああっ!?!?」

 

絶対に名前通りの技じゃない。

そう思いながら、レミリアは光に包まれた。




実況フラン…トラブルメーカー。脈絡もなくビームを出したり異世界に人を放り込んだりする、実況者の心強い味方。吸血鬼の弱点?なにそれおいしいの?住まいは魔理沙たちと同じ一戸建て。好物はペペロンチーノ。

実況レミリア…現在、異世界の東京に放り込まれ、屋根裏生活中。十股するまで帰れない現実に泣いてる。不憫枠。毎度毎度、闇の深いゲームの世界に放り込まれるので精神がありえんくらい不健康。1人にされると情緒不安定になって泣き喚くまでがお家芸。
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