東方実況録:実況してるタイプの霊夢と魔理沙が幻想入り   作:鳩胸な鴨

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幻想郷での初実況

翌日、博麗神社にて。

博麗神社に寝泊まりすることになった実況者2人が、宅配便で買った機材を前にスマホを構える。

その画面には、ポップながらに悍ましいタイトルロゴが映る上、ノイズが走っており、これから味わう恐怖を予感させた。

 

「前回までのあら汁」

「あらすじな。あとこれ1回目だから」

「4時間かけ、だし汁の中に味噌を溶かした私たち」

「時間かかりすぎだろ!

全国の主婦が10秒でできることにそこまで時間かけんな!」

「しかし、その直後、肝心の『あら』を入れ忘れたことに気づく」

「4時間かけて味噌汁作っただけじゃねぇか!!」

「絶体絶命の大ピンチ。その最中、魔理沙はある秘策を思いついたようで…」

「もう手遅れだろ!!普通に作り直せ!!

あら汁はあらで取った出汁で作るんだよ!!

あとこれ普通のホラゲー実況なんだわ!!!」

 

エネルギッシュに叫び散らす実況魔理沙に、巫女霊夢の呆れ顔が向けられる。

映像越しに見ている分には楽しいのだろうか、そばで騒がれると普通に迷惑である。

なんでこうなったかなぁ、と思いつつ、巫女霊夢は茶を啜った。

 

「えー、あら汁云々は一旦置いといて。

今回実況するのは『プレイワールド』。

遊園地のアトラクションの動作確認をしながら、人を襲うマスコットたちから逃げるホラーゲームだぜ」

「こういう『身近にある可愛いものをホラーにする』って題材、超好き」

「わかる。フナフとかめっちゃ好き」

 

フナフってなんだ。

そんな疑問が浮かぶが、巫女霊夢は気にせずにスマホの画面を見やる。

たしかに、よくよく見ると、可愛らしさの中に狂気を滲ませた顔が薄らと映ってる。

アレが襲ってくるゲームなのだろう。

すっかりスマホに意識を向けていた巫女霊夢の後ろから、あうんが身を乗り出して問いかけた。

 

「あれ、何やってるんですか?」

「仕事だって。アレでお金稼いでるらしいわ」

「へぇー…。楽しそうですねぇ」

 

楽しいことでお金が稼げるなんて、羨ましいことだ。

あうんが呑気にもそんなことを思っていると、画面が切り替わる。

古明地 こいしが使っていた電話のような、ところどころ掠れた英語音声が響く。

どこか能天気な声色だ。

何を言ってるのかはわからないが、その声が画面の雰囲気と合っていないことだけは確かだった。

 

「なんて?」

「要約すると、『動作確認が終わるまではそのアトラクションの付近から動くな』ってことだな。

地図を見たところ、アトラクションの付近にはいくつか隠れられるスポットがあるみたいだし、そこを活用していこう」

「そんなこと言ってました?」

「『英語』って言語じゃないかしら」

 

幻想郷で英語を学ぶ機会は少ない。

そもそも使わないから、学ぶ必要性も薄い。

収めているのなんて、レミリアたち紅魔館組か、ある程度の知識層くらいなものだ。

勉学に熱心ではない巫女霊夢たちが理解できないのも、無理もない話である。

そんなことを思っていると、画面が突如として荒ぶり、錆や変色が目立つライオンのマスコットがアップで映し出された。

 

「ぎゃぁあああああぁびゅっ!?」

「ぴっ!?」

「…っ!?」

 

どぱっ。そんな音と共に、実況魔理沙の頭が弾け飛ぶ。

死ぬとは聞いてたが、こんな唐突に死ぬものなのだろうか。

復活しないとかないよな、と不安に思っていると、次の瞬間には画面が切り替わったかのように、その体が再生した。

 

「言い忘れてたけどこのゲーム、開幕10秒以内に動かないとダメだよ。

スタート地点が『ウォント』ってマスコットの巡回ルートにダダ被りだから死ぬ」

「先言えよ!一回死んだわ!!

お前のせいで首弾け飛んだんだぞ!?」

「ノルマノルマ」

「何がノルマだお前の頭も弾き飛ばしてやろうか!?」

「…マジで死ぬんですね」

「聞いてなかったらビビってたわ」

 

ゲームの中では表現されていなかったが、十中八九、目の前の魔理沙と同じ末路を辿ったと見ていいだろう。

興味を示していたあうんもすっかり縮こまり、巫女霊夢の影に隠れる。

どうやら実況魔理沙の死亡シーンよりも、あのマスコットの方が怖くなったらしい。

確かに、薄暗い中からあんなのが顔を出せば、ビビり散らすのも無理はない。

一度の死で学んだ魔理沙はゲーム開始と共に、そこらの茂みに隠れる。

と。先ほどはアップでしか見えなかったマスコットの全容が、薄らと映った。

 

「なんというか、娯楽施設にふさわしくない見た目ね」

「普通に怖いです」

 

確かにマスコットに見えなくもないが、変色と劣化がひどくて恐怖しか覚えない。

お腹あたりがやけに赤黒くなっていることから、抱きしめて殺しているのだろう。

マスコットをやり過ごした実況魔理沙は、近場のアトラクションへと向かう。

と。歩き始めて2分ほどで緊張感溢れる音楽が流れ、画面の隅にクマのマスコットが迫ってくるのが映った。

 

「うぃぎゃぁああああっ!?

ペース早い!ペース早いってぇ!!

ちょっと空いてるチェーン店のラーメン屋くらい早いってぇ!!」

「その例えよくわかんないね」

「後ろ向くの怖い後ろ向くの怖い後ろ向くの怖いほんまあかんあかんからぁああっ!?」

「緊迫感ありますね、なかなか」

「…ちょっとやってみたいかも」

 

やってる本人からすれば溜まったものではないのだろうが、見ていると無性にやりたくなってきた。

この場に普通魔理沙が居れば、我慢できずに横入りしていたことだろう。

逃げること叶わず、再び画面が荒ぶり、実況魔理沙が「みそなべっ!」というよくわからない断末魔と共に頭を爆散させる。

これさえなければなぁ。

そんなことを思っていると、神社の外から何かが倒れる音が響いた。

 

「何かしら?」

「ちょっと見てきます」

 

言うと、あうんが立ち上がり、閉め切っていたはずの障子へと向かう。

ほんの少しだけ空いている。

昨日はきっちり閉めておいたはずだ、と首を傾げつつ、あうんは障子を開いた。

 

「………きゅぅ」

 

目につくのは、縁側の真下。

そこに青い顔で倒れる巫女服の少女。

おそらくは、障子の隙間から部屋の様子を見ていて、実況魔理沙の頭が唐突に弾け飛んだことに驚き、卒倒したのであろう。

その少女の顔に酷く見覚えがあることに気づくと、あうんはなんとも言えない表情を浮かべた。

 

「あうん、誰だった?」

「その、えっと…。守矢です」

「記憶が飛ぶくらい殴ってから叩き返しておきなさい」

 

絶対にあることないこと吹聴される。

そう確信した巫女霊夢の決断に、あうんは顔を引き攣らせた。




守矢…悪い意味で常識にとらわれない巫女。遊びに来たら部屋の中で猟奇殺人事件が勃発してて気絶した。

巫女霊夢…だんだん慣れてきた。実況世界の霊夢のフリして動画出ようかなとか画策してる。

実況魔理沙…爆散した頭部と血液は数秒後には消える仕様。今回の死に方はチタタプチャンネルの中では優しい方。
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