好き勝手されるのは癪なので、貴様らは絶対に許しません ~という令嬢の報復~   作:こまの ととと

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第3話

 そんなこんなで数日後。

 

「はーい二番テーブル様、ご注文の品をお届けに参りました!」

 

「はーい待たされました。お詫びにこの後のデートを注文致し、がっ!?」

 

「はーい当店ではそのようなサービスは行っておりませんので、とっとと食べて帰ってくださーい!」

 

 やはり住み込みのバイトといったら客商売だろう。

 飲食店なら、若い女の子もすぐに雇ってもらえる。

 ここのマスターは女性という事もあって、快くオーケーが出た。

 

 ここは王都の二番街にあるミルクホール。

 学校が集まった地区という事もあってか、メイン層は学生だ。

 だからか、偶にこんな猿の小僧も現れるわけで。

 そういった場合は、マスターから好きにやり返していいと許可も貰っている。

 

 どういうわけか、何度も来るんだよね。何か痛い目にあったら気が済むんだろうか?

 でも、そんな生活にもすっかり慣れてしまった自分の順応性の高さにびっくり。私ってば意外とどこでもやっていけるんじゃないだろうか?さすがにそれは言い過ぎか。

 でも確かなことは一つだけ、この生活結構悪くない。むしろいい。

 お嬢様としての振る舞いも慣れていたというだけで自分でも気づかないうちに重荷になっていたのかもしれない。やっぱり街娘の娘だな私。

 自分の場所を自分で開拓していく。これはやりがいだ。

 

「うん、今の私かっこいい!」

 

「独り言もほどほどにして、これ六番テーブルまでお願い」

 

「あ、はーい!」

 

 そう、今の私はかっこいいウェイトレス。エレガントにウェイトするのだ。

 

 思えば私も十九歳。

 学園を卒業した後そのまま名門貴族に嫁入りするかと思ったら、まさかこういうことになるとは!

 人生というのは、とんとわからないもので予定こそ狂いはしたが自分だけで一から人生設計を立て直すというのはなかなか新鮮な感覚だ。

 

 趣味で磨き上げた魔法の腕で一旗あげようとも考えはしたが、今はこのウエイトレスという仕事もはっきり言って悪くない。

 まぁ、これからどうするかはゆっくりと考えていけばいいさ。とりあえずの手に職は手に入れた訳なんだから。

 どうせ焦ってあれこれやったって失敗するだけだって。こういうのは経験上のんびりとやるぐらいが丁度いいのさ。

 

「はーい。六番テーブル様ご注文のサンドイッチセットをお持ちしました!」

 

 うーん、やっぱりかっこいいじゃないか私。

 

 

 お昼休み。といってもお昼ちょっと過ぎ。

 ピークが過ぎてお客もいなかった店内において、お腹のペコペコになった私に賄い料理がご褒美だ。

 

「わーい、チーズバーガー! 疲れた体にガツンと一撃」

 

 かぶりつこうものなら、間違いなく顎が外れるような巨大なチーズバーガーがお皿の上に乗っかっている。当然、このままじゃ食べられない。

 そこで活躍するのがこのナイフ裁き。見よ、お嬢様育ちの迷いのない一刀。

 いやぁ、惚れ惚れしちゃうなぁ。我ながら芸は身を助くってね!

 

「いやあ意外に綺麗な食事マナーだ」

 

「嫌だなぁマスター、冗談ばっかり言って。見た目通りの間違いでしょ?」

 

「ははは!」

 

 笑ってごまかしたな。

 ここのマスターの女亭主はいい意味で容赦がなかった。

 私が元貴族の箱入り娘だってのに、お構いなく雑用から料理の手伝いまでやらせるやらせる。

 おかげでくよくよしている暇なんてないったらない、元々ないんだけれど。

 

 しっかし、このマスターの気風というか、なんというか。とにかく私とマッチしていて働いていて気持ちがいい。

 まずいなー、このままじゃ離れられなくなっちゃう。それでもいいかなぁ? いやいや足るを知るってね。今はチャレンジの時だ。

 

「あ〜美味しい。駄目になるぅ」

 

 街に飛び出し初めてハンバーガーを食べた時から、こういった類いの料理にすっかりハマりこんでしまった。

 

 ……やっぱり暫くはここで働きましょうそうしましょう。

 

 

 

 

 それからさらに数日後。

 すっかり看板娘の地位を確立した私は、久しぶりの休暇を満喫していた。

 

 汗水流して勤労に従事する。そういう日々を悪くはないけれど、それはこういう休日があるからこそ輝くというものであって、休む時は思いっきり休み倒すのだ。

 それが、ピープルの正しい過ごし方である。

 

 てなわけで、今日は一日町中を歩き倒すぞ!

 

 

「おいおい、聞いたかよ? 今年も魔導院の連中が大規模な魔物狩りを行うらしいぜ」

 

「最近腕利きが入ったなんて話も聞くからなぁ。ここらで大体的なアピールってなもんもあんじゃねえのか? 予算確保に必死なんだろう」

 

「ちげえねえ。あそこは金食い虫で有名だからなぁ、ただでさえやっかみが激しいらしいし」

 

 優雅にメンチカツをむしゃむしゃしながら町中を歩いていた時、そんな話声を耳にした。

 

 王立魔導院といえば魔法研究の花形。多くの魔導士たちが憧れる職場である。

 とはいえ、だ。国を挙げての研究施設だけあって、とにかくお金がかかる場所でも有名だ。この国がいくら魔法研究に力を入れているとはいえ税金で運営されている以上、成果をあげなければやっかみを受けるのも仕方ない。

 

 昨今においては大きな研究成果を出していないとの噂も聞く。風当たりが厳しくなっているのはピープルの間でも有名な話である。

 魔物狩りは毎年の事だけど、アピール出来る貴重な機会ということだ。こうでもしないとメンツが立たないってことだろうか。

 

 まあ、私には何の関係もないけれど。

 

「ふう美味しかった。それじゃ、またウインドウショッピングでも再開しようっと」

 

「ちょっと待った、そこの少女よ」

 

「はい?」

 

 唐突に話しかけられた。振り向いた先にいたのは、覆面を被った謎の男。

 

「ちょっと何ですかあなた!」

 

「そう警戒をすることはない。まずは落ち着くのだ」

 

 いや、落ち着けって言われましてもねぇ

 そこでふと思った、この声はどこかで聞いた方がある。

 そう、つい最近まで聞いたことが、……もしかして!

 

「貴方、お父さまですね?」

 

「な、何を言っているんだ。私はそんなお父様などという名前ではない!」

 

「そりゃそうでしょうよ、そんな人いません。私が言いたいのは、私を屋敷から追い出した父親かと聞いているんです」

 

「何を言っているのかわからないな。父親かどうかだって? その様子だと少女よ、君はどうやら家を追い出されたようだが。初対面の私を父親かどうかを聞くとは、やはり未練があるのではないかな? しかし、それは仕方のないことだ、年頃の女子である以上父親を求めてしまうのはどうしようもないことなんだ」

 

「いや、意味がわかりませんし、お父さまですよね? こんなとこで一体何やってるんです? 人のことを家から追い出しておいて何を油を売っていると言うんですか?」

 

「しつこいぞ、少女よ。だが人寂しく父親を求めるというのは……」

 

「知り合いじゃなかったら、それで良いです。……すいません! ここに不審者がいるんですが!」

 

「ちょっと!? いや、やめたまえ! わかったわかった、今回だけは君の父親ということにしておいてやろう。頼むから話を聞いてくれ!」

 

 一体何なんなのよ?

 わけのわからない茶番に付き合うほど、正直暇じゃない。いや、休みだけれど。

 あんまりこんなのに関わりたくない。

 

「分かりました。じゃあ三分間だけ」

 

「うむ、見ず知らずの人間にも耳を傾ける。実に殊勝な心がけだな、親の教育がさぞかしよかったのだろうな。ははははは!」

 

 イラっ。

 

「では三分経ちましたのでこれにて失礼します。おそらくもう二度と会うこともないでしょう」

 

「ま、待ちたまえ! まだ一分も経ってはいないぞ、約束を反故(ほご)にするとはよくない。……本題に入るから聞いてくれ!」

 

 必死に縋ってくる男、いやお父様、いやもうおっさんでいいや。

 このいやに馴れ馴れしく、気味の悪い覆面のおっさんの相手なんぞ、なんでわざわざ貴重な休日にしなければないらないというのか?

 

 ……私この男と血が繋がってるんですよ? やだぁ。

 

「先程の会話を聞いていたな、少女よ。この街に悪意が迫っている、そう魔物の牙がこの町に迫ろうとしているのだ」

 

「毎年のことじゃないですか? この辺りは巣も近いですし」

 

「人々は怯え、幾重にも眠れない夜を過ごすことだろう」

 

「人の話を聞いていますか? それと、無視して言いたいことだけ話すんですか?」

 

「この由々しき事態、善良な心を持つ少女が見逃せるはずはない。そうだろう!」

 

「いいえ別に。どうせ例年通り魔導院の人達が張り切ってくれるんでしょう。その日、普通に仕事してると思います私」

 

「そう、見過ごすことができないのだ! 少女の心が人々を守れと訴える、体がそれに突き動かされるからだ!」

 

 勝手に話を進めないでもらえない? 何言ってんだか意味不明なんだけど。

 

「というわけで、少女よ。君は討伐に参加する。何故なら使命感に駆られてしまうからだ!!」

 

「いや、そんな使命感ないです」

 

「安心したまえ、何も臆することはない。既に君の参加を届けてある。あとは当日参加するだけだ」

 

 は? ちょっと待ってください、見ず知らずの人。肉親でもないなら何を勝手な事言ってるんですか?

 

「あなたに一体何の権利があると言うんですか?!」

 

「照れることはないさ、仲間達はきっと君のことを喜んで受け入れてくれるはずだ」

 

「嫌です」

 

「いや、嫌とかじゃなくてさ」

 

「嫌です」

 

「聞き分けのないことを言うんじゃない! 君は参加するんだよ!!」

 

 そう言って肉親でも何でもない、ただの見ず知らずのおっさんは私の肩に触れようとしてきた。

 この場合、不審者に対する対応は決まっている。

 

「きゃあ!」

 

 私は悲鳴声を目いっぱいに上げて相手のボディーにレバーブローを決める。

 

「ぐべわ!!?」

 

 肝臓周辺に深い衝撃を与えられた不審者のおっさんはそのまま泡を吹いて倒れた。

 ああスッキリした!

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