好き勝手されるのは癪なので、貴様らは絶対に許しません ~という令嬢の報復~   作:こまの ととと

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第4話

 不審者のおっさんを撃退してから数日後。

 結局、私は討伐作戦に参加することになってしまった。

 

 当日の朝、呼んでもいないのに勝手に魔導院所属の魔導士達が押し掛けてきて半ば強引に連れ去られたからだ。

 このままでは営業妨害になってしまいかねないから従いはしたが……、とりあえず押し掛けてきた不躾な連中にはたっぷりと仕返して少しは気を落ち着かせることはできた。

 それでも不満を崩すことはできない。

 

 当たり前じゃないか、ふざけんな!

 こちとらウエイトレス姿だぞ? 場違いでしょこんなん。

 

「ああもう、イライラするなぁ。とっとと蹴散らして仕事に戻りたいわぁ」

 

 大体何なんのよあのおっさん! 勝手に縁切っておいて無茶苦茶でしょうが!

 

 ここは、城下町からほど近い場所にある丘陵。

 毎年のルートとしてここを魔物達を通る事になっている。

 長年のデータからそれは間違いないらしく、どういう訳かこのルート以外を通った試しはないのだそうだ。

 

 大量に来るといっても下級の魔物の群れだし、ルート場に罠も仕掛けてあるから、正直言って大した仕事じゃない。

 ただ、魔導院からしたら大量に魔物の素材が手に入る上、ピープル達に税金泥棒などと呼ばれないように派手な働きをしてアピール出来るチャンスでもある。

 

 あ、あと新人歓迎会も兼ねてあるんだったっけか?

 

「え~、今年の魔物は去年と比較しても非常に上質で申し分ない仕上がりだと謂われており、色付きも良く、しっかりとしたボディで、我々魔導院としても実力の表れる年となる事が予想されます」

 

 並んだ魔道士の達の前で、恐らく魔導院のお偉い人がなんらかのスピーチを始めた。しっかしその内容は緊張感に掛けるもので。

 ワインか何かかな?

 

「で、ありまして。各職員の皆様並びにご参加下さった方々共々、討伐に励んで頂きたいと願うばかりでございます」

 

 私は町内の美化活動にでも参加しているのだろうか?

 アホらしい、すっかり呆れ果ててしまった。

 

「最後に、今回の合同討伐作戦の概要ですが……」

 

 本作戦の目的は飽くまで間引きであり、殲滅ではない事。

 当然ながら、今いる地点を突破されてはならない事。

 魔物達が撤退を始めたら無理に追わない事。

 手に入った素材等は後で回収し、その量と質で今作戦の最優秀者を決めるという事。

 見事最優秀者に選ばれた者には、金一封と感謝状が送られるという事。

 

「では、そろそろ魔物達も到着する頃合いですので、カウントを開始したいと思います」

 

 こんな緩い感じでいいんだろうか?

 これで毎年成り立ってるんだからいいのか、納得。

 

「三、ニ、一、……ではスタートです」 

 

 お偉い人の掛け声と共に一斉に飛び出していく所属魔導士達と参加者達。

 一番槍を担ったのは、やはり主催者側の人間である魔導士達だ。

 

「っしゃオラぁあ!!!」

 

「死に晒せボケがぁあ!!!」

 

「タマぁ置いてけやダボがああ!!!」

 

「往ねやぁあああああ!!!」

 

 知らなかった、魔導院っていうのはヤクザの集まりだったのか。恐っ!

 

 は! いかんいかん、そんなことより私も行かないと。

 周りを見ると、彼らに続けとばかりに後を追い駆ける参加者達。

 

「僕のデータによればこのタイプの魔物は……」

 

「おいそこどいてくれ!」

 

「ちょ、押すなって!」

 

「どけどけぇ!」

 

「邪魔だぁ!」

 

「ぎゃ!」

 

 しかし、彼らは協調性というものを知らないようだ。

 所詮は有象無象の集まりだしね、私もその一人だけど。

 

 っていうかなんで固まって動いてんのよ?

 ここは丘陵なんだからもっと散れっての。

 

 それでも、討伐は進んでいくもので。

 魔導院の人達を皮切りに、ぶつかり合う人と魔物。

 魔物の種類ときたら意外に多種多様。

 スライム型をはじめ、ゴブリン、コボルト、オーク。

 あ、ドラゴンっぽいやつもいるんだ。あれは一体何だろう? リザードマン? 

 

 それらがヤクザみたいな魔導院の人達に狩られていく、もうどっちが悪者なのか分からないくらいの勢いで。

 そもそも魔導士なのになんで白兵戦もしているんだろう彼らは?

 私が知らない間に魔導士は前衛職になっていたんだろうか?

 

 参加者の人達もさるもので、火炎瓶を大量に投げつける人もいれば、棘付きの鉄球を振る回している人もいる。

 魔物達も数に物を言わせて攻めているけど、明らかに劣勢だ。

 おっかしいなあ、一応ここに来るまで罠を越えてきた選ばれた魔物らしいのに。

 

「きゃ!」

 

 その時、突然背後から悲鳴が上がった。

 声の主は小柄な女の子。振り向いた時には既に魔物達に組み付かれていた。

 

 まずい! このままじゃあの子食べられちゃう! 助けないと! 

 

 そう思って走り出した瞬間である、彼女は手に持ったナイフを魔物の脳天へと突き刺した。

 

「ギィヤァアアアアアアアアアアア!!!」

 

 断末魔のような叫びを上げて倒れる魔物。

 さらに、ナイフを杖代わりにしているのだろう、爆炎魔法を用いて魔物を内側から焼き尽くしていく。

 

 つくづく変な奴しかいないなここには!

 さっきのきゃ! は、一体何だったわけよ?

 

 この状況についていけず、一人、ウェイトレス姿のまま立ち尽くす私を置いて、周りのみんなは次々と魔物を狩っていった。魔物達も敵わないと考えたのか撤退を始めている。

 

 私、なんで参加させられたんだろうか? 

 そんな事を考えていた時の事、一人の魔導士が大急ぎで丘の上まで走ってきた。

 

「た、たたたたタイヘンだー。何故かどういう訳か援軍が別の所からやって来ているぞー」

 

「な、なななななんですってー。くっそーこれは予想外だったー」

 

 おい、もう少し演技しろよ。

 あからさまじゃないか、最初からこうなるのわかってたろ!

 何よこの演出! アクションショーを見に来たわけじゃないんだけど!!

 

 走って来た魔導士の背後から現れたのは、全長五メートルはある巨大な魔物だった。

 いや、何あれ? なんだあんな子供の落書きみたいな顔してんの?

 見た目が明らかに今までの魔物と毛色が違うんだけど。

 

「み、見ろー。あれはもしや最近魔導院が開発したと街で噂の、超最新鋭人工魔物ではないかー。いつの間に我々の研究成果が盗まれていたんだー」

 

「がおー」

 

 要するに、この作戦に便乗して自分とこの成果もアピールするつもりって事でしょうが。

 何よこの茶番! こんなのに付き合わされてるこっちの身にもなれっての!

 何が、がおーだ。その何の迫力も無い鳴き声は何なのか?

 

「ぐわあ、やられたー」

 

「くっそお、歯が立たないー」

 

 そんな事を言って特に何もせず蹴散らされていくのは、死に晒せだなんだと物騒な暴言を吐いていた連中。

 さっきの威勢はどこへやら、途端に吹き飛ばされ……違うな、わざと転がっている。

 もっと演技の出来る人間は居なかったのだろうか? いくら何でもこれは酷すぎる。

 

 とはいえだ、実際この人工魔物とやらの実力自体は中々のものらしく、参加者達が挑んでは投げられ、挑んでは投げられていった。

 職員達がわざと転がっていったのは、余計な怪我を負わないってのもあったんだなあ。

 しっかし、こっからどうやって収拾をつけるというのか? 私はお偉いさんの方を見た。すると別の職員と何やら話している様子。気付かれないように近づいて聞いてみようっと。

 

「上手くいきましたね。こいつの性能が認められれば」

 

「うむ、来年度の予算を期待できる。参加者諸君には悪いが。まあ、軽く傷を負う程度だし、それに参加賞も貰えるわけだから問題ないだろう」

 

 何だとこいつら! 最近ロクに研究成果を上げてないからって、予算の為にこんな事してるのか?! 大体、参加賞ってただの駄菓子の詰め合わせじゃん! 

 ふ、ふざけやがってえッ!!

 

 魔物じゃなくてこいつらをブっ飛ばしてやろうか? そんな事をふつふつと心の中で思っている内に、戦況はどんどん悪くなっていった。

 参加者達は何とか頑張って戦っていたけど、人工魔物はどうも学習能力があるようで、倒される度に動きが良くなっていくのだ。

 

「ああ、もうダメだー。俺達もう全滅だよー」

 

「ちくしょー。このまま好き勝手にされてしまうのかー」

 

 頼むからその大根演技をやめろ職員共。

 

 仕方ない、いっちょ私がカタを着けてやる。

 そう考え腕を捲く……あ、今ウェイトレスの格好だから捲くる程袖が無いや。

 ならばとスカートを捲り上げようとした時、私の前に誰かが現れた。

 

「ご、ご無事ですか?! コルニーさん!」

 

「えと、あなたは? ああ! ミエラ君!?」

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