物語のハジマリ
━━━━ふと目覚める
重いまぶたをゆっくりと開き、次に自分の体の感覚が次第に覚醒する。まどろんだ意識の中でうつ伏せの状態から起き上がった。
「⬛︎◼︎、・・・・・⬛︎」
起き上げた後、ボヤけた視界で周りを見渡すと此処が——否、この世界が普通ではないと本能が告げた。
空は血のように赤黒く、近くには大小様々な瓦礫の塊が浮いており、地面もひび割れて今にも崩れそうになっている。まさしく異界とも呼ぶべき場所であると感じとった。
⬛︎は今、何処にいるのか?ここはなんなのか?どうして自分がこの場所にいるのか?頭の中で疑問が尽きない、いったいこの世界は——
「起きた?じゃあ、しめしてよ。きみの『エゴ』を」
一瞬。この場に似つかわしくない明るい少女の声が聞こえたと思ったら、その直後に次々と剣を持った骸骨達が現れた。
骨格は燻んだ灰色で、甲冑と人骨が合わさったような姿をしており、本来眼球が在るべき場所は赫いモノが怪しく光っている。そいつら………否、「骸骨達」が自身に襲いかかる敵であると確信するには充分だった。
骸骨達は手にある剣を⬛︎に向けて襲いかかる。
「………◼︎、⬛︎◼︎◼︎!」
⬛︎はいつの間にか持っていた短剣を反射的に骸骨達の一体に剣を振りかざした━━━が、
ガキィン!
決死の覚悟で、当たったのは骸骨の身体ではなく、骸骨の剣で防がれた金属同士で当たった音だった。
自身の剣が弾かれ、別の骸骨が⬛︎に向かい剣を縦一文字で斬りかかる。なんとかその攻撃から避けたが、今度はまた別の骸骨が⬛︎に向かって振るう。
だが流石に連続で避けることが切れず、肩が少し切れて、そこから血がじわりと服に染み込み始めた。
⬛︎は一旦骸骨達から距離を取って唯一の武器である短剣を構え息を整える。
でも状況はよろしくない。数は複数対一でしかもさっきの攻撃で手傷を負い、圧倒的に⬛︎が不利だ。
このままではやられるのは時間の問題だ。そう思案していると━━━━
ザシュッ
「…………◼︎」
━━━━突然後ろから痛みが感じた。短剣も手からこぼれ落ちた。なぜ、どうして、疑問が頭の中に埋め尽くされた。そして⬛︎はゆっくりと後ろを振り返ると答えは背後にあった。
”背後にも骸骨がいた”………たったそれだけの理由、そう気づいても体が前に倒れ込んでしまった。
そこから⬛︎の血がぽたりぽたりと落ち、だんだんと身体が動かなくなっていくそして骸骨達が⬛︎に剣を振るおうと近づいている。
「ちぇ〜。」
さむい、いたい、ねむい、どうして……なぜ、朦朧とする意識の中で疑問が増えては消えてを繰り返した。しかしもうどうすることも出来ない。
「今回も失敗作」
薄れゆく意識の中で虚空に手を伸ばす━━━━━
「あ〜あ、世界は理不尽で残酷ね」
だが手は届かず、大量の骸骨達が視界を覆い暗転した。
「━━━━もっと出来のいい子が欲しいのに」
キィーンコォーンカァーンコォーン
太陽が燦々と輝く気持ちの良い青空に大きな鐘が鳴り響く、その真下にある大きな学園”
東京都の武蔵野市にあるこのミッション系の学園は100年もの歴史ある学園で、男女共学の小中高の一貫校。その中で高等部は「家柄よりも能力を尊ぶべし」という思想のもと学生支援制度を充実させており、著名な政治家や実業家を多く輩出している名門である。
ある人は壇上で沢山の生徒達に演説している真面目そうな少女。
長い廊下を凄まじい速さで爆走する風紀の腕章を持つ勝ち気な少女。
ある人は図書館の本棚に背にもたれかかり本を読んでいる怠惰な少女。
その近くで本棚から1冊の本を取り出しニヤリ嗤う聡明な少女。
ある人は屋外で伏した生徒達の上で空を見上げる粗暴そうな青年。
ある人は扉を開け出迎えていた2人の前に向かう誠実そうな少年。
その少年を一瞥しながらも後に付いて来るものぐさそうな少女。
学園の庭園で眠そうにしながらも植物に水をしてる夢現な少女。
理科室で薬品を使い怪しげな実験をしている白衣の少女。
校舎裏で小さなボールを使って練習する背の低い小柄な少女。
部室棟にある無人倉庫に住み着いている幸薄そうな少女。
屋上で日向ぼっこをして寝ている異様に髪が長い少女。
今日も沢山の生徒がこの学園に登校し、様々な学園生活を送っていた。……だが、その日常は砂上の楼閣のように簡単に崩れ去ることになる。
突如、目に見えない巨大な膜のようなのが現れ、学園の周りをぐるっと覆った。境界から境界の狭間にあるソレはまさしく”結界”のようであった。
結界が出現したのと同時に学園内の至るところに白い霧が教室も廊下もまるでモヤが掛かったように広がり始めた。それに呼応するように生徒達は急に苦しみ出した。
ある生徒はあまりの痛みで頭を抱え、ある生徒は立っていられないのか倒れており、皆一様に狂ったように叫び始めた。————目が血のように染まって
「ゔあああぁぁぁぁぁぁ━━━ッッ!」