レーティングゲームスタート! そんなアナウンスが聞こえてきた。
「じゃあ、適当に相手してあげて。一応王だけはこっちで処理するから残しておいてね。……死なないからってあんまり暴れないでくれよ?フリじゃないからね!?」
結局眷属は4人しか集まらなかった。まあ、余裕で勝てる眷属が集まった訳だし、勝敗は大丈夫だろう。大丈夫かなぁ……相手の眷属……。こいつら問題児なんだよなぁ……
体育館に向かった木場と小猫は、前に部室で出会った儚い見た目の少女が血まみれになっている後ろ姿を見ていた。ライルの眷属にやられてしまったのだろうか?
「あの……っひ!」
小猫が声をかけると、少女が小猫達の方を振り返る。違う。ライル・フェニックスの眷属を
「食べて……!」
「あら。鬼だもの。人を食べるのは当たり前でしょう?大丈夫。貴方達とはお話したかったの。怖くないよ。おいで。一緒にお話しましょう」
血を垂らしながらこちらに手を出して語りかけてくる少女。木場は危険と判断し、即座に魔剣を作り構える。
「それだけの死臭を振りまいておいてよく言えるね」
「心外だわ。私は一度も人を殺した事がないのに」
嘘だと、そう思った。怖い。何もかもが嘘。こんなにも言葉に重みを感じられない生き物は初めて見た。何故ライザーはこいつをこんなおぞましいものを眷属にできた?
「そう言えば、お話をする前には自己紹介が必要だったわね。私はソリテール。人と鬼のハーフよ」
「木場祐斗。リアスグレモリー様の眷属だ」
「……塔城小猫。……同じくリアスグレモリー様の眷属です」
「ふふ。ちゃんと自己紹介してくれる子は好きだわ。」
「ここは僕が食い止めるから小猫ちゃんは部長に……」
「騎士の方がスピードで逃げ切りやすいはずです……ここは私が」
話をしているおかげでどう考えても2人では勝てない。であればどちらかが情報をみんなに届けてと考えている最中だった。
「お話を聞かせて欲しいって言ったじゃない」
「グッ!」「……っ!」
左の足の甲を貫かれた。これは……魔剣?……
「結界も張ったし、これで邪魔されることもないわね。じゃあ聞かせて?出身は?騎士の方が人間で戦車が猫魈だったかしら。どうして転生悪魔に?誰かに裏切られた?」
「……それを聞いてどうするつもりかな?」
「想いが隠しきれてないわ。そう。君は復讐のために転生悪魔になったのね。協会?ふふ、すごい顔。教えてくれてありがとう。じゃあ例えば、これにはどう反応するかしら?」
ソリテールが虚空から何かを取り出す。寒気がする感覚。あれは
「聖……剣……?」
「
「先輩……?」
木場の顔はものすごい憎悪で歪んでいた。今まで見たことがない。
「聖剣に何か思い入れがあるのね。教えてくれてありがとう。どういう気持ちなのかしら?辛い?苦しい?憎らしい?」
「それを目にするときが、まさか今来るなんてね。小猫ちゃん。悪いけど……」
「質問には回答してほしいわ。覚悟が決まって、刺し違えてでも何かをする、って考えているのね。見たことあるわ」
「……は?」
裕斗先輩の足が斬られた。足首から先がない。焦げたような匂いもする。
「炎の魔剣よ。すぐに殺したくない時に重宝しているの。傷口が焼けて失血しなくて済むでしょう?ああ、呆然しているその顔は知っているわ。意味が解らない、って思っているのよね」
この鬼は、異常だ。まともに戦う気があるのかも怪しい。ただただこちらのことを観察している。まるで投薬したラットの様子を見るような、そんな感覚。
「ぐっ!それでも……僕は……!」
裕斗先輩が這いつくばって聖剣の方に向かう。こんな裕斗先輩を見るのは初めてだった。
「そんなにこれが気になるの?」
「それを壊すために、無念を晴らすために、僕は生きてきたんだ!」
「教えてくれてありがとう。そう。それが復讐の感情で、そういう感情の時に言う言葉なのね。憎悪とは少し違うみたい。今までで初めて見たわ。それじゃあさようなら」
そう言って鬼の少女は近寄って来た裕斗先輩の心臓を聖剣で刺し、首を切り落とした。
「……え?」
「うん。確実に殺せたわね。じゃあ次は貴女。どうして猫又の希少種である猫魈が転生悪魔になったのかしら」
何を言っているんだこの人は、どうして今の話を聞いて、同情も何もなく躊躇いなく人を殺せる?人を馬鹿にすることに愉悦を覚えるような、そういうタイプなのだろうか。
「あら?どうして怖がっているの?」
不思議そうに鬼が言う。いや違う。そう見せかけているだけで、全く不思議と思っていない。こちらを常に観察して、それに対応して応答しているだけなんだ。
きっとこの鬼には人の心というべき、感情そのものがないのだ。全く別種の生物として考えた方がいいのかもしれない。こいつの言葉を聞くのは無駄だ。痛む足を無視して走る。
「あら、貴女は優秀なのね。殴りにくい容姿をしているのに躊躇わずに殴れる人は少なかったわ。いえ、残酷な性格をしているのかしら?」
こぶしは鬼の少女の顔の少し手前で止まっていた。
「……何て固い魔力障壁!」
「猫魈なのに仙術を使わなかったり、不思議ね。無理やり入れてみようかしら」
その言葉に大きく後ろに退く。
「あら、恐怖?仙術も便利なものなのに、その反応だと心的外傷になっているのね」
嫌だ。仙術は、姉さまのようになるのは……
「その反応、親しい人が力に溺れて嫌な思いをしたのね。前に同じような人を森で見たわ。意外と普遍的に見れる感情なのね。じゃあもう貴女に教えてほしい事はなさそうだから、ライザーのために死んでね」
「……っ!」
眼を離していなかったのに、下半身が吹き飛んだ。何をされた。痛い、痛いっ!
「戦車なのに意外と脆いのね。ただ魔力をぶつけただけなのに」
「……は?」
魔力をぶつけただけ?それだけで眷属で一番耐久のある私の下半身を吹き飛ばした?いやまだ。今回両陣営にフェニックスの涙が2つ配られている。隙を見て使えば……
「それじゃあバイバイ――いや、駄目ね。油断と驕りは捕食者故の、鬼としての欠点。酒呑童子も茨木童子も油断したせいで人間に殺されている。私は半分鬼の血が入っている。油断も驕りも抱かずに、今ここでの最善手はきちんと止めを刺してライザーの元へ向かうこと。万が一、貴女や誰かがフェニックスの涙とか、この状態から回復する手段を持っていたら不利を作るかもしれない」
そう言って鬼の少女は近づいてくる。
「本当だったら最期の言葉を聞きながらもっとお話しするんだけど、ライザーがあんな悪魔と結婚すると、私は自由にできなくて困るから。念のためきちんと殺させてもらうわね」
最期に見たのは自分に魔剣が降り注ぐ光景だった。
「おやぁ?どこに行こうというので?」
なんだこれは。眷属の背後に転移した大鎌を持つ天使に、自分の眷属が狩られていく。
「ライル様!早くお逃げください!」
なんなんだこれは!
「ライル様!ここは私たちが食い止めます!王を直接……」
「ああ!久しぶりに気持ちよく、多くの数を狩れて幸せでございます!まあ、惜しむべきはあくまで普通の首、というところでございましょうか」
転生してライザー・フェニックスの弟になった。貴族だし、人生勝ち組だと思った。悪魔にしては訓練も真面目にこなして、かなりの実力者になったと思っていた。
間違っていた。
「何で……何でジブリールがこの世界にいる!」
前世でアニメはそこそこ見る方だった。ノーゲーム・ノーライフはアニメで見ていたから知っていた。だからこそ分かる。こいつに勝てる訳がない。
「普通の眷属悪魔とは言え、久しぶりにこんなに多くの首を集められるのは嬉しいです……ね!……あら?今のは少しだけ強かったでしょうか?厳重に保管しなくては!」
「ユーベルーナ!」
大鎌の一振りで眷属の中で最強の女王が殺される。
「首が12。その内集めようと思っていましたから満足ですわね。ああ、そこの
事実なのだろう。こいつに勝てる気はしていない。今も手加減しているのだろう。本気になればこの校舎ごと、結界ごと破壊されるのは分かっている。無事なのは体育館に向かった2人だけだろう。
「くそっ!」
ライルフェニックスは一縷の望みをかけて走って屋上へ向かう。王を直接潰せば、まだ勝てる。そう考えて。
「はあ、まさか食後の運動にもならないほど弱いとは……残念でございますね」
ライザー眷属を1人を除いて全滅させた後、保存魔法で状態を保存した首をしまいながらジブリールはそうつぶやいた。
「これでしたら、レアなリアスの女王の方か猫の方へ行った方が良かったでしょうか。半堕天使の転生悪魔……猫魈……ここで手に入れられないのを逃したのはやはり失敗だったのでは……数が欲しくてこちらに来たのは浅はかでしたでしょうか」
半堕天使の転生悪魔、姫島朱乃は実のところライザー眷属の今回参加した4人中、3人に大人気だった。本人からしたらたまったもんじゃないだろうが。
理由はただ一つ。レアだからである。そしてその3人は、感情というものを知るために残虐なことを平気で行う鬼だったり、首をコレクションするのが好きな天使だったり、種を保存するのを使命とするヒューマノイドだったり、有り体に言ってあまり関わりたくないタイプの眷属だった。
今回参加したライザー眷属は割と我が強い眷属だった。いや割とどころでは無いレベルなのだが。最初にターゲットを決めておかないとレーティングゲーム中に仲間割れをして戦いが起きかねない。
とは言え、ライザーは別に仲間割れで戦うのを気にする質ではなかった。むしろどんどんやってお互い高めていこうぜの精神である。が、さすがに魔王も見るレーティングゲームで眷属が全員参加できない状態という、お前眷属の手綱どうしてんの?と言われかねない状態でさらに仲間割れという、手綱どこ?ここ?となる愚行は犯せなかった。
その結果、誰が何を狩るのかのじゃんけんが始まった訳だが。
結果、ライザー眷属の女王が堕天使を、僧侶が猫を、戦車が数を狩ることになったのである。
「はぁ。主様はファルサリアさんと屋上に行くつもりみたいですし、折角だからお話でもしませんか?レイヴェル?」
「ティーセットは用意済みよ。全く、こんな茶番に付き合わされるなんてね。どう考えてもライザーお兄様の圧勝でしょうに」
レイヴェルフェニックスはライザーの実力をちゃんと理解している妹だった。そして母親にあっさりと騙された妹だった。
お兄さんの眷属になれると聞いて飛びついたところ、尊敬するライザーお兄様ではなく愚兄と呼んでいる方の眷属だったのである。
両親の考えとしては何かと暴走しがちなライルを抑えるために才媛と言われているレイヴェルをそばに置きたかったのである。ライザーは放蕩しているが、まあ強くなっているみたいだしいいかと放置していた。
「さて、お兄様の戦っているところも見たいですし、屋上の映像を映しながら優雅にティータイムとしますわ」
「これ以上やることもないでしょうからね。主様の雄姿を見る事としましょう」
「これは……厳しいですわね」
白いワンピースを来た薄い水色の髪の少女と対峙している朱乃は追い詰められていた。
「ピピ……レア種族、保存します」
少女が箱から出す光線に触れたものは全てが分解されていた。当たれば即撃破判定になるだろう。そういう理不尽な攻撃。当たるわけにはいかない絶死の光線。
「しかし、こうも攻撃が通りませんと……取れる手段が少ないですわ」
自身が放つ雷は全て四角い金属製の箱に吸収されてしまっている。だが見えてきた。
「大人しく当たれば痛くないですよ?」
「大人しく当たると思ってるのかしら!」
雷を放つ。直線的で当たらないのなら、
「全方位からはどうかしら!」
箱が防げるのは一方向のみ。設置していた魔力を起動させ、5方向から雷を浴びせる。これなら……
「ッ!?」
雷が土煙を上げるとともに、自分の中からごっそりと力が抜き取られた感覚がした。
「ピ……損傷軽微。カウンターシステム起動」
「な……!」
少女の魔力が見てわかるほど増えた。
「ハコちゃん。お願い」
「ぐ……これは私の雷……!」
金属の箱から放たれた攻撃は自分の雷だった。
解析して私の雷を模倣……いえ、保存した攻撃を放っている!?まずい雷で動けな……
「保存します」
朱乃は箱からの光線に全身が包まれ、意識を失った。
「ピピピ……保存完了。種の保存計画がまた進みました」
誰も居なくなった校庭で、そう言ってよいしょっと少女は箱の上に座る。
「ふう。ワタシ、もう疲れました」
雷であまりダメージを受けてはいないとはいえ、同じ女王を傷つけないように保存するのは疲れる行為だったらしい。
「後は観戦するくらいしかやることないですね。ハコちゃん。後はお願い」
少女……ノアは知らない。このあと朱乃がいないことを知ったライザーにせっかく保存したサンプルを出させられる事を。
~その後の話~
「ペッしなさい!」
「ピ……ワタシ、そんな人知らない」
「こっち向いて言えこら!今回の戦いは撮られてたから証拠もあるの!早く出してあげて!」
「……嫌です」
「……うーん。じゃあ分かった。腕の一本くらいなら残していいからそれ以外吐き出「良くないわよ!?」リアス、交渉進まないから黙ってて!ほら、
「腕一本……遺伝子は残る……しょうがない。出してあげます。優しいワタシに感謝してください。ハコちゃん。お願い」
この後、ハコから吐き出された朱乃は急に腕が無くなった痛みで気絶し、ライザーが慌てて治療をした。
ライザーはリアスに殴られた。
ソリテール:葬送のフリーレン 僧侶
鬼と人のハーフ。魔剣創造持ち。似ているだけの半鬼なので、原作とは少し違って感情を少し理解している。
リアスと結婚すると今の自由がなくなりそうなので反対している派。
感情を理解するために末期の言葉を聞きたがる問題児
ジブリール:ノーゲームノーライフ 戦車
天使から転生悪魔へ。ノゲノラ世界のジブリールではなく、あくまで似ているだけの天使。
結婚のことはどうでもいい。主が神を殺せるレベルまで強くなってくれれば環境は気にしないタイプ
自分の狩った首を部屋に並べたがる問題児
ノア:LORD of VERMILION 3.5 女王
過去の遺物で世界継続のために保存計画を実行する異端児。一応神の一種ではある。
結婚のことはどうでもいいが、結婚相手はライザーと異なる種族だと保存対象が増えて嬉しい。
初めて会った種族を箱の中に保存したがる問題児
思ったより反応があったので続いちゃいました。需要あるのかは謎……
息抜きで思いついたときに書いてるので、この次の更新はもっと時間空くと思います。ただとりあえず、レーティングゲームまでは終わらせます。